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47話 好きな人の趣味は意外と分からない?!
しおりを挟む睦月さんが仕事へ行った。
睦月さんは隠していたつもりだったけど、昨日帰ってきた様子と持ち物から、クリスマスプレゼントを買っていたのはバレバレだった。
「あと顔に出過ぎなんですよね~~」
そこが愛らしくて、可愛い一面でもあるのだけど。クリスマスプレゼントかぁ。確かに世間はクリスマスモードに変わりつつある。
「んーー。ネットで買うか、買いに行くべきか」
頭で悩んでいる割には、外行きの服に着替え始めている自分がいる。たまには自分の足で探しに行って、買うのも良いかもしれない。
「どこで買ったらいいんだろ……」
1人で買い物することなんて、あまりない。どこで何を買ったらいいかも、よく分からない。誰かに付き合ってもらおうかな?
ショルダーバッグを肩に掛け、玄関を出た。
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ーーーーーーーー
ーーーー
「で、ジムフリーパスを使って俺のところに来たと~~」
「頼れる人居なかったですし……」
「俺、今仕事中なんだけどー」
女性の背中を押しながら、ストレッチの指導をする旭に話しかける。何もしないのも気まずいので、旭の隣で自分も同じように、身体をほぐす。
「そこをなんとか……今からプレゼントを一緒に見に行きましょう!!!」
「なんで俺が!!! 大体俺の立場考えて? なんでわざわざ、好きな人の恋人があげるプレゼントを俺が一緒に見ないといけないの?! 俺があげるわけじゃないのに!!! 意味分からないでしょ!!!」
旭さんは正論だ。でも、睦月さんに近い人物であり、そこそこ私と仲良く話せる旭さんは、プレゼント選びに付き合ってもらうには適役!!! 来て欲しい!!!
「旭さんも睦月さんにあげれば良いじゃないですかぁ~~いたたたたたた!!! 蓮さんそこ痛いです!!!」
「すみませんでーす」
後ろから背中をグイグイ押してくる蓮を睨む。痛いんですけど!!!
「あっ、そっか。俺もあげればいいのか」
「それ、如月さんの立場からしてどぉなんですかぁ~~良いんですか? 旭からあげちゃってもー」
「え? 別にいいのでは?」
「ぇえ? 恋人のこと旭好きなんですよ? アリなんですかそれ~~如月さんの価値観よく分からんでーす」
よく分からんと言われても。旭さんから睦月さんに何かをあげたとして、そこでモノ如きの力で、睦月さんが旭さんに靡くとは思えないし。
誰かが何かを想い、選んで贈ったものを、受け取るな! なんて束縛するつもりはない。
「俺もあげていいなら、早退しようかな」
「マジですか旭さーん」
「本当ですか?! じゃあ外で待ってますね」
背中を押す蓮の手を振り払い、立ち上がる。プレゼント選びのお供が決まった。何あげようなぁ。クリスマスのことを考えながら、ジムの外で旭を待つ。
「お待たせ~~」
「行きましょ」
「どこに?」
「駅の近くとかですか?」
駅近くまで歩くと、メンズものが並ぶ雑貨屋が目に入り、足が止まる。こういうのかなぁ?
「入っても良いですか?」
「入ろ入ろ~~」
店の中に入るとシルバーアクセサリーや革製品の財布など、私は買わないような、ギラギラとした商品が並んでいた。ひとつずつ、手に取り、見ていく。
睦月さんの好きな物……装飾品? チェーン? ピアス? じゃらじゃらしたもの? 料理? そもそもショッピング的なデートは一度もしたことがない!!!!
「睦月さんって何が好きなんですか?」
「え……ヤンキーっぽいもの」
「それは私でも分かります」
そんなの知ってる!!! 役に立たないなぁ!!! もうっ!!! 私が分からないのに、旭さんが分かる訳がない?!?! うわぁあぁあぁあ!!! 盲点?!?! 今更過ぎる!!!
