如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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52話(3)ホワイトクリスマスに貴方と幸せなひとときをーー。

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「では~~プレゼント交換ターイムっ!!!」


 卯月さんが嬉しそうにラッピングされた袋を持っている姿を見ると、なんだかほっこりするのは保護者の目線で見ているからだろうか。


「はい、卯月さん。これは私からです」
「メリクリ~~」
「卯月ちゃんどうぞー」
「ありがとう~~っ!!!」


 卯月からもらったクリスマスプレゼントを開けてみる。こ、これは……本?!?! しかも森鴎外!!! ちゃんと純文学をチョイスしてくる辺り、睦月さんとはセンスが違う!!!


「卯月さん、ありがとうございます」
「如月もありがとう! どう? 似合う?」
「似合ってます~~」


 私があげたニットキャップを被っている。えんじ色がよく似合い、可愛らしい。


「はい次!!! お兄ちゃんね!! メリークリスマス!!!」
「ありがとう~~」
「睦月さんメリークリスマス」
「むっちゃんどぞー」


 本命のクリスマスプレゼント。睦月さんは気に入ってくれるだろうか。ドキドキする。


「むっちゃん俺のあけて?」
「はいよー」


 じゃら。


 パンツチェーン。あの時のやつだ。チェーンを見つめる睦月の目がキラキラしている。マジか。そ、そんなにパンツチェーンがいいのか? 自分の買ったプレゼントでも喜んでもらえるかな? 少し不安になる。


「ぉおおおぉお!!!! 2連になってて格好良い!!! 何これ!!! ありがとう!!!」
「喜んでくれて嬉しい~~」
「お兄ちゃん私のも開けて!!!」
「はいはい」


 がさ。


 じゃら。


 シルバーチェーンネックレス。


 ぇええぇええぇえぇえ!!!! 卯月さんまでもチェーン?!?! なんでチェーン?!?! 睦月さんはそこまでのチェーン愛があったというのかぁあぁあぁああ!!!!


「めっちゃかっこいい!!! 今から付ける!!!」
「でしょ~~」
「やっぱむっちゃんはチェーンだよなー」
「…………(理解不能)」


 あんなに嬉しそうにチェーンネックレスを付けられると渡しにくい!!! 何故なら私のプレゼントはチェーンではない!!! ここはチェーンを贈るべきだ!!!! 私のプレゼントは一旦、返してもらおう!!!!


「一旦、回収します(?)」
「何をーーってちょっと!!! やだぁ!!! やめて!!! なんで!!! 俺のクリスマスプレゼント取らないで!!!」
「選択をミスりました!!! もう一度熟考してから出直します!!! 返してください!!! これは元々私のものです!!!」
「何言ってんの?!?! もう俺がもらったんだから俺のものだってば!!!」


 睦月に渡したクリスマスプレゼントを引っ張るが、離してくれない。ぎゅうぎゅう。


「大丈夫ですって!!! ちゃんと最終的には何か(チェーン)を渡しますから!!!」
「そういう問題じゃない!!! 俺は如月からなら何をもらっても嬉しい!! 俺のこと考えて選んだんでしょ?! やだぁ!! 絶対返さない!!!」


 私のあげたプレゼントを睦月が大事そうに両手で抱きしめる。『渡さない』と強く瞳から伝わってきて、愛おしくなり、引っ張る手を離す。ごめん。そっと睦月を抱きしめた。


「開けていい?」
「うん」
「わぁブルゾン!! あったかそう!!」
「いつも羽織が薄そうだから……」
「ありがとう~~」


 笑顔でブルゾンに頬を寄せる睦月が可愛くて、ブルゾンごと抱きしめる。はぁ。早く抱きたい。抱きしめる腕に力が入る。


「……こうも目の前でいちゃいちゃされると複雑な気持ちになりますなぁ」
「……私はキスハグ程度はじゃもう何も思わんよ」
「……毎日何を見てるの?」


 睦月からもらったクリスマスプレゼントを開けてみる。柔らかくて、ふわふわした落ち着いた茶色の膝掛けだ。


「……その……いつもカーペットの上に寝転んで本読んだりするから……あった方がいいかと思って……微妙だった?」
「微妙じゃないですよ。私も睦月さんからもらったものはなんでも嬉しいです。ありがとう」


