31 / 99
囚愛Ⅱ《雅side》
囚愛Ⅱ《雅side》1
しおりを挟む今年は君に、11本目の白い薔薇を―…
高3になったある日の出来事。
「ねぇ雅、お願いがあるんだけど」
「ん?」
久しぶりに学校にきた人気バンドJEESのヴォーカルで同級生の帝真竜が俺に話しかけた。
インディーズだけど新曲はいつもTOP10にランクインしてるすごいバンド。
「学園祭でさ、JEESのライブをやるじゃん?その全15曲の振り付けを考えてうちのダンス部の3年生と踊ってくれないかな?」
「え?」
「うちのダンス部、全国1位とったしさ、アピールしたいんだって」
確かにうちのダンス部は毎回全国5位以内に入っている。
俺はエリックといる時間を大切にしたいのと、三科雅彦とソフィア・フローレスの息子だとバレないように過ごしたいからダンス部とは関わっていないのに。
「でも俺はダンス部じゃないよ?」
「ダンス部のみんな、雅の振り付けが好きなんだって。俺も雅が考えてくれたサビだけ踊りたいし、ダメ?」
そう言われたのは5月。
そして文化祭は9月。
夏にU-18の大会もある。
確かに振り付けを考えるのは楽しい。
でも団体の振り付けを考えたことなんて無いし…スケジュールがハードだよなぁ。
「ダンス部の先生が考えた振り付けじゃダメなの?」
「ダンス部の皆は、雅を尊敬してるから最後に思い出作りたいんだって」
「そうなんだ…じゃあ、やってみようかな」
俺も最後ぐらいはダンスが好きな同級生と思い出を作りたいと思った。
JEESのセットリストをもらい、帰宅してから音楽を聴いて振り付けを考える。
音楽、歌詞を理解してもっといい振り付けを考えたいと思った。
歌詞の意味、この時の心情が知りたい。
「エリック、毎週金曜日は家に帰らないで、そのまま学園の寮に泊まるから。竜と打ち合わせしたくて」
「打ち合わせ?」
「そう。土日は寮にいるみたいでさ。実は―…」
俺はエリックに文化祭の話をした。
エリックはとても嬉しそうな顔で俺の話しを聞いてくれた。
「お友達と思い出を作る。最高ですね。夏にはU-18の大会もありますし、忙しいとは思いますが応援しています」
「ありがとう」
JEESの歌詞は全て竜が書いている。
基本的にバンドサウンドでバラードは1曲しかない。
歌詞を知れば知るほど振り付けが思い付く。
より一層、最高のものになっていく。
そんな生活を続けて2週間。
文化祭は9月。
全員に振り付けを指導するのに…通いじゃ足りない。
「雅、竜、ダンスいい感じ?」
同じクラスの嵐が休み時間に俺たちに話しかける。
「いい感じなんだけど…さすがに通いながらは無理かも」
「そっか」
そもそも学園の生徒の9割が寮に入っている。
ダンス部の3年生は全員寮だ。
家が近いとはいえ夜遅くにエリックに迎えに来てもらうのも悪いし、移動時間も勿体無い。
そして朝も夜も練習したい。
「俺も寮だったらなぁ…」
「じゃあさ、自由寮使えば?竜と同じ部屋で」
嵐が最高の提案をする。
自由寮とは、軽くいうと寮に入っていない生徒が寮を使うこと。
通常の寮費よりは少し高いが、洗濯等もしてもらえるし、通いだけど夜遅くまで残りたい生徒はよく利用している。
「あ、いいじゃん。俺の部屋広いし、同室なら打ち合わせもしやすいよ」
「自由寮か。それ最高だわ。申請って簡単だっけ?」
「簡単だよ。あとで申請書印刷してくる」
嵐は生徒会役員だから、この学園の仕組みをだいたい把握している。
嵐は高等部から編入してきたのにな。
(俺は中等部から)
ゲームばっかりしてるのにな。
(登録者数50万人)
でも学年トップだし。
(脳の作りが違うんだろうな)
読モもしてるぐらいイケメン。
(親が芸能事務所の社長だからコネかもな)
―…ん、軽く親友dis?
「というわけで、U-18大会が終わったら文化祭までの2ヶ月間、竜と同室の自由寮に住むから」
「そうですか。頑張ってくださいね」
そしてU-18の大会は優勝し、7月半ばから竜と同室の自由寮に入ることになった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる