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50話(2)煤払い!!家中の埃を払ってらぶらぶ大掃除!!掃除の後はやっぱり?!
しおりを挟む「卯月さんは?」
「時間的に、もぉ学校行ったと思うけど……」
「なるほど」
平日に睦月さんと2人なんて少し珍しくて、ドキドキする。睦月さんが「今日は煤払い!!!(※覚えた)」と、三角巾にエプロンまで付けて、すごく張り切っている。
ちょっと、おばかかわいい。
「見て如月!!! 俺、大掃除チェックリスト作った!!!」
「…………(おえっ……)」
チェックリストに目を通す。キッチン、トイレ、洗面所、浴室、各部屋、ベランダ、玄関、など事細かく分類され、掃除の進捗や家の間取り、掃除をするところがひと目で分かるように作られている。
流石、経理。職業病ですか? と、疑いたくなるほど、細かい。これはサボれない。
「事前に不要なものは全て不燃ゴミとして捨て、掃除道具も揃えました!!!」
「え……何を捨てたのですか?」
「卯月が拾ってきたゴミとか、壊れた家電とかかな? 如月の本は全て本棚に収納したよ」
恐るべし、事前準備。この家事能力の高さは両親が居なくて、培われた経験というより、才能だと思う。
「じゃあ、俺、キッチン掃除してくるから、如月はトイレ掃除してきてね」
「……トイレ掃除……」
嫌だな、と思いつつ致し方なく、トイレへ向かう。大人になってからトイレ掃除なんてやった記憶がない。
「んーーどうやるんだろう……」
遠い昔にやった記憶を思い出しながら、掃除道具をトイレの収納から取り出す。便器の蓋と便座を開けてみた。
「綺麗……掃除する必要あるのかな」
掃除が行き届いている。使い捨ての便座シートで、便座を拭く。次はアレかな。トイレブラシで磨く的な……?
「……やりたくないな」
見た感じ、黒ずんでいるところや汚れているところは見当たらない。掃除しなくてもいいのでは? 気休め程度にトイレ用の洗剤を便器の中に吹きかけ、便座を閉じた。
「いいでしょ、うん。あと壁とか床とか拭いとこ」
お掃除シートで壁や床をしっかり拭いていく。いいんじゃない? 使ったお掃除シートを便器の中に放り込み、便器の蓋を閉じた。
じゃーー。
レバーを捻り、水を流す。オッケーでしょ。睦月さんのとこ行こ。キッチン掃除する睦月の元へ向かう。
「睦月さん、終わりましたぁ~~」
「早っ!!! ちょっとチェックしてくる!!」
「え?」
睦月がトイレに入り、隅々まで何かを確認している。なんというか、最初から1人でやった方が効率がいいのでは? 睦月を横目で見ながら洗面所で手を洗う。
「……問題なし!! まぁ俺が毎日掃除してるから綺麗で当たり前だけど!!」
「……毎日……」
大掃除チェックリストのトイレ欄に全てのチェックが入れられた。睦月に手を引かれるまま、キッチンへ移動する。私がキッチン掃除をするのだろうか? 目の前にふきんが差し出された。
「食器棚これで拭いて!」
「分かりました」
ふきんを受け取り、棚をひとつひとつ丁寧に拭いていく。意外と棚の角や、下の段など、埃が溜まっている。埃を綺麗に拭き取った。
睦月をチラリと見る。掃除機を手に持ち、カーペットを念入りに掃除していた。
「結構、埃が溜まっているものですね」
「俺だって全ては掃除出来ないもん」
「そうですよね」
「でも今日は、年に一度の大掃除だから家中をピカピカにするんだぁ!!」
あはは、と笑う睦月の声が部屋に響く。声を聴くだけでも、睦月の笑顔が容易に想像できる。掃除中だというのに、抱きしめたい。はぁ。睦月のことが好き過ぎる自分に、小さく溜め息を吐いた。
冷たい風がカタカタと窓を叩く中、年神様を迎えるために、睦月と家中を掃除する。突然、睦月が私の元へ来た。屈託のない笑顔を私に向け、窓を指差した。
「窓、全部開けよう!!!」
「…………(マジかぁ)」
ふきんをキッチンカウンターに置き、部屋の窓をひとつずつ開け放つ。冷たい風がヒューっと部屋の中を通り抜けた。寒っ!!!
