226 / 306
48話(4)水溶き片栗粉との因縁対決?!素晴らしき適量を見出します?!
しおりを挟む「米も炊いてない!!!」
回鍋肉の下準備をして、満足していたが、米も味噌汁も作ってはいないではないか。これでは睦月さんが帰ってきたら、睦月さんが作る羽目になる。
卯月さんが睦月さんのために考えた勤労感謝大作戦。私も成功させたい思いは同じだ。
「中華だと味噌汁よりはスープの方が良いのでしょうか?」
私の質問に答えてくれる相手など居ないが、味噌で味付けする回鍋肉に味噌汁はナンセンスな気がする。(※そんなことありません)
「卵スープとか?」
適当に作ると、卯月さんに怒られてしまう。キッチンカウンターの上に放置してある自分のスマホを手に取り、卵スープの作り方を検索する。
ふむふむ。
意外と簡単かもしれない。小鍋を取り出し、コンロの上に置く。水600mlを計量カップで測り、投入した。
じゃーー。
「火をつけてっと……」
ぐつぐつ。
沸騰している。調味料、鶏ガラスープ大さじ1.5?! 計量スプーンはないが、これは粉状!!! 1.5はカレースプーンで測れる!!!
なにも分割しなくても、一度に1.5杯分測っても良いのでは?!?!
ざくっ。
1.5杯分と思われる量をスプーンで一気に掬う。これくらい?! 知らんけど!!! 掬った分の鶏ガラスープを小鍋に入れた。
「塩、胡椒、だし顆粒『少々』?」
少々の少々とは何を目安にどのくらいの量を指しているのか? 表現がざっくりしすぎていて、少々がどのくらいの量なのかサッパリわからない。
「美味しく作ろうと思うと全てが気になってくるのは何故だろう!!!」
入れすぎると小さじの分量になるのでは?!? つまり、そこまでには達しない量ということ!!! スプーン以下の量!!! 軽くつまんで入れておこう!!!
3つの調味料をひとつまみずつ指先で掴み、鍋の中へ入れる。これは良い感じなのでは?!?!
「水溶き片栗粉を入れてとろみを付ける!!!」
水溶き片栗粉……なんて因縁の調味料!!! だが、今回はちゃんと水に溶いて私は入れる!!!
スマホを手で持ち、レシピに載っている水溶き片栗粉の分量を確認する。
『適量』
なんだそれぇええぇええぇえぇえ!!!!! 味見してちょっと適当にやっとけみたいな感じで書くなぁああぁあぁあ!!!!
「水溶き片栗粉など味見して適当にやれる代物ではない!!!! 貴様、私にまた因縁を付けているのか!!!! 分かりました!!! その勝負、受けて立つ!!! 私が素晴らしき適量を見出してみせる!!!」
食器棚から小皿を取り出し、片栗粉を適当に入れる。全ては私の感覚!!! これこそ、適量!!!(?)
「あとは水!!! 水も適当ということか!!!」
小皿に薄く水が張るくらい、水を入れ、スプーンで混ぜる。
「完成した、水溶き片栗粉が!!!」
水溶き片栗粉を小鍋に入れ、とろみをつけていく。良い感じ!!! 卵はまだ入ってないけど!!!
「卵を割らねば!!!」
小皿に卵を割り入れ、菜箸で、よくかき混ぜる。よし、小鍋に入れよう!!!
