如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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46話 如月にプレゼントがしたいです?!みかんアートで兄を作った方が勝ち?!

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 如月を実家を出て、電車に乗り、都心部の方へ向かう。行き先はショッピングセンター。今日はちょっと早いけど、如月のクリスマスプレゼントを買う!!!


 電車やバスを乗り継ぎ、ショッピングセンターに着く。あまりこういうところには来ないため、少しドキドキする。


「人すご……」


 三連休だけあり、店内は人で溢れかえっていた。行き交う人を目で追うあまり、酔いそうになりながらも、店をひとつひとつ回っていく。


「如月は何が欲しいのだろう……?」


 そういえば、プレゼントとかあげたことない気がする。


 俺は如月からピアスやマグカップ、マフラー(これは如月のだけど……)など、サプライズで色々もらっている。


 もらってばっかりだなぁ。如月とお揃いのピアスにそっと触れる。俺だって如月に何かあげたい。今更かもしれないけど。


「クリスマスプレゼント以外にも何か用意しようかな」



 如月の欲しいものって何かな? 如月は欲しいものがあるとすぐネットで買っちゃうし『これが欲しい!』みたいなのは聞いたことがない。


「ぇえ~~っ!! どうしよう!! 何が良いのかな?!」


 頭の中で笑っている如月を思い浮かべながら、クリスマスプレゼントになりそうなものを探す。


「やっぱり本とか?」


 本屋に足を運ぶ。今イチオシとされている本がずらりと並んでいる。う~~ん。普段、本を読まない俺からしたら、何が良いのかさっぱり分からない。


 本屋が推している本を一冊手に取り、見つめた。


「『転生したらダメ人間だった件』? 如月ってこういうの読むのかな?」


 本を開き、ページをぱらぱらと捲る。小説とか読まないけど、面白いなら如月のために買おうかな? ちょっと読んでみよう。


 ええっと転生して、スキルを手に入れて無双するみたいな話? なになに?


『ユニークスキル【自宅警備員】を使用しますか? 【YESor NO】俺は迷わず、YESをタップした。身体に健康、無職、出不精の血が煮えたぎる。俺は自宅警備員で世界を無双するぜぇええぇえぇえ!!!!』


 何これ、面白いの? 自宅警備員で無双できるの? 俺、よく分かんないんだけど。う~~ん。如月なら読むのかな?!?! 買っていこう!!!


 レジで会計を済ませ、エコバッグに本を入れた。 


 如月には俺の愛を常に感じて欲しい。肌に身につけれるようなものもいいよね。


 アクセサリーショップに足を踏み入れ、売っているネックレスをじぃっと見つめる。


「ネックレスは付けないかなぁ?」


 如月がネックレスを付けているところは見たことがない。俺はネックレスとかチェーンとか好きだけど。ネックレスは微妙かなぁ?


「う~~ん、やめよ」


 アクセサリーショップを出て、しばらくぷらぷらと歩く。雑貨屋が目に止まり、中へ入る。日常に溶け込みそうなお洒落な小物がたくさんあった。


 冬に向けたあったかコーナーで立ち止まる。


「あ……これ……如月に良いかも」


 喜んでくれるかな? 如月の笑顔を想像しながら、ぎゅっと商品を抱きしめ、レジへと向かった。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー

 *


「大切な用ってなんだろう」


 わざわざ、今日行かないといけないほどの、大切なことだったのかな? せっかくの三連休なのにつまらない。


 それに今日は佐野家に帰る日だ。睦月の行動に少しだけ心の中がモヤっとする。


 リビングでお茶を飲んでいると、卯月に声をかけられた。


「如月ひまなの?」
「べつに暇という訳では……」
「勉強の息抜きに何か付き合ってよ」
「何かとは……?」
「甘いもの食べたい!!」
「甘いもの食べたいと言われても。それ、私に言います?」


 料理とか出来ないし。お願いと言わんばかりに卯月が服を引っ張ってくるので、致し方なく、キッチンへ向かう。


「なんかあるかなぁ」


 冷蔵庫を開けると、りんごが2つばかり入っていた。りんごが入っているからといって、睦月さんみたいに、レシピは何も思いつかない。


「りんごならありましたよ。あ、みかんもあります」
「じゃあ、どっちがみかんの皮で上手くアートできるか勝負しよ」
「なんの勝負?!?!」


 卯月がキッチンカウンターに置かれたみかんを4個ばかり抱きかかえ、リビングへ向かった。


「負けた方は勝った方の言うことを聞く、で」
「何そのヤバそうなルール!!! 誰が判定するのですか?!?!」
「小春さんとか? とりあえず始めよ」


 詳しいことを決めないまま、リビングの椅子に座り、みかんの皮を剥き始めた。


 絶対に勝つ!!!! 勝って、卯月さんには今日早くお風呂に入って頂く!!!(?)負けたらきっと何か買わされる!!! でも何作ろう?! 亀? 亀なら作れそう!!!


