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第八章【東方大地】

8-8 砂国「3」

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―――砂国、大広場。
この日、大広場はいつも以上に賑わっていた。
かの"王"となるはずだったキングの息子クローツが、国を代表する最高位僧侶"ビショップ"を継ぐために顔を出すということで、国民の熱気も半端なものではなかった。
かつて忌み嫌われた存在だった彼が、その運命を乗り切って国を動かす立場になったことはまさに新しい風。数年後には女王の誕生も控え、この瞬間、国は本当の意味で"新しく"なろうとしていたのだろう。

キング「みな、静かにしていただけるか…!」

王は手を振りかざし、熱気燃える国民たちに"沈黙"を促した。すると、さすがはキングの貫録。そこにいた誰もが、サっと口を閉ざし、一瞬にしてその場は"しんっ……"とした空気に包まれた。
また、近くでこれを見ていた15歳となってより美しい容姿となったテイルも、父親の堂々たる風格に思わず緊張の汗が一滴垂れる。

キング「お集まりの皆さま、今日は良き日です!!」
キング「知っての通り、我が息子"クローツ"はその運命は過酷たるものでした……」
キング「だが、しかし……!」
キング「この日を迎えられたことは、ひとえに息子を認めて下さった皆さまのおかげです。そこで、皆さまには心からお礼を言いたい……」
キング「……有難うッ!!!!」

"…ワァァァアアッ!!!"
キングのお礼の言葉に、観衆は湧き上がった。全員が手を上げ、クローツを祝福していた。

キング「それでは、我が息子…クローツ!檀上へッ!!」

テイル(兄さんっ…!!)

檀上の上で、キングが手招きをすると"クローツ"の姿が見えた。
その顔は2年前と変わらず、凛とした美青年のままで、祝福する国民たちに対し笑みを浮かべてニコやかに手を振っていた。
そして、彼は檀上に上がると、父親と同じように腕を上げ、「自分は帰ってまいりました!」と声を上げた。

テイル「に、兄さんッ!!」

とめどない歓声の中、矢のようなテイルの一言は確実にクローツへと突き刺さっただろう。現に、彼はテイルの座る席をチラリと見たのだ。
……しかし、彼はその刹那。"冷たい目"でテイルを見つめたことを、彼女自身、凍るような感覚からすぐに理解した。

テイル(えっ……!?)
クローツ「…」

一瞬の無言だったが、すぐに彼は前を向いて、民衆へと笑みを振りまいた。

クローツ「……ハハハ、国民の皆さま!お久しぶりです!」

"ワァァアアッ!!"
再び、地鳴りと勘違いするほどの歓声が上がる。

クローツ「私は、今日という日に皆さまとお会い出来たことを何よりも嬉しく思います!」
クローツ「辛い時期もありましたが、こうして国を支える立場となれることを幸せに思い、国に尽くすことを誓います!!」

キング「く、クローツ……」
クローツ「父上…」
キング「よく立派になって戻ってきてくれた。お前を王として迎える以上に、この国に新しい風を吹かせてくれることを信じている」
クローツ「……フフ、そんな言葉は無用ですよ」
キング「お前がそうやって成長してくれたことは、本当に嬉しく思う。ありがとう、クローツ」
クローツ「えぇ、この国はビショップの称号を得た自分が、新たに支えていきますよ」
キング「あぁ、そうか…そうか……」
クローツ「父上、手を」
キング「おぉ……」

キングは、クローツが成長したことを何よりも喜んだ。民衆の前ながらも、恥じぬ涙を流し、クローツと握手を交わし、互いに抱き合った。

キング「すぐにお前のビショップとしての式を行うからな」
クローツ「分かりました」
キング「お前が本当に成長してくれて嬉しく思うぞ」
クローツ「ハハ、檀上のうえで雑談をするのはマナー違反では?」
キング「何、久しぶりの親子の対面だ。少しくらいは大目に見てもらえるだろう」
クローツ「……フフ、そうですか」
キング「ところで現ビショップ殿の姿が見えぬようだが…。式を行うには彼の権限委任状が必要になるからな、早く来てほしいのだが……」
クローツ「あぁ、ビショップ殿なら先ほどあちらへ向かわれましたよ」
キング「どこだ?」

"クローツ「……天へ」"

握手をしていた逆の腕を、天高く伸ばす。民衆たちは彼がまたポーズを取ったものと興奮したが、それは全く異なる意味を持っていた。

キング「…どういう意味だ?」
クローツ「慌てないでください。貴方もまた、すぐそこへ行く」
キング「何?」
クローツ「ククッ、分かりますよ。ほら、感じませんか…?」

キング「だから何だと…!」
キング「…」
キング「……うッ!!?」

"ドクッ…!"
キングの心臓が、高く唸りを上げた。

キング「う、うぐっ…!?」
クローツ「クク、それが俺の感じていた発作ですよ」
キング「な、何を…した……!」

"ドクッ…!ドクンッ……!"

クローツ「いや何、握手をした掌にちょっとね……」
キング「毒針を仕込んだ…のか……!!?」
クローツ「ククッ…!大丈夫です、痛みは酷いでしょうが死ぬ程の毒じゃない」
キング「な、何をする…つもりだ……!」
クローツ「貴方に暴れられると困るのです。この国がどうなるか、しっかり見てから天へ行ってほしい」
キング「な…に……!」

二人のやり取りは、少し離れで見ていたテイルや元老院のメンバーたちの耳に入らず、お互いがささやき合っているように見えているばかりだった。

クローツ「では、俺の手を貸しているのでそのまま国民たちがどうなるか…見ていて下さい」
キング「ど…する…もりだ……」
クローツ「合図は三度目。もう、偽善たる行動は取ることはない」
キング「な…ん……」

クローツは今までにない程、歪んだ笑いを浮かべ、民衆たちに向かって叫んだ。

クローツ「――…国民たちよ!!」

"ワァァアアッ!!"
国民たちの祝福の声。

クローツ「今思えば、俺の人生は最悪そのものだった。幼き頃より地獄を見た俺の人生にあったのは、いつもお前たちの目ばかりだった……!」

"ワアァァアッ……"

クローツ「最悪だった。最悪。死ぬことも何度も考えた。お前たちに、俺の気持ちが分かるか……!?」

"……ザワッ…"
不穏な言葉によって、祝福の声は途切れる。

クローツ「だからこの日。貴様らに素敵なプレゼントを用意した。恨むならば、全てを裏切った父上…キングを呪うと良い……!」


ここでようやく、貴賓席に座っていた元老院たちは異変に気が付く。

テイル「兄さん、今のって……」
ディフェン「何だ、今の言葉は!」
ジャッジ「あの話をやめさせろ!キング様の様子もどこかおかしいぞ!?」

彼らもザワつき始めた時、貴賓席へ元老院の一人が慌てて走ってきたのが見えた。

トレジャリ「み、みなさんっ!!」
ディフェン「財務長殿…、そ、そんなに慌てて如何なさいましたか!」
トレジャリ「ビ、ビビ……ビショップ殿が待合室にて何者かに!!」
ジャッジ「な、何ですって!?」
テイル「……まさかっ!!」

その騒ぎに、クローツはこちらを見て再びニヤリと怪しい笑み。
そして、腕を堂々と上げる。

テイル(…何?)

これが彼の言う、三度目の合図だった。

クローツ「皆さま、良き日を……!」
テイル「兄さん、何を……」

三度目の合図、それで起こったこととは。

"……あ、アサシン盗賊団だぁぁっ!!"

民衆の中の一人が、確かにそう叫んだ。

テイル「……えっ!!?」

民衆たちに紛れ、大広場を囲むように建物に隠れていた"アサシン盗賊団"たちが一斉に姿を現す。
彼の合図は、まさに"アサシン盗賊団"を絶対防衛と言われた壁を破り、砂国を落とすべき時間が来たと、その合図であった。

トレジャリ「……く、クローツ!!貴様まさかぁっ!!」
クローツ「トレジャリさん、そう騒がないでくださいよ」
ディフェン「これを仕組んだのは貴様かぁっ!!」
ジャッジ「許されたものではない…!今すぐキング様から離れろォッ!!」
クローツ「ハッハッハッ……」

戦いの国、砂国。
本来ならば、その一人一人が高い戦闘能力を持っており、アサシン盗賊団の敵ではないはずだった。
しかし、今日は祝福の日。誰もが油断し、武器を持ち合せていなかったのが決定的であった。

クローツ「馬鹿な奴らしかいないとはこのことだ…。国はこれで堕ちる……」
キング「きさ…ま……!」
クローツ「おやキング殿、しゃべってはいるが息苦しいでしょう。ですが、ご安心ください。この国が堕ちた後、楽にしますよ」
キング「これが…お前の……望んだこと…かっ……!!」

アサシン盗賊団たちは、次々に男たちを殺害し、女を奪い、国民たちはパニックとなった。
戦闘民族としての意地で、必死な抵抗も見せたが、完全に流れを掴んだアサシン盗賊団を押し返すことは先ず無理だった。

クローツ「ハハハハッ!!いい気味だ!!俺を馬鹿にしてきた奴らが、最高の景色だよ……!」
クローツ「ククッ…!」
クローツ「…………ん…?」

クローツは、このパニックを切り抜け、いつの間にか檀上へ上っていた"彼女"がいたことに気が付いた。

テイル「……兄さんっ!!」
クローツ「テイルか…。久しぶりだな……」
テイル「これを仕組んだのは、全部…兄さんなの……?」
クローツ「分かっているだろう?」
テイル「どうしてこんなことを…!」
クローツ「罪と罰。それだけだ」
テイル「バカ言わないでよ!!こんなこと、許されることじゃない!!」
クローツ「もう止まれるわけがない」
テイル「兄さん……!」
クローツ「それよりも、この状況でのんびり話をしてていいのか?」
テイル「どういうことよ…?」
クローツ「ほら、後ろ」
テイル「え?……きゃあっ!?」

"ガシッ!"
突然、テイルは後ろに潜んでいた盗賊団の一人に羽交い絞めされた。

テイル「は、離せっ!!」
クローツ「油断が悪い」
テイル「ぐっ……、こ、このぉっ!!」

身体を捻り、その場で回転して足蹴りで団員を弾き飛ばすと、「ぐおっ!」と声を上げながら檀上から転げ落ちていった。

クローツ「おぉっ…」
テイル「に、兄さん……!」
クローツ「流石だな。俺にはない、運動能力だよ。うんうん、凄い凄い」
テイル「まだ戻れるかもしれない…。今すぐこんなことは止めさせてよっ!!」
クローツ「新しい風を吹かせる存在としたかったのは、父上の考えだろう?」
テイル「こ、こんなことを望んだわけないじゃない!」
クローツ「……煩い妹だ」
テイル「もう、目を覚まさせないといけないみたいね……」

テイルは拳を突き出し、姿勢を低く構えた。

クローツ「勘弁してくれよ。お前と戦うのは好きじゃない」
テイル「この国の未来のために、それも問わない」
クローツ「実の兄を手にかける気か?」
テイル「話をしている暇があったらっ……!」

"三点縮地ッ!!"
近距離の間合いを取る際、三点を踏んで後方か横方を取る、翻弄する縮地法の一種。
テイルはほぼ完ぺきなまでな術を見せた―――…。

クローツ「だが、なぁ……」

"ガシッ…!"
完全に気配すらも消すほどな縮地だったが、クローツはそれを読み、後方斜めに陣取ったテイルの首をその片腕で掴みあげた。

テイル「ごほっ…!?」
クローツ「残念だったな」
テイル「そ、そんな……!?」
クローツ「ビックリしたか?」
テイル「兄さんが、そんな……」
クローツ「おいおい、運動も出来ない身体だが、戦いの血を受け継いではいるんだぞ?」

貧弱な身体ではあった。
しかしそれは"動力"に限ったことであり、戦いの血脈としてその勘や技術は決して劣っているものではない。

クローツ「…いや、むしろ瞬発力での差なら俺に分がある。筋力はなくとも、技術を磨き忘れたことはない」
テイル「ゲホッ…!」
クローツ「このまま死ぬか?」
テイル「兄…さん……」
クローツ「お前は大事な妹だよ。せめて俺の手で逝かせてやるのが良いだろう」

逆の手で手刀を構え、魔力を込める。技量は凄まじく、今のクローツの腕は触れた者すべてを切り裂くように強力な魔刀のそれと同じであった。

クローツ「またどこかで。愛しき妹君……」
テイル(私……)

その手を、テイルの首に目掛けて放った。
"ドシュッ…!"
鈍い音に鮮血が舞い、檀上は赤く染まる……が。

クローツ「……何っ!?」
テイル「…ッ!」

その血をまき散らしたのはテイルではなく、最後の力を振り絞り、彼女を庇ったキングから滴り落ちるものであった。

キング「ご…ふっ……!」
テイル「お、お父様……?」
キング「テ…イル…」
テイル「なん…で……」
クローツ「キング!強力な毒を受けながら…まだ……!」
キング「ク、クク……!」

手刀は右胸深く突き刺さっていたが、それは突き抜けることなく、キングの身体の途中でピタリと止まっていた。

クローツ「くっ…!」
キング「み、見事な技よ…。それで身体が強ければ、お、俺以上に……強くなっていた…と……」
クローツ「だ、黙れ!!」
キング「お前が…道を外れたのは……俺のせいだ……」
クローツ「煩い、煩いッ!!早く死ねっ…死ねぇぇぇえっ!!」

憤慨するクローツは、もう片方の腕をテイルから離し、幾度も手刀を振り下ろした。その度に血が舞い、その場にいた二人はキングの血に染まっていく。

クローツ「早く…倒れろ……!お前の時代は…終わった……!終わったんだよぉぉぉっ!!」
テイル「兄さんもう止めてぇぇっ!!」
クローツ「煩い!!あっちへ行っていろぉっ!!」
テイル「きゃあっ!!」

テイルを吹き飛ばし、全身が返り血で赤の塊となっても、クローツは攻撃をし続けた。

クローツ「どうして腕が抜けない、どうして死なない、どうして倒れないぃぃっ!!」
キング「クク…!俺はキング…砂国の王……!英雄の一族!い、いかなる時も決して屈しないのが…国の王である定め……」
クローツ「黙れぇぇぇっ!!」
キング「だ、だが…時間も…ない……!最後の…教えだ……。お前に聞こえるか……!俺の…声が……!」
クローツ「黙れと言っている!そんなもの、何も聞こえるわけがないだろうがぁぁああっ!!」
キング「お前に…伝わると…信じている……よ……」
クローツ「そ、そんなものッ!聞こえてなどいな……!」

"…トクン……"

クローツ「い……?」

"トクッ……"

クローツ「……え?」

"トクンッ……"
それは、偶然か必然か。

"トクッ……"
突き刺さった指先から、弱って行く心音を感じ、ふと攻撃の手を止めた。

クローツ「これ…は…………」

"トクッ…"
指先からクローツへ雪崩込むキングの魔力。それは、キングの記憶。クローツの魔力と混ざり合い、全身を巡り、全てを伝える糧となった。

…………
父上の…記憶……。

「甘すぎるぞ!早く次の男を生んだ方がいいのではないですか!?」
――そんなことはない。俺の息子は立派な子に育つ!

