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第十四話
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「…………」
その夜、アンジェリーナはフローレンスとのやりとりを反芻していた。
「……まだ何か、隠し事をしていらっしゃるわね……」
露骨なまでの話題の転換に、わざとらしいほどのテンション。気付かない方がおかしい。
戦争に関して、フローレンスはまだ何か隠し事をしている。おそらくは、ゼノンに絡んだことだ。
「問いただして、白状してくれるとも思えないわね」
不本意ではあったが、今のところはこれで良しとするしかないだろう。自分に話さないというのは、おそらくは王家の総意だ。ここは引いて、機を待つしかないだろう。
ため息をついて、机の上の写真立ての一つを手に取った。
そこには、彼女と雰囲気の似ていて、乗馬服の腰に緩い反りの刀身をして、柄にいくつもの菱形が等間隔に並んでいる剣を佩いた銀髪の少女が、幼い頃のアンジェリーナから花冠を送られてはにかんでいる姿が映っていた。
セレスティアラ・エルディアルト公爵令嬢。それが彼女の名だ。
彼女は、母の姉の娘であり、アンジェリーナの従姉にあたる女性だ。ここから東方に存在するヴェルディア王国の公爵令嬢であり……なかなかの破天荒な女性であった。
淑女としての作法を完璧のこなしながらも、彼女が人生を捧げたのは剣と武の道だった。
腰に下げてる異様な意匠の剣はそんな彼女が愛用していた品であり、この世界において作られた記録が存在しないことから、『異空剣』と呼ばれている代物だった。
本来ならば美術品として珍重されるそれを、まるで川のせせらぎのような穏やかな所作と用法で振るい、庭に立てた棒を縄で縛ったもの――彼女は『マキワラ』とか呼んでいた――を刀を抜きざま一刀両断どころか、返す刀でさらに真っ二つにして、アンジェリーナどころか見学していた護衛の騎士さえも驚愕させていた。
徒手空拳の戦闘もずば抜けていて、ちょっと手を動かしただけで自分よりも二回りも大きい大男を軽く投げ飛ばしていた。これに関しては『アイキ』と呼んでいたと思う。襟を掴んできた相手を、腰をひねるだけで膝を付かせて取り押さえたり、手首を掴まれればそこを支点に一回転させてしまったりと、端から見ていて魔法にしか見えなかった。
彼女からは、様々なことを教えられた。とっさの時の身の守り方、大局を見据えた戦略の組み立て方、術式構築の高速化の勘所……そんなあれこれを。
(急いては事をし損じる、よ。局面を見極めて、必要ならいくらでも待ちなさい)
「……セレスお姉様」
在りし日の彼女の言葉が蘇る。
今の彼女は、行方どころか、生死さえはっきりしない。終戦直後にヴェルディアで巻き起こった政変により、公爵家そのものが滅亡に至ったからだ。
さらにその後、ヴェルディア王国そのものも隣国・ドラグベルム帝国の侵攻を受けて王家は粛正、事実上滅亡した。
アンジェリーナが大好きだった、セレスティアラの行方は杳として知れない。
「お姉様なら……どうしましたか?」
問いに答えるものは、いない。
翌日。
休日明けの午後、学院の廊下をゼノンを進んでいき、中庭に到達していた。
馬蹄型の校舎の中心にある中庭は、昼休みには生徒達の憩いの場となる。昼食をすでに終えて持ち込みのお茶を堪能したり、ランチボックスを寄せ合ってのささやかな会食の興じている光景がそこかしこにある。
そんな中をどこに行くともなくゼノンは進んでいると、その背後に二人の男女がさりげなく近づいてきた。
「状況は?」
「異常なしです、少佐。魔力放射は認められません」
「カールに同じくです。背中に異常を来した生徒はいません」
簡潔な問いに二人の男女……金髪の少年・カールと、亜麻色の髪の少女・シンシアは手短に答えた。
二人はゼノンの戦友だ。平民なので家名は持たず、終戦後は退役軍人奨学金を利用して学院に入学した優秀な二人だった。
二人はある優れた魔力特質を持っていた。それは、他者に比べて遙に鋭敏な魔力感知の能力だ。その能力に戦中は何度も命を救われた、信頼している二人である。
「しかしまぁ、まさか能力を学校の中で使うとは思いませんでしたよ」
「私もです。学友を疑ってるみたいで、少し罪悪感があります」
ゼノンは転入が決まったとき、二人に定期的な魔力感知を頼んでいたのだ。アーノルドのあまりの豹変ぶりに最初から憑依を疑っていたと言うこともあるし、もしかしたら憑依者から唆されて、と言う可能性も考慮したからだった。
だが、結果はシロ。転入してからの一週間、つぶさに調査させたが何も出なかった。
「すまないな。状況を鑑みると憑依者がいてもおかしくなかったんだが、当てが外れたらしい」
「少佐も予測を外すこと、あるんですねぇ。」
「確かに憑依を疑いますけど、あれは性根からああだったんですよ、きっと」
王族とゼノンの関係を断片的とはいえ知っている二人は、気遣うようにゼノンに告げた。
気の置けない間柄の二人だからこその言葉に、ゼノンは少し罪悪感を感じた。アーノルドの真実――転生については二人にも話していないからだ。
転生について知っているのは、現時点ではゼノンと国王夫妻、それにフローレンスとレオナルド、さらに後宮に隠居している王太后陛下のみだ。
「あの少佐が転入してくるって言うからなんだと思ったら……あの王太子のお目付役と聞いて納得しましたよ」
「私は、案外制服が似合っていることに驚きました」
「……言うな。ちょっと気にしてるんだ」
少しおもしろそうな声音のシンシアに、ゼノンは渋面を返した。
当初はこの歳で学院生なんぞ、馬子にも衣装なら御の字……と思いきや、自分でもどういうわけだか妙にしっくりきていた。長身で引き締まった体躯をしているせいか、見てくれもそれなりに悪くなく、思っていたほど場違いには見えなかった。
黒を基調としたブレザーの制服は、身分の区別なく統一されたデザインになっている。建前上は、生徒は皆平等と掲げている学院だからこそのデザインだ。
(貴族、平民と分けといて平等もへったくれもないけどな)
内心ため息をつく。
「それで?」
そこにカールがそんな声をかけてくる。
「それで、とは?」
「私たちをそろって呼び出したんです。何か相談事があるのでは?」
何もかもお見通し、と言った調子のシンシアがそう言った。そろって好奇心剥き出しのその様子に苦笑しながら、本題を切り出す。
「ちょっと相談なんだが……迷惑をかけた女性に、世話になってる礼も兼ねて何か送りたいと思っているんだが……どういうものが喜ばれると思う?」
意を決してそう言うと、二人の表情が凍り付いた。カールなど、目を大きく見開いて硬直している。
「か、カール、緊急事態だわ」
やっとこさ、と言う調子で口を開いたシンシアがそんなことをのたまう。
「あ、ああ……同感だ。こりゃ一大事だぜ……あの、あの少佐から……」
「恋愛相談って……一体何が起こっているの!?」
「三度の飯より遺跡と宝物好きのあの少佐が!! 娼館と遺跡なら迷わず遺跡を選ぶっていわれたあのゼノン・マクシミリアンが!?」
「恋愛……相談……これは凶兆だわ……実家に連絡して、避難するように伝えないと……」
「いや、これ世界滅ぶレベルだぞ? どこに避難させるんだ?」
「ああ!! せめて、せめて卒業までは猶予を……」
「……お前らなぁ、陰口は本人のいない所で叩くもんだぞ」
顔を引きつらせながら、ゼノンは力なく突っ込んだ。
「あ、いやぁ……ちょいと取り乱しちまいました、スンマセン」
「それぐらい衝撃的な事態だとご理解を頂ければ……」
へこへこと頭を下げる二人は、全く悪びれていなかった。
「まぁ、真面目に答えるなら、根本的な情報が欠けてたら答えようがねーです」
「根本的な情報?」
「お相手のことですよ。それがわからなかったら何も答えようがありません」
「……名前は言えん。公爵令嬢とだけ言っておく」
「名前の出せない公爵令嬢……あ」
「……誰だか、なんとなく察しちゃいました」
ニヤニヤしながら二人に返されて、もうゼノンは突っ込む気力も失せていた。
「まぁ、むずかしく考える必要はないんじゃないですか? ベルリエン……ごほん、公爵令嬢ってのは大体誠実ですし、突拍子もないことしなけりゃいいんじゃないですか?」
「アンジェリ……ゲフンゲフン、まともな感性を持ったご令嬢なら、面と向かって強く拒否するようなことはないでしょうし……いっそ、ご本人に聞いてみるのもよいのでは?」
「サプライズ!! とか思ってるんならやめた方がいいッス」
「ですね。バカの考え休むに似たり、ですよ」
「…………」
好き放題に言われて、ゼノンは何も返せなかった。おもちゃにされてる。そう実感しながらも何も言えない。
「マクシミリアン!!」
「いたいた、探したよ!!」
そこに、二人の少女が慌てた様子で呼びかけてきた。