 膝掛けを広げ、睦月の頭に被せ、顔だけ出す。ふふ。可愛い。


「ゆきんこ~~」
「やめて~~」
「ケーキ食べたし、プレゼントもらったし、俺そろそろ帰るー」
「おう~~」


 膝掛けを被ったまま睦月が玄関まで見送りにいく姿をみて、ぷっと笑みが溢れる。可愛い。さてと。散らかったテーブルの上を片付けていく。


「旭帰ったぁ~~片付けありがとう」
「うん」


 クリスマスなのに、デートらしいことが出来ていない。恋人同士なのに。片付ける手を止め、睦月を見つめる。


「イルミネーション、見に行きませんか?」
「えっ……行く!!!」
「卯月さん、ちょっとだけ出かけてきて良いですか?」
「ちゃんと帰ってきてくれれば」
「もちろん」


 今日あげたブルゾンを嬉しそうに羽織っている睦月を見て、愛しさが込み上げる。睦月の手を握り、玄関を出た。



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「家の中に居たから気付かなかったけど、外寒いね」
「そうですね~~」


 冷たい空気が剥き出しの頬にひんやりと触れる。喋るたびに出る白い息が、冬を感じさせる。私があげたブルゾンがなかったら、睦月さんはもっと寒い思いをしていたかもしれない。


 街はイルミネーションが輝き、光の海に包まれていた。睦月と手を繋ぎ、光の間を歩いていく。大きなクリスマスツリーの下で足を止めた。


 高さのあるツリーは緑の枝が広がり、枝には色とりどりのオーナメントが飾られている。金や銀のボールや星形の飾りがツリーを華やかに彩り、綺麗だ。


 電飾が枝を縫うように飾られ、柔らかい光を放っている。キラキラと点滅しながら輝くライトは、幻想的な雰囲気に思えた。


「綺麗だね! 如月っ!!」
「そうですね」


 鼻を赤く染め、歯を見せて笑う睦月に、寒さで強張った頬が緩む。自分の首からマフラーを外し、睦月の首に巻くと、鼻だけでなく、頬も赤く染まった。可愛い。赤く染まった頬を両手で包み込む。


「如月が寒くなっちゃう……」
「私は大丈夫ですよ。いっぱい着てますから」


 周りはカップルで溢れ、白い息を吐きながら、イルミネーションを楽しんでいる。私たちも、少しぐらい、恋人がするようなことをしてもいいだろうか?


 頬を手で包んだまま、何もしない私を、睦月がじぃっと見つめてくる。



「如月……大好き」



 ゆっくり閉じる瞳は、私に対するキスのいざない。



 顔を近づけ、そっと唇を重ねた。優しく、穏やかに口唇が触れ合う。貴方はいつも私を幸せにしてくれる。



「愛してますよ、睦月さん……」



 ふわりふわりと羽根のように雪が舞い降りる中、もう一度、甘く啄む。冷えた唇から熱い吐息が溶け出した。雪が舞う夜空を見上げ、睦月を抱きしめる。



「貴方といつまでも幸せでいられますように」



 睦月をみてにっこり微笑むと、何も言わず、目を細め、睦月がにっこり笑みを浮かべた。



「如月、星が揺れてる」



 睦月がツリーの頂上の星を指差す。指差したその先を見つめる。氷のような冷たい風がツリーの大きな星を揺らし、金色に輝かせていた。



 指差している睦月の手を握る。指先が冷たい。



「帰ろうか」
「うん」



 一番星が降り立ったような頂上の星を見つめ、ホワイトクリスマスに永遠の愛を誓った。

 


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