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番外編 簡単に作れても美味しく出来るとは限らない?! 表紙ラフ画あり!!
しおりを挟む僕の嫁は料理が出来ない。結婚し、入籍もしたが、料理は疎か、掃除もあまり得意ではない。10歳年上の妻、白川皐。
世の中的にはキャリアウーマンと呼ばれる類の女性であり、僕より収入が高い。今一緒に住んでいる家だって、皐の家だ。
僕は新婚らしく、新居に引っ越し、新しいスタートを切りたかった。だけど、まぁ、許してもらえなかった。
べつにいいけどさ。
23歳の僕はそんな、彼女の言動の全てを許容している。
たとえ、料理が作れなくても、家の掃除を微塵もしなくても、喉を通らないような不味さの弁当を僕に渡して来ても、理解不能な考え方を押し付けられても、全てを愛している。
今日も仕事が終わり、愛する皐の待つ家に帰る。
帰ったらまずやることは料理。共働きのため、皐が惣菜を買って来てくれることはあっても、仕事のある日は、基本的に夕飯を作ってくれることはない。
それでも良いと思っていても、少し寂しいこの頃。
玄関扉の前までくると、今日はいつもと違った。
「ご飯の良い匂いがする……」
鍵を差し込み、部屋へ入ると、キッチンに立つ皐の姿が目に入った。ぉお!! 料理をしている!!! 衝撃。婚約してから、こんなこと一度でもあっただろうか?
いや、ないな!!!
彼女のそばにより、フライパンを覗き込む。なんの魚かは分からないが、小麦粉にまぶされた魚がバターで焼かれている。こ、これはムニエル!!!
「ムニエル?」
そっと後ろから抱きしめ、皐に問う。
「あぁ、ムニエルだ。調味料で味付けし、小麦粉を振りかけてバターで焼けばバカでも作れる、と書いてあった」
「いや、そんな風には絶対書いてないでしょ……」
キッチンカウンターの上に置かれたスマホを手に取り、内容を確認する。表示されたレシピには『簡単に作れる』と記載されていた。どういう解釈の仕方してんの。めちゃくちゃ過ぎでしょ。
「湊。出来た」
皿が2枚渡され、受け取る。魚の乗った皿をテーブルへ運ぶ。きつね色に焼かれた魚の上にはチーズが乗っており、出来立てのあたたかさで、とろりと溶けていた。美味しそう。
テーブルにご飯、味噌汁、箸と順番に並べていく。向かい合って席につき、手を合わせた。
「「いただきます」」
僕が箸を取ると、彼女はニコッと笑い、口を開いた。
「早く食え、湊」言い方!!!
「言われなくても食べますって……」
まだか、まだかと目を輝かせ、僕のことを見つめる皐は、33歳のくせに子供のような無邪気さがある。その可愛らしさにいつも全てを許してしまう。
皐の期待に応えるかのように、魚に手をつけた。
「……こ、これは……」
「なんだ、言ってみろ」
口の中にある魚を飲み込む。テーブルに置かれたコップを掴み、口内へ水を流し込んだ。ごくごくごく。コップをテーブルに勢いよく置いた。
ドンっ!!!
「魚そのものから海を感じる。まるで僕自身が、魚にでもなっているかのように、海水が口全体へ広がる。そして、そこに混ざる野生的で爽やかな香りと濃厚なコク。それらが調和され、口内に聞こえないメロディーが奏でられる!!! とても水が進みます。(訳:塩辛くてクソまずい)」
「素直に不味いと言ったらどうだ」
黒い瞳が僕を見つめる。不味いなんて、言えないさ。だって君が一生懸命作ってくれた夕飯なんだから。
「不味くないよ、美味しいよ」
「そうか、なら私の分も食べるんだな」
僕の皿の上に、皐の食べかけのムニエルが積み重なった。
淡白な味の魚は塩気が引き立ち過ぎて、魚本来の良さなど、感じることが出来ない。皿の上に乗せないで。僕も自分の魚で精一杯だから。
「…………(要らない)」
「ありがとう、ゆっくり食べてくれ」
ひどい。欲しいなんて言ってないのに。
立ち上がり、どこかへ行こうとする皐の手を掴み、引き止めた。
「ご飯、作ってくれてありがとう」
席を立ち、皐のそばにより、抱きしめる。小さくて、小柄な皐はすっぽりと腕に収まった。
お気に入りだと、自慢するほど気に入っていたはずの白いブラウスは、油が跳ね、染みになり汚れている。着替えないで作るほど、急いでた?
「どう致しまして。もう二度と作らない」
「そんなこと言わないで、また作ってよ」
腕の中から見上げる皐にそっと唇を重ねる。少し開いた口唇に導かれるように、舌を差し込み、絡め合う。
「ん……はぁ…んっ…んん… はぁ……」
快活なメロディーと共に、お風呂の湧き上がりを知らせる音がリビングに鳴り響く。
唾液が混じり合い、甘い吐息を漏らす皐の耳には、そんな音楽、もう聞こえやしない。
さぁ、今度は君が可愛い鳴き声を奏でる番だよ。
皐の肩に手をかけ、優しく床へ押し倒した。
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ーーーー
ーー旭視点。富山旅行のお土産。
太陽みたいに笑うお前が好き。でもお前は俺よりも大人で美人なあの人が好き。
「これお土産~~」
「さんきゅー」
嬉しそうに紙袋を渡され受け取る。この土産もあの人との旅行のものだろう?
だけどこれを選んでいた時間は、お前は俺に振り向いた。
それだけでも幸せに想う。
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ーー如月視点。日常のひとこま。①
「ねー」
「んー?」
隣に座る睦月にTシャツの裾をぎゅっと掴まれ、顔を見る。目が合うと恥ずかしそうに頬を赤らめ、顔が逸らされた。
「……好き」
「知ってます」
そっと頬に手を触れ、私の方へ顔を向ける。
「私も好きですよ」
お互いの顔が自然と近づき、唇を重ねた。
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ーー如月視点。日常のひとこま。②
「ねぇ聞いてよぉ~~今日仕事でさぁ~~」
そう言って私の腿に頭を乗せてくる。パソコンを打つ私としては仕事の邪魔である。
「ミスしたの俺じゃないのにぃ」
仕事の愚痴か。もう仕方ないなぁ。パソコンを閉じ、睦月を見つめ頭に触れる。
「ほらこっちおいで」
笑みを溢し、私の脚の間に座った。
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ーー睦月視点。世間での認識。
「また兄弟って言われた……」
年も離れているし、同性なのだから致し方ない。分かってる。それでも俺は如月と兄弟なんて思われたくない。
相手の言葉が心に残り、目を伏せる。
「周りにどう言われても、私は貴方を好きになったのだから、そんなの関係ないですよ」
その言葉に顔が綻び、目を細めた。
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ーーーー
あとがき。
こんにちわ!! いつも『如月さん、拾いましたっ!』をご愛読頂き、ありがとうございます!!!
イイネ、ブクマ本当に励みになります。ありがとうございます。
今回は番外編ということで、神谷カプの日常とXに140字企画で投稿した如月さんショートストーリーになります!!(本編掲載用に少し編集してあります)
旭視点のショートストーリーはXでたくさんのイイネとお褒めの言葉を頂き……嬉しかった!!(やったな!!! 旭!!! 名誉挽回だぜ!!!(?))お題は『片思い』。
睦月視点のショートストーリーのお題は『歳の差恋愛』です。歳の差があるとやっぱり周りから見える印象と事実は違ったりするかなぁと。
でも、本人たちにとっては年齢とか関係ないですし、そこに惚れた訳じゃない! そんなストーリーです。
神谷カプのストーリーはカクヨム自主企画、聞こえないメロディーに参加するために作ったもので、出番の減った神谷カプをただ書きたいから書いたみたいな……。
不味い料理を出されても、ちゃんと食べる神谷は偉いな!!!
とまぁそんな具合の読み切り短編とショートストーリーです。
物語は私の暦(霜月)に入ります!!! ちょっとテンポアップして完結を目指していきたいと思いますので、如月さんをよろしくお願いします!!
改稿作業を進めています。『↑改稿』ってなってるところまで改稿が終わっています。
#のついているエピは段落変えなどした、簡易的な改稿を行っています。サブタイトルがついたものは改稿済みです。
一人称、背景描写、セリフ、心理描写の差し込みなど色々編集しています。最初に読んだものと少し違う雰囲気になってるエピもあります。
よかったら読み返してみてくださいね!
では長くなり申し訳ありません。ここまで読んでくださり、ありがとうございます!!!
創作活動の励みになるので、良かったらイイネ、ブクマ押して頂けると嬉しいです!!!
今後も如月と睦月と卯月をよろしくお願いします!!!
表紙のラフ画。今の表紙とは睦月と如月の表情が少し違うのだ!!
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