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41話(6)一泊二日富山旅行!! 手の握り愛。コスモス畑で幸せ花散歩ーー。
しおりを挟む「どれにしよう!!!」
バイキング形式の朝食に何を取るか悩む。隣に立つ如月のお盆を見る。ご飯、味噌汁、納豆。和食だね。なるほど。パンにしよ。
食べたいものをお盆に取り、窓側の席に着く。ふと、外を見た。今日は良い天気だなぁ。空は雲ひとつなく、冴え渡っている。
「良い天気だね」
「そうですね。晴れて嬉しいです」
「食べよーっ!!」
手を合わせて、にっこり笑う。
「「いただきます!!」」
もぐもぐもぐ。
朝早くから起きて動いている(?)だけあり、お腹はぺこぺこ。あっという間に平らげた。そういえば如月、足湯入りたがってたなぁ。
食べ終わった食器を持ち、立ち上がる。一緒に返却口に持って行きながら、如月に声をかける。
「如月、足湯入っていく?」
「足湯より、ラウンジに行ってみませんか?」
「うん?」
ラウンジ? そういえば、昨日は暗くてよく見えなかったけど、川が見えそうだった。如月に手を引かれるまま、ラウンジへ向かう。
繋がれた手にぎゅっと力を入れると、握り返された。この握り返し合いが好き。ラウンジに着くと昨日は見られなかった景色を見ることが出来た。
エメラルドグリーンの水面は川とは思えない美しさを感じる。川の側の山々は赤や黄色に色づき、色鮮やかで絶景としか言いようがない!!!
「すごい綺麗……」
「黒部の五段染って言われるんでしたっけ……」
「知らない……」
「ですよね。もっと峡谷の方へ行くと絶景が見られるかもしれませんね」
椅子に腰掛け、しばらくその景色を2人で楽しんだ。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
チェックアウトし、旅館から運転すること1時間。目的のコスモス畑はどうやらスキー場らしく、山奥へと車で突き進む。
「如月、そろそろ起きて」
運転しながら横目で如月を見る。気持ち良さそうに涎を垂らしてまた、寝ておる。普段、知的な雰囲気を纏っているだけに、この気の抜けた顔は可愛さしかない。
すこー。
「如月着いたよ、起きて」
ゆさゆさ。肩を掴み、揺らす。
「ん~~……」
目をしぱしぱさせながら起きる如月の顔を、じぃっと見つめる。このままちゅーしちゃおうかな。助手席に手を付き、如月の身体へ近づく。
「なななななんですか?!」
「あ……いやべつに」
起きたらしい。まぁいっか、起きてるとか寝てるとか関係ないし(?)
「何?! ちょっ…近っ!!! コスモス畑行くんじゃないんですか?!」
「まぁ、行くけど。ぐーぐー助手席で寝た代償は払ってもらおうかなって」
「そこまでは寝てなーーっん!!」
寝てたでしょ!!! 如月に唇を強く押し付ける。重ね合わせた唇にほんのり湿りを感じた。
もぉ、触っちゃうぞ!! ズボンの上から幹をそっと撫でると、如月の肩が小さく上がった。可愛い。
「~~っっんっ…ん……はぁっ…ちょっ睦月さん!!!」
「ごめんなさいは?」
「?!?! ご…ごめんなさい……??」
なでなで。如月の頭を撫でる。俺に謝らされたことが納得できないのか、如月は眉を顰めている。
「べつに寝てもいいんだけど、寝てばっかりはさびしいな~~」
「ごめんね、次は寝ないように努めます」
「うん」
頬が優しく撫でられた。べつに怒ってないし、寝ちゃダメなんて思ってないけど。同じ時間をもっと如月と共有したいっていう、俺のただのワガママ。ごめんね。
車から降り、如月を見る。指先を綺麗に真っ直ぐ揃え、手が差し伸べられた。差し出された手にドキドキしながら、手をそっと、如月の手のひらに乗せる。
「行きましょう、睦月さん」
「うん!!!」
手のひらに乗せた手がぎゅっと握られ、恥ずかしくなり、頬が赤く染まる。赤くなってるなんて、知られたくなくて、顔を横に逸らしながら、コスモス園へ向かって歩いた。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
スキー場に着くと、そこには秋風に揺れる100万本の秋桜が見渡す限り一面に、咲き誇っていた。ゲレンデをピンク、紫、白の秋桜が覆い尽くす。
その光景は圧巻としか言いようがない!!!
