玄愛-genai-

槊灼大地

文字の大きさ
上 下
22 / 50
玄愛Ⅱ《雅鷹side》

玄愛Ⅱ《雅鷹side》3

しおりを挟む
 ある日の放課後、私たちは課題のため図書室に赴いた。
 テーブルの最奥に並んで座り、資料を広げる。
 真面目に手を動かし、作業は順調に進む。
 そんな中、ふと魔が差してしまった。

「……ねぇ、萌恵ちゃん」

 近くに人はいないけど、もちろん二人きりというわけではない。
 迷惑をかけないように声を抑えて呼びかける。

「ん、どうしたの?」

 萌恵ちゃんは手を止め、私の方を向いて小首を傾げた。
 髪がふわっと揺れていい匂いが漂ってきたことは言うまでもなく、私が激しく興奮するのも当然というもの。

「誰にも気付かれないように、イチャイチャしてみたい」

 付き合っているからこそ浮かんだ欲求。
 以前は頭の中で自己完結させるしかなかったけど、いまなら萌恵ちゃんの同意さえ得られれば実現できる。

「お~、いいね。なんかワクワクする」

 やった!
 ど、どうしよう。テーブルの下でえっち――いやいや、いくらなんでも突飛すぎるし、最悪の場合は萌恵ちゃんの裸を私以外に見られてしまう。
 落ち着け、落ち着くんだ。
 下着を脱いでお互いに嗅ぐとか? うーん、嬉しいのは私だけだからダメ。
 どんなことがいいかな。
 頬にキスなんて、さすがに大胆――

「ちゅっ」

「!?」

 考えていたことを不意打ちで行われ、心臓が飛び跳ねる。
 大声を上げそうになったけど、両手で口を塞ぐことでかろうじて阻止できた。

「ほらほら、次は真菜の番だよ~」

 萌恵ちゃんが自分の頬を指差し、静かに声を弾ませる。
 念のために周囲を確認してから、私はほのかに赤らんだ瑞々しい肌にキスを落とす。
 ひゃーっ、やっちゃった! 見られていないとはいえ、他に人がいる状況でほっぺにちゅーしちゃった!
 心臓がドキドキしてる。顔が熱い。
 嬉しさとか幸せな気分だけじゃなくて、達成感に似たなにかが胸の奥から込み上げてくる。

「んふふっ、ありがと」

 ただでさえ胸の高鳴りがすごいのに、天使の微笑みを見せられて理性が弾け飛びそうだ。

「も、萌恵ちゃん、どうしよう……私、我慢できそうにない」

「じゃあ、次は唇同士でしてみる?」

 今度は悪魔の誘惑が私を襲う。
 いくらなんでも……いや、でも、こんなの抗えるわけがない。

「うん、したい」

「それじゃあ――」

 さっきより念入りに辺りを見回してから、緊張感と高揚感を胸に、お互いに相手の方を向いて唇を近寄せる。
 突然のハプニングに邪魔されないかという不安は、小さく発せられた艶めかしい水音によって消し去られた。
 不用意に音を立てないよう気を付けつつ、最大限にキスを堪能する。
 いつもより短めに終えたものの、集中していたせいか不完全燃焼という感じはしない。
 ちょっとばかり刺激が強すぎるけど、たまにはこういった趣向もいいものだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

処理中です...