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第七話
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謁見の間にて、アルハザード・リーズバルトは座してそのときを待つ。深く玉座に身を沈めて、一つため息をついた。
アーノルドの居場所がわかった。その報せから、もう六時間あまり。確保に向かったゼノンと影の面々の帰還を、黙して待った。
玉座に傍らには、唇を引き結んだフローレンスが直立不動で待機していた。トレードマークの礼装軍服を身にまとった白皙の美貌は、常のそれよりもなお白かった。
怒りをたたえているときの、彼女の顔だった。
(……いつから、こうなってしまったのだ……)
胸中の疑問に答えるものはいない。答えられる人間など、どこにもいないからだ。
長男であるアーノルドは、お世辞にも優秀とはいえなかった。悪戯好きで、隙あらば家族や婚約者にちょっかいをかけるのが常だった。
そんな彼だったが、『精霊戦争』で武勇をはせた姉のフローレンスと、一〇〇年に一度の神童とたたえられる弟のレオナルドに挟まれて、自分が優秀ではない、と言うことを誰よりも理解していた。だからこそ、本人は実務や勉学よりも、人との交渉やコミュニケーションを学ぼうとしていた。
自分が間違いを犯したときに止めてくれる人や、困ったときに頼れる相手を探し、その人々と良好な関係を築くために……自分の至らなさを補ってくれる人間関係の構築こそ、一番の課題だと考えていたのだった。
その有り様に、多くの人間は一目置いていた。人は、自分の欠点を簡単には認められない生き物である。だが、この王太子は教育が始まるとき、教師たちにこう言い放ったのだ。
「私は馬鹿だ。きっと、お前たちやまだ見ぬ未来の部下たちに多大な迷惑をかけるだろう。その時、自分で解決できなくとも、せめて適切な助力をすぐに求められるようにはしたい。そのための術を、私に教えてほしい。至らない所も多いが、付き合ってもらいたい」
その言葉に教育係は皆胸を打たれた。自分は優秀ではないと素直に認めた上で、それを補う力を貸してほしいと真正面から申し出た彼の姿に、例え能力で他の兄弟に劣っても、強い矜持を持つ彼は間違いなく王族の一員であると認めるに至ったのだ。
そこから始まった教育は、アーノルドには相当な負担だっただろう。だが、それでも彼は弱音を吐かなかった。教育を受けているとき、彼の瞳には確かに王太子としての矜持を持っていたのだ。それが……
「……いつから、こうなってしまったのだろうな……」
今度は声に出して、ポツリとつぶやいた。
いつから。。本当に、全く何の前触れもなしに、アーノルドは『ああ』なってしまった。
教育係を前にして語った決意を忘れてしまったかのように逃げ回り、掴まれば王太子という立場を盾にして逃れる。どういうわけか、ことあるごとに自らを『主人公』と自称し、己が尊重されることが当然とばかりに振る舞った。
その様子は、豹変というよりも何かに取り憑かれたようにも見えて……ゼノンが疑うのも当然だった。
「陛下。今は待ちましょう」
アルハザードのつぶやきを聞いたらしいフローレンスが、落ち着かせるようにそう言った。
待つ。確かに、今はそれしか出来ない。戦友を呼び寄せ、彼に息子を託したその時から、自分にはそうすることしか出来ないのだ……
そう思い、玉座に身を沈めたとき、にわかに謁見の間の外が騒がしくなった。
一体どうしたのか、そう思った瞬間、謁見の間の扉が激しく開け放たれた。
そこからズカズカと入ってきたのはゼノンだった。挨拶もなしに玉座の前まで歩み寄ると、肩に担いでいたものをアルハザードの目の前に投げ出した。
「そら、ご注文の品だ」
そう言って転がされたのは、拘束されたアーノルドだった。変わり果てたその姿に、アルハザードは声を失った。
殴打されたのか腫れ上がった顔面、王族特有の白皙の美貌は見る影もない。半開きになった口からは、折られたのか前歯がなくなっているのが見える。両足には雑に包帯が巻かれていて血がにじんでいる。何らかの負傷をしたのが見て取れた。
「お、お前……これは……」
「やり過ぎだとか抜かすなよ? 手籠めにされたご令嬢を思えば生温いぐらいだ」
弱々しく反論しかけた王の口をただ一言で切り捨て、フローレンスに目を向ける。
「フローラ、話がある。ついてきてくれ」
「あ、ああ……」
戸惑うフローレンスを待つでもなく、踵を返して謁見の間を後にするゼノン。その背中を、慌ててフローレンスが追いかけた。
後には、呆然と満身創痍のアーノルドを見つめる国王が残された。
謁見の間を出て、王宮の廊下を行くゼノンをフローレンスは追った。謁見の間に残してきた父王のことは気がかりだったが、この状況でわざわざ名指しして連れ出す以上は、ゼノンの話も無視できないものだと思っていた。
やがてゼノンは、サロンの一つに足を踏み入れる。自分に続いてフローレンスが入室したことを確認すると、無言で扉を閉めてカギをかけた。
「話とはなんだ?」
手近なテーブルに腰を下ろしたゼノンの対面に座りながら、フローレンスは問うた。それに一瞥を返したゼノンは、懐からシガレットケースを取り出して、タバコを咥える。
相変わらず、手巻きの重いタバコを吸っているのか……自分や、彼のかつての相棒が何度注意しても直らなかった彼の悪癖にため息をついた。
そんなフローレンスの心情を知ってか知らずか、無言でタバコに火を点し、一服して紫煙を吐き出した。
その煙の向こう側で、ゼノンが口を開く。
「……やつを一度、魔力も体調も何もかも、一から調べろ」
「それは、どういう……」
「俺の素性を知らなかった」
それを言われた瞬間、フローレンスは自分の足下が崩れ去るような感覚に陥った。
この感覚は、よく知っている。ゼノンの相棒の死を知らされたときにも味わった……絶望の、感覚。
「な……」
苦労して、言葉を絞り出す。
「何を、言うんだ……」
「何をクソも事実しか言っていない。あの戦争での俺の立場を知らなかったし、引き合わされたときは多少は知っている風だったが、おそらく俺の本当の爵位も、誰の関係者であるかも、あの様子では知らんぞ」
「だが、背中に痕跡はなかったんだぞ!! そんな、そんなことが……」
「背中に痕跡がなかったのなら!!」
苦し紛れの反論を、ゼノンは鋭く遮った。
「奴らは、新しい戦術を編み出したと言うことだ。どんな手を使ってでも、アーノルドの化けの皮を……アーニーの皮を被ったやつの正体を突き止めろ」
アーニー。久しぶりに聞いた。アーノルドの愛称。こちらに来てからは頑なに使わなかったそれを、ゼノンはあえて使った。おそらく、ことの重大さを、フローレンスに実感させるために。
卓上の灰皿にタバコを押しつけ、立ち上がる。
そのまま歩き出し、扉を解錠して口を開いた。
「アルにも言ったがな……手心を加えるな。次に何かあるときは、この王宮の中だぞ」
扉を開いて、ゼノンはサロンを後にした。
フローレンスが一人取り残された室内に、タバコの残り香が燻っていた。
夜闇の遠く、彼方で砲声と爆音が遠雷のごとく響き渡る。
前線基地の兵舎を出て扉を閉めたゼノンは、やむことのない砲声に慣れきった自分にため息をついた。
兵舎から司令所へと歩きながら、周りを見回す。真っ先に目につくのは、半壊した建物の陰に潜むように周辺を警戒する、金属の巨人の姿だった。
どこか甲冑を思わせる曲線で構成された装甲、その表面のそこかしこを魔力腺がは知り、それが稼働状態であることを見るものに実感させる。左肩部装甲から伸びたサブアームで大型の盾を携え、右のマニピュレーターには炸薬式の騎兵銃が握られている。
それらは全て、巨人の全高一七メートルという巨体に見合ったサイズであった。
第二世代型マギアフレーム・『イクスレイヴ』。試作段階にあった魔力転換炉搭載の有人二足歩行型魔導兵器を急遽制式化、前線へと配備された代物である。
搭乗者の魔力を増幅・転換して稼働するその兵器は、此度の『精霊戦争』において、めざましい戦果を上げていた。二ヶ月前の港湾都市奪還作戦では、一個大隊の『イクスレイヴ』が投入され、占領していた精霊の殲滅に成功した。
同時に、作戦に参加した一個大隊……大半が徴兵された子供達で構成された部隊の三分の一が帰ってこなかった。
その全員の名前を、ゼノンは覚えていた。司令所の道すがら、一人一人の顔と名前を思い出し、心の中で追悼した。その時だった。
道の隅、弾薬庫入り口の横で、両膝を抱くようにうずくまる一人の少年に気付く。
「……マルコ?」
何故こんなところに? 怪訝に思って少年の名を呼びながら歩み寄る。