細く回し入れると、なんだかそれらしい卵スープが完成してきた。ごま油を少しだけ垂らす。お玉でスープを掬い、ふーっと息を吹きかけ、口元へ運んだ。
「薄っす……」
メシマズだ。これは睦月さんに調整してもらう必要がある。
強制的に旭さんと遊ばせてしまったが、早く睦月さんに会いたいと思う私は我儘だな。
貴方の笑顔がみたい。
この腕で抱きしめたい。
もう、寂しくなっている自分に少しだけうんざりした。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
ーーPM 4時
「じゃあ今日はこの辺で! 楽しかったよ! ありがとう旭~~」
「おう、また遊ぼうなー」
旭に手を振り、帰路に着く。旭から事の全容は聞いた。全く。そんなこと良いのに。2人が俺のことを考えてくれている気持ちに頬が緩む。
古びた階段を駆け上がり、扉の前に行く。玄関扉の前から夕食の匂いは全くしない。まぁ、まだ作るには時間が早いか。
鍵穴に鍵を差し込み、ドアを開けた。
「ただいまぁ~~っ!!」
しーーん。
何故……。靴を脱ぎ、部屋に上がる。リビングへ直行する。
目の前に入ってきたのは謎に積まれた洋服の山。なんだこれは。部屋は片付いているけど、この脱いだような服の山はなんだ? とりあえず、スルーしてリビングの中を進む。
ぐちゃあ……。
こたつの上に広がるデリバリーの残骸と大量のみかんの皮。
「いや、捨てろよ」
デリバリーの空袋に残骸をまとめ、片付ける。結局、俺がやるんだけどね。良いけどさ。
「全く。俺が居ないからって、デリバリーなんか好き放題食べちゃって」
こたつに入り、2人仲良く寝転がって昼寝をしている。如月のそばに腰を下ろし、寝顔を見つめた。
「如月……帰ってきたよ」
如月の髪の毛にそっと触れ、指先を髪の間に通す。さらさらと指先から髪の毛が流れ落ちた。
「ん……ぁ……睦月さん……おかえりなさい」
薄目を開け、ぼんやりと俺を見つめる如月が可愛くて、身体の中に少しだけ熱が巡る。親指で優しく如月の下唇をなぞった。
「ただいま。ねーキスしよ」
「ふふ。すれば?」
こたつへ入り、如月の隣にごろんと寝そべる。ぎゅっと如月に抱き寄せられた。
「早くキスして?」
「う、うん……」
「まだ?」
「明るくて照れる……」
「今更何照れてるんですか」
長いまつ毛に薄い二重の切れ長の瞳。そして高い鼻。その整った顔立ちは未だに少しドキッとする。如月の頬に触れ、唇を重ねた。
ちゅ。
「~~~~っ……んっ……んん…っん~~っ」
頭の後ろを手で押され、隙間なく唇が触れ合う。俺を逃さないように、如月の脚が俺の脚に絡まる。如月の隣で卯月が寝てるってば!!!
「ーーはあっ……あっやめっ…どこ触ってっ…あっ…だめだめっだーめっ!!」
「あ」
幹を撫でる手に肩が小さく何度も上がる。でも今はだめっ!! 幹を撫でる如月の手を掴み、引っ張り上げた。撃退!!!
「ぶっぶーー!!!」
「ぇえ~~……ぶっぶーは寂しいです~~」
「く…暗くなってから」
「りょーかいしました……ん」
優しく額に口付けされ、頬が染まる。抱擁を乞うように、如月の服を両手で掴んだ。
「睦月さん、いちゃいちゃしてる場合じゃありませんでした」
「へ?」
「スープの味調整お願いします」
味調整? こたつから起き上がり、如月と一緒にキッチンへ向かう。なんだか色々料理をした後がある。少しだけ、期待をする自分がいる。
「適量とか少々とか、曖昧な表現の匙加減が難しくて。適当に作るとは中々大変ですね」
「適量はテキトーに作れって意味じゃないよ」
「そうなんですか? もう分からないです~~」
コンロの火をつけ、小鍋のスープを温める。一体、どんな味なのか。お玉で掬い、味見をする。なんだ、悪くないじゃん。少しだけ味薄いけど。
「適量は、その家庭料理の味付けに合うようにやってねって意味だよ」
「う~~それは普段料理しない私には出来なさそうですね」
「あはは」
小鍋に少しだけ、鶏ガラスープを加える。だし顆粒で味を整え、もう一度味を確認する。おいしー。
「はい、完成~~」
小皿にスープを少し注ぎ、如月へ渡す。
「おいし~~私が作ったのと全然違います~~」
「そんなことないでしょ。ベースは如月が作ったものなんだから」
小皿に入ったスープを幸せそうに飲み干す如月を見て、俺まで嬉しくなり、笑みが溢れる。
どんなに忙しく、大変でも。
その笑顔がみたいから。
俺は如月のために、料理を作ってあげたい。
10
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる