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07ミノタウロス1
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(何あれ……誘ってるのかしら?)
私はたくましい筋肉に覆われた逆三角形の上半身を眺めながら、そんなことを考えた。
雄々しい。一言で言ってしまえばそういうことだ。
服の上からでも筋繊維の盛り上がりを視認できそうなその肉体は、オスとしての魅力を溢れさせている。
そしてそれは筋肉美だけではなく、頭部に生えた二本の雄々しい角もそうだった。
過剰なまでにオスを強調するそれらのパーツは、もはやメスを誘っているとしか思えない。
「うちの店自慢のビーフステーキだ。鉄板が熱いから気をつけろよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
私が見とれていた雄々しい肉体は、手に持っていたステーキの皿を意外なほど丁寧な動作でテーブルに置いてくれた。
彼はこの店の店主である、ミノタウロスのアステリオスさんだ。
(ミノタウロス……)
牛の頭部を持つ半人半牛の種族だ。
実際の牛も大きくて強そうだが、アステリオスさんもまんまそのイメージ通りの人だった。牛の中でもとりわけ闘牛の部類だろう。
「お~。店長が直に給仕するなんて、その子のことが気に入りましたね。相変わらず女好きなんだから」
そうやってアステリオスさんを茶化したのはウエイトレスの女の子だ。
結構大きい店なので、何人ものウエイトレスがいた。
「はっはっは!そうとも、俺は女好きだ!だからお前たちみたいなべっぴんばかり雇っている!」
アステリオスさんはその大きな体に見合った声量の笑い声を上げた。
アステリオスさんの言う通り、ウエイトレスの子たちはみんな顔立ちの良い子ばかりだった。
ただ、私としてはその顔よりも、全員に一致したある共通点のほうが気になった。
(牛娘さんたちだ……ミノタウロスのアステリオスさんと並んでると、この世界の種族のことがよく分かるな)
ウエイトレスは全員が牛娘だが、ミノタウロスではない。
頭についた角や耳、尻尾などは牛のそれだが、他のパーツはすべてヒューマンと変わりないものだった。
(キメラか……本当にいろいろな種族がいるんだ)
この世界には牛娘のウエイトレスさんたちのように、体の一部分だけが他の動物になった『キメラ』と呼ばれる種族がいる。
一言に『牛とヒューマンとが混じったような種族』といっても、全体的に混じり合ったような『ミノタウロス』もいれば、部分的にしかそれが表出していない『牛のキメラ』もいるわけだ。
軽く説明を聞いただけではどんな人なのか想像がつかない。
さらに言うと、簡単に『キメラ』と一括りに出来るものではなく、その線引きも難しい。
牛娘さんたちの場合は『牛のキメラ』でいいらしいが、例えば下半身全てが魚なら人魚、蛇ならラミアと呼ばれる。
『魚のキメラ』とか『蛇のキメラ』とは呼ばないのだ。
(もう結局のところ、慣れるしかないんだよね……)
もはや慣用的に使われている呼称なのだから、それ以外に解決方法はなかった。
私はそのことに関して諦めつつ、目の前でジュウジュウと美味しそうな音を立てるビーフステーキに目を落とした。
美味しそう。とっても美味しそうだ。
(でも……ミノタウロスと牛キメラの店で『ビーフ』って、大丈夫なの?)