すると、何かをひたすらブツブツとつぶやいていることに気がついた。耳を澄ます。
「狙うなら頭だ……一発で楽にしてやれ……あいつらはもう仲間じゃない……」
「マルコ……」
ただひたすら、それらを繰り返していた。壊れたラジオのように。
かける言葉が見つからない。振り切るように、ゼノンは司令所へと向かい、ドアを開いて室内に足を踏み入れた。
自分の姿に気付いた当直人員――やはり、その多くは子供だった――が敬礼する。それに答礼しながら、奥のオフィス……とは名ばかりの、ついたてに囲まれた独立スペースに入り、そこのチェアに腰を下ろした。懐から取り出したシガレットケースの中身を一本咥え、火を点す。
現状を思い、紫煙とともにため息をつく。今現在、戦況は人類に有利に傾いていた。『マギアフレーム』の存在は、劣勢だった戦況を覆すに至ったのだ。多くの子供達の犠牲の上で。
彼らの存在は、戦争が終わってから顧みられることはあるのだろうか……詮無い思考に陥りかけたその時だった。
「隣、いいかな?」
かけられた声に顔を上げると、薄紫色の髪を首の後ろで適当にまとめてぶら下げた、知った顔がいた。
「僕も一服したいんだ」
この部隊の狙撃手だ。タバコの箱を振りながら、聞いてくる。
目線で、座るように促す……前に、どっかと狙撃手は対面に腰を下ろしていた。
「『聖女』は寝たかい?」
「さっき、ようやく寝付いたよ。五七時間ぶりの休息だ」
タバコを咥えた狙撃手に、自分の手巻きの先端を吹かしながら近づける。
「ありがとう」
意図を察した狙撃手は、自分のタバコの先端を突き合わせて、火を移した。
そのまま深々と吸い込み、うまそうに、幸せそうに紫煙を吐き出した。その光景に苦笑する。
「はぁ……これがないとやってらんないね」
「同感だ。健康なぞ知ったことかってな」
しみじみとした狙撃手の言葉に同意する。上層部では前線の兵士の間で蔓延する飲酒喫煙への対応に頭を悩ませていると言うが、三分後に頭を吹き飛ばされているかも知れない環境で、三〇年後の肝硬変や肺がんを心配する兵士など存在しなかった。
皆誰もが、各々のやり方で現実から目をそらした。目の前の、地獄から。
「マルコのやつ、な……」
「もうダメなんだろ? わかってる。今し方編成から外したよ」
「すまない」
「なーんで、君が謝るのさ? 自分がちょっと恵まれてるからって、思い上がらないでほしいね」
思っていることを一から十まで先回りしての言葉に、ゼノンは苦笑を返すことしか出来なかった。
しばし沈黙。チリチリという、タバコが燃える音だけがオフィスに響く。
「……戦争が終わったら、どうなるんだろうな。上の奴らは……アル達はどうするつもりなんだろうな」
「どうにもならないさ」
ゼノンのポツリとしたつぶやきに、狙撃手は達観した口調で答えて灰皿に吸い殻を押しつけた。
「少年兵が前線の主役になってる現状だって、上の奴らにすれば一石二鳥ってところだよ。戦災孤児への対応が最小限ですむからね」
そこで二本目を取り出して、今度は自分のマッチで火を点した。
「むしろ、今お貴族様達が考えているのは、戦後の『マギアフレーム』輸出事業の整備だよ。我らがリーズバルトは『マギアフレーム』の産みの親にしてその運用に関するパイオニアだ。各国へのアドバンテージとそれがもたらす利益はすさまじいものになる……ってのが、ウチの親父含めたこの国の貴族が弾いてる皮算用だよ」
「……辺境伯爵家はシニカルだな」
「親の見栄で志願させられれば、腐りもするさ」
苦笑しながら紫煙を吐き出した。
目の前の狙撃手は、辺境伯の嫡子だ。西の国境に国を守る盾として存在している以上は、徴兵免除などもってのほか……それが、狙撃手の父である当代辺境伯の考えだと話してくれたことがある。
同じ考えは、西のロズウェル侯爵家も持っているようだった。だがこちらは侯爵本人が志願し、前線で『マギアフレーム』を駆って戦っている。
「立場があると大変だな」
「それを君が言うかい?」
そう言って、互い苦笑し合ったときだった。
にわかに、司令所の方が騒がしくなった。横柄な命令口調の混じる『聖女』という単語に顔を見合わせた二人は、慌ててオフィスから飛び出した。
「なんの騒ぎだ!?」
開口一番叱責し、いつここのきたのか、軍服姿の中年男とその部下らしい金髪の女性を睨み付ける。
大尉と中尉……階級はこちらが上だ。
「これは一体何の騒ぎだ? 説明してもらおうか? 大尉」
「お、落ち着いてください少佐。我々は司令部からの命令の伝達に参りました」
「命令? 聞かせろ」
「は。ライケンバルトに取り残された民間人を救出せよ。『聖女』の力で以てあたられたし。とのことです」
「俺が行く。詳しい座標をよこせ」
「そ、それは出来ません。『聖女』に遂行させるよう厳命されておりまして……」
遂行は『聖女』に。それだけでこの命令の裏を察した。この司令所にいる全員が。
「取り残された民間人など、確かめるまでもなく手遅れだ。一瞬で吹き飛ばしてやるのが慈悲というものだ」
「な……」
ゼノンのとりつく島もない言葉に、大尉の頭に血が上ったようだった。
「な、何を言うのです!! 我が王国の国民に向かって……恥を知りなさい!!」
「その言葉は当代元帥のノーラン公爵閣下に言ってやるんだな」
「な、なにぃ?」
「今のは閣下のお言葉だ。まともに学もないが記憶力だけは生来よくてね、一言一句忘れたくても消えちゃくれないんだ」
皮肉たっぷりのゼノンの答えに、大尉は絶句した。
「……マクシミリアン少佐。この命令を司令部の良心と解釈してはいただけないでしょうか?」
金髪の中尉が、ゼノンに向かって躊躇いがちにそう言った。
その言葉で、こんな命令が下された理由を……それまでに察していた裏が確信に至った。
「そうかそうか、良心か」
「はい。ですから……」
「その良心の根拠――取り残されている貴族は何者だ? 答えろ」
鋭いゼノンの切り返しに、中尉もそれっきり絶句してしまった。
司令所内に、重い沈黙が降りた。
「それはあたしも聞いておきたいね」
それを破ったのは、涼やかな少女の声だった。
弾かれるように振り向くと、つややかな黒髪にミルクのような白い肌を持つ少女が……さっき寝かしつけたはずの『聖女』が立っていた。
「イリス……お前……」
「バカ!! なんで起きてくるんだい!!」
絶句しかけるゼノンにかぶせるように、狙撃手が叫んだ。
「バカはないじゃない。バカは。あんな大騒ぎしてたらいやでも起きるわよ」
「イリス。お前が出る必要はない。俺が行ってくるから……」
「行って、吹っ飛ばしてくるつもりでしょ?」
図星を突かれて絶句してしまう。
「あんたこそ引っ込んでなさい。こんな繊細な作戦には向かないでしょ? あんた達はさ」
「だけど……やっと、やっと休めるんだろうが!! 五七時間だぞ!! これ以上やったら……」
ポンと、言葉を遮るように頭をなでられた。
「あたしは死なないよ。死にたくっても『聖女』としての務めが生かし続けるさ。それはあんたもよく知ってるだろ?」
「…………」
何も言えなくなったゼノンを捨て置き、イリスは大尉に向き直った。
「イリス・アルフェノス中佐。現時刻を以て司令部の命令を受領、『聖女』の魔力と『装星機』の力で以て、遂行いたします」
「お、おお、ありがとうございます……」
礼を言って泣き出した大尉をそのままに、中尉から詳しい作戦目標を受け取るイリスの姿に、ゼノンは言わずにいられなかった。
「……なんでだよ?」
「んー?」
「なんで、平気でこんなこと出来るんだよ!! このままじゃ、お前の方が……」
「助けられる命があるからよ」
イリスの思いがけない返答に、ゼノンは言葉を失う。
そのゼノンの頭を、再びなでた。
「あんたも、もう少ししたらきっとわかるわよ」
「…………」
そう言ってイリスは、ウィンク一つ残して司令部を出る。その背中を追いかけた。
「待てよ!!」
「まだ何かあんの?」
「……援護ぐらいは、させてくれ」
「オッケー、邪魔はしないでね」
「そっくりそのまま返してやる」
そう言って、十分な距離を取って二人並び、右手を天に掲げて、顕現の言葉を唱えた。
『『来たれ』』
瑠璃色の閃光が、前線基地を包み込んだ。
「……クソ」
起き抜けに悪態をついた。戦時中の中でも最悪の部類の記憶を夢に見てしまった。
昔を知る少年が敵かも知れない……その事実は、ゼノンの精神を思った以上に痛めつけているらしかった。だから、あんな夢を見てしまったのだろう。着替えもせずに寝床に倒れ込んだことも一因だと思えた。
時計に目をやると、午前九時を回っていた。今頃登校した所で、意味などなかった。
