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玄愛Ⅱ《炯side》
玄愛Ⅱ《炯side》3
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それから数日が過ぎ、3学期が始まった。
「お付き合いの仮契約?なんだそりゃ。聞いたことねぇよ」
綾は屋上でガムを噛みながら山田の発言に驚いていた。
「いーのっ!哀沢くんのこと好きでいていいんだから」
「炯も真面目だなぁ。とりあえず付き合えばいいじゃん」
「お前みたいに軽くねぇんだよ俺は」
「とりあえず山田が無事で、前みたいに4人で行動出来るのはよかった。綾から山田が事故に遭ったって聞いたときは心配した」
「愁ちゃん、心配してくれてありがとう。神様も俺は生かすべき人間だって分かってたみたい」
仮契約という不思議な関係を始めて二人きりで遊んだりしても、キス以上のことはしなかった。
なんとなく、山田が誘っているのは分かっていた。
中途半端な気持ちで山田を抱いて、もしこれが恋じゃなく友情だと気付いたとき山田に失礼だと思った。
だから余計な温もりは与えたくなかった。
「もうさ、早く付き合えよお前ら」
仮契約をして1ヶ月が経ったある日、綾にそう言われた。
「山田を好きなのかどうかまだ分からねぇんだよ」
「へぇ」
「俺からしてみたら、もう炯は雅鷹のこと好きになってると思うぜ。雅鷹が事故ったときのあの表情…雅鷹のこと大切だと思ってなきゃあんな風にならないだろ」
確かに、あの時は山田を失ったらどうしようと思った。
でも恋愛感情なのかは分からない。
「好きという感情がよく分からない」
「そんなの簡単だろ。雅鷹がいなくなってもいいのか、よくないか。ずっと一緒にいたいか、いたくないか。他の奴にとられてもいいのか、よくないのか。それだけ」
他の奴にとられてもいいのか、よくないのか。
雅彦は既婚者で既に他の人のものだったし、それに対して何とも思ったことはない。
「あ、じゃあ俺が雅鷹抱いてみる?嫉妬したら好きってことで。なんてな」
山田が綾に抱かれたと想像してみても、特に嫉妬する予感がしない。
―…恋じゃないのか?
余計に分からなくなってきた。
今日は部活が無かったから、山田が俺の家に遊びにきた。
最近の山田はよく考え事をしていて、たまに人の話を聞いていないことがある。
「山田?どうかしたのか?」
「いや…」
ハッと我に返った山田から意外な発言が飛んだ。
「哀沢くんさ…三科雅彦と撮った写真とかプレゼントとかないの?」
何を言い出すのかと思えば。
「写真…そういや撮ったことねぇな」
「えーあんなスーパーモデルの生写真ないなんて勿体ない。何か貰った物はあるの?」
「そんなこと聞いてどうすんだよ。お前が嫌な気持ちになるだけだろ?」
なぜ引きずってるやつのことをわざわざ聞いてくるのか理解出来なかった。
「そうかなー?俺哀沢くんのこといっぱい知りたいよ。あんまり哀沢くんの家来ることもないしさ」
俺はため息をついてクローゼットから、箱を取り出してそれをテーブルに置いた。
「いつかこれも捨てないと前を向けねぇなと思ってる。でも忘れたいのに、忘れられない」
「…開けてもいい?」
俺は山田の目を一瞬見て、目を反らして頷いた。
山田はバスケットシューズの入った箱を開けて、雅彦からの手紙を読みながら言う。
「こんな物貰ったら、忘れられないね。でもどうしてバッシュ履かなかったの?勿体なかった?」
「…それを貰ったのはあいつが死んで2年経ってからだ。サイズ的にもう履けねぇ。なのにずっと保管してる。未練がましいだろ?自分でも嫌になる」
「死んでるのにどうやって貰ったの?」
山田が俺の領域にどんどん足を踏み入れてくる。
こんな話、聞いたところで嫌になるだけなのに。
「あいつのマネージャーが日本に来たんだよ。遺品整理してたらこれが見つかったって。お前に腕を引っ張られて学校サボった日あっただろ。あの前日にそれ渡されたんだ」
