玄愛-genai-

槊灼大地

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玄愛《雅鷹side》

玄愛《雅鷹side》4

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だから、中学の卒業式の日に告白した。




哀沢くんは驚いていた。



「本気で言ってんのか?」


「本当に好き。大好き」



俺の言葉を聞くなりため息をついて、冷たく返した。





「お前が俺を本当に好きなら受け入れない」


「俺はお前を好きにならない」


「好きなんて言葉聞きたくない」


「好きになったら友達を辞める」





淡々と、静まる教室に冷たい言葉がずらり。




哀沢くんの傍に居られなくなるなら、好きだってことは隠そうと思った。



だから、それからは『好き』って言葉を封印したんだ。



友達でもいい、



傍に居られなくなるなら、気持ちを殺すよ。




「冗談だよ。友達として好きってこと。高校も同じだし、また一緒にいようね」


「あぁ」





本当は恋愛感情の『好き』だけど、



傍に居られるだけで幸せだからこの距離でいいんだ。




それでいいと思ってた。









「つまり片想いっつーわけか」


「まぁね」



高1の時にアヤちゃんとは仲良くなって、「炯と付き合ってんのか?」って聞かれたから答えてあげた。



「好きになったら友達辞めるって言われてるから、どうしたらいいか分からないんだよね」


「意味不明だな。変な奴」




告白も出来なくて、



友達を続けるしかなくて、



本当は好きで、



大好きで、






「好きでいるの苦しいよぉ…」


「な、泣くなよっ!俺だって片想いなんだから」



アヤちゃんも愁ちゃんに片想いをしていた。



だからお互い頑張ろうって言ってたのに、高2の夏に二人は恋人同士になった。



俺だけ取り残された気分になった。



まぁ、二人が恋人同士になれたのは俺も嬉しいんだけど。



「雅鷹、お前このままでいいのか?」


「よくないけど…でも…」




気付けばもうすぐ冬休みで、俺が哀沢くんを好きになって3年が経っていた。



このままでいい。


このままじゃ嫌だ。



色んな感情が葛藤して、毎日苦しくてたまらない。



好きと言えば、友達ですらいられない。



でも告白しないまま、悔いた人生を生きるのも嫌だ。




だから、




どうせ離れるなら、想いを告げて砕けよう。




告白しよう。




また、哀沢くんに想いを告げよう。




そう決意した。




高2の冬。
終業式の日。




学校が終わってから哀沢くんの家に遊びに行った。



哀沢くんの部屋に荷物を置いてすぐに告白した。




哀沢くんは2年前と同じで驚いた顔をしてた。




「冗談だろ?」


「冗談じゃないよ。本気で好きなんだ」




声が震える。



2年前の冷たい言葉が蘇ってくる。



この空間に居るだけで泣きそうになる。









「ならもう、俺に近づくな」






その愛しい目で俺を見つめて、



その愛しい声で俺を突き放す。




あぁ、やっぱり。




結果は見えてたはずなのに。




涙が止まらない。




「こんなに…好き、なのに…大切なのに…」




過呼吸になりそうなくらい、泣いている自分がいる。



今まで我慢してきたことが、涙になって流れる。



こんなに好きなのに、
こんなに大切なのに、



どうして届かないんだろう…







「俺は山田を大切だなんて思ったことは1度も無い」






泣いている俺に容赦の無い言葉。




俺は哀沢くんにとってはただの同級生。




そんなの分かってたことなのに。



俺ばかり好き過ぎて、苦しくて、狂いそうだ。




「俺はお前を好きにならない。同情はしない」





もう道は『諦める』しか無い。



だけど諦めきれない。



だって哀沢くんがこんなに好きなんだ。



君が、



「諦める、から…」





欲しい―…








「だから抱いて。それで諦める」



このままじゃ諦めきれないから、せめて一度でいいから哀沢くんを感じたい。



だから抱いて欲しいとお願いした。




「それで諦められるんだな?」


「うん。諦める」



きっと、諦めることなんて出来ないと思う。



だけどこのまま諦めるなんて嫌だから。




「そしたら本当に友達のまま接するよ」


「分かった」



嘘ついてでも、俺に哀沢くんを刻みたかったんだ。





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