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56話 どきどき初詣デート?!お賽銭に参拝におみくじ?!最後はホテルです?!
しおりを挟むーー3日 朝
「今から初詣に行くのですが、卯月さんも行きますか?」
「ん~~私は小春さんと行くからいいよ! 2人で行ってきて!!」
「いやっちょっ!!! 押すなって!!!」
気を使っているのか、俺と如月の背中を押して、玄関まで連れて行かれた。卯月が俺を見て「楽しんできて」と笑い、小春と勉強している部屋に戻って行った。
なんかごめん。
「行きましょう」
「そうだね!」
如月の手をぎゅっと握りしめ、玄関を後にした。
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ーーーーーーーー
ーーーー
1日、2日は過ぎているというのに、神社の境内は初詣に訪れる人々で賑わっていた。如月はすぐ迷子になるからな。はぐれないように如月の手を強く握る。
「なんですか?」
「如月が迷子にならないように」
「失礼な!!」
「いつも迷子になるじゃん~~」
参道には露店が並び、たこ焼きやカステラの香りが食欲を唆る。家族連れやカップル、友人同士が笑顔で歩いている様子を見ると、少しだけ羨ましくなった。
俺も、こんなことがなければあんな風に笑って、新しい年の健康や幸せを願いに参拝に来ていたのかな。
神社の大きな鳥居をくぐり、石畳の道を如月と進んでいく。それにしても今日は冷える。如月の顔をちらっと見る。寒さで頬が赤くなっていた。
「如月、寒くない?」
「大丈夫ですよ~~」
「あ。雪、降ってきた!」
凛とした空気が張り詰める。羽根のように降る雪の中を歩き、本殿へ向かう。本殿は長蛇の列になっており、最後尾に並んだ。
「睦月さんはいくらお賽銭入れますか?」
「……1万くらい入れた方が良いのだろうか……」
「そんなに入れるんですか?!?!」
「絶対叶えて欲しいし……」
「穴が開いてる小銭は見通しが良いとか、運が通るって言われて縁起が良いんですよー」
「じゃあ50円にする!!!」
話しながら列に並んでいると、あっという間に自分たちの番になり、お賽銭を投げ入れ、鈴を鳴らした。
瞳を閉じて、手を合わせ、心の中で祈りを捧げる。
もしも何かあって離れるようなことがあったとしても、お互いがお互いを見つけられるように、固い絆と見えない糸でしっかり結んでおいてください。
俺はその糸を手繰り寄せて、絶対に如月を迎えにいくから。
だから、今年も如月と卯月と一緒に、健康で幸せに過ごせますようにーー。
「お祈り長かったけど、何を願ったのですか?」
「ひみつ~~如月は?」
「え? 秘密です~~。あ、おみくじしましょ」
「いいね! しよしよ!!」
色々問題はあるが、一応デート。素直に楽しい。再び如月と手を繋ぎ、おみくじの木箱が並んでいるところへ歩く。お金を払い、木製の箱を振って、おみくじを取り出した。巫女から紙を受け取り、広げる。
「中吉ぃ~~っ!!!」
「見せて」
如月の顔が俺の顔に近づき、おみくじを覗き込んだ。顔が近い。過ごせる時間が残り少ないかもと思うと、意識してしまい、心臓が早鐘を打つ。
「願望、他人の助けありて思うように叶う。待ち人、少し障りありも来る。ですって」
「よっしゃあ!!! どうにかなるってことだね!!!」
「そ、そうですね???」
おみくじを綺麗に折りたたみ、財布にしまう。これはお守りだ。取っておこう。境内を如月と歩きながら屋台を見ていると、如月が足を止めた。
「……今からえっちする?」
「ぶっ……いきなりストレート過ぎる!!!」
「だって、ちょっと顔近づけただけで赤くなってる睦月さんみたら可愛くて……」
「恥ずかしいから言わないで!!!」
神社を出ると、足は自然にホテルへ向かった。
*
手を繋ぎ、ホテルに入って行く2人を見て、イラっとする。スマホを取り出し、母に電話をかけた。何あの男。別れてるくせに、初詣デート? しかも頬なんか赤らめて、バカじゃないの? 最後の思い出作りでもする訳?
『友達と初詣に行ったんじゃなかったの?』
「そうだよママ。今から帰るところ。ねぇ、ママ。弥生との同棲の日早めて」
『分かりました』
「よろしく~~、またあとでね~~」
ブツ。
弥生はあまり覚えてないみたいだったけど、弥生は私の初恋の人。何度も何度も夢に見るくらい好きだった人。優しくて、綺麗で、縁側に座って本を読む姿は、幼かった私の心をときめかせた。
偶然、街で弥生を見かけて、胸が昂った。大人になった弥生は眉目秀麗で、次にお見合いをするなら弥生にしようと決めた。
ただ、街で見かけた時も、カフェで会った時も、初詣も、隣には必ずあの睦月がいる。
婚約して、弥生と一緒に暮らすことになるとはいえ、弥生に付き纏ったり、弥生の心の中にいつまでも居られると邪魔だ。
どうにか諦めさせないとーー。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
久しぶりのホテル。如月は今お風呂に入っている。フェイスタオルで頭を拭きながら、ソファに腰掛けた。
「ふーーっ」
冷えた身体はお風呂でほくほくに。いつもと雰囲気が違うとちょっとドキドキする。
「バスローブ着方合ってるよね?」
それにしても暇だな。テレビは……あはんだから、ダメだっ!!!! ここは大人しくスマホでゲームでもしよう!!!
メール130件。
着信83件。
「ん???? は????」
着信履歴を見る。知らない番号と非通知ばかり。何これ。怖。メールを開いてみる。『掲示板見ました。会いたいです』『セックスしませんか?』『同性同士OKです』なんだこれ!!!!
「えっ??? どういうこと?!?! アドレス漏れた?!?! 番号も?!?! 掲示板って何?!?!」
とりあえず早急にアドレスは変更しよう!!! 番号は……とりあえず無視すればいっか!!!!
ネットサーフィンして、自分の携帯番号を調べてみる。たどり着いた先はエロサイト。
【名前はMです! 24歳! ア●●セックス大好き! 連絡くれたらすぐ凸ります! 男も女も大歓迎! 連絡先は××】
ぉお……なんじゃこりゃあ……。これは俺の紹介……? 番号とアドレス載っちゃってるし!!! 顔写真がないだけまだ良かったか?!?! 全然良くないけど!!!
「なんで急に??? 一体誰が??? そんな恨まれるようなことやった覚えないけど……」
サイトに削除依頼を送っていると、如月が隣に座った。
「どうしたんですか?」
「んーー……別に!! なんでもない!!」
ただの悪戯かもしれないし、意図的にやられた証拠もない。それに、アドレスを変えて、掲示板も削除してもらえば済む話。大したことじゃない。
こんなこと、いちいち如月に言う必要もないだろう。それよりも今はたくさん愛し合いたい。
如月の頬にそっと触れ、じっと見つめた。
「俺のこと、溶かして?」
「ふふ。私のこともいっぱい溶かしてくださいね」
膝裏に腕が通り、背中と脚が持ち上げられた。如月の首にぎゅっと抱きつく。
如月の首筋に、俺が昨日の朝に付けた赤い痕がまだうっすら、残っているのが見え、消えないようにもう一度、同じ場所を吸い上げた。
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