如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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48話(3)カラオケ勝負は飛んでいきたい?!計量スプーンは人生の目分量?!

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 ふっ。93点!!! 勝ったでしょ!!! これは!!! 我ながら人生最高得点!!! これはイケたな!!!


 マイクの電源を切り、机の上に置く。旭がマイクを持ち、立ち上がった。目の前に表示された曲名『翼をください』。はぁあぁあぁあぁあ?!?!


 アリなの?!?! それ、アリなの?!?!


「いま~~わたしの~~ねがぁ~~いごとがぁ~~」


 何真顔で歌っちゃってんだぁあぁぁあぁあ!!!! しかもめっちゃ点上がっていくんですけどぉおぉおぉお!!!!


「この大空にぃ~~翼を広げ~~飛んでぇゆきたいよぉ~~」


 俺がお前を大空にぶっ飛ばしてやろうかぁああぁあぁあ!!!! ちょっとぉ!!! 点がやばいんですけど!!! 負ける!!! このままじゃ負ける!!!!


「翼~~はため~~か~~せ~~ゆきたいぃ~~」
「いやぁああぁああぁあぁあぁあ!!!!! いくなぁあぁあぁあぁあぁああ!!!!!!」


 98点。


 winner旭。


「負けたぁあぁあぁあぁあぁ!!!!! くそがぁああぁあぁあぁ!!!!」
「むっちゃん、さっきからうるさいよ」


 何?!?!『翼をください』で点取りに来るってなんなの?!?! アリなの?! 反則じゃないの?!?! ズルでしょ!!!


 旭の服を掴み、揺さぶる。


「それ反則だってば!!!」
「ちょっと~~負けたからってやめてー歌に指定はなかったでしょー」
「そうだけど!!! あんな単調な曲、絶対高得点取れるやつ!!!」
「これも戦略。約束は守れー」


 まぁでも、それを言ったら旭だって、どこにキスするかなんて、指定してない訳だし。口にする必要はない!!!


 旭の方をじぃっと見つめると、旭の頬が赤く染まった。なんだよ、そんな反応されるとキスしづらいっての!!!


「口にはしないから!!!」
「いいよ、口じゃなくて。半分冗談だったし。あと、むっちゃんが弥生さんと別れることは望んでないから。2人にはずっと仲良く過ごして欲しい。これでも応援してるんだ。2人のことは。セクシュアルマイノリティを持つ者として」


 ……でも半分は本気じゃねぇかよ。


 穏やかに笑みを浮かべながらも、恥ずかしそうに旭が俯く。そっと旭の顎に触れ、持ち上げる。旭の頬が一段と赤く染まった。


 こんなに照れている旭は初めて見る。無言の空間が俺と旭を緊張で包む。旭の感じている恥ずかしさが、俺にまで伝わり、段々と恥ずかしくなってくる。


 旭の頬に顔を近づけ、そっと口付けする。


 ちゅ。


 最初で、最後だからな。ばぁか。


 これは墓場まで持っていく。一生の秘密だ。旭を見ると、顔に両手を当て、全てをシャットアウトしていた。初恋みたいな反応が初々しい。


 でも、友達以上の感情はない。


「もう二度としないから」
「……分かってるよ、ありがとう」


 こちらを見ようとしないどころか、俯いて、顔すらも上げない旭に手を伸ばし、優しく頭を撫でた。


 *


「回鍋肉ってどうやって作るの?」
「それ、私に聞きます?」


 私はもうその手には乗らない!!!(?)勤労感謝大作戦なのだから、お兄ちゃんには絶対に美味しい回鍋肉を食べてもらう!!!


 ポケットからスマホを取り出し、予め入れておいた、レシピアプリで回鍋肉を検索する。よし!!! これで作ろう!!!


