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囚愛Ⅲ《雅side》
囚愛Ⅲ《雅side》1
しおりを挟む卒業式が終わってプロポーズしようとしたその日、枯れた白い薔薇を残してエリックは姿を消した。
「母さん!エリックは!?」
「あなたが卒業したら離れる、そういう契約よ」
「そんなはずない、エリックは…俺を…」
俺の愛を知っていて、黙って消えた?
誕生日もあんなに喜んでくれて、あんなに抱き合ったのに―…?
「私は雅の傍にいて欲しいとお願いしたわ。でも離れたいと、契約を終わりにしたいと申し出たのはエリックよ」
「嘘だ!そんなはずない!」
母さんを責める俺を見かねて、テリーが契約書を見せる。
愛しいエリックのサインを見て、ようやくエリックが俺との執事契約を終了させ、離れたことを理解した。
「そんな…」
みんな俺の気持ちを知っていて、エリックが離れて行くのを隠してたってことなのかよ…
1年目は悲しみで溢れ、2年目は怒りが渦巻いた。
そして3年目の今は…生きて幸せでいてくれればいいと思えるようになった。
そして俺は附属の大学に進学し、この3年間ダンスに没頭した。
「ドイツ語なんて専攻して…バカみたいだなぁ俺」
父さんが英語と日本語しか話せないから、小さい時から俺たちの会話は英語中心だった。
たまにエリックがテリーとドイツ語で会話している姿を見て、俺もエリックといつかドイツ語で話せたらいいななんて思ったりして…
なーんでドイツ語なんて専攻してんだか。
もう3年も経つのに。
もう会えないかもしれないのに。
未練ありまくりじゃん。
…どうしてエリックは俺から離れたんだろう。
俺が子供だから嫌だったのかな?
無理矢理抱いてたから?
愛が重かった?
好きな人が出来た?
だから何も言わずに去ったのかな。
あぁ―…たまにくる病み期だ今。
でもいい、俺から離れたことで今エリックが幸せなら。
それでいい。
それでいいと思うことにしたんだ。
とりあえず今はダンスに没頭するんだ。
「アメリカで世界大会?」
「そう。半年後に開かれる。優勝賞金は10万ドル。審査員もすごい人たちがくるぞ。予選エントリーしといたから」
「ありがとうございます」
ダンスの先生にそう言われ、予選を突破し、大学4年の4月29日に大会に出場することになった。
大会の1ヶ月前になったら、先生の知り合いの世界的に有名なダンサーを講師にして練習をするためにアメリカに行くといいと勧められた。
そのことを母さんとテリーに報告して詳細を見せた。
「あら、この場所…雅彦のアメリカの屋敷から近いわね」
「父さんの?」
「ええ、雅彦が生まれて育った場所。今そこに住んでもらっている知人がいるの。1ヶ月だけホテル代わりにさせてもらうよう連絡しておいてテリー」
「かしこまりましたソフィア様」
偶然、大会の場所とダンサーの練習場が父さんの屋敷から近いことが判明した。
父さんの生まれて育った場所かぁ…楽しみだなぁ。
「すごいねー、世界大会って」
居酒屋で久しぶりに竜と嵐と報告がてら飲むことになった。
二人とも俺の大会出場を喜んでくれた。
「ずっとダンスばっかやってきたからね。この3年は今まで以上に」
「エリック…どこにいるんだろうな?」
嵐がビールを飲みながら俺に問いかける。
「さぁ…探偵雇っても日本にはいないだろうって」
あれから何度もテリーを通じて探偵を雇った。
でも日本にはいないという回答で、あとは見つからずにいた。
「もしさ、今ばったりエリックに会ったらどうするの?」
竜は度数の高いカルーアミルクを飲みながら俺に問いかける。
ばったりエリックに会ったら?
そんなの考えたことなかった―…
「うーん…そうだなぁ。とりあえず習ったドイツ語で“勝手にいなくなるなよバカ!”って胸ぐら掴んで怒鳴るんじゃないかな?」
「雅のことだから、怒れなそうだよね」
「それな」
俺の発言を信用しない親友二人。
俺はそんな二人を軽く睨みながらハイボールを一気飲みして、グラスをドンッとテーブルについて言った。
「いや!怒るよ俺は!絶対!だってプロポーズしようと帰宅したらいなくなってんだもん」
「確かに…それは辛いよね。ずっと好きだったもんねエリックのこと」
竜が対面にいる俺の頭を撫でて慰める。
俺たちに隠して高3の夏に結婚してた人妻め…
薬指に指輪を光らせてる幸せそうな左手で俺の頭を撫でるなー!
と言いたいけど、でももういいんだ。
「まーとにかく、エリックがいなかったおかげで世界大会に行けたんだと思うようにするよ。ポジティブに、さ」
エリックが生きてて、今幸せならそれでいい。
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