「メルディア嬢に、マレーネ嬢か、どうした?」
息せき切って駆け寄ってきた二人の名を呼びながら、ゼノンは聞き返す。
「助けてくれ!!」
「アンジェがヤバいのぉ!!」
その言葉に、ゼノンはカールとシンシアと顔を見合わせた。。
「……どいていただけませんか?」
「そう、つれなくするなよ」
目の前の男に壁際へと追い詰められて、アンジェリーナはため息をつくしかない。食堂に移動しようとしたところを、目の前の男と左右を固めるその取り巻きに捕まったのだった。
男の名はアレクサンダー・リーランド侯爵令息。『精霊戦争』で戦死した先代リーランド侯爵の息子であり、適性の高さからすでに軍で訓練を受けているマギアフレームパイロットのたまごだ。
そして、そのことを鼻にかけて威張り散らすことから、同級生からの評判は最悪な生徒でもあった。
「昼食に遅れますので、どいていただけませんか?」
「飯なら俺と食わねえか? 奢るぜ」
「必要ありません。約束がございますので」
「あの赤毛の平民か?」
思いがけない一言に、言葉が詰まってしまう。
「そ……」
「隠さなくてもいいぜ? あの野郎とお前のことは高位貴族の間じゃすっかり噂の種だ」
「……それがどうしたと言うのです?」
「婚約者が失脚して焦ってるんだろうが、悪手だと思うぜ? 陛下の戦友だかなんだか知らねえが、得体の知れない平民にへつらったところで得なんざねえだろ?」
「へつらってなどいません。あの方とは同じ問題に取り組む仲間として交流をさせていただいております」
「同じ問題? ドラ息子の王太子か? 学内で淫行やらかして廃嫡は確実って話じゃねぇか。そんなやつのための取り組みって、ちょっとわからねぇなぁ?」
「あなたがわかる必要はございません」
そう答えながら、アンジェリーナは内心臍を噛んでいた。
アーノルドの犯行が、すでに漏れている……流石に耳が早い。
(……彼女の名前が漏れたら終わりだわ)
アーノルドの悪評が流れるのは別にいいが、カティア・ファルメール伯爵令嬢のことは絶対の秘密にしなければならない。ハミル侯爵令息は今のところは婚約を継続しているが、彼女のことが漏れれば、それをネタに婚約者のすげ替えや便宜を要求する事態は充分にありうる。
何より、性犯罪の被害に遭ったという事実を、第三者が声高に叫ぶような事態は阻止しなければならなかった。
間が悪いことに、この騒ぎに人が集まり始めていた。
「ま、陛下の戦友だったか? それも怪しいもんだがなぁ」
唇を噛んで考えるアンジェリーナに、おどけた口調で話題を変える。
「戦友つっても、前線で体張ったかは怪しいもんだぜ。それこそ後ろでチョロチョロしてるだけでも戦場に出たことにはなる……もしかして、別の用途で連れ回されてたんじゃねぇか?」
「……別の?」
「ほら、腰巾着やってる第一王女、ああいう女って、大体性癖こじらせてるからな。案外、そのお相手ってことも……」
パンッと、頬を打つ音がアレクサンダーの言葉を打ち切った。
品性下劣なアレクサンダーの頬を、アンジェリーナの平手が張り飛ばしていた。
「あなたにあの方の何がわかるというのです!!」
「お、おい、どうした……」
温厚可憐で知られる公爵令嬢の突然の激昂に、アレクサンダーは困惑したように身を引いた。
アンジェリーナは完全に頭に血が上っていた。あの夜、書庫で告白されたゼノンの罪。多くの命を望まぬまま奪った悔恨、今も彼の心を蝕む罪悪感……涙とともに吐き出された懺悔の数々、それを知っているから、アレクサンダーの言葉を絶対に許せなかった。この瞬間に、アンジェリーナの中で彼は『敵』になっていた。
「あの方が背負ってきたものも知らないで……言うに事欠いて王族の間夫などと……下劣にもほどがある!! 侯爵家の名が泣きますよ!! 恥を知りなさい!!」
「……言わせておけば」
アレクサンダーの額に青筋が浮かび、拳を握りしめた。
「……取り巻きを押さえろ」
「「了解」」
ゼノンの簡潔な指示にカールとシンシアはそれだけ答えて溶け込むように群衆の間に消えていった。その様子をメルディアとマレーネは呆然と見つめている。
それを背後に、ゼノンは声を張り上げた。
「こんなところにいたのか!! 探したぞ、アンジェリーナ嬢!!」
群衆がゼノンに注目する。アンジェリーナ達も。
ゼノンの姿に、皆息を飲んだ。赤く、王族魔力を輝かせるタリスマンをこれ見よがしに首から提げていたからだった。
