如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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60話(6)如月さん、見つけました?!幸せの形は人それぞれ。俺の幸せは俺が決める!

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 家に帰ってみたが、如月は居ない。じゃあどこに? どこに如月は居るの?? 好きになった人しか愛さないくせに、他の誰かの元へ行っちゃったの???


 どこを探していいかも分からない。がむしゃらに近所を探し続ける。


 如月が迷子になった時、俺はいつも如月を見つけてきた。如月もまた、俺が帰ってこない時はいつも迎えに来てくれた。


 だから見つけられるはずーー。


「結構遠くまで歩いて来ちゃったなぁ……」


 澪とうちの家の間の道なりとは少し逸れている気がする。俺が迷子になっては元も子もない。スマホを取り出し、経路案内を開く。自分の家を目的地に設定して、歩き始めた。


「なんだこの公園……」


 公園の入り口にそびえ立つ、禍々しい赤いオブジェ。これは明太子? あ、明太子公園? 卯月の連絡網で回って来て名前は知っていたが、実際に来たことはない。


 不気味な気持ち悪さを醸し出す公園に、導かれるまま中へ入った。


「うわぁ~~……めっちゃ明太子~~」


 公園の中央には赤い大きな明太子の上を滑ることが出来る、滑り台が設置されていた。博多だ!!! ここは博多だ!!! 博多にテレポートしている!!!!


「なんという瞬間移動!!!(※してません)」


 変な公園だなと思いつつ、公園の中を一周歩いて行く。


 一縷いちるの望みを抱き、遊具をひとつひとつ入念に調べる。居ない。明太子をモチーフにしたドーム型のトンネル遊具が目についた。


 全ての遊具が明太子に作られていると、もはや目が慣れて来て、このトンネルの明太子さも違和感がなくなってくる。


「流石にこんなところに如月は居ないか……?」


 階段を上ってドームの上に立ったり出来るこの遊具は、まるで秘密基地みたいだ。穴から中を覗くと、見慣れた大好きな人影が目に入り、笑みが溢れた。


「み~~つけた」


 俺の声に反応し、膝に埋まった顔がゆっくりと上がり、茶色い瞳と目が合った。いつも綺麗に手入れされたさらさらの髪はパサつき、服はよれよれのシャツにカーディガン一枚。悪い環境で生活していたのが分かる。


 ドームの中へ入り、着ていたジャケットを脱ぎ、体育座りをする如月の肩にかけた。なんだか如月が小さく感じる。


「迎えに来たよ、如月。遅くなってごめん」
「ううん……大丈夫です……」


 見つめ合っていた目は逸らされ、また如月は膝に顔を埋めてしまった。手を伸ばし、静かに如月の頭を撫でる。


「何かあった……?」
「色々ありましたけど……大したことではないです……ただ…………」


 一向に顔を上げずに如月が口籠もる。ここまで言って話さないつもり? 頭を撫でる手を止め、如月をじっと見つめ、訊き返す。


「ただ?」
「……帰ろうと思ったのですが……急に不安になってしまって……帰ってもいいのかなって……これを機に居なくなった方が睦月さんは『普通の幸せ』を手に入れることが出来るんじゃないかって……そう考えたら……帰れなくなりました……」
「……またそれ?」


 膝から上げた如月の顔は涙で濡れていた。如月の瞳からぽろぽろと涙が流れる。泣くくらいなら、そんな幸せ願うなよ。バカだな。


 袖口を伸ばし、如月の涙を拭く。涙でいっぱいの瞳は、拭いても拭いても止まらない。濡れた頬に手のひらで触れる。さらりと如月の髪が指先に絡まった。


「『普通の幸せ』ってなんだろうね。如月は澪さんと婚約して『普通の幸せ』を手に入れるはずだったよね。新婚生活は幸せだった?」


 ふるふると如月が首を横に何度も振った。辛かったんだろうなぁ。ぐずぐずして、早く迎えに行かなかったことを後悔する。如月、ごめん。そっと、如月を抱きしめた。


「幸せの形なんて人それぞれ違うんだから、如月の言う『普通の幸せ』を俺に押し付けられても、俺には響かないし、俺にとってそれは幸せじゃない。如月だってそうだろ?」

「どこに幸せを感じるかなんて、俺が決めること。でも、お互いを想い合えれば、自分たちにとっての幸せの形を手に入れることは出来るかもね」

「俺を想ってまだ帰らないつもり?」


 如月の肩を持ち、自分からそっと離し、見つめる。俺を見て、如月が薄くにこりと微笑んだ。


「……帰ります、貴方の元へ。ありがとう。大好きです……うぅ……」
「あぁ~~もぉ~~泣くなって~~」


 如月の瞳から溢れる涙を指先で掬い、両手で頬を包み込む。


「如月、愛してるよ」


 優しく唇を触れ合わせた。濡れた口唇は少し、しょっぱくて、あたたかい。久しぶりの口付けに鼓動が早くなる。如月の舌が俺の口唇の隙間から差し込まれた。


 ちゅ…くちゅ。


「んっ…んんっ……ん…はぁ……ん…んっ…ふ…はぁ…んっ…」


 呼吸を合わせながら舌先を絡め合う。如月から感じる吐息の熱に頬が赤く染まる。舌先が柔らかくてキスが気持ちいい。もっと…もっと。こんなところで……と思いながらと深く舌先に触れる。


「ん……はぁ…んっ…んん…ふ……はぁ……んっ…はぁっ……きっ…如月っ……えっちしたい…」
「え? ちょっ…え? い、今?」


 最後にシてから2週間以上経っている。既にキスだけで俺の下腹はお久しぶりこんにちわ状態!!!(?) 如月を目の前にした今、もう色々湧き上がってくる!!!(性欲が)


 下腹がぎゅっと如月に揉まれた。


「ちょっ!!! な、何すんの!!!」
「立つの早すぎませんか? まだキスしかしてないのに」
「仕方ないでしょ!!! 最後に会った日から一度も1人でシてないんだから!!!」
「え…………」
「俺は一途なの!!! 好きな人がそばに居ないとシない主義なの!!!」
「…………(じとり……)」


 腕を組み、ふんっと、顔を横に背ける。全く!!! 俺がいつも1人でシてるとでも思ってるの?!?! 失礼な!!!!


「ん」


 横顔にふんわりと何かが触れた。如月にキスされたと気づくと、急に恥ずかしくなり、頬が染まる。どうせなら口にして欲しい。横に向けた顔を如月の方へ戻した。


「如月、キスして?」
「さっきしたよ」


 如月の手が俺の手に触れる。お互いの指先を絡め合い、手を繋いだ。如月の顔が近づくのと同時に瞼を閉じる。


 ちゅ。


「ふふ。可愛い。睦月さん、更にこのまま、1週間くらい我慢しておいてください」
「は?!?! なんで?!?! 無理なんだけど!!!」


 妖艶に微笑む如月に手を引かれ、トンネル遊具を出る。トンネルの外は青空が高く広がり、柔らかな陽の光が俺たちを包み込んだ。


 如月がグッと拳を握り、俺を見た。


「我慢した分だけ感動的な気持ちよさに!!!」
「いつも気持ちいいから大丈夫!!!」
「ダメなんです……それではダメなんです!!!」
「何に固執してるの?!?!」


 なんだ? 何か大事なことを忘れている気がする。何か重大な……よくない約束を如月としたような……? なんだっけ? う~~ん。思い出せない。まぁいっか。



 如月の横髪に触れ、耳へかける。髪から出た耳にはしっかりとお揃いのピアスがつけられていた。



 繋がれた手を軽く持ち上げると、薬指の黒い指輪がきらりと光った。俺たちの絆のようなペアアクセサリー。



「なに?」
「逃げるなら他に持ってくるべきものがあったんじゃない?」
「そうかもしれませんね」



 お互いの顔を見て、にっこりと笑みを浮かべ、帰路に着いた。
 

 
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