南ちゃんはいつも嘘つき!

霜月@サブタイ改稿中

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2通 余計なことは言わない方がいい件

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「海里くんって一人暮らしなんだね」
「大学生だからね」


 1DKの少し古い賃貸アパートだ。汚いなんて言っていたくせに、部屋の中はあまり散らかっておらず、意外と綺麗にしている。


 こまめに返信をくれる海里らしい。


 ずっと会いたいと願い続け、一年越しに叶った想い。本当は遅刻なんてしていない。海里より先に待ち合わせ場所へ来ていた。
 

 不細工がきたら速攻帰ろうと思い、遠くから様子を窺っていたが、待ち合わせ場所に来たのは、僕の想像より遥かに格好いい人だった。


 今日はなんとか次に繋げる何かを、掴み取りたいと思い、『遊びに行こう』から家へ押しかける荒技を使った。少し強引だったかな?


 でも、向こうは僕のことは『中学生』や『同性の友達』程度にしか思ってなさそうだけど。


 海里がお茶の入ったコップを2つ持ち、ローテーブルへ置いた。床に海里が座るので、さりげなく隣に座る。


「お茶ありがと~~」
「近くない?」


 海里がじぃっと見つめてくる。そりゃ、近くにわざと座ったんだから、近いに決まってるでしょ。


「え? そうかなぁ?」


 でも、何も分からないフリをする。海里の腿の上にそっと手を置くと、海里の頬が赤く染まった。


「な、なに?!」
「え? 何もないよー」


 こんなことで、赤くなって、挙動不審になるなんて、可愛いお兄さんだなぁ。


「海里くんは彼女とかいるのー?」
「居ない……」ふぅん。
「キスしたことはある?」


 訊いた瞬間、海里の顔が真っ赤に染まった。わお。純情。したことないんだ。


「な、な、ななななんでそんなこと聞くの?!?!」
「別に。ねぇ僕で試してみない?」


 海里の頬に手を触れ、顔を近づけた。


「はぁあぁあぁぁあぁあ?!?! 何言ってるの?!?! 出来る訳ないだろ!!!」


 トン。


 肩を少し押され、離された。ちょっと攻めすぎたかな。


「そう? でもさ、海里くんハタチでしょ。ハタチでキスの経験もないとか、付き合った時、女の子にドン引きされて別れちゃうかも~~」


 ぷ。口に手を当て、嘲笑って見せる。さぁ、乗ってこい。


「え……それは嫌だ……。南ちゃんはあるの……?」
「ぇえ? ないよぉ~~あるわけないじゃん。僕中学生だよ?(めちゃくちゃあるけど)」


 今時の中学生と言われても致し方ないくらい、自分でもマセていると思う。そんなことバレたら、嫌われちゃう。隠し通さないと。


「……そうだよね」
「どうする? 経験してみない?」


 安堵している海里にもう一度、顔を近づけ、様子を窺う。海里が机の下から何かを取り出した。


 ノートパソコン?


「その前にこれ、1回だけ付き合って!!!」
「…………(シューティングゲーム……)」
「お願いっ!!!!」
「それ、昨日も深夜帯まで付き合った……」


 目がキラキラしている海里に対して、目が淀む。


「お願い!! みたいんだって!!! 南ちゃんがやってるところ!!! キスでもなんでもするからさぁ!!!」


 言ったな!!! その言葉、忘れんなよ!!!


「いいよ、1回だけね」


 ノートパソコンを開き、準備を始める。重いなぁ。中々開かない。画面が開いても中々進まない。イライラする。


 ばつ、クリック。ばつ、クリック。とんとんとん。くそっ!!! Alt+F4!!!!


 いっらーーーー!!!!


「なんだこのぽんこつスペックわぁあああぁあ!!! こんなパソコンで出来るかぁああぁあ!!! 重っっ!!! 重っっ!!! 負ける!!! こんなんじゃ負ける!!! こんな状況でやってたの?!?! パソコン買い替えて!!! 今すぐ!!!」


 キーボードを叩き、キャラクターを操作する。


「ひどーーい。いつもこれでやってたのに……」


 2人でひとつの画面を見て、あーだこーだ笑いながら、ゲームする時間は楽しくて、夢中になった。ふと、あの約束を思い出す。


 キスしてくれるって言ってたな。守ってもらおう。


「はい、もー終わり!!」
「えぇ~~」

 ノートパソコンを強引に閉じると、海里が残念そうな表情を浮かべた。じっと、海里を見つめる。


「約束。僕にキスして」
「え? え……俺キスなんてしたことないのに……」
「早く」


 海里としばらく見つめ合う。僕に促されるまま、海里の手が僕の頭を少し押す。海里と顔が近づくと、優しく唇が触れ合った。


「…ん……」


 頬を赤らめ、優しく頭に触れ、触れてるか触れてないか、分からないぐらい、ぎこちなく口付けする海里が可愛くて、もっと欲が出る。


「……もういっかいキスしよ?」 


 手首を掴み、海里を自分へ引き寄せる。無理やり唇を重ねた。


「うわぁっちょーーっん……んん……待っ!! ん…ん…っん」 


 何度も何度も感触を確かめるように、唇を押し付ける。恥ずかしそうに顔を赤らめている海里が堪らない。欲求のまま、海里の肩を押し、そのまま覆い被さった。


「この際、僕で全部経験しておこうよ」


 海里くんの全てが欲しい。


 今日、僕が帰っても、僕のことを忘れられなくなるくらい、純情な海里キミを僕へ溺れさせたい。ねぇ、いいでしょ? 海里くん。


 僕はこんなにも海里くんのこと大好きだよ。


 海里のTシャツの下にそっと手を這わせた。

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