「昼飯食うって話だったろ? メルディア嬢達も待ちくたびれているぞ」
「え?」
当然のような言葉に面食らったが、その目が軽くウィンクしてきたのを見て、意図を察した。
「……申し訳ありません。少々取り込んでいましたが、終わりました。参りましょう」
そう言って、アレクサンダーが呆然としている間に横をすり抜けてゼノンの元に駆け寄る。
「あ、こら!!」
「まてよ!!」
取り巻き二人が手を伸ばそうとするが、突然カクンと、力を失って倒れ込んだ。
「おっと、すまねぇ、怪我はないか?」
「失礼あそばせ」
わざとらしいカールとシンシアが、いつの間にか取り巻きのすぐそばにいた。
死角から当て身を打ち込んで失神させたのだ。
「お二人ともご気分がすぐれないようだ。カール、シンシア。保健室に連れて行ってやってくれ」
「了解でございまーす」
「かしこまりましたー」
軽やかな応答の後、二人そろって取り巻きを軽々と抱え上げて廊下を去って行く。
「さ、俺たちも行こう」
「待てよ」
うなるような声に振り向くと、憤怒の形相のアレクサンダーが睨み付けてきていた。
「俺の話は終わってねぇんだ。引っ込んでろ平民」
「んー、平民なのは間違いねぇけど、一応王族に委任されてんのよ、こっちは」
「だからなんだ!? バカ王子がいねぇ今は」
「俺の任務には、アンジェリーナ嬢のフォローも含まれている。例えば、礼儀知らずで無粋な輩の魔の手から守り抜く、とかな」
そう言って、踵を返す。
「テメェ……舐めたのはどっちの靴だ? 陛下か? 王女殿下か?」
「お前じゃないことだけは確かだな。正直、頼まれてもごめんだが」
「じゃあ、テメェからヤッたってことでいいんだな? そうでもなけりゃ王家に近づくことなんざ出来ねぇもんな?」
醒めた無表情のゼノンに、アレクサンダーはゆっくりと詰め寄る。
「何回腰振りゃ、お前の椅子に着ける? 後学のために教えてくれよ」
「……椅子だとか何言ってんのかよくわからんが……下劣な言動は控えとけよー」
飄々とした顔のゼノンは、そこでやおらに表情を引き締めた。
「さもなければ、先の大戦で身命を賭したお父上が泣くぞ」
「な……」
完全に予想外だったのだろう、ゼノンの言葉にアレクサンダーは凍り付いた。そのゼノンの言葉は、アンジェリーナにとっても驚くべきものだった。
「テメェ、おやじを……」
「知っている。ラカルザンドで後退する民間人の護衛部隊で殿を勤めた。当時まだひよっこだった俺とともにな」
「…………」
「民は国の根っこ、口癖のようにそう繰り返して、その信念のままに国民を守って散っていった。お前さん達に後を託すつもりでな。けどまぁ……」
そう言って、ため息をついてアレクサンダーを睨めつけた。
「残されたのがこんな破落戸じゃあ、今頃あの世で後悔してるだろうぜ」
「てめぇ!!」
ついに激昂したアレクサンダーが、ゼノンの襟を乱暴につかんだ。その瞬間、
ゼノンが軽く腰をひねり――メルディア達を含む群衆も、間近にいたアンジェリーナにさえもそうとしか見えなかった――、その動きと、掴んだ襟に引っ張られるかのように、アレクサンダーの体が引き倒されて膝を付いた。
(今のは……!?)
アンジェリーナは驚愕する。
「な? え?」
「おっと……ワックスが効き過ぎているらしい。怪我はないか?」
そう言って、軽くアレクサンダーの肩に手を置いた。するとブルりとその体を震わせて硬直する。
群衆の目にはゼノンが手を置いただけにしか見えなかっただろう。だが、アンジェリーナには、アレクサンダーの肩口にゼノンの親指が食い込んでいるのがはっきりと見えた。
「……ね、ねぇ!!」
「それはよかった。もう昼休みも残り少ない。俺たちは行くが、いいかな?」
「いい!! いいから!! 手を離せ馬鹿野郎!!」
「うんうん。円満な話し合いで解決できて何よりだ」
そう言って、ズイッとアレクサンダーに顔を近づけた。
「女性の扱いには気をつけろよ? 女だからとあんま侮ってると、足下すくわれるぞ?」
「わかったから……失せろ!!」
「へいへい」
パッと手を離すと、力を失ったように尻餅をついた。
そして、そのまま、流れるような自然な所作で。
(あ……)
アンジェリーナの手を握った。
「それじゃあ、行こう、アンジェリーナ嬢」
「は、はい……」
「おい、平民……」
「多分忘れるわ」
アレクサンダーの言葉を遮っての返答、相手は顔を真っ赤にするだけだった。
