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35ビキニアーマー2

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 予想以上に楽しく実験していた私たちだったが、途中でちょっとした異変が起こった。

 四着目に装備したビキニアーマーに炎を当てられると、いきなりブンッと震えたのだ。

「あんっ」

 ビキニアーマーは胸や股間を覆っている。思わず変な声が出てしまった。

「ん?どうかしたか?」 

「い、いえ……なんかアーマーが振動した気がして」 

「なに?」

 ドヴェルグさんは測定用の機械をあれこれ調べ、それからまた私に炎を当てた。

 すると、やはり振動するのだ。

「んんっ……」

 私はまた声を漏らしてしまった。

 ドヴェルグさんは機器の一つをじっと見つめていたが、しばらくして顔を上げた。

「うーむ……どうやら鎧の魔素の波長が初めと変わっておるようじゃ」

「波長が?……っていうと、どういうことですか?」

「装着者の魔素に波長を合わせる仕様なのかもしれん。その方が魔素の使用効率は上がるからの」

「それで共振が起こって振動してるってことですか?」

「そうじゃな。今後は攻撃を受けて魔素が使用される度に振動するじゃろう」

「ぇえ?」

 そ、それは困る。まだまだ実験は続きそうなのに。



 それを聞いたリンちゃんとカリクローさんはクスクスと笑っていた。

「いいじゃないですか、私はクウさんの可愛い声が聞けて満足ですよ?」

「きっとその鎧もクウちゃんのこと好きになったのよ」

「二人とも……他人事だと思って」

 私は二人のことを上目に睨んだが、炎を浴びる度にそれどころではなくなってしまう。

「あっ……やぁ……はぁん……」

 それを見てまたクスクスと笑う二人だったが、自分たちの番が来て立場が逆転した。

 なんと、二人のビキニアーマーで同じように共振が起き始めたのだ。

 攻撃を受ける度、神経をくすぐる絶妙な振動が体を襲う。

 二人はその快感に声を漏らしながら身悶えしていた。

「キャッ……やんっ……んん……くぅん……」

「ひゃっ……うんっ……あぁん……ふぅん……」

 二人とも良い声出すなぁ。しかも表情も良い。耳福眼福。

 とはいえ、これは魔道具として問題ではなかろうか。なんか攻撃を受けると感じるドエムさんみたいに見えちゃうし。

「ドヴェルグさん……この鎧ってちょっと使用に難がある気がするんですけど」

「むぅ……確かに厄介な気もするが、防御性能はむしろ優秀な部類じゃからな。まぁ、振動するくらい大したことではなかろう」

 そうかなぁ。

 着てる側としては戦闘中にめっちゃ気が散るんですけど。

 しかもこの後着替えたビキニアーマーは全て、しばらくすると攻撃で振動し始めた。三人とも口からアハンウフン漏れまくりだ。

 私たちはどこかピンク味を帯びてしまった実験をこなしていき、顔を真赤にしながら何とか全ての検証を終えた。

「あー、ようやく終わったぁ」

 リンちゃんは背伸びしながら更衣室へと入った。

 後は着替えたらもう帰れる。

「本当にありがとう、助かったよ。カリクローさんもお疲れ様でした」

「お疲れ様。でも良かったわ、無事に終わって。ドヴェルグさんもなかなか受け手がいない仕事が片付いたって喜んでたし」

「そうですね」

(あと、なんかすごく気持ち良かったし……二人のハァハァなところも見られたし……)

 共振というトラブルはあったものの、仕事自体は無事に終わった。

 私はそういう色々な満足を覚えながらビキニアーマーを脱ごうとした。

 が、なぜか脱げない。

 金具が外れなくなっていた。

「あれ……?なんでだろう?」

 カチャカチャいじってみるが、どうしても外れないのだ。

 そして、それは二人のビキニアーマーも同じだった。

「クウさん、なんか脱げなくなっちゃったんですけど」

「私もよ。どうしたのかしら?」

「え?二人のも?魔道具だし、何か外し方があるのかな」

 もしそうなら考えても分からないので、私たちはドヴェルグさんの所へ向かった。

 そして、返ってきた返答はなんだか恐ろしい単語だった。

「むう……これは呪いじゃな」

「ええ!?の、呪い!?もしかして、一生脱げないんですか!?」

 なんてこったい。

 このセクシービキニアーマーは嫌いじゃないけど、一生これで過ごせと言われたらさすがに困る。

 が、ドヴェルグさんは軽く笑って補足した。

「いやいや、呪いと言ってもそんなに恐ろしいものじゃない。装着者と魔道具との相性が良すぎる時にまれに起こる現象で、解決方法もある」

「じゃあ脱げるんですね?」

「うむ、外し方はそう難しくはない。自分の魔素がかなり少なくなるまで魔道具に魔素を込めるんじゃ。それによって魔道具も満足するし、装着者の魔素が減れば魔道具にとっての魅力も落ちるというわけじゃな」