「いい加減にしてくれ、息子が風邪をひいて心配なのは分かるが、戦場に出ないと指揮を取る人間がいないんだぞ!」
――す、すまない。だが心配なんだ…。

「宝物庫を開ける!?あれは国宝ですよ、いくら王といえども……」
――息子のためだ!親馬鹿だと思うが、きっと強くなる!

「王様、貴方も物好きだ。周りから冷たい視線を向けられるのは、王子だけではないのですよ?」
――知らぬ。我が子を大事に想わない親がどこにいる?
…………
……


クローツ「……うっ…!」
キング「お前は…大事な……」
クローツ「父…上……!」
キング「むす…こだ……」

――ついに、その時は来た。
遅すぎた真実は伝えられたものの、キングは息子の肩へと力無く、静かに倒れ込んだのだった。

クローツ「…父上……」
テイル「お、お父様……?」

吹き飛ばされていたテイルは、檀上へ戻り、倒れ込んだキングへと近寄った。

テイル「嘘だ…。お父様が死ぬなんて……」
クローツ「父上……」
テイル「嘘よ!ウソ、嘘、うそっ!!!」
クローツ「て、テイル……」
テイル「死ぬわけない、お父様はみんなに愛されて、凄く強くて、ヒーローなんだからっ!!」
クローツ「テイル……」
テイル「絶対に嫌だ、やだ、お父様、やだ、やだよぉ…!嫌だ、やだ、やだぁぁあああっ!!」
クローツ「て、テイル……!」

我を失ったテイルに、あの日のように、頭を撫でてやろうとそっと手を伸ばす。

テイル「……さ、触るなあぁぁぁあっ!!!」

……だが、その手は届くことがなかった。

クローツ「…!」
テイル「お父様の全てを知ったって、何もかも遅いのよ!全部貴方のせいだ、全部、何もかもっ!!」
クローツ「くっ……!」
テイル「戻れないのなら、私だってもう後ろは見ない!絶対に戻らない!!」
クローツ「お、俺と一緒に来い!この国の未来はない……!」
テイル「終わってない!終わらせない!!」
クローツ「終わりだ!父上は死に、元老院のメンバーも直に処刑される!この国は終わったんだ!」
テイル「アンタのせいで終わったのなら、お父様を継いで私が国を取り戻す!!」
クローツ「無駄なことをするな!お前に何が出来る…!」
テイル「わ、私は……!」

―――私は、十八代目女王、テイル・ストームランなんだから!!

クローツ「じ、女王だと……!」
テイル「国を裏切った男…クローツ・ストームラン!あなたは今日限り、兄とは思わない!」
クローツ「何だと…!」
テイル「必ず国を取り戻す!父上の仇も、絶対に討つ!!」

クローツ「……俺を敵と見るのか」
クローツ「俺を敵にすれば、直に国に訪れることになってる盗賊団マスターの"アサシン"も敵になるぞ!国が堕ちたということは、お前の敵は国だ!」

テイル「みんな敵だとしても、私は負けない…。絶対に負けない!!」
クローツ「な、ならば勝手にしろォッ!!」
テイル「今日から兄妹なんかじゃない!ビショップ、裏切りの男、貴方はそう呼ばせてもらう!」

クローツ「……!」
クローツ「…」
クローツ「…………ク…クク……!」
クローツ「……分かった、分かったよ。お前は今日限り、敵になる……!」

テイル「えぇ、敵同士!だったら、今すぐここで貴方を討つことも……!」
クローツ「だが、敵ともみなすほどじゃない」

"…ビュオッ!ドスッ!"
目に見えぬ早さの手刀が、その首を叩く。

テイル「あっ……!」
クローツ「殺すことはしない。お前は奴隷として扱われると良い」
テイル「ビ…ショップ……!」
クローツ「何、安心しろ。セントラルに高値で売れるルートがあるらしくてな、そこまで手出しはさせないようにしておく」
テイル「う…!くっ……」
クローツ「さようなら、"俺の大事な…妹……"」

―――これが、砂国におけるテイルの最後の記憶となったのだった。

………………
…………
……



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