如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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48話 お兄ちゃんを休ませたい?!魔の巣窟で作戦会議?!

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 ーー11月23日土曜。


 いつもより敢えて、早く起きた。兄と如月はまだ寝ている。最近この2人は気づくと同じ布団に入っている。もう、ダブルでも買えば。


 でも如月に抱きしめられて寝ている兄の顔は幸せそう。お兄ちゃんが幸せなら私はそれでいい。


 布団から起き上がり、リビングへ行き、こたつに入る。


 今日は祝日、勤労感謝の日。


 いつも兄は仕事に家事に、そして私と如月の世話を頑張ってくれている。そんな兄を今日ぐらいは、どうにか休ませてあげたい。


 こたつで暖まりながら考える。


 まず、この件は如月の協力が必須である。よし、如月を起こそう。魔の巣窟こたつに案内するべく、如月のいる和室へ向かう。


 ゆさゆさ。


「如月おはよ~~」
「~~ん……ねむ……さむ……」ぎゅぅ。
「ちょっと起きて」


 抱き枕の如く、兄にくっついている。らぶらぶ過ぎである。そんなことより早く起きろ。


 ゆさゆさ。


「如月起きて」
「んもう~~……なんですかぁ……」
「作戦会議」
「なんの……」
「とりあえず魔の巣窟へ」


 如月の腕を引っ張り、リビングへ連れて行く。眠いのか欠伸をしている。昨日の夜、お盛んだったもんね。私、知ってます。週末はいつも、あっあっしてるの、分かってますから。


 如月と一緒にこたつに入り、冷えた手足を暖める。


「で、なんですか……」
「今日、勤労感謝の日なんだよね。お兄ちゃんを休ませたい」
「なるほど。家事をすれば良いですか?」
「そうだけど、せっかくならお兄ちゃんにもリフレッシュして欲しいじゃん?」


 私のプラン的では兄には出掛けてもらい、リフレッシュをしてもらう。そして、帰ってきたら家事は終わっており、ご飯も出来ていて超絶ハッピーみたいな!!!


 だからまず、この『兄に出掛けてもらう』をどうにかしたい。


「睦月さんをリフレッシュとは具体的には……?」
「友達と遊んできてもらうとか。如月はだめ! 私と家事をして、ご飯作るから!」
「ご飯作る……」


 如月の目が淀んだ。そりゃね、何回も失敗してるけども!! ここは三度目の正直!!!


「でも睦月さんの友達って、神谷さんか旭さんしか知りませんよ」
「神谷さんは皐さんで忙しい(?)と思うから旭さんと遊んでもらお!! 連絡して!!」
「メール入れておきます」


 旭さんと如月は色々あったくせに仲良くしてる。セクシュアルマイノリティを持っている者同士、何か通じるところがあるのかな、なんて思ったり。


「旭さん、今日睦月さんを誘拐に来るそうです」
「如月的に大丈夫なの?」
「んーーまぁ、何かあったらお仕置きするだけなので」


 如月の笑顔が黒い。怖い……。お仕置きって何をするのだろう。何かを想像している如月の顔が艶やかに感じる。


「お兄ちゃんが旭さんと出掛けたら、家事をして、クッキングだね!!」
「何を作るんですか?」
「決めてないけど」


 だらだら如月と話しているうちに、兄が起きてきた。あたたかいお茶でも淹れるか。こたつから立ち上がり、キッチンへ向かう。


 兄はリビングにくるなり、すぐ如月の元へいく。休日の兄は、ただの甘えん坊の恋人。


「和室に1人にしないで」
「どういうワガママですかぁ」


 兄がこたつに入りながら寝転がり、如月の膝の上に頭を乗せている。如月に頭撫でられて、デレてるし。1日中甘いんだよ!!!


