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52話(8)えっちな目で私を見るな?!貴方は反省が足りません?!

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 フォークを手に取り、目の前に置かれたケーキをひと口切り取る。柔らかなスポンジがフォークに押しつぶされ、クリームが溢れ落ちた。


「とても美味しいです~~」


 幸せそうにケーキを頬張る如月を見ると、さっきの出来事なんて、どうでもよくなってくる。


 何があっても、俺は如月と別れる気なんてないし、如月だって、俺と別れる気なんてないはず。もう、それで十分だ。


 積み上げてきた自分たちの絆を信じよう。


 フォークに刺したスポンジを口に運ぶ。口の中に程よい甘さと滑らかなクリームが合わさり、絶妙なハーモニーを奏でる。うまぁ!!!


「めっちゃ美味しい!!!」
「ですね~~口の中でスポンジが溶けます~~」
「この後はどうする?」
「卯月さん帰ってきますよね? お土産買って帰りましょう」


 もう少しデートがしたい、なんて言ったらワガママかな? このケーキを食べ終わってしまったら、家に帰ることになる。


 まだ帰りたくなくて、ケーキを食べる手が段々と遅くなる。くだらない、小さな遅延行為。


「睦月さん?」
「あ……ごめん……なんでも……」
「……帰りたくない?」
「え゛」


 如月は俺のこと、最近全てをお見通し。むー。嘘をついても仕方がない。こくんと、小さく頷く。卯月が帰ってくるから、家に帰らないといけないのは分かってはいるけど、まだ帰りたくないよ。


 まだ陽の落ちていない外を窓から眺めた。


「んーースパ行きますか?」
「えっ、でも……如月は全身に……」
「貴方も腰から腿に相当付いてますよ」
「如月ほどじゃ……」
「睦月さんと一緒ならこれぐらい大丈夫ですから。行きましょう?」
「うん!!!」


 残っているケーキを口に押し込み立ち上がる。嬉しい!! やったぁ!! デート継続!!! ニコニコせずにはいられず、顔が緩みっぱなしになる。


 こんなにゆっくりデートが出来るのは久しぶりかもしれない。まだ椅子に座っている如月の腕を引っ張った。


「早くいこ~~っ!!」
「はいはい」


 会計を済ませ、軽い足取りで店を後にした。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


 ーースパ。



 如月に言われ、嬉しくて、来てしまったけど、いざ服を脱ぐとかなりの羞恥!!!『えっちしました』感が半端ない!!! 購入したタオルで前を隠す。前を隠しても尻に付いた噛み痕が隠せない……。むしろ前より尻を隠すべき?


 フェイスタオルで後ろを隠す。


「前、公開してますけど」
「大きいから大丈夫!!」
「そういうこと言ってないです」


 隣で如月が恥ずかしそうに服を脱いでいる。上半身から下半身まで、白い素肌に残る、無数の赤い痕が何度見てもえっちだ。性懲りもなく、じぃっと見つめる。


「見ないで」
「なんか……うん……はぁ(えっちだぁ)」
「前、隠した方がいいんじゃないですか?」
「どういう意味?!」
「べつにぃ」


 フェイスタオルを縦にして、サッと身体を隠された。その隠し方、女の子じゃん。全てが隠しきれない感じがまた、えっちだぁ~~っ。タオルから出る脚に目がいってしまう。


 ごっ。


 頭の上から拳で叩かれた。


「いったぁーーーー!!!! 何すんの!!!!」
「何をみて、何を考えているか、バレバレなんですよ!!! もうっ!!!」
「思いっきりぐーで叩いたぁ!!!」
「反省しろ!!!」


 如月に背中を押され、浴室へと向かう。頭がじんじん痛む。そんな強く拳で叩くことないじゃん、もぉ~~。


 横並びでバスチェアに座り、身体と頭を洗っていく。そりゃ、沢山えっちはしたけど、こう、隣で裸で居られると気になるし、ムラムラするというか。スパは失敗だったかな?


 頭を洗いながら、こっそり如月を見つめる。腰のラインがしなやかでそそられる。もぉ、見ないどこ。目線を前に戻し、全身洗う。


「洗い終わったよ~~温泉いこ」
「はい、行きましょう」


 冷たい空気が肌に触れるのを感じながら、温泉へ足を運ぶ。日中とはいえ、外は寒いな。普段、こんなに如月の裸を拝む(?)ことは出来ない。目に焼き付けよう。如月をちらりと見る。


「あ……ああぁあっ……」
「…………?」


 いつのまにか束ねられている如月の髪。丸く団子が作られ、アップされている。なんてうなじが綺麗なんだ!!! いつもは髪の毛が降りているだけにこういうのは弱い!!! 後れ毛がえっちだぁ!!!


 つねっ。


 頬が引っ張られた。


「いたたたたたたたっ!!!! やめて!!! ほっぺ取れる!!!!」
「反省が足りません!!!!」
「ごめんって!!! もぉ~~いたいぃ~~」


 つねられて痛む頬を押さえながら、足を湯に入れる。じんわりと温かさが広がった。気持ちいい。全身を湯に浸す。ちゃぼん。冷え切った身体が瞬く間に温まり、気持ちが安らいだ。


「はぁあ~~~~っっ」
「気持ちが良いですね」


 両手をぐーーっと上げ、伸びをする。温泉の温かさが日々の疲れを癒してくれる気がする。如月もこれで少しは身体が良くなるかな?


 だがしかし、まだ栄養不足。


 そりゃ、全身赤い痕だらけだし、人目も少しこの身体じゃ気になるけど、如月に後ろから抱きしめて欲しい。デートだもん。いちゃいちゃしたい。隣で湯に浸かり寛いでいる如月の指先を触る。


「あ、手繋ぎます?」
「え……うん……」


 違う~~っ!!! 手は繋ぎたいけどっ!!! そうじゃない!!! 求めてるものと違っても、湯の中で絡まり合う指先に、頬が赤く染まる。


 繋がった手がグイッと引っ張られた。


「わあっ……」
「顔に何して欲しいか書いてあります」
「書いてないし」


 後ろから抱きしめられ、如月の顎が肩に乗る。触れ合う素肌に鼓動は早くなるばかり。自分の願いがひとつ叶えられたら、またひとつ、お願いごとが出てくる。強欲な俺。


 でも流石にここでキスは出来ないか。


 中途半端な時間に来たせいか、人はあまり居ない。肩に乗る如月の顔を見つめ、頬に触れた。


「キスしない約束はしてないもんね?」
「それはしてないですが……」
「じゃあ、いいよね?」


 気を遣われているのか、もう帰る時間時なのか、温泉から人が1人また1人と上がっていき、自分たちだけになった。静かな湯の流れる音だけが響く。


 如月が目を瞑り、頬に触れる俺の手に身を委ねてきた。そっと、唇を重ねる。ちゅ。もっとキスしたい欲を抑え、唇を離した。


 ちゃんと反省してるよ?


 如月の指先が俺の胸の突起をゆっくりと擦った。


「……んっ……」
「続きはおうちでしなくちゃね、さぁ私たちも上がりましょう」
「えぇ~~……家帰ったら本読みながらごろごろするだけのくせに」
「なんですかそれ!!!」
「如月の日常!!!」


 如月とじゃれ合いながら、ゆっくりと立ち上がる。温まっていた肌に冷たい空気が触れるが、なんだかそれも気持ちが良い。


 如月と手を繋ぎ、脱衣室へ向かう。こんなところで手なんか繋いだら、この赤い痕は誰が付けたものか一目瞭然だ。


 それでも、手を繋いでいたい。如月が手を離さないようにギュッと強く握った。


「睦月さん、着替えれないです」
「あ、ごめん」


 ぱっと手を離す。


 クリスマスは俺のワガママをいっぱい聞いてもらっちゃったなぁ。タオルで水分を拭き取りながら、クリスマスを振り返る。昨日も今日も楽しかった。シャツのボタンを閉じる如月に声を掛けた。


「如月」
「ん~~?」
「ありがとう」
「どう致しまして」


 身体の芯から心までぽかぽかに温まり、ふっと、笑みが溢れた。
 


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