それでも何か良いものはないか、店内をぐるぐる歩き回る。旭が何かを手に取り見ているのが気になり、旭の肩から覗く。
「何見てるんですか?」
「ちょっ……え……ズボンに付けるチェーン……かっこいいなって」
「なるほど(かっこいい?)」
私が近づくと薄紅色に頬を染める旭が少し可愛く思え、意地悪したくなる。旭の肩に顎を乗せ、旭が持っているチェーンにそっと触れた。
「まぁ、良いんじゃないですか」
「良いかな…って!! 近い!!! 弥生さん!!! 俺、来られる方の耐性は持ってないんだから!! 分かるでしょ?!」
「そんなの知らないですって。あ、こっちのチェーンは?」
「知らないって!! もう!!! どれ?」
フックにかけられたチェーンを旭と見ていく。私のプレゼント選びがいつの間にか、旭さんのプレゼント選びに変わっている。
一々大袈裟に反応する旭が初々しくて、睦月さんと出会った頃を思い出し、笑みが溢れた。
*
「俺経理なのになんで外回り……」
「元営業課でしょ。文句言わない。ちょっと、世間話して帰るだけだから」
少し気難しい取引先で話しづらい、俺と付き合いがあったから、そんな理由で駆り出された。鬱々とした気持ちを抱えながら、上司について行く。
「あと、それ。首のやつ」
「え?」
「キスマーク?」
「いえ、蚊に刺されました」
上司が冷たい目で見てくる。男に付けられたものだからそういう目で見るわけ? 俺も負けないくらい、冷たい目で上司を見返す。
「あの人」
上司が誰かを指差した。指差す方へ目を向ける。俺の良く知る、そして、大好きな人……と旭。2人で歩いている。
「浮気浮気」
「浮気はないと思います……」
「お店入ったねー。まだ時間あるし、様子見る?」
「いや、いいですって……」
嫌がる俺を茶化すように、無理やり腕を引っ張り、雑貨屋のような店へ近づく。2人でいるところなんて、浮気でなくとも見たくはない。
見たところで、醜く妬いてしまうだけ。
物陰から上司と一緒に、2人の様子を窺う。チェーンを見ている。ひとつのチェーンを2人で持っている姿を見るとイライラしてくる。何あの距離の近さ。
はぁ?!?! 肩に顎乗せるとか!!!!
「もぉっやだっ!!! 行く!!!!」
「ちょっ…引っ張るなって!!!」
上司の腕を掴み、無理やり歩き進める。なんなの? それはアリなの?! あんな柔らかく笑っちゃってさぁ!!! 俺以外にあんな風に笑いかけるなっつーの!!!
「もぉ帰っていいですか?」
「イラつくのは分かるけど、帰るのは取引先のところへ行ってからにしてくれる?」
はぁ。小さくため息を吐く。嫌なもの見た。帰ったら如月に何か言うべきかな。このまま見なかったことにした方がお互い幸せ?
色んな考えが頭の中を巡る。
でも言わなかったら、また同じことが繰り返されるかも。嫌なことは嫌だってちゃんと言おう!!! 自分の気持ちは伝えなきゃ!!
きちんと話し合えることを願い、耳に触れる。アレ? ない? え? ない? 嘘っ?! え? えっ? 如月からもらったピアスがない!!!!
後ろを振り返り、ピアスを探す。ない!!!! ポケット?! ない!!! どこ?! 落とした?!?!
「ちょっとさっきのところ戻りたいんですけど……」
「時間ないからダメ」
「少しで良いからお願いします!!」
「ダメ!!」
あぁ、どうしよう。無くしてしまった。如月が俺にくれたピアスなのに。仕事終わってから探しても見つかるだろうか。
もしも見つからなかったら……。
そう思うと不安になる。このピアスは如月が俺に初めてくれたプレゼント。見つかるまで絶対に探さなきゃ。
ピアスのなくなった耳に、そっと触れる。毎日付けていたものがなくなった耳は物足りなくて、寂しく思えた。
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