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44話(2)肉の焦げ加減よりも気持ちの方が焦がれてやみません?!
しおりを挟む憎たらしい。如月の頬を親指と人差し指で摘み、引っ張った。
「いだい゛~~っ!! やめて~~!!!」
「もぉ!!! これは罰だ!!!」
如月の皿に、切り分けた黒焦げの肉を多めに乗せる。これくらいは食べてもらわないと!!!
「なんか多くないですか?!?!」
「自分が焦がしたんだから、自分で食べて!!!」
「ひどぉい……」
「もぉっ!!! 食え!!! 全部食え~~っ!!!」
割り箸で如月の皿から焦げた肉を掴み、如月の口の中に押し込む。
「ん゛~~っ!!! ひゃめれ!!! もうひれなひで!!! ん゛っ!!! なんかおこげがじゃりじゃりします!!!」
「俺の買った肉台無しにしたぁ!!! もぉもぉもぉ~~っ!!」
「ごめんなさい~~っ!!!」
地面に両膝をつき、如月の座る椅子に顔を伏せる。うわぁああん!!! ばかばか~~っ!!!
椅子に伏せて泣き真似をしていると、頭が優しく撫でられた。顔を上げ、椅子に座る如月をじぃっと見つめる。
「俺に何かすることは?」
「え?」
「肉、焦がしたんでしょ。俺のことも焦がしてみろよ」
「何を言ってるんですか」
肘掛けに肘をつき、切れ長の瞳を更に細め、薄い笑みを浮かべている。その妖艶な瞳は俺を誘っているに違いない!!! おけ!!! 俺からキスする!!!
「俺が如月のことを焦がす!!!」
「ふーん?」
立ち上がり、如月に顔を近づけた瞬間、背中の服が思いっきり引っ張られた。
ぐいっ。
「うわぁあっ!!!」
「やめろし!!!! こんなとこでちゅーすんな!!!」
「ちょっとぉ!!! 今いいところだったぁ!!!」
「良いところも何もどこでもいちゃいちゃやめろ!!!」
卯月に引き止められ、キスまで一歩届かず。はぁ。邪魔されたぁ。如月を見ると、先程まで読んでいた本に、目線を落としていた。
また本読んでるし。俺のこともう見てない。しゅん。バトミントン中だって、どうせ俺のことなんて見ないで、本を読んでいただけなんでしょ?
もっと俺に興味を持って、俺のこと見てよ、如月。
「はぁ……」
致し方なくもう一度トングを握りしめ、肉を焼く。BBQに賛同したは良いが、意外とこれは個人戦。担当部門以外は何もできない!!!
よって俺は今は焼き専である!!! 食べれない!!!
「お兄ちゃん肉ちょうだい。焦げてないやつ」
「今はない!!!」
「えぇ~~じゃあ美味しく食べれるようになんとかして!!」
うぅむ。なんとかと言われても。大した調味料は持ってきていない。
こげた高級肉に強めの塩胡椒を振り、サンチュで包む。卯月の皿に肉を乗せ、焼き肉のタレを渡した。王道の食べ方だが、これなら、焦げていても、多少は美味しく食べれるはず。
「んまぁい!!!」
「良かったぁ」
笑顔でもりもり焼肉を食べている卯月の姿を見て、ホッとする。自分の分もサンチュで包み、口の中に放り込む。もぐもぐ。
少しおこげとマシュマロは気になるが、お高いだけあり、口の中で肉が溶けていく。塩胡椒なんて要らないな。
しばらく経っても、如月は肉を取りに来ない。本に読み耽っている。山々はほんのりとだが、赤や黄色に葉が変化している。気持ちばかりには、紅葉を感じることは出来る。
折角来たのだから、紅葉も、お肉も、スポーツも一緒に楽しみたい。
3つも欲張ったのがダメだった? 本ばかり読んで、俺とは何も関わらないのはさびしいよ。BBQなのに。また如月を見つめる。
さっきと何も変わらず、本をただ、読み続けている。声をかけよう。じゃないと、こっちを向いてはくれない。
「如月、肉食べる?」
「え? あ~~そうですね……少しだけなら」
本から目線が上がり、目が合った。自分のことを見て欲しさに、それだけでもドキっとしてしまう。
「お兄ちゃん肉おかわり!!!」
「待って、まだ焼けてない」
「卯月さんへ先に肉をあげてください」
「う、うん……」
卯月への気遣い。でも、さっきまで合っていた目はもう合わない。また本へ戻っている。はぁ。本、取り上げちゃおうかな。もっと一緒に色々したいし、俺のこと気にかけて欲しい。
本に負けている自分が悔しい。BBQをしているはずなのに、如月のことで頭の中が埋め尽くされていく。
「卯月~~肉できたよ。焦げてないやつ」
「ありがとう!!!」
暗記帳片手に肉を食べている。こんなところまできて勉強するとは。受験まであと少し。卯月には頑張ってほしい。
じゅうぅ~~。
今度は如月に渡す肉を焼く。肉を焼かなければ、如月に話しかけるきっかけが今はない。別に用がなくたって話しかければ良いのだけど。
なんとなく、本に夢中になっている如月には話しかけづらい。
両面綺麗に焼き上げ、皿の上に肉を乗せた。如月の元へ向かう。
「肉出来たよ」
「ありがとうございます」
本を閉じ、俺を見て如月がにっこり微笑む。きゅん。その笑みに頬がすぐ緩んでしまう。
今は何も焼いていない。卯月が肉を夢中で食べている隙に、ちょっとでいいから、如月といちゃいちゃしたい。
この寂しいと思ってしまう気持ちを、いちゃいちゃに織り交ぜ伝えたい。
「睦月さんは食べないんですか?」
「焼きながら少し食べたよ」
でもここは外。少し離れた場所には自分たち以外にも、BBQを楽しんでいる人がいる。卯月にもやめろって言われた。いちゃいちゃしたいなんて言い出せず、プルパーカーのポケットに手を突っ込む。
「……なに?」
「え?」
「なんかあるんじゃないの?」
そりゃいっぱいあるよ。本読むのやめて欲しいでしょ! 俺のこと見ろでしょ!! いちゃいちゃしたいでしょ!!! もっとBBQに参加して欲しいでしょ!!!! それから、それから!!!!
もぉ、言いたいことだらけ!!! でも全てを言うことは出来なくて。グッと堪え、口を開く。
「俺に構って?」
「BBQまで来て何言ってるんだか」
如月に手が勢いよく引っ張られる。引き寄せられるように如月の膝の上に座った。外だし、ちょっと恥ずかしくて、頬が赤く染まる。
「……えっとぉ……」
「あれ? 違った?」
「いや……べつに……違わないけど……えっとぉ……」
「睦月さん、あ~~ん」
如月に渡した肉が割り箸で挟まれ、俺の口元に差し出される。ぱく。幸せ。エネルギーチャージ。さびしいと思っていた気持ちは一瞬でどこかへ消えてゆく。
俺って単純。
「構ってなんて、寂しかったの?」
「ちっ、違うし!!!」
「あっそ。じゃあ本読もうかな」
「だめ!!!!」
如月が手に持った本を取り上げる。本なんか読まれたら、俺のことまた見なくなる!!!
「……さびしいから本読まないで」
「最初からそう言えばいいのに」
「……っ…んっ……」
湿った唇が首筋に触れる。唇で甘噛みされた瞬間、思いっきり吸われた。あぁ、やっぱり。付けるの? こんなとこで……もぉっ。
「……痕つけたの?」
「付けたよ。睦月さんが可愛かったからね」
クスッと笑う如月を見て、もっと早く言えば良かったと少し後悔する。ほんのり痛む首筋に手を触れ、甘えるように如月の胸元へ、もたれかかった。
*
膝の上に座らせたは良いが、睦月から香る甘い匂いと、甘えるような私の胸元へのもたれかかり、そしてチラチラとこちらを見る求めるような視線に、ムラムラしてくる。
できればそろそろ椅子から降りて頂きたい。じゃないと、貪るようなキスをした挙句、服の中に手を入れ、えっちなことをしてしまいそう。
性的欲求を抑えるため、肘掛けをぎゅっと握りしめる。
「に、肉はもう良いんですか?」
「もぉ、お腹いっぱいだし」
「なるほど」
ここを離れる気はなし。
「なら、片付けしないといけませんね」
「返却するだけだよ」
「…………(失敗)」
「如月、ちゅーして」
ぇえ……。今したら止まらなくなりそうなんですけど。私のカーディガンを引っ張り、甘えた顔で見つめてくる睦月に気持ちはノックアウト寸前。
キスするしかない。
ドキドキしながら、顔を傾け、口唇を重ねる。ちゅ。柔らかい唇の感触に下腹がビクッと反応する。睦月の薄く開いた口唇は、私を迎え入れる合図。
自分の欲求にブレーキがかけられなくなるのが不安で、気付かなかったことにした。
「…………」
「…………」
不満そうに私を見てくる。まぁ、そうだよね。でも、こんなところじゃこれ以上は出来ないよ。軽めのキスだけで許して。
家に帰ったらいっぱい愛すから。
「続きはまたあとで」
頬を膨らませる睦月の顎を持ち、もう一度、軽く唇を重ねた。
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