如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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51話(4)クリスマス前夜のらぶらぶお買い物デート?!

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 ーー次の日 翌朝。


 朝からガタガタ、ガサガサ煩くて、目が覚めた。隣を見ると、卯月さんだけが、気持ち良さそうに寝ていて、睦月さんの姿はない。


 なんの音?


 大きな物音に起こされ、頭を掻き、イライラしながら起き上がる。洋室から物音がする。襖を開けて、中を覗くと、睦月さんが何かを引っ張り出していた。


「朝から何してるのですか?」
「クリスマスツリー出そうと思って。なんか思ったより奥に仕舞ってあってさぁ~~」
「なるほど」


 襖をそっと閉め、洋室に入り、睦月のそばに寄る。埃まみれの箱の中から取り出されたツリーは1メートルちょっとしかない小さなものだ。


「昔は大きく感じたけど、今見ると小さいなぁ」
「睦月さんが大きくなったんですよ」
「そっかぁ~~」


 ツリーを抱え、リビングに向かう。ツリーを部屋の角に置き、電飾やオーナメントを床に広げていく。2人でツリーの前にしゃがみ込み、オーナメントやツリーを見つめた。


「この飾りつけは卯月さんが起きてからにしませんか?」
「そうだね!!」


 クリスマスという特別なイベントに心の中で期待が膨らみ、笑みが溢れる。こんなに楽しみなクリスマスは久しぶりだ。


「睦月さん」
「んっ?! なにっ?!」


 何も飾られていないツリーを見つめる睦月が、笑顔でクルッと振り向いた。可愛い。


「大好きです」
「えっ…なっ……わぁあっ…ちょっとぉ~~」
「おはようのちゅーしましょ、ちゅー」
「んもぉ~~」


 睦月の後ろから抱きつき、そのまま覆い被さる。笑った横顔に口付けした。


 ちゅっ。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


 クリスマスが近いせいか、街はカップルが多い気がする。行き交う人とすれ違いながら、睦月と一緒にインテリアショップへ向かう。


「如月、手繋ご?」
「えっ……」
「早く~~」


 強引に手が握られ、そのまま指先を絡める。人も多いし、少し気恥ずかしくて、頬がほんのり染まる。いいのかな? なんて思う私の気持ちなんて無視して、睦月は笑顔でグイグイと私の手を引っ張る。


「着いたよ、中入ろう~~」
「そ、そうですね」


 何も気にすることなく、手を繋いだまま堂々と中へ入る睦月に胸を打たれる。彼にとって、人目とか、周りの反応とかそういうのは関係がない。揺るがない信念に自分の気持ちの弱さを感じた。


「リースは要るね!!!」
「私、LEDのクリスマス装飾的なもの欲しいです」
「何それ……高そう……」


 カゴを1つ持ち、店内のクリスマスコーナーを見て回る。色々ある。睦月が自分の顔よりも大きなリースを顔の横に並べ、私に見せてきた。かわゆ。


「みて~~これは?! リースおっきい!!!」
「良いんじゃないですか? 私このクリスマスの電飾が良いです」
「2000円?!」
「そのリースより安いと思いますけど」


 問答無用で睦月の持っているカゴの中に電飾を入れる。


「何入れてんの?!?!」
「電飾は要ります。リースも入れましょ」


 睦月の持っているリースを取り上げ、カゴの中へ突っ込む。こんなリースが3000円。私の電飾の方が安い!!!


「俺、必要なものしか買わないからね」
「はいはい」


 睦月さんがそう言っても、メリークリスマスと書かれた壁飾りは欲しい。サンタやトナカイの絵が描かれた紙が、紐で繋げられた壁飾りを、こっそり睦月のカゴに入れる。


「ちょっと!!! 今入れたでしょ!!!」
「気のせい気のせい」


 ふと、スノードームが目に入り、じぃっと見つめる。華やかな金色の森に佇むクラシカルな家。家の前に小さなサンタとトナカイが居る。逆さまにひっくり返すと、粉雪が舞い、華やかで幻想的な世界が広がった。


「綺麗……」
「なに、欲しいの?」


 後ろから軽く抱きしめられた。私の肩に顔を埋め、スノードームを見てくる。どきどき。いつもなら私が抱きしめる立場なのに。しかもこんなところで!! 恥ずかしくて、頬が赤く染まる。


「欲しいですけど……まぁまぁいいお値段します」
「いーよ、買お」
「夜に……シャンメリー飲みながら電気消してみましょ」
「うん!!!」


 睦月がカゴにスノードームを入れる姿を見て口元が緩む。抱きしめられている手に、自分の手を重ね、睦月の手を握り、歩き出した。


 シャンメリーを飲むグラスやトナカイのぬいぐるみなど、必要なのか分からないようなものまでカゴに入れ、会計に並ぶ。自分たちの番になると、カゴに入れた商品がひとつずつスキャンされ始めた。


 ピッピッ。


「30800円でございます」
「3万て!!!! たっか!!!!」
「スノードームだけで1万いってますから~~」


 睦月が表示された金額を見つめ、口を開いた。


「すみません、スノードームやめます」
「こちらやめられるでよろしいですか?」


 なっ!!!! 電気消して、シャンメリー飲みながら一緒に見るんじゃなかったの?!?! お金のことになると急に倹約家になるんだから!!!!


「はい、やめます」
「待ったぁあぁあぁあ!!! 買います!!! スノードーム買います!!!」


 財布を取り出し、一万円札を睦月に握らせる。しっかりと一万円札が握られた。


「すみません、やっぱりスノードーム買います~~」


 なんとも眩しい笑顔で支払いを済ませている。財布持ってきて良かった。3万か。財布をもう一度開き、五千円札を取り出し、睦月のパーカーのポケットに突っ込んだ。


「いいって」
「いーの」
「い~ら~な~い~~」
「いーりーまーすぅー」


 ポケットの中で五千円札を押し付け合いながら店を出た。冬の冷たい風が頬を掠める。受け取ろうとしない睦月の手を五千円札ごと握る。ポケットの中で繋ぐ手は冬の寒さを和らげた。


 この小さなポケットから、幸せが広がっていく。


「手、あったかい」
「ふふ。そうですね。早く帰りましょう」


 片手にクリスマスの準備の荷物を持ち、街中から聴こえるクリスマスソングに耳を傾けながら、帰路に着いた。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー
 

 ーー夕食後、まったり時間。



 睦月さんはお風呂に入っている。「しまっといて!!!」と強引に押し付けられた黒いティーバック。致し方なく、自分の衣装ケースを開けた。


「…………」


 あるぇ……?


 空の衣装ケース。入っているはずのラブアイテムがない!!! そう、私が地道に集めてきた全てのコレクションがひとつもない!!!!(※睦月が捨てた)


「睦月さんが持っていった?!?! 全部?!?! そんなバカな!!!」


 睦月さんは以前、私の家にあったアダルトグッズを捨てた歴はある!!!! あの時は捨ててもいいとは言ったが、ここにあるものを捨ててもいいと言っていない!!!


 謎に衣装ケースに残された、目隠しと足枷。


 こ、これは私へのメッセージ?!?! 目隠しと足枷をしてくれという意味?!?! どういう嗜好?!?! 辱め的な?!?! 睦月さんが分からない!!!!


 それにしても、私は純粋に睦月さんと遊びたかった(?)だけなのに捨てるなんてひどい!!!!


「許可なく捨てるなんて、これはお仕置きが必要だね」


 私の胸と首をこんなに朱く染めたのだから、それ相応の報いは受けてもらわないとね?


 睦月さん?


 首筋に広がる紅い華を指先で舐めるように撫でた。

 
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