如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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48話(4)水溶き片栗粉との因縁対決?!素晴らしき適量を見出します?!

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「米も炊いてない!!!」


 回鍋肉の下準備をして、満足していたが、米も味噌汁も作ってはいないではないか。これでは睦月さんが帰ってきたら、睦月さんが作る羽目になる。


 卯月さんが睦月さんのために考えた勤労感謝大作戦。私も成功させたい思いは同じだ。


「中華だと味噌汁よりはスープの方が良いのでしょうか?」


 私の質問に答えてくれる相手など居ないが、味噌で味付けする回鍋肉に味噌汁はナンセンスな気がする。(※そんなことありません)


「卵スープとか?」


 適当に作ると、卯月さんに怒られてしまう。キッチンカウンターの上に放置してある自分のスマホを手に取り、卵スープの作り方を検索する。


 ふむふむ。


 意外と簡単かもしれない。小鍋を取り出し、コンロの上に置く。水600mlを計量カップで測り、投入した。


 じゃーー。


「火をつけてっと……」


 ぐつぐつ。


 沸騰している。調味料、鶏ガラスープ大さじ1.5?! 計量スプーンはないが、これは粉状!!! 1.5はカレースプーンで測れる!!!


 なにも分割しなくても、一度に1.5杯分測っても良いのでは?!?!


 ざくっ。


 1.5杯分と思われる量をスプーンで一気に掬う。これくらい?! 知らんけど!!! 掬った分の鶏ガラスープを小鍋に入れた。


「塩、胡椒、だし顆粒『少々』?」


 少々の少々とは何を目安にどのくらいの量を指しているのか? 表現がざっくりしすぎていて、少々がどのくらいの量なのかサッパリわからない。


「美味しく作ろうと思うと全てが気になってくるのは何故だろう!!!」


 入れすぎると小さじの分量になるのでは?!? つまり、そこまでには達しない量ということ!!! スプーン以下の量!!! 軽くつまんで入れておこう!!!


 3つの調味料をひとつまみずつ指先で掴み、鍋の中へ入れる。これは良い感じなのでは?!?!


「水溶き片栗粉を入れてとろみを付ける!!!」


 水溶き片栗粉……なんて因縁の調味料!!! だが、今回はちゃんと水に溶いて私は入れる!!!


 スマホを手で持ち、レシピに載っている水溶き片栗粉の分量を確認する。


 『適量』


 なんだそれぇええぇええぇえぇえ!!!!! 味見してちょっと適当にやっとけみたいな感じで書くなぁああぁあぁあ!!!!


「水溶き片栗粉など味見して適当にやれる代物ではない!!!! 貴様、私にまた因縁を付けているのか!!!! 分かりました!!! その勝負、受けて立つ!!! 私が素晴らしき適量を見出してみせる!!!」


 食器棚から小皿を取り出し、片栗粉を適当に入れる。全ては私の感覚!!! これこそ、適量!!!(?)


「あとは水!!! 水も適当ということか!!!」


 小皿に薄く水が張るくらい、水を入れ、スプーンで混ぜる。


「完成した、水溶き片栗粉が!!!」


 水溶き片栗粉を小鍋に入れ、とろみをつけていく。良い感じ!!! 卵はまだ入ってないけど!!!


「卵を割らねば!!!」


 小皿に卵を割り入れ、菜箸で、よくかき混ぜる。よし、小鍋に入れよう!!!


 細く回し入れると、なんだかそれらしい卵スープが完成してきた。ごま油を少しだけ垂らす。お玉でスープを掬い、ふーっと息を吹きかけ、口元へ運んだ。


「薄っす……」


 メシマズだ。これは睦月さんに調整してもらう必要がある。



 強制的に旭さんと遊ばせてしまったが、早く睦月さんに会いたいと思う私は我儘だな。



 貴方の笑顔がみたい。



 この腕で抱きしめたい。



 もう、寂しくなっている自分に少しだけうんざりした。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー
 *



 ーーPM 4時


「じゃあ今日はこの辺で! 楽しかったよ! ありがとう旭~~」
「おう、また遊ぼうなー」


 旭に手を振り、帰路に着く。旭から事の全容は聞いた。全く。そんなこと良いのに。2人が俺のことを考えてくれている気持ちに頬が緩む。


 古びた階段を駆け上がり、扉の前に行く。玄関扉の前から夕食の匂いは全くしない。まぁ、まだ作るには時間が早いか。


 鍵穴に鍵を差し込み、ドアを開けた。


「ただいまぁ~~っ!!」


 しーーん。


 何故……。靴を脱ぎ、部屋に上がる。リビングへ直行する。


 目の前に入ってきたのは謎に積まれた洋服の山。なんだこれは。部屋は片付いているけど、この脱いだような服の山はなんだ? とりあえず、スルーしてリビングの中を進む。


 ぐちゃあ……。


 こたつの上に広がるデリバリーの残骸と大量のみかんの皮。


「いや、捨てろよ」


 デリバリーの空袋に残骸をまとめ、片付ける。結局、俺がやるんだけどね。良いけどさ。


「全く。俺が居ないからって、デリバリーなんか好き放題食べちゃって」


 こたつに入り、2人仲良く寝転がって昼寝をしている。如月のそばに腰を下ろし、寝顔を見つめた。


「如月……帰ってきたよ」


 如月の髪の毛にそっと触れ、指先を髪の間に通す。さらさらと指先から髪の毛が流れ落ちた。


「ん……ぁ……睦月さん……おかえりなさい」


 薄目を開け、ぼんやりと俺を見つめる如月が可愛くて、身体の中に少しだけ熱が巡る。親指で優しく如月の下唇をなぞった。


「ただいま。ねーキスしよ」
「ふふ。すれば?」


 こたつへ入り、如月の隣にごろんと寝そべる。ぎゅっと如月に抱き寄せられた。


「早くキスして?」
「う、うん……」
「まだ?」
「明るくて照れる……」
「今更何照れてるんですか」


 長いまつ毛に薄い二重の切れ長の瞳。そして高い鼻。その整った顔立ちは未だに少しドキッとする。如月の頬に触れ、唇を重ねた。


 ちゅ。


「~~~~っ……んっ……んん…っん~~っ」


 頭の後ろを手で押され、隙間なく唇が触れ合う。俺を逃さないように、如月の脚が俺の脚に絡まる。如月の隣で卯月が寝てるってば!!!


「ーーはあっ……あっやめっ…どこ触ってっ…あっ…だめだめっだーめっ!!」
「あ」


 幹を撫でる手に肩が小さく何度も上がる。でも今はだめっ!! 幹を撫でる如月の手を掴み、引っ張り上げた。撃退!!!


「ぶっぶーー!!!」
「ぇえ~~……ぶっぶーは寂しいです~~」
「く…暗くなってから」
「りょーかいしました……ん」


 優しく額に口付けされ、頬が染まる。抱擁を乞うように、如月の服を両手で掴んだ。


「睦月さん、いちゃいちゃしてる場合じゃありませんでした」
「へ?」
「スープの味調整お願いします」


 味調整? こたつから起き上がり、如月と一緒にキッチンへ向かう。なんだか色々料理をした後がある。少しだけ、期待をする自分がいる。


「適量とか少々とか、曖昧な表現の匙加減が難しくて。適当に作るとは中々大変ですね」
「適量はテキトーに作れって意味じゃないよ」
「そうなんですか? もう分からないです~~」


 コンロの火をつけ、小鍋のスープを温める。一体、どんな味なのか。お玉で掬い、味見をする。なんだ、悪くないじゃん。少しだけ味薄いけど。


「適量は、その家庭料理の味付けに合うようにやってねって意味だよ」
「う~~それは普段料理しない私には出来なさそうですね」
「あはは」


 小鍋に少しだけ、鶏ガラスープを加える。だし顆粒で味を整え、もう一度味を確認する。おいしー。


「はい、完成~~」


 小皿にスープを少し注ぎ、如月へ渡す。


「おいし~~私が作ったのと全然違います~~」
「そんなことないでしょ。ベースは如月が作ったものなんだから」


 小皿に入ったスープを幸せそうに飲み干す如月を見て、俺まで嬉しくなり、笑みが溢れる。



 どんなに忙しく、大変でも。



 その笑顔がみたいから。



 俺は如月のために、料理を作ってあげたい。
 

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