如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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43話(5)自分に返ってきた悪戯は2人からの愛情そのものです?!

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「如月のばかえっちぃ~~」
「貴方が私を求めたんでしょ」
「あんなに激しくするなんて聞いてないもん!! 如月のばかえっちぃ~~」


 睦月の身体に付いた水滴をバスタオルで拭いていく。ふきふき。何もう!!! 自分が抱いて欲しいって言ったくせに!!! ぶーぶーぶーぶー言って!!! 少し黙れ!!!


 睦月の両頬を片手で潰す。


「ぶっ…何するの~~っ!!!」
「睦月さんがばかばかうるさいから」
「そんなに言ってない~~」
「身体拭けましたよー、早く着替えて」


 睦月に着替えを渡し、自分の身体を拭く。怒って(?)いても可愛いなと思ってしまうのは、私の脳が焼かれているのか? 睦月の頭に軽く触れる。


 なでなで。


「子供扱い」
「愛情表現です」
「ばぁか!!!」


 ばかって……。もう、ひどいなぁ。身体を拭き終わり、スウェットに着替える。最近、夜が冷えるようになってきた。寝巻きも夏物から冬物に衣替え。


 着替えを済ませ、睦月と一緒にリビングへ行く。


「卯月こたつで寝てるし」
「本当ですねー」


 卯月のそばにしゃがみ込み、寝顔を覗く。子供らしい無邪気な寝顔は愛らしくて可愛い。


「あれ? こんなところに本置いたっけ?」
「置いたんじゃないの?」
「いやぁ……う~~ん」


 床に置いた読みかけの本を手に取る。しおりの位置は変わっていない。だけど、何か違和感。なんだろう。


 本を適当に開き、ページを捲る。こんなに開き跡ついてたかな。なんだこれ。


 右下に描かれた謎の絵に目がいく。横を向いた男の子(?)が2人描かれている。次のページを捲る。また同じ絵。少し絵がズレている。もう1ページ捲る。また同じ絵が少しズレている。


「パラパラ漫画?」


 積み重なったページの端を素早く捲る。


 パラパラパラパラ~~。


 同じ絵が連続し、動いているように見える。右下に描かれた2人の男の子のイラストがキスをした。


「なにこれ……」
「見せて~~」


 睦月が覗き込んでくるので、本を見せると、ニコッと笑い、口を開いた。


「これ、如月じゃん!!!」
「は?」


 もう一度パラパラ漫画を見る。まぁ確かに少し髪は長い気がするが、こんな細目違うし。これが私なら、隣の男のイラストは睦月さんでは?


「じゃあ、こっちは睦月さんですね」
「は? 俺こんなライオン頭違うし」
「これが睦月さんじゃないなら、こっちは私じゃないです~~」


 お世辞にも上手いとは言えない絵。でも絶対これは私と睦月さんだ。もうっ!! 私の本に勝手に落書きなんかして!!


 こたつの上に置かれた筆箱から黒いペンを取り出し、フタを取る。


 キュッキュッキュ。


 卯月の頬にねこの髭を描いた。


「私の本に落書きした罰です」
「怒るよ~~絶対」
「額に肉よりいいでしょ」
「そういう問題じゃないと思う~~今何時かな」


 睦月がこたつの上に置いてあるスマホを手に取り、頬を赤らめ固まっている。なんだ? 睦月のスマホを覗き込むと、サッとスマホの画面を胸に当て、隠された。


「ちょっとなんですか~~」
「あ……ああ……ろ…ロック画面が変わってる!!!」
「何に変わってたんですか? 見せて~~」
「ちょっ!! だめ!!! あっ!!!」


 睦月の手からスマホを取り上げ、ロック画面を見る。今日撮ったキス写メ。なるほど。まぁ、妹にはみられたくないですね。これは。


 なんとなくロックを解除し、ホーム画面を開く。私に両手首を掴まれ、壁に押し付けられて頬を赤く染める睦月さん。これ撮ってたの?! 私もこの画像欲しい!!!


「…………」
「えっ?! 何?! どうしたの?! 俺のスマホ返して!!!」
「返す前に少し待って」


 写真アプリを開き、問題の画像を探す。あった。もーらい。自分のスマホへ送信する。


「はい、どーぞ」
「何したの?」
「べつに」
「…………(怪しい)」


 睦月の手にスマホを乗せ、自分のスマホをこたつの上から回収する。写真は消されたくない。


「うわぁああっ!!! なにこのホーム画面!!! いつ撮ったの?!?! こんなの!!!」
「可愛いと思います」
「これホーム画面にしてたらただのやばいやつでしょ!!! もぉ!!!」


 キュッキュッキュ。


 先程の黒いペンで睦月さんが卯月さんの手のひらに何か描いている。何を描いてるのかな?


「できた!!!」


 左手に『やよい』右手に『むつき』と平仮名で書かれている。睦月の手からペンを取り、睦月の下に仲良し、弥生の下にらぶ、と付け加えた。


「絶対起きたら怒りますよ」
「洗えば落ちるからいいでしょ!!!」


 こたつから卯月を引きずり出し、睦月の背中に乗せる。重たそうに睦月が卯月を背負った。


「はぁ~~っよいしょっ」
「起こしましょうか?」
「いいよ。寝てるし。このまま寝かせる。それにしても重くなったなぁ~~」


 しみじみしながら卯月を背負って和室まで運ぶ睦月が、優しいお兄ちゃんに見えた。私と居る時には見せない、家族の顔。


 またひとつ知らない睦月さんの一面を知り、睦月さんのことを更に好きになる。


 和室に敷かれた布団の上に、睦月が卯月を下ろした。寒くないように、そっと掛け布団を卯月へ掛ける。


「俺たちも寝よー」
「そうですね」


 全ての電気を消し、卯月を挟むように寝転がる。まだ布団の上に座っている睦月の顔が、窓から差し込む月の光に照らされ、ぼんやり見えた。


「……おやすみのぎゅーして」


 優しいお兄ちゃんの顔から甘えんぼの恋人の顔に変わり、私を見つめる。暗闇の中、薄く笑みを浮かべ、身体を起こした。


「おいで」
「うん」


 のそのそと睦月が私の前に来る。睦月の顔を確かめるように手で頬に触れる。


「おやすみなさい」
「ん……」


 軽く口付けし、優しく抱きしめた。そのまま横になり、私の布団の中へ引き入れる。触れ合う身体は暖かくて、眠気を誘った。


「おやすみ。卯月、如月」


 腕の中で小さな声で呟く睦月に、笑みが溢れる。優しい気持ち包まれながら、瞼を閉じた。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー

 *


 ーー翌朝


 むくっ。


 兄に起こされることなく、今日は何故か目が覚めた。枕元に置かれたスマホを見る。私のじゃない。まぁいいや。兄のスマホで時間を確認する。朝の5時。


 ロック画面、元に戻ってるし。


 ふと、自分の手の甲に書かれた文字が目に入る。何この手。なんで名前書かれてるの? むつき仲良しってきもいんだけど。


 ブラコンかよ!!!


 反対の手を見る。やよいらぶ。何これ。マジでやめて欲しい。今日学校なんですけど!!!!


 すこーー。


 寝息の方を見ると、珍しくまだ兄が寝ていた。今日仕事でしょ? 家事はいいの? なんでこっちで寝てるの?


 如月に抱きしめられながら寝る兄をじぃっと見つめる。幸せそうに涎を垂らしている。抱きしめられて寝たから起きれなかったんだな。ばかだなー。起こしてあげよう。


 ゆさゆさ。


「お兄ちゃん、起きて」


 兄の肩を掴んで揺らす。


「ん~~……なに~~」
「もう5時だよ」
「ぇええぇえええ!!! ちょっと!!! もっと早く起こしてよ!!!」


 兄は飛び起きて、どこかへ行ってしまった。いつものルーティンを高速でこなすのだろう。兄の隣で寝ていた如月が目を擦りながら、じぃっと私の顔を見てきた。


 何? 何かあるの?


「ねこちゃん」
「え?」
「おやすみ」
「はぁ?」


 ぐぅ。


 ねこって何? 寝ぼけてるの?!?! 二度寝してるし!!! 良いご身分だな!!!


 なんとなく手で頬に触れる。黒く何か付いた。え? もしかして、顔にも何か落書きされてたりする? ちょっとやめてよ!!! マジで!!! 


 急いで洗面所へ向かい、鏡を見た。


 自分の両頬に描かれた三本線。まさに、猫。


「おいぃいいぃいぃい!!!! 誰これ描いたやつ誰だぁああぁあぁあ!!!! 今日学校だっつーの!!! 取れるの?!?! これ!!!」


 顔を水で洗う。ぱしゃぱしゃ。落ちる!!! 落ちるぞ!!! 水性で助かった!!!!


「もーーっ!!!」


 フェイスタオルで顔を洗いながら、リビングへ向かう。こたつの上に黒いペンが一本だけ出ていた。これで書いたのか。


 手の甲の落書きも、さっき顔を洗った時に一緒に落ちたらしく、綺麗になくなっていた。


 あんな名前でも何かを想い、私の手に書いてくれたと思うと、こんな簡単に消えてしまうのは、なんだか少し寂しい。


 そう思いながらも黒ペンを筆箱にしまう。ファスナーを閉めようと指先で持ち手を掴んだ。


「なんだこれ」


 筆箱の側面に絵が描かれている。筆箱にも落書きしたの?!


 筆箱を持ち上げ、落書きを見つめる。


 可愛らしいテイストで描かれた、おそらく、私たち3人の絵。その上に達筆な字でハッピーハロウィンと書かれていた。兄と如月が描いたものだろう。


「ハロウィンって。もう終わったよ」


 私への落書きは消えても、きちんと何か残るようにする2人のやり方に、口角が上がる。


 油性ペンでしっかり落書きされた筆箱をぎゅっと、胸に抱きしめた。



 ーーーーーーーーーーーー
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