 茶葉の入った急須に熱湯を入れ、3人分の湯呑みにお茶を回し注ぐ。おっけー。お盆に湯呑みを3つ乗せ、こたつまで運ぶ。


「どぞ~~」
「ありがとうございます」
「ありがとー」
「お兄ちゃん朝ごはんまだ?」


 あ、勤労感謝の日だった。


 思わず兄に朝ごはんを頼んでしまった。如月が『え?』みたいな顔で私を見てくる。朝食の打ち合わせはしてなかったな。まぁいっか。朝ごはんは作ってもらおう。


「お茶飲んだら作るね~~」
「お腹空いた」


 兄はこたつから身体を起こし、如月と、ちゅーしている。目の前に私、居ますけど。そんなのお構いなし。


 付き合って……いや、同棲歴半年以上の2人には、もはや私の前でのキスとかもう気にならなくなっている模様。まぁ良いけどさ。


 そういう私も気にならなくなってしまった。


「飯作るかぁ~~」
「あ、睦月さん。スマホ見てくださいね」
「え? なんで?」
「なんでも」
「はぁ?」


 兄が眉を顰めながら、スマホの通知を見て、固まった。まぁね。勝手なことやりましたから。


「旭と遊ぶ約束なんかしてないけど」
「しました。私が」
「なぁんで!!! 如月が俺の遊ぶ約束するの!!! 意味分からないでしょ!!!」
「まぁ、意味は分からないですね」


 すん、と静かにお茶を飲む如月に対して、兄は怒り心頭。如月の背中を叩いている。


「俺……旭じゃなくて、如月とデートしたい……」


 如月の服を掴み、目を伏せて落ち込む兄の姿を見ると、リフレッシュ作戦は失敗している気がして、不安になる。


「ごめんね。でもたまにはお友達も良いと思いますよ」
「う~~ん……」


 なでなで。


 子どもをあやすみたいに、頭を撫でられている。とりあえず、兄は納得したみたいだからオッケーだな!!!


 兄はキッチンへ向かうと朝食を作り始めた。うちはあまりパンは出てこない。私はパンが食べたいのに。パンは高い!! 米の方が安い!! 兄はそればかり。


 きっと今日も和食だろう。


「朝ごはん出来たよ~~」


 こたつに朝食が並べられていく。はい、安定の白米と鮭と味噌汁!!! いつものメンバー!!!


「はい、どうぞ」


 目の前に納豆が置かれた。あぁね、納豆お前も朝食の常連だな。兄もこたつに入り、3人で手を合わせる。


「「「いただきます」」」


 もぐもぐ。


「なんで俺と旭の遊ぶ約束したの?」
「え?」


 兄が納豆を混ぜながら如月を見つめている。これはまずい!!! 助け舟を出さねば!!!


「如月の優しさでしょ」
「優しさって……俺には都合が悪くて家から追い出しているように感じるけど」
「そのようなわけでは……」


 鋭い!!!


「だって、変じゃん。俺とデートしないで、他のやつと約束させるなんて」


 間違いない!!! 如月が気まずそうに私の方を見てくる。こっち見られても!!! これ以上のフォローは無理だって!!!


「えっと……大人の事情です!!!」
「何大人の事情って!!! 俺に何を隠してるの?!?! 俺に秘密で変なことしてたら絶対許さないから!!!」
「ないない」


 怒る兄に対して、如月は興味なさげに、黙々と朝食を食べている。温度差が激しいな。


「はい、ごちそうさま」


 ーーピンポーン。


「もぉっ!!! まだ食べてるのに!!!」


 兄がこたつから出て玄関の方へ行った。きっと旭さんだろう。お迎え早すぎ。


 ガチャ。


「むっちゃん会いたかったよ~~」
「俺はそんなに会いたくなかったけどな!!!」
「冷た~~ひど~~」
「とりあえず入れば!!!」


 食べ終わった食器を流し台へ持っていく。洗い物は私たちでやろう!!! 兄は支度をするために洋室へ行ったようだ。


 おっけーおっけー!!! お兄ちゃんが出掛けたら前準備は完了!!! あとは私と如月で頑張るだけ!!!


「旭、お待たせ」
「いこか~~」
「あ、やっぱりちょっと待ってて」


 出掛ける前に如月の元へ寄る兄は、本当に如月が大好きなのが分かる。長いな。早く戻って来いよ。旭さんを待たせて和室で何やってるんだか。


「……まだかな?」
「んーー、もう少しかかるかもね」


 和室から漏れる微かな兄の甘い鳴き声が、私と旭さんの間に流れる空気を無言にした。

 

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