如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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45話 縁側で草むしり?!興味本位で納屋に入ったは良いが開かない?!

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「ん~~っ」


 すっきり目が覚め、身体を起こす。縮んだ身体を伸ばすように、両腕を上げて背伸びをする。身体にまだ怠さは残るが、気分は良い。


 あれ?


 睦月さんだけに掛けたはずの布団が、いつの間にか私にも掛かっている。掛けてくれたのかな。ありがとう。


 私にくっつくように、隣で寝る睦月の顔を覗く。涎を垂らしながら、無防備なふにゃけた顔で寝ている。可愛いなぁ。吸い込まれるように、顔を近づけた。


「そんな顔で寝てるとキスしますよ」


 ぼそっと呟くと、睦月の瞼が薄く上がった。


「ん……なんか言ったぁ?」
「べつに?」


 まぁ、寝ていようが起きていようが、私には関係ない。親指で睦月の口元から垂れる涎を拭い、口付けする。


 ちゅ。


「おはよう、睦月さん」
「あぁ~~っ」
「ちょっ!!!」


 首の後ろに腕が周り、ぎゅっと抱き寄せられた。ぎゅうぎゅう。睦月の胸に顔が押しつけられる。苦しっ。


「睦月さぁん、苦しいで~~す」
「おはようのちゅーだったぁ~~」
「え?」


 胸の隙間から睦月の顔を見る。嬉しそうに目を細める睦月に頬が緩む。


「またおはようのちゅーしてくれる?」
「はいはい」


 私の首を抱きしめる腕が緩み、身体を起こす。くしゃくしゃっと睦月の頭を撫で、ベッドから降りる。引き出しから爪切りを取り出し、床に座った。


 ティッシュを数枚床に置き、足の爪を切る。


 ぱちん。


 爪を切っては、床に敷いたティッシュの上へ切った爪を出していく。その様子を睦月がベッドでうつ伏せになりながら見つめてくる。


 ぱちん。


 足の爪を切り終わり、今度は手の爪を切っていく。


 ぱちん。


「そんなに切ったら深爪するよ?」
「良いんですよ、深爪で。これは私にとって、睦月さんへの愛情の一部ですから」
「え?」


 ぱちん。


 爪切りを一度止める。薄い笑みを浮かべ、睦月を見つめた。


「貴方のこと愛しているから。貴方に触れるこの指先はきちんと手入れをしておきたい」

「痛みは与えたくないし、傷をつけるなんて論外ですからね。ふふ」


 絶頂を目指すことよりも、痛みを感じさせないことが最優先。爪切りは、貴方が愛欲に溺れ、快感に没頭するための、私の心からのおもてなし。


「俺も爪切る!!!」
「へ?」


 睦月がベッドから降り、私の前へ来ると、脚の間に無理やり入り、座ってきた。ちょっと!!!


「私まだ自分の爪切ってる!!!」
「あと薬指と小指だけでしょ?」
「そうですけど……」


 私の前に座る意味はあるのか。まぁ、いいけど。可愛いから。残った爪を切っていく。


 ぱちん。


「よーーし!!! 俺も攻めやるからちゃんと切る!!!」
「あーー、うん。そうね」
「ねーまだ?」
「え?」


 私が切るんかい!!!! 少しイラッとしながら、睦月の左手を持ち、爪を切る。人の爪切りは切りすぎてしまいそうで、少し気を遣う。


 ぱちん。


「今三連休ですよね。どこか行きますか?」
「えっ!!! 行くーー!!! 何する?! どこ行く?!」


 ぱちん。


「んーー……」


 美術館って言ったらがっかりしそうだなぁ。個人的には芸術を嗜みたい気分である。でも、睦月さんにそういう趣味は絶対にない。


「まったり気分?」
「そうですねぇ……」


 何も答えを出さない私を心配して、睦月が振り向き、こちらをみてくる。う~~ん。


「はい、つぎ反対の手~~」
「お願いしまーす!!!」


 全く自分で切る気ないな。


 ぱちん。


 睦月の右手の爪を切っていく。爪だけでなく、指先を見る。家事をやっているせいか、少し乾燥している。皺も多い。睦月の苦労が垣間見えた気がした。


 愛しい。


 爪切りを床に置き、睦月の頬に触れ、顔の向きを自分の方へ向ける。


「なに? どうしたの?」
「いつもありがとう」
「え? ……んっ」


 顎を持ち、優しく唇を重ねる。睦月の口唇が薄く開いた。入れて欲しいの? 誘われるがまま、舌を差し込ーー。


 ガチャ


「おいおい朝から濃厚ですねぇ~~」
「~~~~っ!!!」
「…………」


 扉を開けた主を見る。姉、小春。はぁ。深くキスしたかった。睦月が頬を赤く染めているのを見て、手でそっと目隠しをする。可愛いなぁ、もう。


「姉さん、ノックして……」
「君たちにはやって欲しいことがあって来たの」
「やって欲しいこと?」


 睦月が私の手をずらし、きょとんと小春を見つめている。照れはおさまったらしい。


「庭の草むしり!!!」
「…………(嫌だ)」
「…………(嫌だ)」


 白い目で小春を見つめる。いやぁ。なぜ私たちが。庭そこそこ広いよ? もしかして2人でやるの?


