如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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44話 花より団子?!3人で秋のBBQ!!如月の焼肉担はろくなことにならない?!

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 11月 連休前。


 夕飯を食べ終わり、睦月、卯月と共にこたつでぬくぬくしている。こたつは最高。あったまっていると、睦月と目が合った。


 そうだ、週末の予定でも決めよう。


「明日から3連休ですが、どうしますか?」
「3人で紅葉行く?」
「もしかしたら、まだ色付いてないかもしれません」

「私、中旬になったら期末テストがあるし、来月頭には学力テストもあるから、行くなら今しかないー」
「中学生って忙しいですね……」


 こたつで勉強しながら私たちの話を訊く卯月を見ると、受験生らしさを感じる。受験の方は大丈夫なのだろうか? 小春に家庭教師を頼んで来てもらった方がいいのか? 卯月の受験が少し心配になる。


「紅葉が見れて、美味しいものも食べれて、身体を動かすことができたら最高だよね」


 卯月がペンをクルクル回しながら鼻高々に言い始めた。何その3連コンボ!!! そんな得意気に言われても、そんな場所ないって!!!


 睦月が少し考え、口を開いた。


「う~~ん、BBQとか?」
「BBQ!!!!」


 睦月の提案に卯月の目が輝いている。BBQって!!! 夏にやりましたよね?! またやるの?! もしかして3人でやるつもり?!(※インドア派のためBBQ反対)


 2人が同意したら私に勝ち目はない!!! 佐野家は奇数!!! 2対1になったら絶対にひっくり返せない!!! とりあえずさりげなくBBQから逸らそう!!!


「BBQは夏にやりましたよね?」 
「やったとかやってないとか関係ないし」
「いいかもぉ~~俺バドミントン持ってる!!」


 はい、2対1~~。負けました~~。


「BBQ決定~~っ!!!」


 卯月が嬉しいそうに両腕を上げ喜んでいる。嬉しそうに笑う姿を見ると、希望を叶えてあげたくなる。でも、紅葉は行きたい。睦月の服の裾を掴み、引っ張った。


「ねぇ、紅葉は行かないんですか??」
「もはや花より団子!!! それにまだ色付いてないんでしょ」
「そうですけど~~……」
「シーズンになったら俺と行こ」


 にこっと笑みを浮かべ、睦月さんに頭を撫でられる。なんか変な感じ。いつもは私が頭を撫でているのに。10以上も年が離れた睦月に頭を撫でられ、なんだか気恥ずかしい。頬が少しばかり赤く染まる。


「楽しみにしてますからね?」
「……如月頬赤い」
「睦月さんが染めたんですよ」


 睦月の顔が私の頬に近づく。色付いた頬に優しく口付けされた。


 ちゅ。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー



 ーー11月 三連休。


 車で走ること数時間。少し山奥のBBQ場に来た。食材持ち込みOK、手ぶらでBBQが出来るなんて、今のBBQは画期的!!!(?)


 受付を済ませ、食材を受け取り、予約した席へ3人で一緒に行く。屋根付き、机、椅子付きでなかなか良い。


 持参した椅子を広げ、BBQの準備をする。炭にはもう火が入っているようだ。


「もう焼くだけって感じだね! 俺バドミントンしたい!!!」
「私もしたぁい!!! お兄ちゃんやろう!!!」
「おう!!! 如月肉焼いといて~~」
「えっ?! 私が焼くのですか?!」


 睦月からトングと持参した肉を手渡され、戸惑う。肉焼くって、まぁ普通にアレですよね? 焼肉感覚? で両面焼く的な感じ?!?!


「じゃあよろしく~~卯月いこーー!!!」
「うぇ~~いっ!!!」
「あっちょっ待っ……あぁ~~っもうっ!!!」


 なんだかんだ兄妹仲良しなんだから!!! もうっ!!! 渡されたトングを握りしめ、肉のパックを開ける。大きな肉が一枚。なんか高級肉そう。


 焼いちゃお。


 じゅうぅ~~。


 他の肉も焼いちゃおう。ひと口サイズの肉をパックから出し、網の上に整列させていく。


 じゅうぅ~~。


 野菜も焼いた方がいいのかな? 受付でもらった食材セットから、玉ねぎを箸で掴み網の上に乗せた。


 じゅうぅ~~。


 持参したクーラーボックスの中を開けると、大きなマシュマロの袋が目に入り、手に取る。


「美味しそう」


 長い串にマシュマロを刺し、火で炙ってみる。とろ~~ん。マシュマロが熱で溶けてきた。


「わお。美味しそう~~。もっと炙っちゃお」


 じゅうぅ~~。


「ってめっちゃ垂れてくる!!!! 何これ!!! めっちゃ溶けてくる!!!」


 どろ~~。


「うわぁあぁあ!!! どうしよう!!! えっと!!! 食べる?! 食べればいいの?!?!」


 串からマシュマロは溶け出し、肉の上に垂れ落ちた。


「あっ!!! 肉についちゃった!!!」


 これバレたらシバかれるやつ!!! えっと……えっと!!! トングで肉を掴み、マシュマロのかかった肉の上に重ねた。


「まぁ、分からないでしょ」


 どろ~~っ。


「ってマシュマロめっちゃ溶ける!!! あぁもうっ!!!」


 マシュマロを火の上から回収し、マシュマロのかかった肉の上に肉を重ね、サンドイッチにして誤魔化す。


「問題はこの大きな一枚肉」


 マシュマロの多大なる被害肉A。このサイズと同じ肉はない。よって、隠せない!!!


「なんか葉っぱみたいなのあったな……」


 クーラーボックスからサンチュを取り出し、一枚肉の上に乗せた。


「まぁ、ぱっと見分からないでしょ」


 じゅうぅ~~。


 火が通るまでしばらくかかりそう。睦月の方を見る。バドミントンラケットを片手に卯月と打ち合いをしている。楽しそう。


 肉は網の上に乗せたし、私もしばらく休憩としよう。トングを皿の上に置き、カバンの中から持ってきた本を取り出す。


 周りには同じようにBBQを楽しんでいる人もいるが、山に囲まれたこの場所は、都会のような雑音はなく、物静かだ。空気も澄んでいて美味しい。


 椅子に腰掛け足を組むと、自然に本の世界に入り込み、没頭した。



 *



「っらあぁああああ!!!」


 バドミントンラケットを握りしめ、思いっきり振る。


 パン!!!


「お兄ちゃん!!! 本気で打つなぁああぁあ!!!」


 パァン!!!


 妹だろうが関係ない!!! やるなら負けない!!! 飛んできたシャトルを追いかけ走る。ラケットをシャトルに向かって振った。


「俺はいつでも本気!!! 食らえ!!!! 波動球!!!」


 すかっ。


 空振り。


「ださ」
「え~~うそ~~」
「くそださ」
「2回もださいとか言うな!!!」


 シャトルを拾うと、卯月がそばに寄ってきた。


「お兄ちゃんお腹空いた~~」
「如月が今肉焼いてる」
「え~~……」


 卯月の顔が引き攣っている。如月には無理だろ、とでも言うかのように。


 そう、俺は如月を甘く見ていた。


 雑炊だって、なんとなく形になったものを作ってくれたんだし、この間のハロウィンカレーも大丈夫だったのだから、肉を単純に焼くぐらい出来ると思い込んでいた。


 BBQの席に戻ると、如月は椅子に座り、本を読んでいた。ねぇ、いつからその本、読んでるの?


 じゅうぅう~~……。


 焦げ臭い。というか肉焦げてますけど。


「肉は?!?! 肉はどうしたぁああぁあぁあ!!!!」
「へ? 焼いてますよ、ほら」
「焦げとるわぁああぁあぁあ!!!!」


 皿に置かれたトングを取り、肉を掴む。アレ? 何これ?? なんで肉の上に肉が?? どういうこと?? なんかよく分からないけど2枚の肉がくっついている。


 接着されてるんですけど。致し方ないので、2枚ごと裏返す。


 裏返った肉は真っ黒。マジか。


 まだ高級一枚肉がある!!!! 何これ? なんでサンチュが乗ってるの?? 剥がしていいやつ?? サンチュ、剥がれないんですけど!!! なんでこれも接着されてるの?!?!


 サンチュが網の上に乗るってやだな。そう思いつつも致し方ないので、そのまま裏返す。あぁ、終わった。俺の財布から買った高級肉が真っ黒に。


 肉、全部真っ黒じゃん……。なんで如月に頼んだのだろう。後悔。


「お兄ちゃんこれ食べるの?」
「これしかないからね……」


 肉を焼きながら、まるこげになった高級肉(サンチュ付き)をトングで回収する。まな板の上に乗せ、包丁で切り込みを入れた。


 べと。


 え? 何? なんか包丁に付いたんですけど。白いべとべとするものは何? 切り分けた肉を口の中に入れる。


 もぐもぐ。


「甘ぁ……」


 肉に味付けされていないせいか、マシュマロが肉のスパイスになっている!!! このサンチュってまさかカモフラ?!?!


 無理やりサンチュを剥がす。おそらく溶けて溢れ落ちたであろうマシュマロ。他の肉たちも、もしや……!!!


 重なった肉を無理やり剥がしてみる。やはり、マシュマロ!!!! 如月ぃいぃいいぃい~~っ!!!!


 如月の目の前に立ち、トングをカチカチ鳴らす。


「マシュマロ食べた?」
「い…いいえ?」


 目が泳いでいる。嘘くさい。


「マシュマロこぼした?」
「こぼしたいうか……マシュマロが勝手に溶けました」
「もぉっ!!!! 肉に全部マシュマロかかってるんだけど!!!」
「塩味と甘味で絶妙なハーモニーが取れると思います」
「取れるかぁああぁああぁあ!!!」


 如月にはもう二度とお願いしない!!!
 手に持っているトングに誓った。

 
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