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61話(3)受験が不安なのは頑張っている証拠?!それぞれが踏み出す一歩。
しおりを挟むひや。
「はい、どうぞ」
頬に冷たいペットボトルが当たった。身体も顔も火照っていて、ひんやりとしたペットボトルが気持ちがいい。
「ありがとう」
身体を起こし、未だに震える手でペットボトルのフタを握る。あれ? 開いてる。ちらりと如月を見ると「開けておいたいたよ」と、微笑まれた。なに、もぉ。優しい!!
ごくごく。
如月の優しさにきゅんとしながら、体内に水を取り込む。たくさん喘いだ喉は渇いてしょうがない。喉だけじゃない。山ほどの涙を流した目尻は、かぴかぴする。
ぷはぁ。
「ぁあ~~生き返る~~」
「満たされました?」
「うん、満たされたぁ~~幸せ」
ごろん。
オーガズムを何度も迎えた身体は倦怠感で動けず、もう一度、寝転がる。如月、もう本読んでるし。ふつー上半身裸で読むか? 俺も上半身裸だけど。ベッドの上で、脚を伸ばして本を読む、如月をじぃっと見つめる。
えっちの時は気付かなかったけど、腕を中心に身体の至る所に青い痣が付いている。なにこれ。薄くなってるけど、どうみても痣にしか見えない。片手で本を読む如月の手首を掴んだ。
「なに?」
「なにって……どうしたの? これ」
「なんでもないよ」
「はい嘘!! そんなバレバレな嘘、俺につかないで」
「ん~~……ちょっとプレイがサディズムだったというか」
そんな嘘が俺に通ると思ってんのか? 話したがらない如月から、無理やり聞き出すことも出来ず、青い痣がついた腕を優しく撫でる。
なんで迷っちゃったんだろう。もっと早く迎えに行けば如月にこんな痣をつけずに済んだのに。自分の行いに落ち込む。
「べつに睦月さんのせいじゃないですよ? それにもう治りかけですし」
「う~~ん……」
「何も気にすることないですよ」
身体を起こし、如月の膝の上に座る。頬がつんつんと突かれた。ぶー。
「なんでここ座ったんですか」
「……え……それは……その…キスしたいから……」
ただ、それだけのために座っちゃダメだった? なんだか恥ずかしくなり、赤く染まった顔を横に逸らす。
「こっち向いて」
「…………」
顎が指先で掴まれ、顔の向きを正面に変えられる。俺を見つめる切れ長の瞳が色っぽくて、下腹がキュッと反応した。
「睦月さんからキスして?」
「……ん……っ…」
如月の頬に手を添え、唇を重ねる。背中と腰に腕が回り、優しく抱きしめられた。片手で、如月の背中を抱きしめる。少しでも隙間を埋めるように身体を引き寄せた。
ちゅ…ちゅ…。
「ん……ん…っ…はぁ…ん……んっ」
「……睦月さん、舌入れて」
「な、なんか恥ずかしい……シラフでしてるみたいぃ……」
「いつもシラフでしょ」
むっ。そういうことじゃないもん。薄く口唇を開けて待つ如月に口付ける。ちゅ。舌先を差し込み、絡め合う。
くちっ…ちゅ。
「っん…んん…はぁ…んっ…ふ…はぁ…んんっあっ…如月っどこ触ってっ…」
「うしろー」
尻の割れ目を指先がなぞる。あんなにシたのに下腹がびくりと跳ねる。蕾に触りそうで触らない指先に身体の中が熱くなる。
「…はぁ…ん…如月…誕生日……いつ?」
「バレンタインデー」
「えっ?!?! もうすぐじゃん!!!!」
「まぁ、そうですね」
これはサプライズ日和!!! 如月の誕生日は仕事休もう!!!! 贈り物は決まっているし、渡す場所も、もう決まっている。
あとは一歩踏み出すその勇気を、自分が持つだけーー。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
「いぃいぃいい!!! おおおお落ちたらどうしよう!!!!」
「滑り止めは受かってるので高校には行けますよ」
「そういう問題じゃない!!!! 私は光峰高校に星奈と行くの!!! うわぁあぁん!!! 私だけ落ちたらどうしよぉ!!!」
「卯月、弁当!!!」
「持ち物…持ち物…あぁああぁあ!!!!」
「俺が確認しておくから勉強しろ」
まだ出発まで時間に余裕がある。小春さんが頑張って教えてくれたおかげもあり、私の成績は鰻登りになった。志望校にも行けそうである。
受験票、生徒手帳、鉛筆、鉛筆削り、上履き、弁当、交通IC……と、兄がひとつひとつ確認している。緊張し過ぎて勉強に集中出来ない!!!
隣に座る如月をちらりと見る。優しく頭が撫でられた。緊張と不安のあまり、如月に抱きつく。
「お父さぁあぁあぁあん!!!!」
「う、うう卯月……お前ならやれば出来る!!! 何故なら私の子だから!!!!」
ぎゅうっと如月の腕が強く私を抱きしめる。私たちの様子を見て、兄が白く濁った目で見てきた。なんだよ。見ろよ、この親子愛。
「持ち物はオッケー」
「卯月さん、行き方は大丈夫ですか?」
「うん。一応、土曜日に小春さんとも行ってみた!」
「姉さんと仲良いですね」
「そりゃあね~~いっぱい一緒に過ごしたもん」
如月が立ち上がり、引き出しから何かを取り出し、私の手のひらの上に乗せた。白い封筒? 中を開けると『合格祈願 学業御守』と書かれたお守りが入っていた。
「如月ありがとう!!!」
「もう、持ってるかもしれないですが。頑張ってください。卯月さんなら絶対受かります」
「俺からは必勝弁当だから!!!」
「ださ……」
「ださくないわ!!!」
お兄ちゃんも仕事か。ワイシャツとスラックスに着替える兄を見つめる。途中まで一緒に行こうかな。
「ネクタイ曲がってます」
「あ……直すついでにキスして?」
「……ん…」
ネクタイを結び直しながらキスする兄カップルにイラっとする。こっちは受験当日で不安と緊張でどうかなりそうなのに!!! 目の前でいちゃいちゃかい!!!
やめた!!! やっぱり1人で行く!!!
「お兄ちゃん!!! ちょっと早いけど私、もう行く!!!」
「へ? う、うん」
「直りましたよ」
鞄を持ち、バタバタと玄関へ向かう。はぁ、ドキドキする。スニーカーを履く手が震える。ちゃんと書けるかな? 不安ばかりが胸の中を巡る。
「卯月」
「お兄ちゃん……」
スニーカーを履き、後ろに立つ、兄の方を向くと、ぎゅうっと抱きしめられた。その上から如月が更に抱きしめる。2人とも、大好き。
「やれば出来る!!!」
「ぷぷ、根性論じゃ受からないよ~~」
「今まで頑張ってきたのだから自分を信じて」
兄と如月の優しさに、強張った顔と気持ちが綻びる。もう少し甘えて居たいけど、もう行かなくちゃ。そっと2人から離れた。
「行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
玄関扉の前で自分を奮い立たせ、ドアを押す。2人のあたたかい『行ってらっしゃい』の声を背に、冷たい空気の流れる外へ、一歩足を踏み出した。
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