 みかんを半分に割り、実を食べる。もぐもぐ。手先は器用な方。案外、作れるかもしれない。皮をひっくり返し、割れた半分の方に亀と頭と足っぽいものを千切って作っていく。


 亀らしくなってきた!!! これは勝てるのでは?!?!


 反対側の割った方にへこみを入れ、裏返し、亀に被せた。ぉおぉおぉお!!! 我ながら亀上手い!!! 完璧だぁあぁああ!!!!(※自画自賛)


 卯月が作っているものをチラッと見る。


「人…間……?!」


 みかんを玉転がししている人間を作っている!!! なんて高度な技術!!! よく見ると、皮で作られた人間に油性ペンでちゃんと顔が描かれている。


 このままでは卯月さんに負ける?!?!


 卯月がみかん転がしをする皮の人間を手のひらに乗せ、私に見せてきた。


「これはお兄ちゃんです」
「なるほど。なら、この亀も睦月さんです」


 作った亀を手のひらに乗せ、卯月に見せる。


「よし、じゃあ、お兄ちゃんに近いものを作った方が勝ちで。判定はお兄ちゃんにしてもらおう」
「分かりました」


 もうひとつみかんを手に取り、皮を剥く。睦月さんといったらやっぱりねこ!!! ねこを作ろう。むきむき。顔もちゃんと描いておこう。かきかき。


 卯月さんも、もうひとつ何か作っている。作っているものに目を向ける。


 得体の知れない足が複数生えた何か。これはイカか? イカだよね? なんでイカ?!?! それ、本当に睦月さんなの?!?! 絶対違うでしょ!!!


「それはなんですか?!?!」
「ダイオウイカです」


 ですよね。


「イカじゃないですか!!! 睦月さん違います!!!! ノーエントリー!!」
「間違えた。イカではなく兄です」
「イカってハッキリ言いましたよね?!?! それに足の数おかしいぃいぃいぃい!!!!」
「生えてるって、これぐらい」
「生えてるかぁああぁあぁ!!!!」
「ただいまぁ~~何作ってるの?」


 睦月さんが帰ってきたらしく、私たちの後ろからみかんアートを覗き込んできた。


「これイカ?」
「お兄ちゃんです」
「睦月さんです」
「…………」


 睦月が眉を顰め、私たちをみてくる。いやぁ、これは勝ったな。イカが睦月さんとか、ない!!! 私の勝ちだ!!!
 

「これは……亀?」
「お兄ちゃんです」
「睦月さんです」
「…………」


 睦月さんが白く淀んだ目で見てくる。


「イカも亀も人間じゃないよね」
「お兄ちゃんです」
「睦月さんです」


 睦月に冷たい目で見られ、サッと作ったみかんアートを背中に隠す。もうこの勝負はドロー!!!


 剥いたみかんを卯月と一緒に頬張った。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー



 ーー佐野家



  実家で夕飯を食べ、バタバタしながらも、佐野家に帰ってきた。暖房器具がこたつしかない佐野家はとても寒い。すぐにこたつへ入り暖まる。


 ぎゅ。


 後ろから何かくっついた。


「プ…プレゼントがあるんだけど……」
「プレゼント?」


 睦月が恥ずかしそうに私を見つめ、袋の中から何かを取り出した。


「これ……」


 本? こたつの上に文庫本が置かれた。手に取り、まじまじと見つめる。


「『転生したらダメ人間だった件』?」
「めっちゃ本屋で推されてた!!!」


 とても面白そうには思えないが、睦月の目は輝いている。よほど、この本に自信があるらしい。


「私、基本は純文学と文学史の随筆しか読まないのですが……」
「えっ?!」
「まぁでも、私のために買ってくれたみたいですので読んでみます。ありがとう」


 早速、もらった本のページを開く。よくある転生ものかな。文字へ目線を落とす。


 ぎゅう~~。すりすり。


 背中に頬が擦られている。文字から目線を上げ、睦月を見る。


「なに? 睦月さん?」
「もぉ~~っ! 如月ぃ~~っ!」
「なんですかぁ。今、本読んでる……」
「ほらぁ~~っ…その……えっとぉ……」


 頬を赤らめ、俯き、もじもじしている。あぁ。ずっと寸止めだったもんね。その様子が可愛らしくて、クスッと笑みが溢れる。


「あとで、ね?」
「うん……」


 睦月の頭を指先で優しく撫でる。再び、目線で文字を追った。

 


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