まさか人肉ではなかろうが、私はちらりとアステリオスさんを見上げた。
まさか私がそんなことを心配しているとは思わないアステリオスさんは、別の心配を口にした。
「量が多かったか?ここはモンスター退治なんてことを生業にする連中も仕事を探しに来る店だからな。体が資本の連中相手で、ついボリューミィになっちまう。多かったら遠慮せずに残しな」
アステリオスさんはその容姿に似合わず、飲食店の店主らしい細やかな気づかいを見せてくれた。
「いえ、大丈夫です。お腹空いてますから」
私はビーフについての懸念を飲み込み、ステーキに手を付けた。
「!!……すごく美味しいです」
それはこの店自慢という言葉に恥じない最高のステーキだった。
柔らかいが適度な歯ごたえもあり、噛めば噛むほど味が滲み出てくる。そして何よりソースの風味が絶妙だった。
「そうか、ありがとよ」
アステリオスさんは気持ちのいい笑顔でこたえてくれた。
私ははしたないと思いつつも、つい一度にたくさん口に頬張った。
それを一生懸命咀嚼しながら、店の壁に貼り付けられた大量の紙切れを眺める。
(仕事の依頼書……いっぱい貼ってあるな。きっとこの店の料理が美味しいから、仕事探しに来る人も多いんだろうな)
アステリオスさんのお店はただ食事を提供するだけではない。様々な仕事を斡旋仲介する職業紹介所としてのビジネスも行っていた。
壁の一面が全て掲示板になっており、大量の依頼書が貼り付けてある。
(私にできそうなのあるかな?さっきチラッと見たら、モンスターの討伐とか素材集めとかが多かったけど)
先ほどアステリオスさんが言った通り、モンスターを倒すような仕事も多いからこの店の客には武装した人が多かった。
しっかりと鎧を着込んだ戦士や、魔法使いの杖のようなものを持った人もいる。
ただ、料理も美味しいせいかごく普通の一般人と思われる人もたくさんいた。
もしかしから危険のない仕事を探しに来ているのかもしれないが。
「なんだ、あんたも仕事探しか?」
私の視線に気づいたアステリオスさんがそう尋ねてきた。
「はい。一応召喚士なんですけど、何かできる事がないかなと……」
私は別にステーキを食べるために来たわけではない。仕事を探しに来たのだ。
先日のダンジョン攻略で当面の生活費はできたわけだが、生きていればお金なんてあっという間になくなってしまう。
どうやって稼げばいいかをケイロンさんに相談したところ、アステリオスさんのお店で仕事を斡旋仲介していると聞き、やって来ていた。
ちなみに今日は私一人だ。いい加減、サスケとケイロンさんにおんぶに抱っこでは二人に申し訳ない。
勇気を出して一人で来てみた。
「召喚士だって?なんだ早く言えよ、召喚士ならいくらでも仕事が……」
「あっ、でもまだ全然駆け出しなんです!使役モンスターもスライム三匹だけで……」
貼り紙の方へ歩きかけたアステリオスさんを、私は急いで止めた。
まだやっていけるか不安が大きいので、いきなり危なかったり難しかったりする依頼はご勘弁願いたい。モンスターの討伐などもってのほかだ。
それに、ケイロンさんから魔質ランクSなどの情報はできるだけ隠すように言われていた。
まだ常識すらあやふやな私では悪用されかねないと警告されている。
「そうか、スライム三匹じゃ無理はできねぇな」
「そうなんです。だから、できれば危険が小さくて難しくない仕事がいいんですけど……」
「それじゃあ、あんまり割のいい仕事はないんだが……あぁ、そうだ」
アステリオスさんは壁に貼られた紙のうち、一枚をちぎって持ってきた。
「本当はこれ、あんまりおすすめじゃないんだけどな」
私は渡された依頼書をざっと読んだ。
「えーっと……『母の形見の指輪を落としてしまったので探してください』。落とし物探しですか?なんでおすすめじゃないんです?」
落とし物探しなんて危険でもないし、見つかるかどうかはともかく難しい作業ではなさそうだ。
「報酬のところを読んでみな」
「報酬は、成功報酬で二万円……」
私はアステリオスさんがおすすめできない理由がよく分かった。
成功報酬ということは、いくら働いても見つからなければ報酬はゼロなのだ。にも関わらず、二万円はなんとも微妙な金額だった。
アステリオスさんが頭をかきながら事情を教えてくれた。
「実はこれ、ミランダっていう俺の従姉妹からの依頼なんだよ。落とした大体の場所は分かってるらしいんだが、一向に見つからないんだそうだ。俺もさすがに安すぎるとは言ったんだが、ミランダのところは子沢山であんまり余裕のない家でな。一応そこに貼ってやってはいるんだが、今のところ希望者はいない。ま、あんたも他の依頼の方が……」
「やってみます」
私は即決した。
これなら確かに危険は少なそうだし、スライムたちと手分けして探せば効率も上がるだろう。
そして何より、私は依頼書の一文に目を引かれた。
「お母さんの形見って書いてますし、ミランダさんの大切なものなんですよね?見つかるかは分かりませんけど、探すだけ探してみます」
