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50話(4)妹の悪巧み?!甘美なる蜜時を邪魔して2人に尋問せよ?!
しおりを挟むやっと終わったか。最近、いちゃいちゃが見境なくなっているから、釘を刺してみたが、よく分からない返しをされ、むしろ敗北感を味わった。
「如月の方が一枚上手だったということかぁあぁあぁあ!!!!」
学校からもらったプリントをグシャリと握り潰す。くそぉ。悔しい、なんかよく分からないけど、物凄く悔しい。リビングから兄の甘い声が聞こえなくなり、リビングへ向かう。
「兄と如月はきっと、懲りずに今日の夜絶対にえっちする」
これはチャンスだ。(?)
挿入という最高のタイミングで出ていき、この件について尋問する。兄には如月にあんなことされて、どんな気持ちになるのか聞こう。如月にはなんで兄にあんなことするのか聞こう。
そして2人には、あっあっの先には何があるのか答えてもらおう!!!!
「あれ? お兄ちゃんと如月居ないな……」
辺りをきょろきょろ見回す。居ない。扉の閉まっている脱衣所。怪しい。なんだぁ? 終わったと思ったけど、終わってないんかぁあぁああ?!?!
どんだけいちゃつく気なんだ!!!! 身体の中に、一体、何がそんなに溜まっているのさ!!!!
忍び足で脱衣所のドアに近づき、聞き耳を立てる。
『きっ…きさらぎっ……んっ…はぁっ…きもち……あっ…そこ…んっ……はぁ…』
何してんだ、マジで。開けてやろうか。飯作れよ。
『あっ……だめ……はぁ…んっ……そこっ…もうちょっとぉ…あぁっ……』
いらぁっ。これは黒!!! もういい!!! 開けてゲームオーバーにしてやんよ!!!! お兄ちゃんのばか!!! えっち!!! 脳内えろす!!!
バン!!!
脱衣所のドアを思いっきり開けた。床に座る兄と、肩を揉む如月。あり? んん? んーー?? 自分の中で思い描いていた状況と違い、首を傾げる。
「な、なんですか?」
「きさらぎぃ……はぁっ……そこ…つよく……」
「はいはい」
もみもみ。
ただの肩揉み!!! 兄に騙された!!! 肩揉みくらいであんなえっちな声出すなよ!!! どういう声の出し方してんの!!!
これは、つまり!!! きちんと目視しながら凸らなければ失敗するということ!!! 恐らく、やつらは必ずリビングでえっちするはずだ。状況を確認しながら凸れる場所を確保する必要がある!!!!
「う~~ん」
「何を考えているのですか?」
「甘美なる蜜時を正視する方法を考えてる」
「…………(こわ……)」
「如月ありがとう~~俺今からご飯作るから、こたつでゆっくり休んで待ってて」
はっ!!! こたつ!!! なるほど!!! 確かにこたつに隠れていれば、2人の情事を確認することが出来るかもしれない!!!
「それでいこう!!!」
「何でいくんですか?」
「こっちの話です」
若干、如月に疑われているような気がするが、兄が気づいていなければイケる!!! リビングへ戻り、脳内で作戦を立てる。
①2人より先に風呂に入り、和室へいく。
②寝ているフリとして、枕と洋服で布団に厚みをだし、カモフラージュを作る。
③如月が風呂に入ったタイミングでこたつの中に移動する。
④兄の情事をはぁはぁしながら、見つつ、挿入したタイミングで凸!!!
完璧だ!!!!
こたつに入り、シャーペンをくるくる回す。これは良いんじゃない?! 上手くいきそうな予感!!! いつもどこでもいちゃいちゃいちゃいちゃして、今日は鉄槌を下してやる!!!!
