南ちゃんはいつも嘘つき!

霜月@サブタイ改稿中

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7通 ボヤボヤするよりハッキリ言った方が相手には伝わる件

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「これ……ハンカチ……ありがとう」


 なんだか照れくさい。ポケットから借りたハンカチを取り出し、渡す。『ありがとう』だけじゃなくて、謝らなきゃ。


「えっと……その……ごめん!!!」


 南が手を離してくれないので、片手を繋いだまま、頭を下げる。謝っているというより、お願いしますとでも言っているような格好である。


「べつにいいよ、もう。ていうかさぁ、ハンカチ借りたなら洗って返すとかしない? 普通」
「えっ……確かに……」
「次遊ぶときにハンカチ返してよ」
「う、うん」


 さりげなく、次も会う約束をしたような気がするのは気のせいだろうか。繋がれた手を離そうと、振ってみる。離してくれない。


 南の顔を見ると、つん、と横に逸らされた。どうやら離して欲しくないらしい。もう、仕方ないなぁ。


 俺たちは友達。友達だよ。そう思いながら、南の手のひらに自分の手のひらを合わせ、指先を絡めた。


「海里くん……?」
「次、どこ行く?!」


 絡めた指先のせいで、南の顔がまともに見れない。恥ずかしくて顔が熱い。南を引っ張るように歩き出す。


「ちょっ……?! 海里くん?!」
「何?!」


 南に呼ばれ振り返る。手が繋がれた先に居る南を見た。頬が薄紅色に染まり、目が泳いでいる。なんで赤くなって……。


「南ちゃん……?」
「あ、いや、べつに……えと……海里くんの家に行きたい」
「ぇえ~~……いいけど……」


 南の『家に行きたい』という言葉に鼓動が早くなる。友達だし、前回みたいなことは起こさない。


 そう思うのに、繋がれた手から感じる、この感情の昂りはなんだろう。


 俺にはまだ、分からない。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー
 

 ーー海里の家



「はい、お茶」
「ありがとう~~」


 お茶の入ったコップを南へ渡し、隣に腰を下ろす。段々、お互いの距離が近くなっている気がする。


「僕ね」
「え?」


 南が体育座りをして、俯き、話し始めた。南から醸し出される空気が重い。


「親が再婚なんだよねー」
「はい?」


 唐突に始まる南自身の話に少し戸惑う。


「べつに良いんだけどー。人の人生に口出しするつもりないしぃ。ただ、再婚相手が僕のこと受け入れてくれなくて」
「まぁ、あるよね……」


 なんて返していいか分からない。ただ、俯く南を、じぃっと見つめる。


「受け入れられない理由は、僕が男性を好きだから」
「へ?」


 突然のカミングアウト。え? 男性が好き? えっ? 待って。てことは、もしかして、もしかすると、俺のこと本気で好きだったりする?!?!


 そもそも!!! 一度、身体の関係を持っている!!! その時点で気づくべきだった?!?! でも気付いたから何?! 


 別にそんなの、誰を好きになろうが個人の自由!!! な、はず!!! いや問題はそこじゃない!!! 南ちゃんは俺のことが好きなのか? ってこと!!!


 好きだったらそれは友達としてーー。


「海里くん?」
「あ、ごめん。びっくりし過ぎて意識飛んでた」
「だから、家が気まずいんだよねー」
「そ、そうなんだ……」


 何これ?! 何か罠に嵌められてる?!?! 軽くパニックなんだけど!!!


 気持ちを落ち着かせるように、コップに入ったお茶を一気に飲み干した。


 ごくごく。はぁっ!!!


「良い飲みっぷりだねぇ」
「え?! あ、うん?!」
「ねぇ、キスしない?」
「はい?!?! そういうのは好きな人と……」
「うん?」
「うん?!?!」


 どういうことぉおおぉおおおぉ?!?!?!


 自分の理解が追いつく前に、南の手が俺の顎に添えられた。


 *


 めっちゃパニクってんな。


 全然気づいてくれないから、敢えて、話してみたのだけど、結構効果アリだったかなぁ?


 海里を更に追い込むために、海里の顎を軽く持ち上げる。


「待って待って待って!!! キスとか俺達、そういうアレはちょっーーんっ」


 うるさ。どうせキスしたくないとか言うだけでしょ。動く口唇に強引に唇を重ねた。


「ーーはぁっ…ちょっと!!! 俺の気持ちとかそういうのはっ……」
「ほっぺ真っ赤にしてる人に気持ち考えろとか言われても『もっとしてぇ』って言ってるようにしか僕にはみえませ~~ん」
「なっっ!!!」


 頬を赤く染め、挙動不審になる海里が可愛くて、笑みが溢れる。今日はこの辺で勘弁するかぁ。立ち上がり、カバンを肩に掛けた。


「じゃあ、僕帰るね」
「帰るの?!?!」
「え? 何? もっとシて欲しかった?」
「違っ!!!」
「また今度ね、海里くん」


 ちゅ。


 海里の額に口付けする。耳まで赤くなる海里に思わず、ぷっと笑ってしまう。ニヤける口元を手で押さえながら、海里の家を後にした。






 


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