「豚肉とキャベツはひと口大に切るだって!!!」
「なるほど」


 肉は後回しにして、ピーマンやねぎ、キャベツなど、野菜から先に切っていく。


 とんとんとん。


 カレーの時に比べたら、少しは包丁の扱いもまともになった。ピーマンを半分に切り、種を手で取り出す。なんか種細かい。取りづら。


「なんか、種、面倒~~」
「水で流せば良いのでは?」
「なるほど」


 じゃーー。


 水で種を綺麗に洗い流す。よし、綺麗になった。


「野菜切れましたね」
「うん!!! 次は調味料の調合だって!!!」


 時計を見ると、13時を過ぎていた。意外と時間かかっている。まだお昼ご飯は食べていない。どうしよう。


「お昼ご飯どうしよう?!」
「うーばー頼みますか?」
「さんせーー!!!」


 如月のスマホから食べたいものを注文する。兄がいると、節約で外食も出前も出来ないから、普段と違うものが食べられるのは嬉しい。


 もう一度、レシピを見る。調味料の統合をしなくては。まず、味噌大さじ1.5。1.5とはどのくらいの量なのか。引き出しを開け、計量スプーンを探すが見つからない。


「如月!!! 計量スプーンがない!!!」
「睦月さんは普段、どうやって作っているのですか?」
「長年の感覚?!?!」
「そんな何十年も料理歴あるんですか」


 う~~ん。


 少し不服だけど、ここは目分量でやろう!!! カレースプーンで味噌をなるべく平らにしながら、ひと掬いする。大さじ1って、このくらいかな?!?!


 残り、あと0.5!! 0.5とはどのくらい?!?!


「大さじ1.5の0.5ってどのくらい掬うのかな?!」
「半分くらいじゃないですか? 貸してください」


 ぐさっ。


 如月がスプーンで思いっきり味噌を掬っている。それは半分なの?!?! 私の大さじ1見てた?!?! スプーンの上に山のように味噌が盛られた。


「はいどうぞ」
「多くね?!?!」
「人生こんなもんです」
「人生の目分量を味噌でたとえたらそんなもんなのか!!! なるほど!!!」
「知らんけど」


 スプーンを受け取り、小皿に味噌を乗せる。あとは砂糖、醤油、酒、ごま油が大さじ2分の1。2分の1とはスプーンでどうやって測るのだろうか?


 スプーンの中で2分の1とか、綺麗に半分に割れないし!!! 液状のものとか絶対無理じゃない?!?!


「如月ぃ!!! 大さじ2分の1は流石にスプーンじゃ無理説!!!」
「むしろ大さじ1で良いのでは?」
「むしろとは?!?!」
「正確に量れず、分量がバラバラになるくらいなら、最初から大さじ1で揃えて作れば問題ない気がします」
「なるほど!!!」


 それは大丈夫なのか?! そもそもレシピの調味料からズレている気もするが、少しずつ増えたくらいなら、味に差は出てこないのかも!!! 知らんけど!!!


「ま、これくらい大丈夫だな!!!」


 調味料を測り小皿に入れ、混ぜ合わせる。


 まぜまぜ。


「下準備は完成だね!!!」
「こちらも肉切れました」


 届いた出前で腹を満たし、また夕食作りに取り掛かる。えっと、次はフライパンに塩を入れ、キャベツを炒める!!! おけ!!!


「如月!!! 油!!!」
「どうぞ」


 どば。


 だから、多い!!!! 少しイラっとしながら、キッチンペーパーで油を拭き取り、塩を少々入れ、キャベツを炒め、皿へ移した。


「もうあとは肉と野菜炒めるだけですね」
「先に洗濯物取り込んで畳む?!」
「そうですね、そうしますか」


 ベランダから洗濯物を取り込み、リビングへ運ぶ。外の空気が冷たいせいか、洗濯物がひんやりとする。


「寒い~~」


 外に出て冷えた手を擦り合わせながら温める。取り込んだ洗濯物を手に取ると、如月が何かを思い出したように、目を見開いた。


「あっ!!!」
「どうしたの~~」
「味噌汁作っていません!!!」
「確かにぃ」
「私、作ってきます!!」


 如月が立ち上がり、キッチンへ向かった。いや、大丈夫か? 1人で。不安なんだけど。洗濯物を畳みながら、キッチンに立つ、如月の背中を見守った。





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