私は自分の首にかかったネックレスに手をやった。
サスケのお母さんの形見だという魔道具のネックレスだ。すでにこのネックレスに助けられている身としては、そういった想いを大切にしたかった。
アステリオスさんは、私の言うことにちょっと驚いたようだった。
「お、おお……やってくれるか。すまねぇな、助かるよ」
「でも私はプティアの街に来てまだ日が浅いので、簡単な地図を書いてもらえますか?場所さえ分かれば、これ食べたら行ってみます」
アステリオスさんは奥に下がって地図を書いてきてくれた。
そしてそれと一緒に、一杯のミルクをテーブルに置いた。
「俺からのサービスだ。嫌いじゃなきゃ飲んでくれ。あんた名前は?」
「ありがとうございます。クウっていいます」
「クウ、か。いい名前だな」
その由来はまさか言えるはずもなかったが、名前を褒められるというのは悪い気はしない。
ただ私はそれよりも、今は目の前に置かれたミルクの方が気になった。
(ミルクは好きだよ?好きだけど……)
私はウエイトレスさんたちの方をチラリと見た。
皆さん牛のキメラだけあって、立派なおっぱいをしていらっしゃる。
しかもアステリオスさんの趣味なのか客引きなのか、それを強調するようなあざとい制服になっていた。
多くの女子があざとい服を嫌っているが、私は本心では大好きだ。恥ずかしくて自分では着られないが、胸の谷間や肩が出ているとついチラ見してしまう。
ただ、今は強調されたおっぱいが私にビーフステーキが出てきた時と同じような懸念を抱かせている。
(まさか……)
その懸念が伝わったのか、目の合った一人のウエイトレスが笑いながら言った。
「私たちが出したやつじゃないよ?」
(ですよねー)
そのミルクは少し甘くて、濃厚で、コクがあるくせに臭みがない、極上のミルクだった。
私はたくましい筋肉に覆われた逆三角形の上半身を眺めながら、そんなことを考えた。
雄々しい。一言で言ってしまえばそういうことだ。
服の上からでも筋繊維の盛り上がりを視認できそうなその肉体は、オスとしての魅力を溢れさせている。
そしてそれは筋肉美だけではなく、頭部に生えた二本の雄々しい角もそうだった。
過剰なまでにオスを強調するそれらのパーツは、もはやメスを誘っているとしか思えない。
「うちの店自慢のビーフステーキだ。鉄板が熱いから気をつけろよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
私が見とれていた雄々しい肉体は、手に持っていたステーキの皿を意外なほど丁寧な動作でテーブルに置いてくれた。
彼はこの店の店主である、ミノタウロスのアステリオスさんだ。
(ミノタウロス……)
牛の頭部を持つ半人半牛の種族だ。
実際の牛も大きくて強そうだが、アステリオスさんもまんまそのイメージ通りの人だった。牛の中でもとりわけ闘牛の部類だろう。
「お~。店長が直に給仕するなんて、その子のことが気に入りましたね。相変わらず女好きなんだから」
そうやってアステリオスさんを茶化したのはウエイトレスの女の子だ。
結構大きい店なので、何人ものウエイトレスがいた。
「はっはっは!そうとも、俺は女好きだ!だからお前たちみたいなべっぴんばかり雇っている!」
アステリオスさんはその大きな体に見合った声量の笑い声を上げた。
アステリオスさんの言う通り、ウエイトレスの子たちはみんな顔立ちの良い子ばかりだった。
ただ、私としてはその顔よりも、全員に一致したある共通点のほうが気になった。
(牛娘さんたちだ……ミノタウロスのアステリオスさんと並んでると、この世界の種族のことがよく分かるな)
ウエイトレスは全員が牛娘だが、ミノタウロスではない。
頭についた角や耳、尻尾などは牛のそれだが、他のパーツはすべてヒューマンと変わりないものだった。
(キメラか……本当にいろいろな種族がいるんだ)
この世界には牛娘のウエイトレスさんたちのように、体の一部分だけが他の動物になった『キメラ』と呼ばれる種族がいる。
一言に『牛とヒューマンとが混じったような種族』といっても、全体的に混じり合ったような『ミノタウロス』もいれば、部分的にしかそれが表出していない『牛のキメラ』もいるわけだ。
軽く説明を聞いただけではどんな人なのか想像がつかない。
さらに言うと、簡単に『キメラ』と一括りに出来るものではなく、その線引きも難しい。
牛娘さんたちの場合は『牛のキメラ』でいいらしいが、例えば下半身全てが魚なら人魚、蛇ならラミアと呼ばれる。
『魚のキメラ』とか『蛇のキメラ』とは呼ばないのだ。
(もう結局のところ、慣れるしかないんだよね……)
もはや慣用的に使われている呼称なのだから、それ以外に解決方法はなかった。
私はそのことに関して諦めつつ、目の前でジュウジュウと美味しそうな音を立てるビーフステーキに目を落とした。
美味しそう。とっても美味しそうだ。
(でも……ミノタウロスと牛キメラの店で『ビーフ』って、大丈夫なの?)
