如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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44話(3)スポーツ、BBQ、紅葉の三連コンボを貴方と楽しみたい?!

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「如月、帰る前に俺とバドミントンしよ」
「え゛」
「だめ?」
「私の卓球を見ておきながらバドミントン誘います?」


 如月が運動ダメっぽいのは分かるけど、どんな形であれ、一緒に楽しみたい。バドミントンと紅葉とBBQ。この3つを如月と楽しんでから帰る!!!



 ーーバドミントン


「じゃあ私、審判やりまぁす!!!」
「審判なんて要らないと思う」
「…………」


 卯月が間に立ち、俺と如月を見守っている。とりあえず、弱く、軽めにサーブしよう。


「如月いくよ~~」
「は~~い」


 ぽんっ。


 シャトルが山を描き、緩やかに如月の元へ飛んでいく。我ながら中々良いサーブ!!! これなら返せるでしょ!!!


「えっ!!! なんか距離感が!!! よく分からなーー」


 すかっ。


「シャトルが落ちました!!!!」
「見れば分かる」
「…………」


 卯月が冷たく言い返している。これは、早めにやめた方が、如月のためだろうか。シャトルを拾う如月をじぃっと見つめる。


「私、サーブします!!!」
「うん……(出来るの?)」


 やる前は後ろ向きのくせに、やり始めると前向きになって、本気で取り組む如月が好き。


「っさぁああぁああ!!!!」
「…………(卓球の掛け声ですか?)」


 卯月と一緒に温かい目で如月のサーブを見守る。案の定、ラケットにシャトルは当たらず、地面に落ちた。


「シャトルが……落ちた…だ……と……?!?!」
「そんな意外な結果じゃなかったと思うが」


 また卯月に冷たく突っ込まれている。このままでは俺が今まで思っても言わなかったことを、全て卯月に言われてしまう!!! やめよう!!!


「バ、バドミントンは……やめよう!!! マシュマロ食べない?!」
「マシュマロ!!! 食べるーーっ!!」
「ちゃんとしたマシュマロ食べたいです」


 シャトルとラケットを持ち、グリルへ戻る。マシュマロを串に2個ずつ刺し、グリルの上で、三串流でゆっくり焼いていく。


「クラッカーとか持ってこれば良かった」
「挟んだら塩気と甘味で美味しそうですねぇ……」


 想像してるのか、幸せそうな顔でマシュマロを如月が見つめている。ないけどな、クラッカー。焼き目をつけながら串をクルクル回す。


「なんで私の時あんなに溶けてきたんでしょうか?!」
「火が肉の脂でファイヤーしてたから」
「なるほど……?」


 きつね色に焼き上がり、マシュマロをグリルから離す。外はカリカリ、中から程よくとろりと溶けだしたマシュマロを如月と卯月へ配る。


 2人の顔を交互に見る。3人でニカっと笑い、手を合わせた。


「「「いっただきまぁ~~すっ!!!」」」


 ぱく。


 外側はカリッとしているのに、中からとろっと溶けてきて美味しい。肉ばかり食べていただけ、ここにきての甘いものは絶品!!!


「うまぁ!!!」
「おいし~~」
「あっ!! ちょっ!! 落ちる!!!!」


 如月のマシュマロが崩壊している。手にマシュマロが垂れ、べとべとになっておる。もぉ。何やってんの、この人。ウェットティッシュを取り出し、如月に渡す。


「1番の年長者がどういう食べ方してんの」
「こういうのは慣れてないんですって~~」


 マシュマロを口に放り込み、串を机の上に置き、如月の手をウェットティッシュで拭く。口元にも付いてるし。子どもか!!!