自分でも自分が嫌になるのに。
何年もずっと忘れられずに、思い出してはまた傷口を広げて。
「忘れたと思ったのに全然忘れられてなかった。もう捨てないといけねぇのにな…」
捨てることも出来ず、
忘れることも出来ず、
過去に戻りたいと思ってしまうのに。
「捨てなくていいじゃん」
山田がきょとんとした顔で俺に言った。
思ってもみなかった発言に俺は驚いた。
「…嫌だろ?こんなのずっと持ってたら。もうあいつはいないのに、過去に縛られて」
「でも彼のこと嫌いになったわけじゃないんでしょ?素敵な思い出がたくさんあるんでしょ?だったら思い出を消さなくていいし、無理に忘れる必要ないじゃん」
俺は山田を見つめて無言で話しを聞いた。
「それにさ…この手紙見たらすごく優しくていい人だったって分かるよ。哀沢くんが好きになるのも納得」
雅彦からの手紙を笑顔で見ながら、まるで自分が貰ったかのように喜んで話し続ける。
「哀沢くんは三科雅彦を好きになって幸せだったんでしょ?俺はそんな哀沢くんが好きだからさ。こんな良い人との思い出を忘れるなんて言ったら彼が悲しむよ」
もうこの世にいないんだから忘れないといけない。
でも、忘れようとする度にあの時のことが思い出されてきた。
何年も、何年も。
『忘れなくていい』選択肢は無かった。
「三科雅彦以上に俺のこと好きになってもらえばいいんだもんね。俺は生きてるんだから全然可能性あるじゃん?」
あぁ、山田なら大丈夫だ。
山田ならこんな俺の全てを受け入れてくれる。
「覚悟しといてね。俺はしつこいよ」
全力で愛してくれる。
「今はまだ思い出すと辛いかもしれないけど…いつかその過去を振り返ったとき、悲しまずに充実してたなって思えるようになるといいね」
こんな俺の過去も全て。
山田となら、一緒に過去を乗り越えていけそうだ。
「ねぇねぇ、もっと聞かせてよ彼のこと」
俺はその日、山田に雅彦との出来事を全て教えた。
思い返せば、この日から山田のことを好きになったんだと思う。
「お付き合いの仮契約?なんだそりゃ。聞いたことねぇよ」
綾は屋上でガムを噛みながら山田の発言に驚いていた。
「いーのっ!哀沢くんのこと好きでいていいんだから」
「炯も真面目だなぁ。とりあえず付き合えばいいじゃん」
「お前みたいに軽くねぇんだよ俺は」
「とりあえず山田が無事で、前みたいに4人で行動出来るのはよかった。綾から山田が事故に遭ったって聞いたときは心配した」
「愁ちゃん、心配してくれてありがとう。神様も俺は生かすべき人間だって分かってたみたい」
仮契約という不思議な関係を始めて二人きりで遊んだりしても、キス以上のことはしなかった。
なんとなく、山田が誘っているのは分かっていた。
中途半端な気持ちで山田を抱いて、もしこれが恋じゃなく友情だと気付いたとき山田に失礼だと思った。
だから余計な温もりは与えたくなかった。
「もうさ、早く付き合えよお前ら」
仮契約をして1ヶ月が経ったある日、綾にそう言われた。
「山田を好きなのかどうかまだ分からねぇんだよ」
「へぇ」
「俺からしてみたら、もう炯は雅鷹のこと好きになってると思うぜ。雅鷹が事故ったときのあの表情…雅鷹のこと大切だと思ってなきゃあんな風にならないだろ」
確かに、あの時は山田を失ったらどうしようと思った。
でも恋愛感情なのかは分からない。
「好きという感情がよく分からない」
「そんなの簡単だろ。雅鷹がいなくなってもいいのか、よくないか。ずっと一緒にいたいか、いたくないか。他の奴にとられてもいいのか、よくないのか。それだけ」
他の奴にとられてもいいのか、よくないのか。
雅彦は既婚者で既に他の人のものだったし、それに対して何とも思ったことはない。
「あ、じゃあ俺が雅鷹抱いてみる?嫉妬したら好きってことで。なんてな」
山田が綾に抱かれたと想像してみても、特に嫉妬する予感がしない。
―…恋じゃないのか?
余計に分からなくなってきた。
今日は部活が無かったから、山田が俺の家に遊びにきた。
最近の山田はよく考え事をしていて、たまに人の話を聞いていないことがある。
「山田?どうかしたのか?」
「いや…」
ハッと我に返った山田から意外な発言が飛んだ。
「哀沢くんさ…三科雅彦と撮った写真とかプレゼントとかないの?」
何を言い出すのかと思えば。
「写真…そういや撮ったことねぇな」
「えーあんなスーパーモデルの生写真ないなんて勿体ない。何か貰った物はあるの?」
「そんなこと聞いてどうすんだよ。お前が嫌な気持ちになるだけだろ?」
なぜ引きずってるやつのことをわざわざ聞いてくるのか理解出来なかった。
「そうかなー?俺哀沢くんのこといっぱい知りたいよ。あんまり哀沢くんの家来ることもないしさ」
俺はため息をついてクローゼットから、箱を取り出してそれをテーブルに置いた。
「いつかこれも捨てないと前を向けねぇなと思ってる。でも忘れたいのに、忘れられない」
「…開けてもいい?」
俺は山田の目を一瞬見て、目を反らして頷いた。
山田はバスケットシューズの入った箱を開けて、雅彦からの手紙を読みながら言う。
「こんな物貰ったら、忘れられないね。でもどうしてバッシュ履かなかったの?勿体なかった?」
「…それを貰ったのはあいつが死んで2年経ってからだ。サイズ的にもう履けねぇ。なのにずっと保管してる。未練がましいだろ?自分でも嫌になる」
「死んでるのにどうやって貰ったの?」
山田が俺の領域にどんどん足を踏み入れてくる。
こんな話、聞いたところで嫌になるだけなのに。
「あいつのマネージャーが日本に来たんだよ。遺品整理してたらこれが見つかったって。お前に腕を引っ張られて学校サボった日あっただろ。あの前日にそれ渡されたんだ」
自分でも自分が嫌になるのに。
何年もずっと忘れられずに、思い出してはまた傷口を広げて。
「忘れたと思ったのに全然忘れられてなかった。もう捨てないといけねぇのにな…」
捨てることも出来ず、
忘れることも出来ず、
過去に戻りたいと思ってしまうのに。
「捨てなくていいじゃん」
山田がきょとんとした顔で俺に言った。
思ってもみなかった発言に俺は驚いた。
「…嫌だろ?こんなのずっと持ってたら。もうあいつはいないのに、過去に縛られて」
「でも彼のこと嫌いになったわけじゃないんでしょ?素敵な思い出がたくさんあるんでしょ?だったら思い出を消さなくていいし、無理に忘れる必要ないじゃん」
俺は山田を見つめて無言で話しを聞いた。
「それにさ…この手紙見たらすごく優しくていい人だったって分かるよ。哀沢くんが好きになるのも納得」
雅彦からの手紙を笑顔で見ながら、まるで自分が貰ったかのように喜んで話し続ける。
「哀沢くんは三科雅彦を好きになって幸せだったんでしょ?俺はそんな哀沢くんが好きだからさ。こんな良い人との思い出を忘れるなんて言ったら彼が悲しむよ」
もうこの世にいないんだから忘れないといけない。
でも、忘れようとする度にあの時のことが思い出されてきた。
何年も、何年も。
『忘れなくていい』選択肢は無かった。
「三科雅彦以上に俺のこと好きになってもらえばいいんだもんね。俺は生きてるんだから全然可能性あるじゃん?」
あぁ、山田なら大丈夫だ。
山田ならこんな俺の全てを受け入れてくれる。
「覚悟しといてね。俺はしつこいよ」
全力で愛してくれる。
「今はまだ思い出すと辛いかもしれないけど…いつかその過去を振り返ったとき、悲しまずに充実してたなって思えるようになるといいね」
こんな俺の過去も全て。
山田となら、一緒に過去を乗り越えていけそうだ。
「ねぇねぇ、もっと聞かせてよ彼のこと」
俺はその日、山田に雅彦との出来事を全て教えた。
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