「美しい……」
「すごい綺麗!!! コスモスの中に入れるみたいだね、行こう!!」
「うん」
私から手を差し伸べたはずなのに、いつの間にか、睦月さんにグイグイ引っ張られている。子供みたいに無邪気な笑みを浮かべ、楽しそうに私の手を引っ張る睦月さんを見て、口元が緩む。
お城の門のような白いゲートをくぐり、コスモス畑へ足を踏み入れる。コスモスに囲まれた迷路のような小径を手を繋いで進んでいく。
「俺は今日のためにコスモスの花言葉を調べてきた!!!」
「わざわざ調べたんですか?」
ドヤ顔で私を見てくる。私に花言葉を聞けと言ってるのかな? コスモスの花言葉は知っているが、今は知らないフリをする。
「コスモスの花言葉はなんですか?」
「調和!! 謙虚!! 乙女の純真!!!」
「睦月さんには似合わなさそうな花言葉ですね」
「なっ!!! ひどーーっ!!」
睦月の背中にあるウエストバッグから自分のスマホを取り出す。ピンクの絨毯に包まれたこの世界で、睦月さんと写真が撮りたい。
「写真、撮りませんか?」
「撮る!!!」
青空と可憐に揺れるコスモスをバックに片手でカメラを構えた。
「睦月さん」
「ん? なに?」
睦月がカメラではなく、私の方を向く。睦月の後頭部にそっと触れる。
「愛してますよ」
「ーーっっ」
睦月の頭を押し、口付けする。
パシャ。
私にキスされ、顔を真っ赤に染める睦月を、カメラに収めた。
「ちょっとぉ~~!!! 恥ずかしい!!! やだぁもぉ!!! 見せて!!!」
「あっ!! スマホ取らないで!!! 消さないでよ?!?!」
「ぇえ~~っっ!!!」
再び、ピンクの絨毯の間を2人で手を繋ぎ、歩いていく。
秋晴れの青空に映えるコスモスと同じくらい、私たちの笑顔も満開になった。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
コスモス畑を抜け、辺りを散策する。軽食コーナーが目に入り、近づく。ちょうどお昼も近くなり、小腹も空いてきた。
「鮎の塩焼きですって!!!」
「鮎の塩焼き……(魚へのテンション高っ)」
串刺しにされた鮎が、火の周りで焼かれている。如月はどうやら鮎が食べたいらしい。鮎だけではなく、ざるそばや焼き芋など色々売っているようだ。
「如月、俺ざるそばが食べたいからちょっと買ってくるね!! そこ動いちゃダメだよ!!」
「はぁい~~ここで待ってるから早く買ってきてくださ~~い」
どうも如月の言葉が信用出来ない。何度も後ろを振り返り、如月が動いていないか、確認しながら、ざるそばを買いにテントを離れる。
大丈夫。如月も大人。はぐれたりとかしない。待ってるって言ってた。大丈夫。居なくなったりしない!!!(※自己暗示)
ざるそばコーナーで、そばが出来上がるのを待つ。テントに置いてきた如月が心配で、遠目で見る。居る。大丈夫。
「お待たせしましたー」
「ありがとうございまーす」
よし、ざるそばげっと!! 早く如月の元へ戻ーーーー居ない。待って。1分前くらいまでは、テントに居た気がしたんですけど!! 何?!?! 姿をくらます天才なの?!
ざるそばが乗ったお盆を持ち、鮎の売っているテントへ向かう。どこを見回しても、居ない居ない居ない居なーーい!!!!
「もぉーーーー!!!! 如月のばかぁ!!!」
「ばぁあぁあ!!!」
「うわぁああ!!!」
後ろから両目が片手で隠され、驚く。ばぁあって、それ、驚かすやつ!!!
「ちょっとぉ~~前見えないし、そばこぼれるー」
「そばはこぼれてないですよ」
片手で如月の指先をずらす。軽く振り返り、如月の顔を見る。お茶目な笑みを浮かべながら、片手に鮎の塩焼きを持っていた。
「買ったの? お金出そうかと思ったのに~~」
「待ちきれなくて」
横並びで歩き、イートインコーナーに向かう。机にざるそばを置き、椅子に腰掛ける。お互い手を合わせ、食べ始めた。
「美味しいです~~」
「蕎麦の香りが良くて美味しい!!!」
「この後はどうしますか?」
「時間的にもうお帰り!!」
軽食を食べ終わり、後片付けを済ませると、足は自然に出口へ赴く。
青空の下、秋を彩り優しく揺れる、可憐なコスモスの間を、如月の手を引き、通り抜ける。
「睦月さんっ!! 歩くの早いっ」
「如月っ!!! 来年もまた来ようね!!」
足を止め、振り返ると、嬉しさと恥じらいが入り混じったような笑顔を浮かべた如月が立っていた。
「絶対ですよ」
ピンクの海に身を隠しながら、如月の腕に包まれる。
約束するよ、如月。
ぎゅう。
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