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玄愛《炯side》
玄愛《炯side》1
しおりを挟む言葉なんて邪魔になる。
信じたらそれでおしまいだ。
想いが強くて、苦しんだ。
あんた無しじゃいられないくらいに。
言葉が俺を悩ませた。
「I love you Hikari 」
《愛してるよ、ヒカリ》
最後に聞いたこの言葉が、今まで俺を苦しめたんだ。
三科雅彦に会ったのは小5の夏だった。
父と母はアメリカで出会い、俺が9歳までは家族全員アメリカで暮らしていた。
その後父の仕事の関係で日本で暮らすことになったが、母方の祖父母に会うために春、夏、冬の年3回はアメリカに遊びに来ていた。
「Hey,boy!」
小5の夏、好奇心から祖父母の家を抜け出し探索を始めてストリートを一人で歩いていると、知らない男に声をかけられた。
オッドアイでサラサラした紫色の髪の毛を靡かせた高身長の男は、俺の顔を見て言った。
「…日本人?」
日本語で話しかけられたことに驚いたのを今でも覚えてる。
「そうだけど…」
「ここは子供が歩いてたら危険だぜ。しかも日本人だなんて。送っていくから家を教えて」
それが俺と雅彦の出会いだった。
祖父母の家を案内すると、家を見てその男は驚いていた。
「君の家…ここなのかい?」
「じいさんの家だけど…」
「ヒカリーーー!!!」
家の前でそう話していると、いなくなった俺を探していたであろうじいさんが息を切らして近づいてきた。
「おお、ヒカリ!探したよ!どこに行っていたんだ!みんな心配して…」
「《わお、コウメイさんだ!》」
男はうちのじいさんの顔を見るなり、英語で話し掛けた。
「《…雅彦!?久しぶりじゃないか。どうしたんだ?》」
高身長の男と、俺のじいさんが抱き合って英語で会話をし始めた。
…知り合いなのか?
「《俺はまたこの家に住むことにしたからアメリカに戻ってきたんだ。ストリートバスケをしていたら、この子が一人で歩いていて危険だから保護したんだよ》」
「《そうだったのか。すまない。うちの孫が世話をかけたね》」
その流れで、じいさんから雅彦を紹介された。
雅彦は世界で活躍する有名なモデルをしていた。
祖父母の家の隣にある、誰も住んでいないと聞かされていた豪邸が雅彦の家だった。
雅彦は続ける。
「《ねぇコウメイさん、ちょうど良かった。俺は話し相手が欲しいんだ。この子をうちに招待していいかな?一人は寂しくてね》」
「《あぁ、もちろん。ヒカリ、雅彦の家に遊びに行ってきなさい。その方が私も安心だ》」
じいさんも週に4日医者の仕事をして家にいなかったし、姉も弟もアメリカ時代の友人と遊んでいて滞在中は家族で出かけることもほぼ無かったから暇だし付いていくことにした。
玄関のドアを開けると、執事らしき人物が物凄い剣幕で雅彦を怒鳴った。
一人は寂しいと言っていたのに、一人じゃねぇのかよと内心思った。
「《雅彦様っ!また勝手にお一人で出掛けて…!…その少年は誰ですか?》」
「《やぁエリック。俺は忍者になれるかもな?エリックを撒くのが日に日に上手くなっていく。あぁ、この子はコウメイさんの孫だよ》」
「《コウメイ様のお孫さん…?お名前は?》」
名前は?と聞かれて、しばらく黙る雅彦。
そして俺の顔を覗き込んで日本語で問いかけた。
「あぁごめん、名前も聞かずに連れて来てしまった。俺もさっき出会ったばかりでね。君の名前は?」
「…炯」
「ヒカリ…素敵な名前だね。俺は三科雅彦。こっちは執事?マネージャー?俺のお世話係のエリック」
「《はじめましてヒカリ》」
「《はじめまして》」
そしてその執事に客間へと案内された。
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