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序章《エリックside》
序章《エリックside》1
しおりを挟む三科雅彦様の専属執事になったのは、私が16の時だった。
「《エリック・ブラウンです。本日より父の代わりに雅彦様のお世話をさせていただきます》」
「《よろしく、エリック。綺麗なブロンドの髪だね》」
タールの高いタバコを吸いながらそう言って、私に握手を求めてきた20歳とは思えないほどの風格と色気を持った主様。
「《ありがとうございます》」
「《エリック、年はいくつ?》」
「《16です》」
「《そうか。俺と4つしか変わらないなんてまるで弟みたいだ。俺は兄弟がいないから仲良くしてくれるかな?》」
紫色のサラサラした髪と
綺麗なオッドアイの青い目と緑色の目
見つめられると、それだけで吸い込まれてしまいそうだ。
「《兄弟ではありません。私はあなたの執事です》」
「《ははっ。堅いねぇ。君の父親そっくりだな》」
私の家系は代々アメリカの資産家であるフレーデル家に仕える執事をして100年以上経つ。
雅彦様はその資産家の末裔であるジェフ・フレーデル様とその愛人である日本人女性、三科百合亜様との子。
つまり、妾の子である。
ジェフ様の本妻であるコルビナ様の逆鱗にふれて、アメリカにある1000万ドルの価値がある屋敷と手切れ金5000万ドルを渡され縁を切られた。
しかし縁を切ったはずなのに、ジェフ様は百合亜様を愛していた。まるで本妻かのように。
だからジェフ様は、執事の中でもトップクラスであるブラウン家の者を百合亜様と雅彦様の執事として任命した。
その任命された執事が私の父。
父は百合亜様と雅彦様に遣えていた。
しかし私の母が重病で体調が悪くなり、母を愛してる父はずっと母の傍に居たいと申し出、執事学校を卒業したばかりの私が雅彦様の専属の執事となった。
「《最低でも卒業まで12年はかかる執事学校を8年で卒業したんだって?俺にはもったいないな。別の人の執事になりたいと思わないの?》」
「《任命されましたので》」
私だって本当は、こんなマイペースで執事を振り回す主様は御免だ。
しかし実技ではこういうパターンも熟知していたのでこなすのは容易。
「《雅彦様、明日はタヒチでの撮影、7日後は帰国してニューヨークでの撮影です》」
「《エリック…働かせすぎだよ》」
「《仕事ですから》」
「《あー、分身したいなぁ。忍者になれるかなぁ。知ってる?Japanese 忍者》」
そう笑いながら大好物のマスカットを口に運ぶ。
そんな冗談にも慣れ、雅彦様の執事になって3年。
雅彦様は今やアメリカ大陸では人気のモデルとなっていた。
そのスケジュールは凄まじい。
「眉間にシワがたくさん。眉毛がくっつくぞエリック?もう少しリラックスしたらどうだい?」
―、日本語か…?
「《雅彦様、今何と仰ったのですか?》」
「《優秀な君も日本語は分からないのか。唯一君に勝てそうだ。君も日本語を覚えるといいよエリック》」
「《必要ありません》」
「《俺は母が愛した日本が好きなんだ。だから忘れたくない。絶対に》」
そう言われると弱い。
なぜなら百合亜様は雅彦様が10歳の時に亡くなってしまったから。
コルビナ様が警察を洗脳し、百合亜様がネグレクトをしていると偽りの報告をされ独房に容れられて。
雅彦様が死んだと合成写真の遺体を見せつけられて、精神的におかしくなってしまった百合亜様は独房で命を絶ったのだ。
―…その日から雅彦様は、コルビナ様に復讐するためだけに生きている
「《―…時間をかけて勉強します》」
「《ありがとう!楽しみにしているよ》」
だから私もその復讐に協力するのだ。
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