今日はサボる。サボって本業にいそしむ。そう心に決めて、ゼノンは起き上がった。
腰に下げたままの拳銃が、やけに重たかった。
アーノルドの居場所がわかった。その報せから、もう六時間あまり。確保に向かったゼノンと影の面々の帰還を、黙して待った。
玉座に傍らには、唇を引き結んだフローレンスが直立不動で待機していた。トレードマークの礼装軍服を身にまとった白皙の美貌は、常のそれよりもなお白かった。
怒りをたたえているときの、彼女の顔だった。
(……いつから、こうなってしまったのだ……)
胸中の疑問に答えるものはいない。答えられる人間など、どこにもいないからだ。
長男であるアーノルドは、お世辞にも優秀とはいえなかった。悪戯好きで、隙あらば家族や婚約者にちょっかいをかけるのが常だった。
そんな彼だったが、『精霊戦争』で武勇をはせた姉のフローレンスと、一〇〇年に一度の神童とたたえられる弟のレオナルドに挟まれて、自分が優秀ではない、と言うことを誰よりも理解していた。だからこそ、本人は実務や勉学よりも、人との交渉やコミュニケーションを学ぼうとしていた。
自分が間違いを犯したときに止めてくれる人や、困ったときに頼れる相手を探し、その人々と良好な関係を築くために……自分の至らなさを補ってくれる人間関係の構築こそ、一番の課題だと考えていたのだった。
その有り様に、多くの人間は一目置いていた。人は、自分の欠点を簡単には認められない生き物である。だが、この王太子は教育が始まるとき、教師たちにこう言い放ったのだ。
「私は馬鹿だ。きっと、お前たちやまだ見ぬ未来の部下たちに多大な迷惑をかけるだろう。その時、自分で解決できなくとも、せめて適切な助力をすぐに求められるようにはしたい。そのための術を、私に教えてほしい。至らない所も多いが、付き合ってもらいたい」
その言葉に教育係は皆胸を打たれた。自分は優秀ではないと素直に認めた上で、それを補う力を貸してほしいと真正面から申し出た彼の姿に、例え能力で他の兄弟に劣っても、強い矜持を持つ彼は間違いなく王族の一員であると認めるに至ったのだ。
そこから始まった教育は、アーノルドには相当な負担だっただろう。だが、それでも彼は弱音を吐かなかった。教育を受けているとき、彼の瞳には確かに王太子としての矜持を持っていたのだ。それが……
「……いつから、こうなってしまったのだろうな……」
今度は声に出して、ポツリとつぶやいた。
いつから。。本当に、全く何の前触れもなしに、アーノルドは『ああ』なってしまった。
教育係を前にして語った決意を忘れてしまったかのように逃げ回り、掴まれば王太子という立場を盾にして逃れる。どういうわけか、ことあるごとに自らを『主人公』と自称し、己が尊重されることが当然とばかりに振る舞った。
その様子は、豹変というよりも何かに取り憑かれたようにも見えて……ゼノンが疑うのも当然だった。
「陛下。今は待ちましょう」
アルハザードのつぶやきを聞いたらしいフローレンスが、落ち着かせるようにそう言った。
待つ。確かに、今はそれしか出来ない。戦友を呼び寄せ、彼に息子を託したその時から、自分にはそうすることしか出来ないのだ……
そう思い、玉座に身を沈めたとき、にわかに謁見の間の外が騒がしくなった。
一体どうしたのか、そう思った瞬間、謁見の間の扉が激しく開け放たれた。
そこからズカズカと入ってきたのはゼノンだった。挨拶もなしに玉座の前まで歩み寄ると、肩に担いでいたものをアルハザードの目の前に投げ出した。
「そら、ご注文の品だ」
そう言って転がされたのは、拘束されたアーノルドだった。変わり果てたその姿に、アルハザードは声を失った。
殴打されたのか腫れ上がった顔面、王族特有の白皙の美貌は見る影もない。半開きになった口からは、折られたのか前歯がなくなっているのが見える。両足には雑に包帯が巻かれていて血がにじんでいる。何らかの負傷をしたのが見て取れた。
「お、お前……これは……」
「やり過ぎだとか抜かすなよ? 手籠めにされたご令嬢を思えば生温いぐらいだ」
弱々しく反論しかけた王の口をただ一言で切り捨て、フローレンスに目を向ける。
「フローラ、話がある。ついてきてくれ」
「あ、ああ……」
戸惑うフローレンスを待つでもなく、踵を返して謁見の間を後にするゼノン。その背中を、慌ててフローレンスが追いかけた。