「わかりました。やります。軍手貸してください(※嫁は逆らえない)」
「ちょっ……本気?」


 目が家事本気モードに入っている。甘えなどない!!! こっ、これは戦場で戦う1人の武将!!! 首を鳴らし始めたあたり、徹底的にやるつもりだ!!! 戦えるように爪の続きを切らねば!!!


 ぱちん。


「はい、じゃあ準備できたら縁側にきてね~~」
「分かりました」
「睦月さん、爪、切り終わりましたよ」
「ありがとう」


 睦月が立ち上がり、釣られて立ち上がる。草むしりをやる以外の選択肢はなさそうだ。


「如月、行こう!!!」
「えぇ~~うん……」


 睦月に手を引かれるまま、階段を下り、縁側へ向かった。


 *


 縁側から庭を見る。まるで雑草の無法地帯。何か月放置したらこうなるのか。庭全体に草が生い茂り、足の踏み場がない。お盆にお邪魔した時はこんな風に、なっていなかったのに!!!

 
「す、すごく元気な草ですね~~」
「全部抜いていいからね」
「そ、そうですかぁ……」


 全部抜けと?!?! にこにこと軍手と草抜き鎌を渡してくる義母に少し殺意が芽生える。自分たちはやらないんですか?!?!


 如月が怠そうに縁側へ座り、片手で本を開き始めた。あ゛? 俺に1人でやれと?!?! 人に草取り任せて、自分は読書ですか?!?! そんなの許すまじ!!!


「如月ぃいぃいぃい!!!」
「え?」


 読もうとしている本を取り上げる。


「ちょっ!!! 何するんですかぁ!!!」
「草むしりは?!?!」
「応援しています」
「1人で庭全部抜けるかぁあああぁあ!!!!」


 スマホを縁側へ置き、如月の腕を掴み、庭へ引き摺り込む。俺だけで草取りしてたら日が暮れるってば!!!


 軍手装備!!! いざ出陣!!!


 空に向かって真っ直ぐ伸びた雑草を、如月と横並びにしゃがみ込み、黙々と抜いていく。


「意外と良いペースで抜けますね」
「案外早く終わるかも」


 癖のある雑草はなく、淡々と抜ける。如月に目を向けると、意外にも真面目に抜いており、可燃ごみの袋が雑草でパンパンになっていた。


 せっかくの三連休が草むしりで潰れるなんて。一緒に過ごしているとはいえ、会話もない草むしりはデートとは程遠い。


 ふと、庭にある納屋が目に留まり、近づく。ログハウス風のおしゃれな納屋に興味が湧く。


「何が入ってるのかな?」


 ドアノブに手をかけ、扉を開ける。ガチャ。開いた。閉まってないんだ。見ちゃお。ドキドキしながら扉の隙間から中を覗く。


「物置……?」


 興味本意で中に入り、辺りを見回す。自転車や庭の手入れするような道具など、色々置いてある。特別面白いわけでもないが、物珍しさに、見てしまう。


 ガチャ


 扉の開く音がして、振り返る。如月が入ってきた。


「どこ行ったのかと思ったら、こんなところでサボって~~」
「あぁ、ごめん! なんかいいね! ここ! ロマンが詰まってる!」
「ロマン……?」
「ほら、これとかさ~~」


 ガチャガチャ


「もう誰だ、納屋の鍵を開けっぱなしにしたやつは」
「えっ……」
「待っ……」


 ドアノブに手をかけ、押してみる。開かない。鍵が閉められている。


「お義父さぁあぁああん!!! 今閉めたの?!?! やめて!!! まだ草取りしてますけど!!! 何してくれちゃってんの!!! 出れませんけど?!?!」


 ガタガタガタガタ


 ドアノブを押し引きする。だめだ、開かない。お義父さんも戻ってくる気配がない。どうしよう。


「ドア壊していいのかな?!」
「父が怒ると思います」


 それはダメだな。良好な家族関係は築きたい!!!


「如月、スマホ持ってる?」
「本なら持ってますけど……」


 なんでこんな時に本持ってきてるの!!! 本読みながら草むしりしてたの?!?! はぁ、縁側にスマホ置かなきゃ良かった!!!


「えっとぉ……えっとぉ……」
「まぁ、そのうち誰か気づくでしょ」
「なんて呑気な!!!! 夜になっても誰も気づかなかったらどうするの!!!」


 能天気な考え方をしている如月に呆れて、その場にへたり込む。今はいいけど、夜になったら冷えてくる。暗くなる前には出たい。


「その時はその時でしょ」


 不安でいっぱいの俺を落ち着かせるように、後ろから抱きしめられた。







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