「なるほど……確かに難しくはないですね。やってきます」

「ほれ、魔素の補充薬を持って行け。難しくはなくても魔素切れはしんどいからの」

 私たちは更衣室に戻り、言われた通りを実行した。

 が、すぐに問題が起こる。

「「「あんっ」」」

 三人揃って同じ声を上げてしまった。

 ビキニアーマーに魔素を送ると共振で振動が起こり、いい感じに責められてしまうのだ。

 リンちゃんがビキニアーマーにコツンと拳骨を落としながら苦笑した。

「まったく……イタズラっ子の鎧なんだから」

 カリクローさんも困ったように笑っている。

「でも、どうしようもないわよね。脱げるようになるところまでやらないと」

「ですよね。頑張りますか」

 本当にどうしようもない。

 私たちには他に選択肢がないので頑張って魔素を込め続けた。

 それによって絶妙なブルブルが起こり、敏感なところを襲い続ける。

 更衣室には振動の低音とともに、私たちの押し殺したような声が響き続けた。

「んんっ……あぁん……ふぅ……んくっ……」

「やんっ……ひゃっ……あぁ……んんん……」

「きゃんっ……はぁっ……はぁん……やぁ……」

 三人とも声が我慢できないくらい気持ちいい。

 そして互いのいやらしい様子がさらに興奮を増加させ、私たちは気づけば同時に昇天していた。

「「「……くぅぅんっ」」」」

 事後のハァハァという吐息、そしてカチャカチャと金具が外れる音だけが更衣室に響く。

 三人とも互いが昇天してしまったことに気づいているから、妙に気恥ずかしかった。

 その空気をなんとかするためか、リンちゃんがやたらと明るい声を上げた。

「よーし、じゃあ帰りましょうか!帰りに何か甘いものでも食べて……って、あれ?クウさん、脱がないんですか?」

 そう、私だけはまだビキニアーマーを着ていた。

 別に好きで着ているわけじゃない。脱がないんじゃなくて、脱げないのだ。

「ご、ごめん。私はもうちょっとかかりそう」

 私の金具だけが外れない。その理由にも心当たりがあった。

(昇天で魔素が回復しちゃったから、私だけ魔素量が少なくなってないんだ……)

 恐らくそういうことだろう。

 二人はかなり魔素を減らしたようだが、私だけはまだまだ余力がある。ビキニアーマーにとって魅力的な装着者であり続けているのだ。

「ふ、二人は先にドヴェルグさんのころに行ってお茶でもしててくれないかな?少し時間かかるかもだし」

 やはり見られながら今さっきのを再開するのは恥ずかしい。

 二人ともそれは理解してくれたから、そそくさと出て行ってくれた。

「クウさんは私たちより魔素量が多いですもんね。じゃあそうさせてもらいます」

「多分大丈夫と思うけど、魔道具相手だし何かあったら大声を上げるのよ?」

(声は上げると思うけど、多分助けを呼ぶ声じゃないです……)

 二人が出ていったのを見送ると、私はあらためてビキニアーマーに魔素を送った。

 ヴーン、という音でまた快楽の旅が始まってしまう。

 しかし、気持ち良くなってはいけないのだ。昇天するとまた魔素が回復してしまってエンドレスになる。

「ん……んん……んんんっ」

 私は必死に自分の神経を抑えた。

(気持ち良くない……気持ち良くない……全然気持ち良くなんて……ないんだからねっ!!)

 などと思いながら、見事に昇天してしまった。

「はぁはぁはぁはぁ…………どうしようこれ……そういえば、素数を数えたらいいんだっけ?」

 それによって気が紛れ、昇天を遅らせることができると聞いたことがあった。

 その作戦で頑張ってみる。

「よし……一、三、五、七、十一、十三、十七、十九、二十三……えーっと……はぅんっ!!」

 が、やはり昇天してしまった。

「はぁ……はぁ……はぁ……もうヤダこれ……」



 結局私がビキニアーマーを脱げたのは、二人がお茶の三杯目を飲み干した頃だった。


***************


☆元ネタ&雑学コーナー☆

 ここから先は筆者が話の元ネタなどを気の向くままに書き記しているコーナーです。

 本編のストーリーとは関係ないので興味ない方は読み飛ばしてください。


〈ビキニアーマー〉

 鎧としてはもはや荒唐無稽(笑)なビキニアーマーですが、ファンタジー作品ではむしろお馴染みの衣装になっています。

 あまりによく見かけるので、

(もしや過去に実用されていたのでは?)

と思って調べてみましたが、やはりそんな訳はないようです。

 まぁどう見ても鎧の用は成していませんもんね。

 架空の衣装としての起源もはっきりしないようで、少なくとも1940年代にはビキニアーマーっぽい格好の女性の絵が描かれた書籍があったそうです。

 第二次世界大戦後すぐくらいですから、かなり昔ですね。

 要は、今も昔もこの格好が好きな人は多いということなのでしょう(笑)


〈素数〉

 素数とは、1と自身以外の整数では割り切れない数のことです。

 これを小さいものから順次挙げていくと分かるのですが、数字が大きくなればなるほど素数同士の間隔は長くなる傾向にあります。

 自分より小さい数字が増えれば割り切れる可能性も増えますから、当たり前のことですね。

 つまり大きな数字になればなるほど素数に該当しにくくなるわけです。

 では、最も大きな素数はいくつなのか?(素数は無限にあるので正確な最大はなく、『素数であることを確認済みの数』という意味で)

 2021年の段階で確認されている最大の素数は『2の82589933乗マイナス1』らしいです。

 いまいち想像しづらい数字ですが、十進法で記載すると桁数が『2486万2048桁』になります。なんと二千万桁オーバー。

 何がすごいって、こういうのを頑張って弾き出そうとする人間の好奇心、チャレンジ精神がすごいですよね。

 必ずしも『役に立つこと』に囚われない精神性は、人生を楽しむためには大切なものかもしれません。


***************


お読みいただき、ありがとうございました。
気が向いたらブクマ、評価、レビュー、感想等よろしくお願いします。
それと誤字脱字など指摘してくださる方々、めっちゃ助かってます。m(_ _)m
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