握られた手の温もりに、胸が高鳴って、注目を浴びている今の状況も、ゼノンに沸いた新たな疑問さえもアンジェリーナの目に入らなかった。
その夜、アンジェリーナはフローレンスとのやりとりを反芻していた。
「……まだ何か、隠し事をしていらっしゃるわね……」
露骨なまでの話題の転換に、わざとらしいほどのテンション。気付かない方がおかしい。
戦争に関して、フローレンスはまだ何か隠し事をしている。おそらくは、ゼノンに絡んだことだ。
「問いただして、白状してくれるとも思えないわね」
不本意ではあったが、今のところはこれで良しとするしかないだろう。自分に話さないというのは、おそらくは王家の総意だ。ここは引いて、機を待つしかないだろう。
ため息をついて、机の上の写真立ての一つを手に取った。
そこには、彼女と雰囲気の似ていて、乗馬服の腰に緩い反りの刀身をして、柄にいくつもの菱形が等間隔に並んでいる剣を佩いた銀髪の少女が、幼い頃のアンジェリーナから花冠を送られてはにかんでいる姿が映っていた。
セレスティアラ・エルディアルト公爵令嬢。それが彼女の名だ。
彼女は、母の姉の娘であり、アンジェリーナの従姉にあたる女性だ。ここから東方に存在するヴェルディア王国の公爵令嬢であり……なかなかの破天荒な女性であった。
淑女としての作法を完璧のこなしながらも、彼女が人生を捧げたのは剣と武の道だった。
腰に下げてる異様な意匠の剣はそんな彼女が愛用していた品であり、この世界において作られた記録が存在しないことから、『異空剣』と呼ばれている代物だった。
本来ならば美術品として珍重されるそれを、まるで川のせせらぎのような穏やかな所作と用法で振るい、庭に立てた棒を縄で縛ったもの――彼女は『マキワラ』とか呼んでいた――を刀を抜きざま一刀両断どころか、返す刀でさらに真っ二つにして、アンジェリーナどころか見学していた護衛の騎士さえも驚愕させていた。
徒手空拳の戦闘もずば抜けていて、ちょっと手を動かしただけで自分よりも二回りも大きい大男を軽く投げ飛ばしていた。これに関しては『アイキ』と呼んでいたと思う。襟を掴んできた相手を、腰をひねるだけで膝を付かせて取り押さえたり、手首を掴まれればそこを支点に一回転させてしまったりと、端から見ていて魔法にしか見えなかった。
彼女からは、様々なことを教えられた。とっさの時の身の守り方、大局を見据えた戦略の組み立て方、術式構築の高速化の勘所……そんなあれこれを。
(急いては事をし損じる、よ。局面を見極めて、必要ならいくらでも待ちなさい)
「……セレスお姉様」
在りし日の彼女の言葉が蘇る。
今の彼女は、行方どころか、生死さえはっきりしない。終戦直後にヴェルディアで巻き起こった政変により、公爵家そのものが滅亡に至ったからだ。
さらにその後、ヴェルディア王国そのものも隣国・ドラグベルム帝国の侵攻を受けて王家は粛正、事実上滅亡した。
アンジェリーナが大好きだった、セレスティアラの行方は杳として知れない。
「お姉様なら……どうしましたか?」
問いに答えるものは、いない。
翌日。
休日明けの午後、学院の廊下をゼノンを進んでいき、中庭に到達していた。
馬蹄型の校舎の中心にある中庭は、昼休みには生徒達の憩いの場となる。昼食をすでに終えて持ち込みのお茶を堪能したり、ランチボックスを寄せ合ってのささやかな会食の興じている光景がそこかしこにある。
そんな中をどこに行くともなくゼノンは進んでいると、その背後に二人の男女がさりげなく近づいてきた。
「状況は?」
「異常なしです、少佐。魔力放射は認められません」
「カールに同じくです。背中に異常を来した生徒はいません」
簡潔な問いに二人の男女……金髪の少年・カールと、亜麻色の髪の少女・シンシアは手短に答えた。
二人はゼノンの戦友だ。平民なので家名は持たず、終戦後は退役軍人奨学金を利用して学院に入学した優秀な二人だった。
二人はある優れた魔力特質を持っていた。それは、他者に比べて遙に鋭敏な魔力感知の能力だ。その能力に戦中は何度も命を救われた、信頼している二人である。
「しかしまぁ、まさか能力を学校の中で使うとは思いませんでしたよ」
「私もです。学友を疑ってるみたいで、少し罪悪感があります」
ゼノンは転入が決まったとき、二人に定期的な魔力感知を頼んでいたのだ。アーノルドのあまりの豹変ぶりに最初から憑依を疑っていたと言うこともあるし、もしかしたら憑依者から唆されて、と言う可能性も考慮したからだった。
だが、結果はシロ。転入してからの一週間、つぶさに調査させたが何も出なかった。
