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48話(8)#愛でても愛でても愛でたりない。身も心も全て貴方に捧げるーー。
しおりを挟む指先にゴムをはめ、潤滑剤を垂らす。手によく馴染ませ、二本の指先をゆっくり飲み込ませる。
「んあぁっ……」
「今日、めちゃくちゃにしたいかも」
「……んっ……え……なにストレス溜まってるの?」
「違います~~貴方が可愛から……」
にっこり睦月に微笑みかけ、頬を触る。大丈夫、愛情持って、やることには変わりないから。ひどいことはしない。唾液で濡れた口唇に口付けた。
ちゅ。
睦月の脚の間に入り、押し開きながら、指先を進める。空いている片手で、胸の突起を擦った。涎なのか、風呂上がりの水滴なのか、はたまた汗なのか。もはや分からない。濡れた首筋を甘噛みする。
くちゅくちゅ。くにくに。
「んあっあっはぁっ…あっ…んっあっ…はぁ…あぁっやっ…あっ…はぁ…」
「気持ちいい? 教えてよ、睦月さん。これで割に合うかなぁ?」
口唇を動かそうとする睦月を見て、胸の突起を擦る指先を早める。そう簡単に答えは聞かないよ。挿れた指先で奥を突くと、睦月が肩を大きく揺らした。
ぐちゅ。
「ぁあっっだめぇっ…んっはぁ…あっやっあっ…んぁっ」
「なに? 気持ちいいの?」
「……きもち……いい…ふぇ……はぁ…はぁ……うぅ~~……」
「ちゃんと言えたね。可愛い。可愛いよ、睦月さん……」
ちゅ、ちゅっ。
色付いた口唇を優しく啄む。目尻から少しずつ流れる涙も、赤く染まった頬も、くっきりとした二重瞼も、閉じかけた大きな瞳も、全てが美しくて愛おしい。綺麗な甘い鳴き声が聴きたくて、指先を激しく動かす。
「んあっやっ…んっあっだめぇっあっ…ぁあっあっあっ…やっ…はぁんっ…」
愛でても愛でても、愛で足りない。首筋を口唇で挟み、吸い上げた。私の愛情の証を目に見える形で残していく。
「あっ…んっ…はぁっ…んっ…あんまりつけちゃだめぇ……あっ…」
「だめだめばっかりだね。だめよりいいとか気持ちいいって言ってくれた方が嬉しいなぁ~~」
舌先で耳を甘噛みする。もう、耳も、甘噛みの痕で赤くなっている。耳の中を水音を立てながら舐め回す。
くちゅくちゅ。
「ああっ…んっ…ん……あっ…はぁ…きもちいい…ん……はぁ…きさらぎ……もぉ挿れてぇ……はぁ…んっ…」
「早いよ、睦月さん。もっと私を全身で感じて?」
「……はぁっ…おかしくなっちゃうっ…んっ……んあっ」
親指と人差し指で胸の突起を摘み、擦り合わせる。くにくに。反対側の尖りに口を付け、円を描くように周囲を舐めた。私の腹で幹が擦れて感じるのか、睦月の腿が私を叩く。
「はあっんっあっ…んっあっ…はぁ…だめ…きもちぃ…んっ…ぁあっ…もぉへんになるっ…ああっ」
「そう。まだ元気はありそうだね」
変になる、ね。快感からくる可愛い訴えに思わず、クスッと笑みが溢れる。肉壁を辿り、睦月の1番感じるところ、前立腺を畳み掛けるように突いた。
ぬちゅくちゅ。
「んぁあっ…あっんっやっあっ…んっ…ぁあっもぉだめぇっあっ…んっあっ…はぁ…ぁっあっぁあああっっ」
睦月の瞳に溜まっていた涙がぼろぼろ溢れた。身体全体が、がたがた震えている。絶頂を迎えたのだと、悟る。震えの止まらない睦月の頬を優しく撫でた。
「ぁっやっ……」
「ほっぺ触っただけだよ」
「……ゆ、ゆびがみみにふれた……いまは…ぜんぶ感じちゃうから……はぁ…はぁ…」
「どれくらい感じちゃうの?」
「……え?」
深呼吸で息を整えようとしているみたいだが、そうはさせない。睦月に微笑みかけ、胸の突起を甘噛みした。
「はあっ……きもちっ……」
唾液で光りを見せる胸の尖りを、指の腹で擦り続ける。二本の指先を中で動かすと、身体が快感を覚えているのか、もっとくれ、と言っているかのように、私の指先を甘く締め付けた。
奥で指先の押し引きを繰り返し、その甘い望みに応える。
くちゅぐちゅぬちゅ。
「んあっ…だめぇっぁあっ…あっ…んっあっはあっ…んっ…やっあっんっあっ…もぉむりっ……あっやあっ……」
私の胸元に睦月の震えた手が触れた。一度、手を止め、睦月を見つめる。何か言おうとしているが、うまく声が聞き取れない。睦月の顔に耳を近づけた。
「……はぁ…はぁ……もぉ……むりだからぁ……挿れてぇ……」
赤く染まった頬。八の字に下がった眉。溢れ続ける涙。半開きの口から垂れる唾液。気持ち良さで瞼が落ち、大きな瞳は半分も開いていないのに、私を必死に見つめて、懇願する。
そんな顔されたら、もう限界だよ。
指先を引き抜き、身体を睦月に隙間なく寄せる。自身を窄みにゆっくりと潜り込ませた。
ずちゅ。
「ん…ぁあっ……はぁっ…きさらぎっ……手っ……んっ…」
「……ん……」
そっと両手を睦月に重ね合わせ、指先を絡める。激しさは要らない。甘く、ゆっくり、穏やかに腰を振る。柔らかい気持ち良さが包み込む。
「はぁ…睦月さん……はぁ……」
「……きもちいい…あっ…んっ…はぁっ…んっ…あっ…あっ…」
瞼を閉じているのに、微笑んでいるかのような表情で涙を流す睦月を見て、笑みが溢れる。睦月の脚が私に絡まるのを感じた。そっと繋いだ手を離し、抱きしめる。
「可愛いよ、睦月さん。貴方の全てが大好き」
私の言葉を訊き、睦月が目を細めて笑った。挿入したまま身体を起こし、抱き合う。背中に回した手にグッと力を入れた。
*
自分の身体が自分の身体ではないみたいに、力が入らない。快感だけが身体中を巡る。自分1人では身体を起こしていられなくて、如月の手に支えられながら、如月を見つめる。
「……ふふ。愛していますよ」
言葉を返したいのに、喉から上手く言葉が出ない。ただ、微笑んで見つめることしか出来ない。震える手で、如月の頬に触れる。顔が近づき、優しく口付けされた。
俺からキスしようと思ったのに、先にされちゃった。もぉ……。
両手で腰が掴まれ、上下に揺られる。如月に身体の全てを委ねた。俺はもうどうなってもいい。この繋がりが幸せだ。
ずちゅぐちゅ。
「んっ…あっんっ…んあっ…やっ…はあっ…んっ…ぁあっ…んっ…ああっ」
「愛してるっ…はぁ…愛してるよ」
ずぶずぶと何度も深く刺さり、気持ち良さで背中が反る。掴めるものがなくて、如月の背中に抱きつく。爪を立て、耐え忍ぶ。
きもちいい……。
それ以外何も考えられない。止まらない涙のせいで、前がよく見えない。いや、そのせいだけじゃないな。
耳には『睦月さん』と何度も俺を呼ぶ声が入ってくる。その名前が特別なものに思える。
俺も気持ちを伝えたい。
如月を強く抱き締め、絞り出すように喉から声を出した。
「んあっ…んっんんっあっやっあっ……きさ……ら…ぎ…あっ…んっはぁ…はぁ…」
「……なに?」
目尻を下げた優しい顔で問いかけてくる。でも、俺の腰を揺する手は止まらなくて。それどころが激しさを増す。脳が甘く痺れていく。
ずちゅずちゅ。
「んぁあっっあっあっんっ…はぁ…やっあっ…んんっあっきさらぎぃっんあっ…はあんっ…おれもっ…んぁっ…あいしてるっ…んっんんっ……あっ……」
ビクンと身体が震え、快感が背筋を駆け上がり、全てを解き放った。身体の力が抜け、如月の肩にもたれかかる。頭を優しく撫でられ、ぎゅっと抱き締められた。
「睦月さん……」
名前を呼ばれ、如月を見つめる。頬が両手で包まれた。静かに瞼を閉じると、唇が重なった。
ちゅ。
「もう少しする?」
「…はぁ…はぁ…もぉ十分、愛受け取ったよ……はぁ…」
「冗談ですよ」
いたずらな笑みを浮かべる如月を見て、頬が緩む。カーペットの上にまた押し倒されると、自分の中から如月の幹が引いていった。絶頂を迎えているせいか、抜かれる瞬間もゾクゾクする。
「んぁっ…はぁはぁ…」
「お風呂もういっかい入る?」
「……如月が俺のこと全て面倒みてくれるなら」
如月がクスリと笑い、俺のことを両腕で抱き上げ、立ち上がった。如月の首の後ろに腕を回す。歩いている方向は勿論、浴室。
本日三度目の風呂。
会話を交わすこともなく、静かな時間ではあったけど。
如月が俺の髪を優しく撫でながら過ごすバスタイムは、一度目と二度目より、遥かに幸福で、幸せなものだった。
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