囚愛-shuai-

槊灼大地

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囚愛Ⅱ《エリックside》

囚愛Ⅱ《エリックside》7

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「今回は俺の負けだなぁ」



地球の滅亡に勝てなかったと嘆きながら、体力を無くし、腕枕をしている手で私の短くなった髪を撫でる愛しい主様。




「雅様」


「ん?」


「実は明日から2週間、ドイツ校のリモートの会議が増えることになりました」



毎年この時期になると、来年度からの生徒のランク決めや編成を行う。



「時間は?」


「こちらの時間で0時~深夜2時です」



だから、この時期になると気を遣って雅様は私を抱かなくなる。



「執事学校も卒業認定とかクラス選定の時期なんだね」


「ええ。ですから卒業式が終わるまではセックスを禁止にしたいのです」





この2週間で完璧に荷物を整理し、あなたから離れる準備をしなくてはいけない。



怪しまれずに、あなたから離れる準備を―…




「確かに深夜2時から抱くのは次の日が大変だしね」


「申し訳ございません」



私の想いが伝わらないように必死にいつもの自分になりきるのが精一杯で。




あぁ、雅様―…



あなたの温もりは感じるのに、
あなたに触れられそうで触れられない。



これが夢ならば、
あなたに「愛してる」と伝えてハッピーエンドで終われるのに。



考えるだけで目の前がぼやけそうになる。



「大丈夫だよ。頑張ってね」


「ありがとうございます」



もう、魔法は解けてしまった。
とても幸せだった。


あなたに愛され
あなたで満たされ
これ以上ないくらいに幸せだった。




―…愛しています、雅様










―3月10日―



「雅様、ご卒業おめでとうございます」



朝、学校へ行くために玄関で靴を履いている雅様を呼び止め、プレゼントを渡す。



「卒業祝いです」


「学校から帰ってきてからでもいいのに」



用事があるから送迎が出来ないと伝えていたが、本当の理由は飛行機の時間が2時間後だから。



「…早くお渡ししたかったので」


「ありがとう。開けてもいい?」



雅様は私が頷いたのを確認して、中身を開ける。



「素敵なコートだ…今日着てく」



そう言って俺はすでに着用していたコートを脱いで私に渡し、プレゼントされたコートを着てくださった。



「お似合いです」


「ありがとう」


「雅様、そろそろ行きましょう」


「ああ。ごめんねテリー」


「エリック、帰ってきたら高級ディナーを食べよう」




テリーは雅様から今日のプロポーズのために色々なことを手配して欲しいと頼まれていたと教えてくれた。



「それでも離れるのか?」と問われ、決心が変わらないことを伝えると、テリーは雅様には手配をしたフリをして、何の予約も手配もしなかった。



私が今日アメリカへ旅立つため、その手配が無駄になってしまうことを知っているから。



「―…楽しみにしています。いってらっしゃいませ」


「いってきます」



笑顔で学校へ向かう雅様の背中を見つめ、学校へ向かったことを確認し、自分の部屋へと戻った。



あなたが10歳のとき、初めて私の誕生日にプレゼントしてくださった白い薔薇。



そして翌年もその翌年も私に白い薔薇をプレゼントしてくれたことが嬉しくて、枯れた白薔薇を花瓶に保管して大切にしていた。




今年で11本になった白い薔薇も全て枯れてしまった。




もう来年からはプレゼントされることはないのか…と無意識に枯れた花びらを触りながら思った。



そして手書きのメッセージカードと、花瓶に入っている11本の枯れた白薔薇をその隣に置いて荷物を持って部屋を出た。














「元気でね、エリック」


「はい、ソフィア様。今までお世話になりました」


「…」


「テリー?」


「気持ちは変わらないのか?」


「あぁ。変わらない。雅様を頼んだ」



最後までテリーは納得いかない表情をしていたが、握手をして14年間過ごしたこの大きな屋敷を後にした。




あぁ、雅様…
どうか私を忘れて
そして幸せになって下さい



いつか私との思い出が、
笑い話になるように…



あなたを包んでくれる人と出会い、
あなたが幸せになりますように…



私ではない、他の誰かと―…



無意識に流れる涙を拭うこともなく
早くこの国を離れたくて
雅様から離れないといけなくて
足早に空港へと向かった。




さようなら…




もう二度と逢うことの無い、私が愛した主様。



―…どうか、お元気で



【to be continued】


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