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エゴイズム
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しおりを挟む「!―ここ…」
着いた先は生徒会室。
別に何処でもよかったんだ、愁弥を閉じ込められるのなら。
ずっとずっと閉じ込めて
俺以外、何もかも忘れてしまえばいい
「グズグズすんな、入れ」
強引に促しても愁弥の顔は強張るばかり。
先刻よりも激しく抵抗を始めた
「っ、な、どうしたんだよ!」
暴れる愁弥を何とか室内へと引きずり込むが一向に落ち着く気配はなく。
「やだっ、い、やだ―!」
嫌だ、と
ただそれだけを馬鹿みたいに繰り返して―
そんなに俺が嫌なのか
馬鹿だな、
どんなにお前が嫌だと言っても放してやる気はないと言うのに
「何が嫌だ、そんなに俺が嫌か」
今、持ち得る最大の優しさで問うがそれが逆に恐怖心を煽ってしまったらしい。
「や、いやだ!―ごめん、ごめんなさ、」
今度は涙をボロボロと流しながら謝りだした。
愁弥が流す涙に比例して俺の心がじくじくと痛み出す。
お前は俺の事が好きでなきゃいけないのに
俺が想うよりももっともっと
「―なぁ、俺の事好き?」
耳元で囁いて
唇をその綺麗な首筋に滑らせ。
ぼやけてしまっている愁弥の視界に俺を映させた。
「っ、や、ぁ―」
泣きすぎて過呼吸になっている唇を奪って
もっともっとお前の意識を奪いたくて
このキスでお前が意識をなくすのならそれも有りだと思った。
「は、あ―」
何度も何度も口付けて
お前が好きだと言ったこのキスで―
「りょ、―ごめ、ごめんなさ、い―」
嫌、から一転して今度は謝罪するばかり。
ごめんなさい、と
何に対しての罪の意識か―
今更になって冷静になれた。
ただ顔を背けて
閉じた瞳からは涙を
その唇からは
ごめんなさいと。
「―、しゅう?」
頬に添える俺の手にすら体を震わせ。
―何をそんなに恐れている?
「―、」
何かあったのだと思った。
いや、何かあったのかなんてとっくに気付いていた。
聞けない
でも聞きたい
話せ、愁弥
「ごめ、―嫌いに、ならないで―」
嫌いになんてなるもんか
だから、
「ルイ、に」
ルイ、という単語が出てきたことにまた愁弥を滅茶苦茶にしてしまいそうだった。
何かと愁弥に付き纏っていたあの真面目野郎だ。
愁弥が言いよどんでいる。
大体この先に言う事は想像出来る。
「ここ、で―俺、」
だからあんなにも拒んでいたというのか
だから―
不思議とかなり冷静な俺がいた。
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