如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

文字の大きさ
上 下
218 / 306

47話 好きな人の趣味は意外と分からない?!

しおりを挟む


 睦月さんが仕事へ行った。


 睦月さんは隠していたつもりだったけど、昨日帰ってきた様子と持ち物から、クリスマスプレゼントを買っていたのはバレバレだった。


「あと顔に出過ぎなんですよね~~」


 そこが愛らしくて、可愛い一面でもあるのだけど。クリスマスプレゼントかぁ。確かに世間はクリスマスモードに変わりつつある。


「んーー。ネットで買うか、買いに行くべきか」


 頭で悩んでいる割には、外行きの服に着替え始めている自分がいる。たまには自分の足で探しに行って、買うのも良いかもしれない。


「どこで買ったらいいんだろ……」


 1人で買い物することなんて、あまりない。どこで何を買ったらいいかも、よく分からない。誰かに付き合ってもらおうかな?


 ショルダーバッグを肩に掛け、玄関を出た。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


「で、ジムフリーパスを使って俺のところに来たと~~」
「頼れる人居なかったですし……」
「俺、今仕事中なんだけどー」


 女性の背中を押しながら、ストレッチの指導をする旭に話しかける。何もしないのも気まずいので、旭の隣で自分も同じように、身体をほぐす。


「そこをなんとか……今からプレゼントを一緒に見に行きましょう!!!」
「なんで俺が!!! 大体俺の立場考えて? なんでわざわざ、好きな人むっちゃんの恋人があげるプレゼントを俺が一緒に見ないといけないの?! 俺があげるわけじゃないのに!!! 意味分からないでしょ!!!」


 旭さんは正論だ。でも、睦月さんに近い人物であり、そこそこ私と仲良く話せる旭さんは、プレゼント選びに付き合ってもらうには適役!!! 来て欲しい!!!


「旭さんも睦月さんにあげれば良いじゃないですかぁ~~いたたたたたた!!! 蓮さんそこ痛いです!!!」
「すみませんでーす」


 後ろから背中をグイグイ押してくる蓮を睨む。痛いんですけど!!!


「あっ、そっか。俺もあげればいいのか」
「それ、如月さんの立場からしてどぉなんですかぁ~~良いんですか? 旭からあげちゃってもー」
「え? 別にいいのでは?」
「ぇえ? 恋人のこと旭好きなんですよ? アリなんですかそれ~~如月さんの価値観よく分からんでーす」


 よく分からんと言われても。旭さんから睦月さんに何かをあげたとして、そこでモノ如きの力で、睦月さんが旭さんに靡くとは思えないし。


 誰かが何かを想い、選んで贈ったものを、受け取るな! なんて束縛するつもりはない。


「俺もあげていいなら、早退しようかな」
「マジですか旭さーん」
「本当ですか?! じゃあ外で待ってますね」


 背中を押す蓮の手を振り払い、立ち上がる。プレゼント選びのお供が決まった。何あげようなぁ。クリスマスのことを考えながら、ジムの外で旭を待つ。


「お待たせ~~」
「行きましょ」
「どこに?」
「駅の近くとかですか?」


 駅近くまで歩くと、メンズものが並ぶ雑貨屋が目に入り、足が止まる。こういうのかなぁ?


「入っても良いですか?」
「入ろ入ろ~~」


 店の中に入るとシルバーアクセサリーや革製品の財布など、私は買わないような、ギラギラとした商品が並んでいた。ひとつずつ、手に取り、見ていく。


 睦月さんの好きな物……装飾品? チェーン? ピアス? じゃらじゃらしたもの? 料理? そもそもショッピング的なデートは一度もしたことがない!!!!


「睦月さんって何が好きなんですか?」
「え……ヤンキーっぽいもの」
「それは私でも分かります」


 そんなの知ってる!!! 役に立たないなぁ!!! もうっ!!! 私が分からないのに、旭さんが分かる訳がない?!?! うわぁあぁあぁあ!!! 盲点?!?! 今更過ぎる!!!


 それでも何か良いものはないか、店内をぐるぐる歩き回る。旭が何かを手に取り見ているのが気になり、旭の肩から覗く。


「何見てるんですか?」
「ちょっ……え……ズボンに付けるチェーン……かっこいいなって」
「なるほど(かっこいい?)」


 私が近づくと薄紅色に頬を染める旭が少し可愛く思え、意地悪したくなる。旭の肩に顎を乗せ、旭が持っているチェーンにそっと触れた。 


「まぁ、良いんじゃないですか」
「良いかな…って!! 近い!!! 弥生さん!!! 俺、来られる方の耐性は持ってないんだから!! 分かるでしょ?!」
「そんなの知らないですって。あ、こっちのチェーンは?」
「知らないって!! もう!!! どれ?」


 フックにかけられたチェーンを旭と見ていく。私のプレゼント選びがいつの間にか、旭さんのプレゼント選びに変わっている。


 一々大袈裟に反応する旭が初々しくて、睦月さんと出会った頃を思い出し、笑みが溢れた。


 *


「俺経理なのになんで外回り……」
「元営業課でしょ。文句言わない。ちょっと、世間話して帰るだけだから」


 少し気難しい取引先で話しづらい、俺と付き合いがあったから、そんな理由で駆り出された。鬱々とした気持ちを抱えながら、上司について行く。


「あと、それ。首のやつ」
「え?」
「キスマーク?」
「いえ、蚊に刺されました」


 上司が冷たい目で見てくる。男に付けられたものだからそういう目で見るわけ? 俺も負けないくらい、冷たい目で上司を見返す。


「あの人」


 上司が誰かを指差した。指差す方へ目を向ける。俺の良く知る、そして、大好きな人……と旭。2人で歩いている。


「浮気浮気」
「浮気はないと思います……」
「お店入ったねー。まだ時間あるし、様子見る?」
「いや、いいですって……」


 嫌がる俺を茶化すように、無理やり腕を引っ張り、雑貨屋のような店へ近づく。2人でいるところなんて、浮気でなくとも見たくはない。


 見たところで、醜く妬いてしまうだけ。


 物陰から上司と一緒に、2人の様子を窺う。チェーンを見ている。ひとつのチェーンを2人で持っている姿を見るとイライラしてくる。何あの距離の近さ。


 はぁ?!?! 肩に顎乗せるとか!!!!


「もぉっやだっ!!! 行く!!!!」
「ちょっ…引っ張るなって!!!」


 上司の腕を掴み、無理やり歩き進める。なんなの? それはアリなの?! あんな柔らかく笑っちゃってさぁ!!! 俺以外にあんな風に笑いかけるなっつーの!!!


「もぉ帰っていいですか?」
「イラつくのは分かるけど、帰るのは取引先のところへ行ってからにしてくれる?」


 はぁ。小さくため息を吐く。嫌なもの見た。帰ったら如月に何か言うべきかな。このまま見なかったことにした方がお互い幸せ? 


 色んな考えが頭の中を巡る。

 
 でも言わなかったら、また同じことが繰り返されるかも。嫌なことは嫌だってちゃんと言おう!!! 自分の気持ちは伝えなきゃ!!


 きちんと話し合えることを願い、耳に触れる。アレ? ない? え? ない? 嘘っ?! え? えっ? 如月からもらったピアスがない!!!!


 後ろを振り返り、ピアスを探す。ない!!!! ポケット?! ない!!! どこ?! 落とした?!?!


「ちょっとさっきのところ戻りたいんですけど……」
「時間ないからダメ」
「少しで良いからお願いします!!」
「ダメ!!」


 あぁ、どうしよう。無くしてしまった。如月が俺にくれたピアスなのに。仕事終わってから探しても見つかるだろうか。


 もしも見つからなかったら……。


 そう思うと不安になる。このピアスは如月が俺に初めてくれたプレゼント。見つかるまで絶対に探さなきゃ。


 ピアスのなくなった耳に、そっと触れる。毎日付けていたものがなくなった耳は物足りなくて、寂しく思えた。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...