囚愛-shuai-

槊灼大地

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囚愛Ⅲ《エリックside》

囚愛Ⅲ《エリックside》3

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―翌日―





空港まで迎えに行こうとしたが、少し観光をしてから行くと言われて自宅で待つことにした。




テリーとソフィア様にこのネックレスを身に付けていることが知れたら未練がましいと思われるだろうか。




二人がアメリカにいる間は、このネックレスを閉まっておこう。




そう思いネックレスを外し、二人が来るのを待った。





夕方、玄関のベルが鳴りインターホンを確認するとテリーの姿が見えた。



「“俺だ、開けてくれ”」


「“テリー、今開ける”」



ドアを開け、二人を招き入れる。



「“久しぶりだなテリー、ソフィア様も…”」




テリーの背後にいるソフィア様を見つめ、言葉が詰まった。




それがソフィア様ではないことは一目で分かった。




テリーと同じぐらいの背丈をした青年。




その青年はアンバー色の綺麗な瞳で、驚いた顔で私を見つめて言った。








「…エリック?」








まだ肌寒い夕風に靡いたサラサラの赤い髪



幼少時代から何度も聞いていたその声




あぁ、なぜ―…






「雅様…」






なぜあなたがここにいるのですか?





「エリック…元気だった?」



「…はい」



雅様も私と同様に驚いた顔をしているということは、ここに私がいることを知らなかったのか。



私は直ぐ様テリーを睨んだ。



「4月29日にダンスの世界大会があってな。雅様が出場する。まぁ日中はダンスの練習で専属のダンサーと練習をするから寝泊まりのみという感じだが」



「テリー、エリックに言ってなかったの?とても驚いてるよ。だったら迷惑だし、ホテルに滞在しよう」



私の表情を見た雅様が気を遣ってその場を離れようとしていた。






あの日から日本語を話すことなどなかったのに、未だに忘れていないことに自分でも驚いた。





あぁ、雅様―…




3年も経つのに変わらない。



その瞬間、雅様の左手の薬指には指輪が光っていることに気付いた。





よかった。




この3年で、私以外に大切な方を見つけたのですね。





あなたがもう私に興味が無いのであれば、心置きなく一緒に居れる。





「いえ、雅様。私は構いませんよ。ここは雅彦様の家ですから、きっと雅彦様も喜んでいます。1ヶ月だけよろしくお願いします」




そう私が言うと、雅様はテリーに荷物を預けて即座に家にあがった。




「エリックー!これ父さんの写真?エリック若いー」


「母さん可愛いー」


「父さんの部屋はー?」





はしゃぐ雅様が可愛い。




4歳までしか雅彦様との思い出が無いのだ。




ましてやこの家は雅彦様が幼少時代より住んでいる場所。




「生まれたばっかの俺?小さいなー!」




勝手にいなくなって怒ってると思ったのに。



数年離れてもいつもの雅様だ。



私は安堵して、雅様と共にルームツアーをした。










「“エリックーーー!!”」




雅様とルームツアーをしていると、階段を駆け上がって私の元へ泣きながらアルがやってきた。



「“エリック、昨日は本当にごめん!”」


「“アル!…帰ってくれ!というかなぜ家に上がれた?”」


「“俺が開けた”」


「“テリー…”」




アルベルトが玄関前で昨日のことを泣きながら謝っており、テリーはその姿を見てドアを開けずにはいられなかったと言った。



「“俺からも許してやってほしい”」


「“テリー”」


「“謝っている理由を深くは知らないが、エリックがこんなに怒るなんて…アルベルト、お前エリックを襲ったか?”」



テリーは笑いながらそう言いってアルを見ると、アルは昨日のことを思い出したのか俯いて肩を落とした。



「“……ごめん”」


「“ははっ、図星かよ。許してやってくれよエリック。親友からの頼みだ”」



「“…もう二度とするなよ”」



まぁあれは酒のせいでもあるし。



こんなに泣いて反省して謝っているし。



ため息をつきながら許してやると、嬉しかったのかアルは私を抱きしめて喜んだ。



「“ありがとうエリック!!―……彼は?”」



喜んで私を抱きしめたアルが、雅様を見つけて言った。



「“以前の主だ”」


「“…へぇ。つまり、三科雅彦Jr.ってこと?顔が似てるねぇ…って話し通じてる?”」


「―…」


「“アル、雅様はドイツ語は話せないんだ。日本語か英語かフランス語が話せる”」




アルは私から離れ、雅様に跪いて顔を上げ、英語で自分を紹介し始めた。




「《僕はアルベルト・クラウゼ。エリックの同僚で執事学校時代の同級生です。アルとお呼びください三科雅彦Jr.様》」


「《―…Jr.じゃなくて雅だよ。よろしくね、アル》」



「《ふふ。よろしく雅》」



そう言って二人は握手をして、数日経つ頃には意気投合し、仲を深めていた。


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