如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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42話 触れ合い禁止のお風呂は地獄です?!見せるのは良いけど見せられるのはダメ?!

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 とりあえず、状況整理は必要だ!!!


 分かっていることは2週間、このクソゲー(※睦月はそう思ってる)が続くってこと!!! そして、今日はキスやハグをしないってこと!!!


 あーーっ!!! もうっ!!! キスとハグが出来なくなるなら、もっとしとけば良かった!!!


 悔やまれる!!!


 睦月は膝と手を床に付き落ち込んだ。


 ずーーん。


「お兄ちゃん、何やってんの?」


 卯月が風呂から上がったらしい。濡れた頭にフェイスタオルを被せ、俺の目の前にしゃがみ、顔を覗いてくる。なんだよ、もぉーー。


「あぁ、卯月……健全な男子に究極な禁欲生活を強いられ、泣いているの図」
「どんまい。でもお兄ちゃんが強いられてるなら如月も一緒でしょ」


 そりゃそうだけど……。


 俺と如月は年齢差がある。如月が若々しいからジェネレーションギャップはあまり感じないけど、肉体的年齢差は感じる。


 性的にも。


「きっ…如月は……一定ラインを超えたら、シないならシないで、別にシなくても良い人だから……でも俺はちっがーーう!!!」


 立ち上がり拳を握り、叫ぶ。これってマスターベーションはして良いのかな?!?! それなら2週間乗り切れる気がする!!!


「そんな意味わからんことやらなきゃ良いじゃん」
「そういう問題じゃない!!! これは如月への愛の献上なのだぁあぁぁあ!!!」


 卯月の隣に如月が座り込み、濁った目で俺を見てくる。何もぉ、2人して白い目するな!!! それに如月が提案したことでしょ!! 如月までそんな目で見ることないじゃん!!!!


 如月が膝の上で肘をつき、全てを見透かしたように見つめ、口を開いた。


「睦月さん、マスターベーションしちゃダメですからね」
「ぇえぇええぇえ!!!! なっ何それぇえぇぇぇえ!!! しっしぬ!!! そんなの爆発する!!! そしてしぬ!!!」
「大丈夫ですって。さ、お風呂入りましょ~~」


 自分はマスターベーションしない派だからって!!! 他人事過ぎる!!! 今から一緒にお風呂入って裸を見る(?)にも違和感しかないんですけど!!!


 裸みてどうするの?!?! 俺の裸知ってるでしょ?!?! ムラムラするだけでは?!?! アレですか?!?! ムラムラして欲求を高める的な?!?!


 どんなん!!!!



 着替えを持ち、如月と一緒に脱衣所へ向かう。



 手を繋いで一緒に脱衣所へ行きたいのに、この意味不明なクソゲーのせいで、如月の手を握ろうとする、俺の手が止まる。



 手を握るのもダメなのかな……?



 一緒に居るのに、なんだかさびしいよ。如月ーー。



 *



「服の脱がしあいっこはしてもいいの?」
「今日は寝るまで睦月さんとは触れ合わないです」
「…………(つら)」


 私だって本当は触れ合いたい。でもここで曖昧にしたら、14日後に得られるものは少なくなる!!! 1日目はお互いの身体を褒め合って(?)ぎゅーして寝る!!!


 服を脱ぎ、浴室に睦月と一緒に入る。なんだか絶妙な距離感を睦月さんに感じるのは気のせいですか?


「じゃあ、俺先に身体洗うね……」
「え? あ、はい」


 心なしか睦月さんの元気が減っている気がする。急にこんなことを始めたのだから、当たり前かもしれない。睦月の身体を洗う姿を見つめる。


 じっ……。


「なっ……何?」
「いや……別に……見るものもないですし」
「……なるほど……」


 むら。


 くっ……なんだこれは!!!! 地獄!!! 今まで洗ってあげてた(?)から気づかなかったけど、洗う姿も可愛いすぎる!!! なんで頭洗って、泡流さないで身体も洗うんですか?!?!(※全身丸洗い派)


 時折り泡が目に入って目が細まる感じ……かっ…可愛い……!!! 閉じれば良いのに!!! 見てると可愛すぎてムラムラしてくる!!! 見ていられない!!!


 顔に手のひらを当て、目元を隠し、しゃがむ。はぁ。立っちゃう。一緒に風呂入るんじゃなかった。


「洗い終わったぁ~~。如月? どーぞ?」
「は……はい……」


 じゃぼん。


 バスチェアに座り、頭を洗う。睦月が湯船に入り、こちらを見てくる。なんか、緊張する!!! そして恥ずかしい!!! 視線を感じ頬が赤く染まる。


 ドキドキしながら、頭と身体を洗い終え、湯船へ入り、睦月の反対側に座った。ざぶ。いつも、睦月の後ろへ座り、抱きしめながら入るだけに、少し寂しい感じがする。


 本当にこれで良いのだろうか?


 睦月が私の目をじっと見つめ、顔を少し傾ける。妖しい笑みを浮かべ、口を開いた。


「……身体の見せ合いする?」
「それ、睦月さんから言うんですか?」


 ざばっ。


 睦月が湯船から立ち上がり、私の目の前に立つ。全体的に少しだけ筋肉質で綺麗な身体。髪からポタポタと雫が落ち、胸元に付着する。赤く染まった頬。恥ずかしそうに目を細め、逸らす姿は色っぽい。


 えっちだよ……睦月さん。


「触りたくなります……」
「触っちゃダメー」


 あんなに色々言ってたくせにノリノリなんだから。


「後ろも見て? 如月」
「うん……」


 くるっと私に睦月が背を向ける。引き締まって、形の良い尻。どうしてもそこに目がいってしまう私は、睦月さんに『大丈夫』なんて言えるほど、大丈夫ではない。


 腰にある黒子がまた、えっち!!!


「む……睦月さん……もう結構です……」
「もっと見ても良いのに~~」
「いや……これ以上見ると理性が崩壊します」


 睦月が私の方を向き、湯船に浸かる。湯船から立ち上がり、睦月の目の前に立つと、睦月が顔を急に真っ赤に染めた。口元を押さえ、顔を勢いよく逸らされる。


「ちょっ!!! 無理無理無理!!! うわぁあぁああ!!! ぎゃぁああぁあぁあ!!!! 何突然!!!! 如月のえっちぃ!!!! 」
「へ? え? ちょっ? は? えっ? アレ? 今そういう流れじゃ」 
「もぉ無理!!!! 俺無理だってばぁ!!!! 先、上がる!!!! さようなら!!!」


 バン!!!


 バタバタと浴室を出ていき、扉を閉められた。え、嘘。何これ? どういうこと? まだ1日……いや半日も経ってない……。睦月さんは、もうそこまで耐性が落ちてるってこと?!?!


 自分は余裕な感じで見せつけといて、見せられるのは無理ってどういうこと?!?! 大丈夫?!?! 続けられるの?!?!


 心配になり、追いかけるように、浴室を出る。なっ!!! 脱衣所からは既に逃走済みだと?!?! もう着替えてリビングへ行ったんですか?!?! 早っ!!!!


 急いで着替えを済ませ、リビングへいく。辺りを見回すが、睦月さんが居ない!!! この程度でパニックを起こされても困る!!!


「睦月さぁん~~どこですか~~?」
「お兄ちゃんなら和室に引きこもってるよ」
「なるほど」


 和室の襖の前に立ち、開けようと、手をかける。でも、入って良いのだろうか? 少し、1人の時間を与えた方が睦月さんのため?


 どうすることが最善なのか分からなくて、襖の前で立ち尽くす。とりあえず、声はかけてみようかな。


「睦月さん……入ってもいいですか?」
「だめ……」
「そうですか……」


 寝る準備は出来ている。このまま睦月さんが引きこもっていては、卯月さんも寝れない。入るしかない。


「睦月さん、入るよ」
「…………」


 返事がないまま、襖を開ける。襖に背を付け、睦月が座っていた。そっと、隣に腰を下ろす。


「ごめんね?」
「べつに……心の準備が出来てなくて、ちょっと驚いただけ。もう大丈夫」


 その割には俯いて、顔を見せてくれない。


「いつも見てるのに、驚いた?」
「触れ合わないのに如月の裸なんてまじまじ見たら俺、倒れちゃうよ」


 頬を赤く染め、眉を八の字に下げて、笑う睦月が可愛くて、鼓動が早くなる。抱きしめたい。


 今日は抱きしめ合って寝る予定。少し早いが抱きしめてしまおう。腕を伸ばし、睦月を抱き寄せた。


 少しの間、触れ合わなかっただけのはずなのに、腕の中にいる睦月の感覚がすごく愛おしい。


 離したくない。


「寝よっか」
「うん」


 抱きしめたまま、一緒に寝転がる。見つめ合ってもキスは出来ない。自分の欲求を紛らわすように、親指で睦月の唇をなぞった。


「ん……」
「3日後にキスとハグ解禁しようかと思います」
「ねぇ、これ……一体何を参考にしてるの?」
「ポリネシアンセックス。スローセックスの一種で、それを元にやってます」
「ふーん……」


 抱きしめている睦月との距離が、私を安心させ、目が半分閉じかけてくる。瞼が重くなりながらも睦月を見つめる。


「ふふ。もう上下の目蓋が仲良しだね」


 襲ってくる眠気に逆らわず、閉じかけた目を閉じ、眠りにつく。抱き合っているだけなのに、なんだか幸せ。


 おやすみ、睦月さん。



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