後には、呆然と満身創痍のアーノルドを見つめる国王が残された。
謁見の間を出て、王宮の廊下を行くゼノンをフローレンスは追った。謁見の間に残してきた父王のことは気がかりだったが、この状況でわざわざ名指しして連れ出す以上は、ゼノンの話も無視できないものだと思っていた。
やがてゼノンは、サロンの一つに足を踏み入れる。自分に続いてフローレンスが入室したことを確認すると、無言で扉を閉めてカギをかけた。
「話とはなんだ?」
手近なテーブルに腰を下ろしたゼノンの対面に座りながら、フローレンスは問うた。それに一瞥を返したゼノンは、懐からシガレットケースを取り出して、タバコを咥える。
相変わらず、手巻きの重いタバコを吸っているのか……自分や、彼のかつての相棒が何度注意しても直らなかった彼の悪癖にため息をついた。
そんなフローレンスの心情を知ってか知らずか、無言でタバコに火を点し、一服して紫煙を吐き出した。
その煙の向こう側で、ゼノンが口を開く。
「……やつを一度、魔力も体調も何もかも、一から調べろ」
「それは、どういう……」
「俺の素性を知らなかった」
それを言われた瞬間、フローレンスは自分の足下が崩れ去るような感覚に陥った。
この感覚は、よく知っている。ゼノンの相棒の死を知らされたときにも味わった……絶望の、感覚。
「な……」
苦労して、言葉を絞り出す。
「何を、言うんだ……」
「何をクソも事実しか言っていない。あの戦争での俺の立場を知らなかったし、引き合わされたときは多少は知っている風だったが、おそらく俺の本当の爵位も、誰の関係者であるかも、あの様子では知らんぞ」
「だが、背中に痕跡はなかったんだぞ!! そんな、そんなことが……」
「背中に痕跡がなかったのなら!!」
苦し紛れの反論を、ゼノンは鋭く遮った。
「奴らは、新しい戦術を編み出したと言うことだ。どんな手を使ってでも、アーノルドの化けの皮を……アーニーの皮を被ったやつの正体を突き止めろ」
アーニー。久しぶりに聞いた。アーノルドの愛称。こちらに来てからは頑なに使わなかったそれを、ゼノンはあえて使った。おそらく、ことの重大さを、フローレンスに実感させるために。
卓上の灰皿にタバコを押しつけ、立ち上がる。
そのまま歩き出し、扉を解錠して口を開いた。
「アルにも言ったがな……手心を加えるな。次に何かあるときは、この王宮の中だぞ」
扉を開いて、ゼノンはサロンを後にした。
フローレンスが一人取り残された室内に、タバコの残り香が燻っていた。
夜闇の遠く、彼方で砲声と爆音が遠雷のごとく響き渡る。
前線基地の兵舎を出て扉を閉めたゼノンは、やむことのない砲声に慣れきった自分にため息をついた。
兵舎から司令所へと歩きながら、周りを見回す。真っ先に目につくのは、半壊した建物の陰に潜むように周辺を警戒する、金属の巨人の姿だった。
どこか甲冑を思わせる曲線で構成された装甲、その表面のそこかしこを魔力腺がは知り、それが稼働状態であることを見るものに実感させる。左肩部装甲から伸びたサブアームで大型の盾を携え、右のマニピュレーターには炸薬式の騎兵銃が握られている。
それらは全て、巨人の全高一七メートルという巨体に見合ったサイズであった。
第二世代型マギアフレーム・『イクスレイヴ』。試作段階にあった魔力転換炉搭載の有人二足歩行型魔導兵器を急遽制式化、前線へと配備された代物である。
搭乗者の魔力を増幅・転換して稼働するその兵器は、此度の『精霊戦争』において、めざましい戦果を上げていた。二ヶ月前の港湾都市奪還作戦では、一個大隊の『イクスレイヴ』が投入され、占領していた精霊の殲滅に成功した。
同時に、作戦に参加した一個大隊……大半が徴兵された子供達で構成された部隊の三分の一が帰ってこなかった。
その全員の名前を、ゼノンは覚えていた。司令所の道すがら、一人一人の顔と名前を思い出し、心の中で追悼した。その時だった。
道の隅、弾薬庫入り口の横で、両膝を抱くようにうずくまる一人の少年に気付く。
「……マルコ?」
何故こんなところに? 怪訝に思って少年の名を呼びながら歩み寄る。
すると、何かをひたすらブツブツとつぶやいていることに気がついた。耳を澄ます。
「狙うなら頭だ……一発で楽にしてやれ……あいつらはもう仲間じゃない……」
「マルコ……」
ただひたすら、それらを繰り返していた。壊れたラジオのように。
かける言葉が見つからない。振り切るように、ゼノンは司令所へと向かい、ドアを開いて室内に足を踏み入れた。
自分の姿に気付いた当直人員――やはり、その多くは子供だった――が敬礼する。それに答礼しながら、奥のオフィス……とは名ばかりの、ついたてに囲まれた独立スペースに入り、そこのチェアに腰を下ろした。懐から取り出したシガレットケースの中身を一本咥え、火を点す。
現状を思い、紫煙とともにため息をつく。今現在、戦況は人類に有利に傾いていた。『マギアフレーム』の存在は、劣勢だった戦況を覆すに至ったのだ。多くの子供達の犠牲の上で。
彼らの存在は、戦争が終わってから顧みられることはあるのだろうか……詮無い思考に陥りかけたその時だった。
「隣、いいかな?」
かけられた声に顔を上げると、薄紫色の髪を首の後ろで適当にまとめてぶら下げた、知った顔がいた。
「僕も一服したいんだ」
この部隊の狙撃手だ。タバコの箱を振りながら、聞いてくる。
目線で、座るように促す……前に、どっかと狙撃手は対面に腰を下ろしていた。
「『聖女』は寝たかい?」
「さっき、ようやく寝付いたよ。五七時間ぶりの休息だ」
タバコを咥えた狙撃手に、自分の手巻きの先端を吹かしながら近づける。
「ありがとう」
意図を察した狙撃手は、自分のタバコの先端を突き合わせて、火を移した。
そのまま深々と吸い込み、うまそうに、幸せそうに紫煙を吐き出した。その光景に苦笑する。
「はぁ……これがないとやってらんないね」
「同感だ。健康なぞ知ったことかってな」
しみじみとした狙撃手の言葉に同意する。上層部では前線の兵士の間で蔓延する飲酒喫煙への対応に頭を悩ませていると言うが、三分後に頭を吹き飛ばされているかも知れない環境で、三〇年後の肝硬変や肺がんを心配する兵士など存在しなかった。
皆誰もが、各々のやり方で現実から目をそらした。目の前の、地獄から。
「マルコのやつ、な……」
「もうダメなんだろ? わかってる。今し方編成から外したよ」
「すまない」
「なーんで、君が謝るのさ? 自分がちょっと恵まれてるからって、思い上がらないでほしいね」
思っていることを一から十まで先回りしての言葉に、ゼノンは苦笑を返すことしか出来なかった。
しばし沈黙。チリチリという、タバコが燃える音だけがオフィスに響く。
「……戦争が終わったら、どうなるんだろうな。上の奴らは……アル達はどうするつもりなんだろうな」
「どうにもならないさ」
ゼノンのポツリとしたつぶやきに、狙撃手は達観した口調で答えて灰皿に吸い殻を押しつけた。
「少年兵が前線の主役になってる現状だって、上の奴らにすれば一石二鳥ってところだよ。戦災孤児への対応が最小限ですむからね」
そこで二本目を取り出して、今度は自分のマッチで火を点した。
「むしろ、今お貴族様達が考えているのは、戦後の『マギアフレーム』輸出事業の整備だよ。我らがリーズバルトは『マギアフレーム』の産みの親にしてその運用に関するパイオニアだ。各国へのアドバンテージとそれがもたらす利益はすさまじいものになる……ってのが、ウチの親父含めたこの国の貴族が弾いてる皮算用だよ」
「……辺境伯爵家はシニカルだな」
「親の見栄で志願させられれば、腐りもするさ」
苦笑しながら紫煙を吐き出した。
目の前の狙撃手は、辺境伯の嫡子だ。西の国境に国を守る盾として存在している以上は、徴兵免除などもってのほか……それが、狙撃手の父である当代辺境伯の考えだと話してくれたことがある。
同じ考えは、西のロズウェル侯爵家も持っているようだった。だがこちらは侯爵本人が志願し、前線で『マギアフレーム』を駆って戦っている。
「立場があると大変だな」
「それを君が言うかい?」
そう言って、互い苦笑し合ったときだった。
にわかに、司令所の方が騒がしくなった。横柄な命令口調の混じる『聖女』という単語に顔を見合わせた二人は、慌ててオフィスから飛び出した。
「なんの騒ぎだ!?」
開口一番叱責し、いつここのきたのか、軍服姿の中年男とその部下らしい金髪の女性を睨み付ける。
大尉と中尉……階級はこちらが上だ。
「これは一体何の騒ぎだ? 説明してもらおうか? 大尉」
「お、落ち着いてください少佐。我々は司令部からの命令の伝達に参りました」
「命令? 聞かせろ」
「は。ライケンバルトに取り残された民間人を救出せよ。『聖女』の力で以てあたられたし。とのことです」
「俺が行く。詳しい座標をよこせ」
「そ、それは出来ません。『聖女』に遂行させるよう厳命されておりまして……」
遂行は『聖女』に。それだけでこの命令の裏を察した。この司令所にいる全員が。
「取り残された民間人など、確かめるまでもなく手遅れだ。一瞬で吹き飛ばしてやるのが慈悲というものだ」
「な……」
ゼノンのとりつく島もない言葉に、大尉の頭に血が上ったようだった。
「な、何を言うのです!! 我が王国の国民に向かって……恥を知りなさい!!」
「その言葉は当代元帥のノーラン公爵閣下に言ってやるんだな」
「な、なにぃ?」
「今のは閣下のお言葉だ。まともに学もないが記憶力だけは生来よくてね、一言一句忘れたくても消えちゃくれないんだ」
皮肉たっぷりのゼノンの答えに、大尉は絶句した。
「……マクシミリアン少佐。この命令を司令部の良心と解釈してはいただけないでしょうか?」
金髪の中尉が、ゼノンに向かって躊躇いがちにそう言った。
その言葉で、こんな命令が下された理由を……それまでに察していた裏が確信に至った。
「そうかそうか、良心か」
「はい。ですから……」
「その良心の根拠――取り残されている貴族は何者だ? 答えろ」
鋭いゼノンの切り返しに、中尉もそれっきり絶句してしまった。
司令所内に、重い沈黙が降りた。
「それはあたしも聞いておきたいね」
それを破ったのは、涼やかな少女の声だった。
弾かれるように振り向くと、つややかな黒髪にミルクのような白い肌を持つ少女が……さっき寝かしつけたはずの『聖女』が立っていた。
「イリス……お前……」
「バカ!! なんで起きてくるんだい!!」
絶句しかけるゼノンにかぶせるように、狙撃手が叫んだ。
「バカはないじゃない。バカは。あんな大騒ぎしてたらいやでも起きるわよ」
「イリス。お前が出る必要はない。俺が行ってくるから……」
「行って、吹っ飛ばしてくるつもりでしょ?」
図星を突かれて絶句してしまう。
「あんたこそ引っ込んでなさい。こんな繊細な作戦には向かないでしょ? あんた達はさ」
「だけど……やっと、やっと休めるんだろうが!! 五七時間だぞ!! これ以上やったら……」
ポンと、言葉を遮るように頭をなでられた。
「あたしは死なないよ。死にたくっても『聖女』としての務めが生かし続けるさ。それはあんたもよく知ってるだろ?」
「…………」
何も言えなくなったゼノンを捨て置き、イリスは大尉に向き直った。
「イリス・アルフェノス中佐。現時刻を以て司令部の命令を受領、『聖女』の魔力と『装星機』の力で以て、遂行いたします」
「お、おお、ありがとうございます……」
礼を言って泣き出した大尉をそのままに、中尉から詳しい作戦目標を受け取るイリスの姿に、ゼノンは言わずにいられなかった。
「……なんでだよ?」
「んー?」
「なんで、平気でこんなこと出来るんだよ!! このままじゃ、お前の方が……」
「助けられる命があるからよ」
イリスの思いがけない返答に、ゼノンは言葉を失う。
そのゼノンの頭を、再びなでた。
「あんたも、もう少ししたらきっとわかるわよ」
「…………」
そう言ってイリスは、ウィンク一つ残して司令部を出る。その背中を追いかけた。
「待てよ!!」
「まだ何かあんの?」
「……援護ぐらいは、させてくれ」
「オッケー、邪魔はしないでね」
「そっくりそのまま返してやる」
そう言って、十分な距離を取って二人並び、右手を天に掲げて、顕現の言葉を唱えた。
『『来たれ』』
瑠璃色の閃光が、前線基地を包み込んだ。
「……クソ」
起き抜けに悪態をついた。戦時中の中でも最悪の部類の記憶を夢に見てしまった。
昔を知る少年が敵かも知れない……その事実は、ゼノンの精神を思った以上に痛めつけているらしかった。だから、あんな夢を見てしまったのだろう。着替えもせずに寝床に倒れ込んだことも一因だと思えた。
時計に目をやると、午前九時を回っていた。今頃登校した所で、意味などなかった。
今日はサボる。サボって本業にいそしむ。そう心に決めて、ゼノンは起き上がった。
腰に下げたままの拳銃が、やけに重たかった。
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