私は闘志が漲った。
*
先ほど脱いだエプロンを身に付け、夕飯の準備に取り掛かる。何作ろうかな? 冷蔵庫を開け、メインになりそうな食材を取り出す。野菜や肉をキッチンカウンターに並べた。
「まぁ、テキトーに炒めておしまいでいっか」
玉ねぎの皮を丁寧に剥いていると、後ろからぎゅっと腰回りを抱きしめられた。
「んもぉ~~休んでて良いよ?」
「いや……そうじゃなくて……」
如月の様子が変? 玉ねぎを切る手を止め、振り向き、如月を見つめる。眉を中央に寄せ、顔を顰めている。どうしたのだろう?
「なんかあった?」
「ん~~卯月さんの様子が変……」
「卯月が? そう??」
肩に如月の顎が乗る。か、顔が近い。どきどき。気づかれないように深呼吸をして、料理に集中する。
フライパンにマヨネーズとニンニクを入れ、広げるように豚肉と薄く切った玉ねぎを投入した。
「うわぁ……」
「うわってひどくね?」
「油ものは最近ちょっと負担になるというか……」
「あ? まだ30代だろ~~イケるイケる」
「20代と30代は違うんですよ……」
マヨネーズを更に追加して具材と一緒に絡め、点火した。肩に顎を乗せている如月を見る。白く濁った目でフライパンを見つめている。そんな目で見るな!!!
じゅ~~。
「油が……」
「マヨネーズ美味しいよ?」
「…………」
肉に火が通ったのを見計らい、ゆず風味のポン酢を回しかけ、また炒める。まぁちょっと、油はすごいか。ポン酢とマヨネーズ美味しいけどなぁ。
「はい、出来たぁ~~」
「…………」
「何か言ってよ!!!」
「う~~ん……」
「卯月は何が変なの?」
出来上がった料理を大皿に移しながら如月に訊く。俺がコンロを離れても、如月はひっつき虫みたいに俺を抱きしめたまま、付いてくる。少し邪魔である。
抱きしめるのじゃなくて、手伝ってほしいところ。
しゃもじで炊飯器から白米を掬い、茶碗に盛り付ける。もりもり。
「なんていうか……何かを企んでいる気がする……」
「なんじゃそりゃ」
企んでいるだぁ? 卯月が? 一体何を? あんな、ぽんぽこのちんちくりん(?)に悪巧みなんて出来ないっての。
「すごい悪い顔してます……」
「気のせい気のせい~~卯月に悪巧みなんて無理無理~~! ほら、持っていって」
「…………」
如月に盛り付けた茶碗を押し付け、今日の夕飯をこたつへ運ぶ。こたつには卯月が既に座っていた。
「お兄ちゃん、お風呂お湯張っておいたよ~~」
「ありがとー」
卯月にしては気が利くような気もするが、特に気にも留めず、こたつの上に料理を並べていく。
「今日は大掃除したんだね! 全身埃まみれになったんじゃない?」
「え? うん、まぁね~~」
「今日は如月とお風呂に入って、洗い合いっこでもしたら?」
爽やかな笑顔でいちゃいちゃをオススメ(?)され、手から箸が滑り落ちる。
からんからん……。
「なななななななに急に?!?!」
「べつに? だってらぶらぶじゃん。『一緒にお風呂』入れば?」
「いや……えっとぉ……」
なんだろう?!?! 違和感!!! 妹に勧められることがなんだか恥ずかしい。耳元で「だから言ったでしょ」と小さく囁かれた。吐息が耳にかかり、鼓動が早くなる。
「でっ…でもこれだけじゃ……」
「もっと疑った方がいいですって……」
卯月に聞こえないように、ボソボソと小さな声で如月と話す。違和感はあるが、そこまで変だとは思わない。
「とりあえず食べよ」
こたつに入り「いただきます」と手を合わせ、ひとくち食べる。うんうん、美味しい。俺の作った料理に如月が手をつけた。
「意外とさっぱりしてる」
「これぞポン酢の力!!! で、お風呂は一緒に入ってくれるの?」
「それ、今言います?」
如月が食事を含む口元を手で隠しながら、クスクスと笑う。細められた瞳が艶かしい。
「もちろん、入りますよ」
卯月の前で放たれるその言葉に、恥ずかしくなり、頬が赤く染まった。
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