「あ~~もぉ~~」
「あっちょっ……~~っ」


 俺に口元拭かれて照れてるし。ほんのり頬を染める如月が可愛くて、如月の髪先に触れた。


「……帰ったらえっちしよ。如月が受けで」
「は?」


 眉を中央に寄せ、顔をしかめている。


「……攻めたい気分」
「ぇえ~~……そんなに焦がしたいんですかぁ」
「めっちゃ焦がしたい」


 嫌そうな顔をする如月の耳に、触れていた髪先をかける。お揃いのスタッドピアスが目に付き、親指と人差し指で優しく挟むように触れてから耳から手を離した。


「仕方ないなぁ……」
「ありがと、弥生さん」
「そういう時だけ弥生さんやめろ!!」


 ぷっ。名前で呼ぶとすぐ顔赤くなるんだから。


 近くに植えられた、一本の木が目に留まる。近所でもよく見かける馴染みのある木ではあるが、他の木々に比べると、先駆けたように、葉が赤く染まっている。


 赤く色付いたその木を指差し、如月のカーディガンを引っ張った。


「紅葉」
「ふふ。ハナミズキですね」


 カーディガンを引っ張る手が如月に握られ、ハナミズキに向かって歩く。真っ赤というよりは少し鈍い色をした紅葉は一緒に実っている赤い実を引き立たせている。


「下から見ても綺麗なんですよ」
「うん?」


 如月に手を引かれるまま、木の下に入り、上を見上げた。


「あ……」


 太陽の光が葉の間に差し込み、透き通るほどの鮮やかな紅葉と、僅かに残った緑の葉がひとつの木にい交ぜり、美しく映える。


「ね、綺麗でしょ」
「うん、綺麗」


 ハナミズキを見上げる俺の顔が両手で優しく包まれた。


「スポーツにBBQに紅葉に……私と楽しもうと努力してくれてありがとう。本ばかり読んでごめんね?」
「ううん。如月も楽しんでくれたでしょ。だからいい」


 如月の顔が近づき、静かに目を瞑る。ハナミズキの下で、優しく触れ合う唇に、お互いほんのり、頬が色付いた。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


 ぐぅ~~~~。


 すこーーーー。


 BBQの片付けを全て済ませ、車で帰路に着く。車内に如月と卯月の寝息が響く。俺だって寝たいんですけど。


 疲れと格闘しながら運転し続ける。今回、車は小春から借りたため、帰りの行き先は如月の実家だ。


 朝早くからBBQをしていたせいもあり、眠気もある。如月の実家に着いたら、そのまま泊まってしまいたいのが、俺の願望。


 如月の実家まであと少し。


「ふあぁ~~」


 助手席で寝ていた如月が起きた。


「あ……もう着きますね」
「そうだね……」


 如月の実家に着き、駐車場に車を停めると、小春が車の窓をコンコンと鳴らした。


「睦月ちゃん、お疲れ。眠たそうだね」
「疲れました……」
「泊まっていく?」
「ぜひお願いしまぁす~~……」


 願ってもない誘い。今日は泊まらせてもらおう。今すぐ寝転がって休みたい。卯月を起こし、車から降りる。荷物を持ち、如月の実家へ向かった。


 夏以来の如月の実家。人の家というのは入る瞬間はやっぱり緊張する。


「お邪魔しまぁす!!!」
「ただいまぁ~~」
「お、お邪魔します……」
「はーい、いらっしゃい。荷物は玄関置いといてー」


 俺より遥かに何度も来ている卯月は、自分の家のように部屋へ上がり、如月の家族と仲睦まじげに話している。泊まる部屋もどこか分かっているのか、廊下を通り抜け、ひとつの部屋に入っていった。


 俺はどこで寝るのかな? 如月に訊こ。


「きさら……もう居ないし……」
「弥生なら2階行ったよ」
「ありがとうございます!」


 小春に言われ、如月を追いかけるように2階へ行く。俺だけがなんか馴染めてない感じする!!! しかし卯月がこんなに如月家と仲良くなっているなんて思わなかった!!!


 階段を上り、如月の部屋のドアを押した。


「如月……?」
「あ」


 服、脱いでるーー!!! 確かにBBQをやっていたせいか、服も身体も煙くさい。そんなことよりも肌着を脱いでいる如月から目が離せなくなる。えっち!!! めっちゃえっちぃ!!!


「見過ぎ!!!」
「や、だってお風呂以外じゃ全然脱いでくれないし……はぁ~~っ」


 触りたい。胸の尖りも良いけど、鎖骨も良いなぁ。触りたい。えっちしたい。触りたい。むらむら。


「貴方の脳内が透けて見える気がする!!!」
「ちょっ、何?! わっ!! やめっ」


 ぽいっ。


 ガチャ。


 首根っこを掴まれ、ドアの外に放り出された。ひど。でも鍵は閉められてない。入っても良いってことだよね?


 ドアノブに手をかけ、もう一度如月の部屋へ入る。もう着替え終わってるし。オーバーサイズの長袖シャツにジャージとかつまらん。


「着替えたら?」
「ありがとう」


 如月に着替えを渡され、受け取る。俺、今すぐお風呂入りたいんだけど。人の家だから、あまりワガママは言えない。


「お寿司を頼んだらしいので、下に行きましょう」
「うん」


 階段を降りてリビングに行くと、お義母さんに声をかけられた。


「お寿司、時間かかりそうだから先にお風呂入ってきたら?」
「え……あ、はい」


 押し付けられるようにバスタオルが2枚渡された。これはそういう意味? 公認(?)されてるとはいえ、全面的に押されると恥ずかしくて、頬が染まる。


 バスタオルを抱きかかえ、ちらっと如月を見る。目を細め、微笑まれた。


「お風呂入ろっか? ん~~?」
「…………」


 首を傾け、俺と目線を合わせてくる如月が色っぽくて、気恥ずかしさで照れた顔をバスタオルに埋め、隠した。


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