寒さと引き換えに、部屋の中の埃っぽさは消え、新鮮な空気が広がっていく。睦月がリビングのカーテンを外し始めた。
「手伝います」
「ありがとう」
カーテンも埃がいっぱいだ。外したカーテンを両手で抱える。
「へくしっ……ずずっ…」
「カーテン、埃っぽいもんね!」
「はい~~」
埃っぽいカーテンに鼻をムズムズさせながら、カーテンを脱衣所まで運び、洗濯機へ放り込んだ。リビングに戻ると、睦月がベランダにしゃがみ込み、窓のさっしを固く絞った雑巾で拭いていた。
「大きいごみは掃除機で吸い取ったんだけどね、ここが気になるよね」
「十分綺麗だと思いますが……」
切れ込みの入ったスポンジや雑巾を交互に使い、細部の汚れを落としている。中々取れないのか、口を尖らせながら、掃除する睦月が可愛くて、ぐしゃぐしゃと頭を撫でた。
「っ……なぁに、もぉ~~っ」
「べつに?」
床に置かれた窓ガラス用の洗剤を窓へ吹きかけ、雑巾で拭き上げる。砂ぼこりなどでくすんでいた窓は、透き通り、日差しが綺麗に差し込んだ。
「部屋が明るくなりそう」
「なるよ~~!! 日差しがしっかり入るようになるんだからさ! あ、取れたぁ~~」
「ぉお~~めちゃくちゃ綺麗です」
「えへへ~~頑張った! もっと褒めて?」
立ち上がり、私をじぃっと上目遣いで見つめてくる。油や埃で汚れた服は、睦月が一生懸命掃除に取り組んでいたことが分かる。愛おしい。睦月の顔を両手で包んだ。
「私の自慢の嫁です」
「そこ、嫁言う? ……んっ」
顔を近づけ、唇を重ねる。『もっと褒めて』か。ちょっとだけサービスしとこ。片手で、胸の突起を服の上から弾く。睦月の肩がビクッと上がった。
「……あっ……ちょっ!!! だめだめだめ!!! まだ掃除中!! 次、玄関掃除するの!!!」
「はぁい、玄関掃除しましょ~~」
睦月の頬がほんのり染まっている。一瞬のことだったのに。赤くなって可愛い。ベランダの窓を閉め、玄関へ向かった。
「靴全部出そう!!!」
「全部出すの?」
「出さないと掃除出来ないでしょ!!」
シューズボックスから靴を全部取り出す。外から運ばれてくるのか、砂利や埃が多い。ほうきでしっかりとかき出し、棚の中を雑巾で拭いた。
「靴、磨きますか?」
「磨いちゃうか!!!」
廊下に座り、世間話などしながら、ひとつひとつ綺麗に磨き上げる。最初は掃除なんて面倒くさい、と思う自分が居たが、2人でやる掃除は楽しい。
大掃除チェックリストを見ながら、掃除していないところを睦月さんと一緒に掃除して、新年を迎える準備を進める。
「どう? 結構、家中掃除したんじゃない?!」
「えぇ、睦月さんが頑張りましたから」
睦月さんだけではなく、私も全身埃まみれだ。早くお風呂に入りたい。睦月が、う~~んっと伸びをして、にこっと笑い、私の方を向いた。
「ここまでやれば年神様も喜んでくれるかな?!」
「きっと、元旦に新年の幸せをもたらしてくれますよ」
睦月に釣られて、私も笑みが溢れる。急須であたたかいお茶を淹れ、こたつで一緒に一息つく。
もうあっという間に夕方。窓から見える夕焼けが、今年もあと半月で終わってしまうことを知らせているように思えた。
「お疲れ様!! 今日は本当に頑張った!!!」
「うん、お疲れさま。これできっと明るい年を迎えることが出来ると思います。睦月さんと一緒なら、尚更……」
隣に座る睦月の頬に触れる。頬を赤らめる睦月を見て、胸が高鳴る。優しく口付けした。
ちゅ。
「少し、する?」
「シたいけど、埃まみれだし、もうすぐ卯月が帰ってくる~~」
「確かにそうですね~~」
「でも……少しだけなら……」
見つめ合いながら、あたたかいお茶を啜り、湯呑みをこたつの上に置いた。
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