「すまないな。状況を鑑みると憑依者がいてもおかしくなかったんだが、当てが外れたらしい」
「少佐も予測を外すこと、あるんですねぇ。」
「確かに憑依を疑いますけど、あれは性根からああだったんですよ、きっと」
王族とゼノンの関係を断片的とはいえ知っている二人は、気遣うようにゼノンに告げた。
気の置けない間柄の二人だからこその言葉に、ゼノンは少し罪悪感を感じた。アーノルドの真実――転生については二人にも話していないからだ。
転生について知っているのは、現時点ではゼノンと国王夫妻、それにフローレンスとレオナルド、さらに後宮に隠居している王太后陛下のみだ。
「あの少佐が転入してくるって言うからなんだと思ったら……あの王太子のお目付役と聞いて納得しましたよ」
「私は、案外制服が似合っていることに驚きました」
「……言うな。ちょっと気にしてるんだ」
少しおもしろそうな声音のシンシアに、ゼノンは渋面を返した。
当初はこの歳で学院生なんぞ、馬子にも衣装なら御の字……と思いきや、自分でもどういうわけだか妙にしっくりきていた。長身で引き締まった体躯をしているせいか、見てくれもそれなりに悪くなく、思っていたほど場違いには見えなかった。
黒を基調としたブレザーの制服は、身分の区別なく統一されたデザインになっている。建前上は、生徒は皆平等と掲げている学院だからこそのデザインだ。
(貴族、平民と分けといて平等もへったくれもないけどな)
内心ため息をつく。
「それで?」
そこにカールがそんな声をかけてくる。
「それで、とは?」
「私たちをそろって呼び出したんです。何か相談事があるのでは?」
何もかもお見通し、と言った調子のシンシアがそう言った。そろって好奇心剥き出しのその様子に苦笑しながら、本題を切り出す。
「ちょっと相談なんだが……迷惑をかけた女性に、世話になってる礼も兼ねて何か送りたいと思っているんだが……どういうものが喜ばれると思う?」
意を決してそう言うと、二人の表情が凍り付いた。カールなど、目を大きく見開いて硬直している。
「か、カール、緊急事態だわ」
やっとこさ、と言う調子で口を開いたシンシアがそんなことをのたまう。
「あ、ああ……同感だ。こりゃ一大事だぜ……あの、あの少佐から……」
「恋愛相談って……一体何が起こっているの!?」
「三度の飯より遺跡と宝物好きのあの少佐が!! 娼館と遺跡なら迷わず遺跡を選ぶっていわれたあのゼノン・マクシミリアンが!?」
「恋愛……相談……これは凶兆だわ……実家に連絡して、避難するように伝えないと……」
「いや、これ世界滅ぶレベルだぞ? どこに避難させるんだ?」
「ああ!! せめて、せめて卒業までは猶予を……」
「……お前らなぁ、陰口は本人のいない所で叩くもんだぞ」
顔を引きつらせながら、ゼノンは力なく突っ込んだ。
「あ、いやぁ……ちょいと取り乱しちまいました、スンマセン」
「それぐらい衝撃的な事態だとご理解を頂ければ……」
へこへこと頭を下げる二人は、全く悪びれていなかった。
「まぁ、真面目に答えるなら、根本的な情報が欠けてたら答えようがねーです」
「根本的な情報?」
「お相手のことですよ。それがわからなかったら何も答えようがありません」
「……名前は言えん。公爵令嬢とだけ言っておく」
「名前の出せない公爵令嬢……あ」
「……誰だか、なんとなく察しちゃいました」
ニヤニヤしながら二人に返されて、もうゼノンは突っ込む気力も失せていた。
「まぁ、むずかしく考える必要はないんじゃないですか? ベルリエン……ごほん、公爵令嬢ってのは大体誠実ですし、突拍子もないことしなけりゃいいんじゃないですか?」
「アンジェリ……ゲフンゲフン、まともな感性を持ったご令嬢なら、面と向かって強く拒否するようなことはないでしょうし……いっそ、ご本人に聞いてみるのもよいのでは?」
「サプライズ!! とか思ってるんならやめた方がいいッス」
「ですね。バカの考え休むに似たり、ですよ」
「…………」
好き放題に言われて、ゼノンは何も返せなかった。おもちゃにされてる。そう実感しながらも何も言えない。
「マクシミリアン!!」
「いたいた、探したよ!!」
そこに、二人の少女が慌てた様子で呼びかけてきた。
「メルディア嬢に、マレーネ嬢か、どうした?」
息せき切って駆け寄ってきた二人の名を呼びながら、ゼノンは聞き返す。
「助けてくれ!!」
「アンジェがヤバいのぉ!!」