まさか人肉ではなかろうが、私はちらりとアステリオスさんを見上げた。
まさか私がそんなことを心配しているとは思わないアステリオスさんは、別の心配を口にした。
「量が多かったか?ここはモンスター退治なんてことを生業にする連中も仕事を探しに来る店だからな。体が資本の連中相手で、ついボリューミィになっちまう。多かったら遠慮せずに残しな」
アステリオスさんはその容姿に似合わず、飲食店の店主らしい細やかな気づかいを見せてくれた。
「いえ、大丈夫です。お腹空いてますから」
私はビーフについての懸念を飲み込み、ステーキに手を付けた。
「!!……すごく美味しいです」
それはこの店自慢という言葉に恥じない最高のステーキだった。
柔らかいが適度な歯ごたえもあり、噛めば噛むほど味が滲み出てくる。そして何よりソースの風味が絶妙だった。
「そうか、ありがとよ」
アステリオスさんは気持ちのいい笑顔でこたえてくれた。
私ははしたないと思いつつも、つい一度にたくさん口に頬張った。
それを一生懸命咀嚼しながら、店の壁に貼り付けられた大量の紙切れを眺める。
(仕事の依頼書……いっぱい貼ってあるな。きっとこの店の料理が美味しいから、仕事探しに来る人も多いんだろうな)
アステリオスさんのお店はただ食事を提供するだけではない。様々な仕事を斡旋仲介する職業紹介所としてのビジネスも行っていた。
壁の一面が全て掲示板になっており、大量の依頼書が貼り付けてある。
(私にできそうなのあるかな?さっきチラッと見たら、モンスターの討伐とか素材集めとかが多かったけど)
先ほどアステリオスさんが言った通り、モンスターを倒すような仕事も多いからこの店の客には武装した人が多かった。
しっかりと鎧を着込んだ戦士や、魔法使いの杖のようなものを持った人もいる。
ただ、料理も美味しいせいかごく普通の一般人と思われる人もたくさんいた。
もしかしから危険のない仕事を探しに来ているのかもしれないが。
「なんだ、あんたも仕事探しか?」
私の視線に気づいたアステリオスさんがそう尋ねてきた。
「はい。一応召喚士なんですけど、何かできる事がないかなと……」
私は別にステーキを食べるために来たわけではない。仕事を探しに来たのだ。
先日のダンジョン攻略で当面の生活費はできたわけだが、生きていればお金なんてあっという間になくなってしまう。
どうやって稼げばいいかをケイロンさんに相談したところ、アステリオスさんのお店で仕事を斡旋仲介していると聞き、やって来ていた。
ちなみに今日は私一人だ。いい加減、サスケとケイロンさんにおんぶに抱っこでは二人に申し訳ない。
勇気を出して一人で来てみた。
「召喚士だって?なんだ早く言えよ、召喚士ならいくらでも仕事が……」
「あっ、でもまだ全然駆け出しなんです!使役モンスターもスライム三匹だけで……」
貼り紙の方へ歩きかけたアステリオスさんを、私は急いで止めた。
まだやっていけるか不安が大きいので、いきなり危なかったり難しかったりする依頼はご勘弁願いたい。モンスターの討伐などもってのほかだ。
それに、ケイロンさんから魔質ランクSなどの情報はできるだけ隠すように言われていた。
まだ常識すらあやふやな私では悪用されかねないと警告されている。
「そうか、スライム三匹じゃ無理はできねぇな」
「そうなんです。だから、できれば危険が小さくて難しくない仕事がいいんですけど……」
「それじゃあ、あんまり割のいい仕事はないんだが……あぁ、そうだ」
