11 / 16
偏愛《ハルカside》
2
しおりを挟む―…あれから2年経っても、俺の想いは変わらなかった
JEESは瞬く間に人気が出て、インディーズNo.1に君臨。
そこらへんのメジャーのアーティストなんかよりも実力も人気もある。
新曲も10万ダウンロード達成。
ということで、JEESのメンバー含めて俺の家でお祝いという名の宅飲みが開催された。
「ハルカさん、飲んでますか?」
ざわついた中、綺麗な声に呼ばれる。
振り返ると予想してた人物が俺を見ていた。
「あ、飲んでるよ。お前は飲まねぇの?」
「飲まない飲まない。明日学校だし」
そう言って笑いながら竜が俺に酒を注ぐ。
「学校じゃなかったら飲んでんのかよ未成年」
「うん。嫌なこと忘れたいし」
『嫌なこと』ってなんだよ。
たくさんの知り合いがいる中、俺は正直言ってこの隣にいる天使にしか興味がなかった。
竜がここに来るって分かった時の俺のテンションの上がりようときたら…
多分、誰にも見せらんねぇ。
ぜってぇファン減る。
携帯番号教えてもらった時は手が汗で滲んだのを覚えてる。
電話だって竜だけ着信音を変えてるくらいだ。
竜に注がれた酒が世界で一番旨い。
「ハルカ、独りぼっちになってる」
「え…?あれ、竜は?」
気付くと隣にいたはずの竜がいなくて、うちのギターの陽がいた。
「帝真なら、携帯持って部屋を出ていった」
「へぇ」
電話、か…
久々に竜に会えたってのに、あんまり会話が出来なかった自分が嫌だ。
よく考えれば、話した内容『飲んでるか飲んでないか』ってことだけじゃねぇか。
緊張なんてガラじゃねぇけど、竜に対しては臆病な自分がいる。
まぁいいや。
そんなんいつものことだ。
会えただけで満足。
…どんだけだ、俺。
「飲も…」
宅飲みが始まって3時間が過ぎ、時間はもう夜の1時になっていた。
酔い潰れた連中は、次々にソファーや床の上で眠りについた。
俺はトイレに行き、酒臭いリビングに戻ろうとした瞬間、竜がまだいないことに気付いた。
リビングにも廊下にもいないとしたら、バルコニーか?
そう思って予測した場所へ行くと、携帯を持ったまま固まっている竜が見えた。
あ、電話してたんだっけ?
「竜、寒いだろ?もう1時…」
ドアを開けて竜に声をかけると、俺がいたことに驚いたのか、竜はびっくりしていた。
「ハルカさ…」
「お前っ…なに泣いてんだよ」
竜の目からは涙が零れていた。
竜は慌てて涙を拭う。
「…もう帰らないとっ」
俺はこの場から逃げようとする竜の腕を掴んで、目を合わせて言った。
「どうした?なんかあったのか?言えよ」
「…ただの『嫌なこと』ですよ」
「『嫌なこと』ってなんだよ?」
「ハルカさんには関係ないですから」
目をそらして、俺から逃げようとする竜の発言にムカついた。
竜にじゃない。
竜に頼られない自分に。
所詮は俺はただの知り合いでしかない。
「ほっとけねぇよ。お前のこと」
「放して…ハルカさんに言っても意味ないことだから。ハルカさんには関係ない」
竜は拭い切れていない涙をためた目で俺を見る。
放っておくほうが無理じゃねぇか。
竜の言葉に更に逆上した俺は、バルコニーを出て目の前にある俺の部屋へと強引に竜を連れ込んだ。
「俺には関係ない…か」
部屋に入るなり竜をベットの上に押し倒して、馬乗りになって無理矢理キスをして。
「んっ…や…」
竜はジタバタと抵抗するが、俺の力にかなうはずもない。
「なら竜、言わなくていい。そのかわりに今だけ『嫌なこと』忘れさせてやるよ」
「やっ…!ハルカさ…んっ」
酔っていたってのもある。
ただ、俺は正気だ。
竜が好きだ。
その想いだけで今ならがむしゃらになれる気がした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
牧場でイケメンマッチョと乳搾り‼︎
たんぽぽ
BL
主人公は、農学部に通う大学生2年生。
実は、超がつく程のドMだ。
そんな主人公が研修先で訪れた牧場で、ドSなイケメンと真夏のエッチな牧場体験…!?
割とストーリーやシチュエーションがメインな作品です。SMや変態プレイが好きな人にもおすすめです!
読みやすいように、更に文体や内容を少し整えました。
お気に入りしてくれると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる