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56話(5)何も話さない如月。必要なことなら俺は別れてもいいよーー。
しおりを挟むーー翌朝
「ふぁあ~~……」
身体を起こし、隣を見ると、如月はまだぐっすり寝ていた。昨日は楽しくて、現実を忘れていたが、キスもえっちも、この寝顔も、いつまでこうして、出来たり、見ることが出来るか分からない。
「如月、おはよ」
「ん……」
如月の横髪を耳に掛け、頬に口付けする。ちゅ。指の背で優しく頬を撫で、起こした。
「起きて、如月」
「ん~~」
目蓋が上がり、綺麗な茶色の瞳と目が合う。どきどき。我ながら、歴代の恋人で1番如月が綺麗だ。如月は男だけど。
「如月、おはようのちゅー」
「睦月さんからして……?」
眠そうに目を擦りながら、俺を見つめてくる。んもぉ。俺からおねだりして、俺からするってなんか変だよ!!!! 如月のそばに寄り、顔を近づける。
ちゅ。
触れ合う唇にまた胸が、どきっとする。今日はもう帰る。我慢我慢。でも欲が出て、少しだけ口唇を開け、如月を誘う。
「睦月さんからキスしてって言ってるのに、そうやって私を誘惑するなんて悪い子だ」
「……悪い子じゃないもん」
どうやら俺のお姫様は、お目覚めになったらしい。顎がグッと掴まれ、無理やり唇が重なる。薄く開いた口唇の隙間から舌が差し込まれた。もぉ~~っ、強引なんだから!!!
くちっ……。
「んっ……んん…ん……っん…ふ……んっ……はぁっ……」
とんっ。
何故覆い被さる!!!! 帰るんだってば!!! 帰りたくないけど!!! 首筋にじんわりと甘い痛みが走った。
かぷ。
「…っん……」
「おはよ、睦月さん」
「もぉ~~」
「お腹が空いちゃって」
「だからと言って俺は食べれません!!!」
如月がスマホの画面をじぃっと見つめてから、俺の頭を無造作に撫でた。
「カフェでも行きません? 帰る前に」
「……そうだね」
この誘いが何を意味をするのか。心の準備は出来ていない。だけど、繰り返し大丈夫だと自分に言い聞かせる。如月のためなら、俺は別れられる。
大丈夫だ。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
ーーカフェ
ソファ席に向かい合って座り、カップの中で揺れるコーヒーを眺めた。如月は何も言わない。まったりとした時間というには、空気が重く感じる。如月をちらりと見ると、俺と同じようにカップの中のコーヒーを見つめていた。
「……俺に何か話があったんじゃないの?」
「……そうですね……」
如月の顔を見ることが出来ず、目線を落とし続ける。助け舟を出しても、如月は何も話そうとしない。俺が言うしかない。膝の上で拳を強く握りしめた。
「……いいよ、別れても。必要なことなんだろ?」
「私に必要なのは睦月さんだよ。だから、別れたりしない」
如月が俺の隣に座り、肩を抱き寄せた。別れたりしない。その言葉に安堵して、涙が溢れる。
「もう睦月さんは泣き虫だなぁ」
「だってぇ……」
「でもしばらくは一緒に暮らせないし、次はいつ会えるか分からない」
「……分かってる。婚約したんでしょ」
如月があやすように俺の背中をぽんぽんと叩いた。泣き顔を如月の胸元に擦り付ける。これからが、きっと試練だ。
「知ってたの?」
「うん……なんなら、お見合いもついて行った」
「うわぁ、悪い子~~」
「……俺も婚約破棄出来るように働きかけてみるから如月も負けないで?」
「うん。絶対に睦月さんの元に帰る」
なでなでなでなで。頭が如月に撫でられる。そんなに撫でなくても。
「そろそろ顔上げて?」
「うん」
如月の胸元から顔を離し、涙で滲んだ瞳で如月を見つめる。にっこりと微笑まれ、人差し指で目元が拭われた。
「ふふ、帰りましょうか」
「なにもぉ~~見つめるだけ見つめて!!!」
「見ていて飽きない可愛さだから」
「なんの恥ずかしげもなく言うな!!!」
如月の手を握り、一緒に会計へ向かった。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
カフェから実家に帰ってきたはいいが、実家はどうやらパニック状態。睦月を後ろからぎゅうっと抱きしめ、そのままリビングへ向かう。
「こ、このままリビング入るの?(恥ずかしい……)」
「うん」
「あ!!! お兄ちゃん!!!」
「弥生、遅い!!!」
卯月さんや、私の家族がみんなが集まってくる。睦月を抱きしめていた手をそっと緩めるが、睦月に手を掴まれ、抱きしめるように促された。もうっ。甘えんぼ!!!
「同棲する日を早めて欲しいって連絡が来て」
「なるほど……」
「あと、住む部屋も向こうが用意してきた」
「あ~~なるほどです……」
「今日4日でしょ?! いつから住む気?!」
「……年始明けたらで……」
睦月さんのお仕事が休みのうちは一緒に過ごしたい。もっと、もっと、今のうちに睦月さんにたくさん触れたい。別れなくても、睦月さんと離れるのはつらい。
「住所とかしっかり聞いといて。ちょっと上で休みます」
「はいはい、ごゆっくり~~」
鬱陶しいリビングを睦月と出る。心配そうな表情を浮かべる睦月の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「大丈夫。時間がかかっても絶対に婚約破棄しますから。あと、睦月さん以外とえっちはしません」
「愛のない前戯だけ~~とかも、ダメだから!!」
「許されないことがどんどん増えてる気がします~~」
自室に戻り、睦月とベッドに腰掛けた。こうして、2人で居られるのも明日で最後。せめて何か睦月さんにしてあげたい。
「あ」
「え?」
引き出しからハンドクリームを取り出し、睦月の手のひらに広げた。
「塗ってくれるの?」
「うん。なんか色々あって忘れてた」
「ありがとう」
「塗りづらいから膝の上に来ない?」
「それ、自分が俺を乗せたいだけでしょ~~」
「生意気なお口だ」
「ちょっ…ハンドクリームキャップ閉めてない!!!」
持っていたハンドクリーム宙へぽいっと投げ捨て、膝の上に座る睦月の顔を私の方に向ける。ん~~っ。なんか怒ってるし。(※キャップ閉めないで床に捨てたから)可愛い。両手で睦月の顔を包み、口付けする。
ちゅ。ちゅっ。
「ちょっ待っんっ……んんっ…きさっ…ん……んんっ…はぁっ…ちょっとぉ!!!」
「え、何?」
「好き!!!」
「なんですか、もう~~」
真っ赤に頬を染め、私を見つめる睦月が可愛くて、もう一度、口付けする。ちゅ。
「私も好きですよ。はぁ~~あ、猫耳拘束えち下着は当分見れなさそうですね」
「その3コンボやめない?」
「約束破ったのでやめません~~」
そっと睦月をベッドに寝かせ、覆い被さり、片手で睦月のズボンのボタンを外す。
「えっちもしばらくお預けになっちゃいますね」
「うん……明日はなにするの?」
「荷造りかな……」
「ですよね……」
睦月の下腹に手を這わせると、落胆して落ちていた睦月の肩がビクッと上がった。
「でも荷物は全部持っていきませんよ、帰ってくるつもりなので」
「んっ…あっ……待ってる……と、言いたいところだけど。どんな状況か分からないし、迎えに行くよ……やっ…」
「それは楽しみですね」
不安で仕方がないはずなのに、大きな目を細め、笑みを浮かべる睦月が愛しくて、優しく唇を重ねた。
ちゅ。
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