アステリオスさんは壁に貼られた紙のうち、一枚をちぎって持ってきた。
「本当はこれ、あんまりおすすめじゃないんだけどな」
私は渡された依頼書をざっと読んだ。
「えーっと……『母の形見の指輪を落としてしまったので探してください』。落とし物探しですか?なんでおすすめじゃないんです?」
落とし物探しなんて危険でもないし、見つかるかどうかはともかく難しい作業ではなさそうだ。
「報酬のところを読んでみな」
「報酬は、成功報酬で二万円……」
私はアステリオスさんがおすすめできない理由がよく分かった。
成功報酬ということは、いくら働いても見つからなければ報酬はゼロなのだ。にも関わらず、二万円はなんとも微妙な金額だった。
アステリオスさんが頭をかきながら事情を教えてくれた。
「実はこれ、ミランダっていう俺の従姉妹からの依頼なんだよ。落とした大体の場所は分かってるらしいんだが、一向に見つからないんだそうだ。俺もさすがに安すぎるとは言ったんだが、ミランダのところは子沢山であんまり余裕のない家でな。一応そこに貼ってやってはいるんだが、今のところ希望者はいない。ま、あんたも他の依頼の方が……」
「やってみます」
私は即決した。
これなら確かに危険は少なそうだし、スライムたちと手分けして探せば効率も上がるだろう。
そして何より、私は依頼書の一文に目を引かれた。
「お母さんの形見って書いてますし、ミランダさんの大切なものなんですよね?見つかるかは分かりませんけど、探すだけ探してみます」
私は自分の首にかかったネックレスに手をやった。
サスケのお母さんの形見だという魔道具のネックレスだ。すでにこのネックレスに助けられている身としては、そういった想いを大切にしたかった。
アステリオスさんは、私の言うことにちょっと驚いたようだった。
「お、おお……やってくれるか。すまねぇな、助かるよ」
「でも私はプティアの街に来てまだ日が浅いので、簡単な地図を書いてもらえますか?場所さえ分かれば、これ食べたら行ってみます」
アステリオスさんは奥に下がって地図を書いてきてくれた。
そしてそれと一緒に、一杯のミルクをテーブルに置いた。
「俺からのサービスだ。嫌いじゃなきゃ飲んでくれ。あんた名前は?」
「ありがとうございます。クウっていいます」
「クウ、か。いい名前だな」
その由来はまさか言えるはずもなかったが、名前を褒められるというのは悪い気はしない。
ただ私はそれよりも、今は目の前に置かれたミルクの方が気になった。
(ミルクは好きだよ?好きだけど……)
私はウエイトレスさんたちの方をチラリと見た。
皆さん牛のキメラだけあって、立派なおっぱいをしていらっしゃる。
しかもアステリオスさんの趣味なのか客引きなのか、それを強調するようなあざとい制服になっていた。
多くの女子があざとい服を嫌っているが、私は本心では大好きだ。恥ずかしくて自分では着られないが、胸の谷間や肩が出ているとついチラ見してしまう。
ただ、今は強調されたおっぱいが私にビーフステーキが出てきた時と同じような懸念を抱かせている。
(まさか……)
その懸念が伝わったのか、目の合った一人のウエイトレスが笑いながら言った。
「私たちが出したやつじゃないよ?」
(ですよねー)
そのミルクは少し甘くて、濃厚で、コクがあるくせに臭みがない、極上のミルクだった。
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