その言葉に、ゼノンはカールとシンシアと顔を見合わせた。。
「……どいていただけませんか?」
「そう、つれなくするなよ」
目の前の男に壁際へと追い詰められて、アンジェリーナはため息をつくしかない。食堂に移動しようとしたところを、目の前の男と左右を固めるその取り巻きに捕まったのだった。
男の名はアレクサンダー・リーランド侯爵令息。『精霊戦争』で戦死した先代リーランド侯爵の息子であり、適性の高さからすでに軍で訓練を受けているマギアフレームパイロットのたまごだ。
そして、そのことを鼻にかけて威張り散らすことから、同級生からの評判は最悪な生徒でもあった。
「昼食に遅れますので、どいていただけませんか?」
「飯なら俺と食わねえか? 奢るぜ」
「必要ありません。約束がございますので」
「あの赤毛の平民か?」
思いがけない一言に、言葉が詰まってしまう。
「そ……」
「隠さなくてもいいぜ? あの野郎とお前のことは高位貴族の間じゃすっかり噂の種だ」
「……それがどうしたと言うのです?」
「婚約者が失脚して焦ってるんだろうが、悪手だと思うぜ? 陛下の戦友だかなんだか知らねえが、得体の知れない平民にへつらったところで得なんざねえだろ?」
「へつらってなどいません。あの方とは同じ問題に取り組む仲間として交流をさせていただいております」
「同じ問題? ドラ息子の王太子か? 学内で淫行やらかして廃嫡は確実って話じゃねぇか。そんなやつのための取り組みって、ちょっとわからねぇなぁ?」
「あなたがわかる必要はございません」
そう答えながら、アンジェリーナは内心臍を噛んでいた。
アーノルドの犯行が、すでに漏れている……流石に耳が早い。
(……彼女の名前が漏れたら終わりだわ)
アーノルドの悪評が流れるのは別にいいが、カティア・ファルメール伯爵令嬢のことは絶対の秘密にしなければならない。ハミル侯爵令息は今のところは婚約を継続しているが、彼女のことが漏れれば、それをネタに婚約者のすげ替えや便宜を要求する事態は充分にありうる。
何より、性犯罪の被害に遭ったという事実を、第三者が声高に叫ぶような事態は阻止しなければならなかった。
間が悪いことに、この騒ぎに人が集まり始めていた。
「ま、陛下の戦友だったか? それも怪しいもんだがなぁ」
唇を噛んで考えるアンジェリーナに、おどけた口調で話題を変える。
「戦友つっても、前線で体張ったかは怪しいもんだぜ。それこそ後ろでチョロチョロしてるだけでも戦場に出たことにはなる……もしかして、別の用途で連れ回されてたんじゃねぇか?」
「……別の?」
「ほら、腰巾着やってる第一王女、ああいう女って、大体性癖こじらせてるからな。案外、そのお相手ってことも……」
パンッと、頬を打つ音がアレクサンダーの言葉を打ち切った。
品性下劣なアレクサンダーの頬を、アンジェリーナの平手が張り飛ばしていた。
「あなたにあの方の何がわかるというのです!!」
「お、おい、どうした……」
温厚可憐で知られる公爵令嬢の突然の激昂に、アレクサンダーは困惑したように身を引いた。
アンジェリーナは完全に頭に血が上っていた。あの夜、書庫で告白されたゼノンの罪。多くの命を望まぬまま奪った悔恨、今も彼の心を蝕む罪悪感……涙とともに吐き出された懺悔の数々、それを知っているから、アレクサンダーの言葉を絶対に許せなかった。この瞬間に、アンジェリーナの中で彼は『敵』になっていた。
「あの方が背負ってきたものも知らないで……言うに事欠いて王族の間夫などと……下劣にもほどがある!! 侯爵家の名が泣きますよ!! 恥を知りなさい!!」
「……言わせておけば」
アレクサンダーの額に青筋が浮かび、拳を握りしめた。
「……取り巻きを押さえろ」
「「了解」」
ゼノンの簡潔な指示にカールとシンシアはそれだけ答えて溶け込むように群衆の間に消えていった。その様子をメルディアとマレーネは呆然と見つめている。
それを背後に、ゼノンは声を張り上げた。
「こんなところにいたのか!! 探したぞ、アンジェリーナ嬢!!」
群衆がゼノンに注目する。アンジェリーナ達も。
ゼノンの姿に、皆息を飲んだ。赤く、王族魔力を輝かせるタリスマンをこれ見よがしに首から提げていたからだった。
「昼飯食うって話だったろ? メルディア嬢達も待ちくたびれているぞ」
「え?」
当然のような言葉に面食らったが、その目が軽くウィンクしてきたのを見て、意図を察した。
「……申し訳ありません。少々取り込んでいましたが、終わりました。参りましょう」
そう言って、アレクサンダーが呆然としている間に横をすり抜けてゼノンの元に駆け寄る。
「あ、こら!!」
「まてよ!!」
取り巻き二人が手を伸ばそうとするが、突然カクンと、力を失って倒れ込んだ。
「おっと、すまねぇ、怪我はないか?」
「失礼あそばせ」
わざとらしいカールとシンシアが、いつの間にか取り巻きのすぐそばにいた。
死角から当て身を打ち込んで失神させたのだ。
「お二人ともご気分がすぐれないようだ。カール、シンシア。保健室に連れて行ってやってくれ」
「了解でございまーす」
「かしこまりましたー」
軽やかな応答の後、二人そろって取り巻きを軽々と抱え上げて廊下を去って行く。
「さ、俺たちも行こう」
「待てよ」
うなるような声に振り向くと、憤怒の形相のアレクサンダーが睨み付けてきていた。
「俺の話は終わってねぇんだ。引っ込んでろ平民」
「んー、平民なのは間違いねぇけど、一応王族に委任されてんのよ、こっちは」
「だからなんだ!? バカ王子がいねぇ今は」
「俺の任務には、アンジェリーナ嬢のフォローも含まれている。例えば、礼儀知らずで無粋な輩の魔の手から守り抜く、とかな」
そう言って、踵を返す。
「テメェ……舐めたのはどっちの靴だ? 陛下か? 王女殿下か?」
「お前じゃないことだけは確かだな。正直、頼まれてもごめんだが」
「じゃあ、テメェからヤッたってことでいいんだな? そうでもなけりゃ王家に近づくことなんざ出来ねぇもんな?」
醒めた無表情のゼノンに、アレクサンダーはゆっくりと詰め寄る。
「何回腰振りゃ、お前の椅子に着ける? 後学のために教えてくれよ」
「……椅子だとか何言ってんのかよくわからんが……下劣な言動は控えとけよー」
飄々とした顔のゼノンは、そこでやおらに表情を引き締めた。
「さもなければ、先の大戦で身命を賭したお父上が泣くぞ」
「な……」
完全に予想外だったのだろう、ゼノンの言葉にアレクサンダーは凍り付いた。そのゼノンの言葉は、アンジェリーナにとっても驚くべきものだった。
「テメェ、おやじを……」
「知っている。ラカルザンドで後退する民間人の護衛部隊で殿を勤めた。当時まだひよっこだった俺とともにな」
「…………」
「民は国の根っこ、口癖のようにそう繰り返して、その信念のままに国民を守って散っていった。お前さん達に後を託すつもりでな。けどまぁ……」
そう言って、ため息をついてアレクサンダーを睨めつけた。
「残されたのがこんな破落戸じゃあ、今頃あの世で後悔してるだろうぜ」
「てめぇ!!」
ついに激昂したアレクサンダーが、ゼノンの襟を乱暴につかんだ。その瞬間、
ゼノンが軽く腰をひねり――メルディア達を含む群衆も、間近にいたアンジェリーナにさえもそうとしか見えなかった――、その動きと、掴んだ襟に引っ張られるかのように、アレクサンダーの体が引き倒されて膝を付いた。
(今のは……!?)
アンジェリーナは驚愕する。
「な? え?」
「おっと……ワックスが効き過ぎているらしい。怪我はないか?」
そう言って、軽くアレクサンダーの肩に手を置いた。するとブルりとその体を震わせて硬直する。
群衆の目にはゼノンが手を置いただけにしか見えなかっただろう。だが、アンジェリーナには、アレクサンダーの肩口にゼノンの親指が食い込んでいるのがはっきりと見えた。
「……ね、ねぇ!!」
「それはよかった。もう昼休みも残り少ない。俺たちは行くが、いいかな?」
「いい!! いいから!! 手を離せ馬鹿野郎!!」
「うんうん。円満な話し合いで解決できて何よりだ」
そう言って、ズイッとアレクサンダーに顔を近づけた。
「女性の扱いには気をつけろよ? 女だからとあんま侮ってると、足下すくわれるぞ?」
「わかったから……失せろ!!」
「へいへい」
パッと手を離すと、力を失ったように尻餅をついた。
そして、そのまま、流れるような自然な所作で。
(あ……)
アンジェリーナの手を握った。
「それじゃあ、行こう、アンジェリーナ嬢」
「は、はい……」
「おい、平民……」
「多分忘れるわ」
アレクサンダーの言葉を遮っての返答、相手は顔を真っ赤にするだけだった。
握られた手の温もりに、胸が高鳴って、注目を浴びている今の状況も、ゼノンに沸いた新たな疑問さえもアンジェリーナの目に入らなかった。
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