如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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41話(2)一泊二日富山旅行!! 卓球対決は全く話になりません?!

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 ーー夕食


「美味しそーー!!」
「焼きガニとお刺身……」


 目の前に並べられた北陸の冬の恵みにうっとりしてしまう。食べなくても分かる。絶対美味しい。両手を合わせる。


「「いただきまぁーす!!!」」


 食べたいものはいっぱいあるけど、まずは味噌汁。お椀を持ち、味噌汁を飲む。正面に座る睦月を見ると、焼きガニを手に取り、食べている。メインから行く?!


「カニから食べるんですか?」
「カニから食べますけど。ファーストフードだってバーガーから食べるでしょ?」
「食べますね……?(どういう例え?)」


 まぁ、これから食べなきゃいけないっていうのはないし、いっか。


「お刺身美味しいです~~こっちと全然違う……新鮮!!!」
「魚好きだね……(猫じゃん)」
「天ぷらも美味しい……幸せ……」


 もぐもぐもぐ。


 美味し過ぎて、お互い無言になる。そして、食が進む!!! テーブルいっぱいにあったはずの料理は、あっという間に平らげてしまった。


「「ごちそうさまでした!!」」


 お腹いっぱい。美味しい。幸せ。睦月さんと手を繋ぎ、部屋へ戻る。秋桜のためだったとはいえ、睦月さんと旅行に行ける幸せ。今日は良い日だぁ~~。


「お腹いっぱいぃ~~」
「俺……なんだか眠く……ふぁあ……」
「えっ!!!」


 睦月がフラフラと立ち上がり、リビングに置かれたソファに倒れ込んだ。ちょっと待て!!!! このまま寝て朝まで起きないとかやめてくださいよ!!!!


「睦月さぁん……1時間だけですよー? お夕寝」
「うぅん……」


 寝る。これは絶対寝る!!! 


 ぐーー。


「寝るの早っ!!!! ちょっと~~睦月さん~~」


 6時間運転してたし、仕方ないといえば仕方ないのかも。睦月をお姫さま抱っこし、寝室へ運ぶ。そっとベッドの上に寝かせた。


 微笑んでいるような柔らかい寝顔は、見ているだけで愛しさが溢れてくる。優しく額に口付けする。


 ちゅ。


「……後で起こしにくるから、ゆっくり休んでね」


 睦月の頭を優しく撫で、ベッドから降りる。どうしよう。バーでも行こうかな。飲みながら本とか読みたいかも。


 机の上に置かれたカードキーと本を手に取り、部屋を出る。


「バーってどこにあるの?」


 歩きながら考える。そもそもバーとはこの旅館に存在するのか。少しお高めな旅館を取ったのだから、あるでしょう~~。


 え、ないの? 歩いても歩いても部屋。


 大人しく1時間、部屋で待っていた方が良かったのではないかと思った時には、時、既に遅し。自分がどこから来て、今どこに居るのか分からなくなっていた。


「え~~っと……どこから来たっけ?」


 私は腕を組み、首を傾けた。



 *



 かばっ!!


「寝ちゃった!!! なんかベッドで寝てるし!!!」


 如月が運んでくれたのかな? 満腹と運転の疲労で寝てしまった!!! 如月はどこ?? ソファとかで本を読んでるのかな?


 ベッドから降り、リビングへ向かう。居ない!!! 机の上のカードキーが1つなくなっている!!! 部屋から出たの?!?! 1人で?!?! マジか!!!


 絶対迷子になるやつ!!!(※正解)


「はっ…早く!!! 迎えに行かねば!!! 大変なことになる!!!(?)」


 ご丁寧にスマホだけ置いて行ってる!!! スマホは置いていくのに本は持っていくってどういうセンスしてるの!!!


「もぉ~~っ!! 俺が居ないと本っっ当、ダメなんだからぁ!!!」


 カードキーを手に取り、慌てて部屋を出る。多分、本の読めるところを求めて出たは良いが、そんなところなくて迷子が妥当!!!


「そういえば、夕飯食べに個室へ行った時、ラウンジみたいなところあったなぁ……」


 そこに如月が居るとは限らないけど、可能性としては大いにあり得る!!! 行く価値あり!!!


 エレベーターで1階へ降り、ラウンジのある方へ向かう。お願いだから居て!!! ラウンジへ行くと、椅子に座り、本を読む如月の姿が目に入り、安心して、顔が綻んだ。


 足音を立てず静かに如月の後ろへ近づき、両手で如月の目を隠す。


「ばぁあぁあっ!!!」
「わっ……びっくりしたぁ……そこは『誰だ』とかでしょ、それ驚かすやつ~~」
「1人でどっか行かないでよ」
「私を置いて寝るからでしょー前見えない~~」


 両手を離し、如月の隣の椅子へ腰掛ける。これ、日が暮れてなかったら、川が綺麗に一望出来ただろうなぁ。明日は見えるかな?


「飲みながら本読もうと思ったのに、お金持ってなかったんですよねー……」
「俺も持ってないけど」
「…………」じぃ。
「……ぇえ~~やだよぉ~~だって俺飲まないし!!! 取りに行くの? 今から?? ぇえ~~」


 片目を閉じて『お願い』と無言の圧力をかけてくる。もぉ、仕方ないなぁ~~!!!


「そこを絶対に動くな!!!」
「はぁい~~」


 椅子から立ち上がり、来た道を戻り、部屋に向かった。


 *


 ーー睦月が席を立ってから5分後



「……まだかな?(※待たせることは出来ても待つことは出来ない人)」


 ぱたん。


 本を閉じ、椅子から立ち上がる。まぁ、あまり遠くに行かなければ大丈夫でしょう。少し辺りを探索してみよう。


 行く宛もなく、フラフラ歩いていると、『足湯』と書かれた木の看板が目に留まった。足湯かぁ。良いかも。


「足先だけでも暖まっちゃお~~」


 足湯の木の看板の指す方へ歩く。


 ぎゅっ。


 背中に何かが引っ付いた。


「どこ行くのかな~~?! 如月ちゃぁあん!!!」
「睦月さぁん~~」
「動かないで言ったでしょ!!!」


 ぽこぽこ。


 背中が拳で叩かれる。もう~~。すぐ叩くんだから!!


「待ってましたよ~~でも睦月さん遅くって……」
「10分しか経ってませんけど!!!!」
「ごめんね? 叩くのやめて~~」


 叩く手は止まっても、背中から睦月が離れようとしないので、そのまま背中に睦月をくっつけたまま、ずりずりと足湯へ向かう。


「どこ行くの!!!」
「足湯」
「えっ?! 今入るの?!?!」
「え、だめですか?」
「俺もっと面白い場所見つけたよ?!」


 面白い場所? 手を繋ぎ、睦月に案内されるままついていく。何かを思い出したように、フロントへ立ち寄り、睦月がスタッフに声をかけた。


「ラケットと玉貸してください」
「終わったらフロントまで返しに来てください」


 フロントで渡されたのは、卓球ラケットとピンポン玉。今から卓球やるの?!


「ここ~~」
「卓球台……」


 こじんまりした部屋に自販機と卓球台が置かれている。なるほど。私に卓球をやれと……。引きこもりの小説家にスポーツなんて出来るかぁあぁあぁあ!!!(でもジムは行く)


「如月やろぉ~~っ!!」にぱぁあ。きらきら。 
「くっ……なんてまばゆい笑顔……断れない!!!」


 眩しい笑顔でラケットを渡され、致し方なく受け取る。卓球なんて20年ぶりくらい? 私に卓球が出来るだろうか? 睦月の反対側のコートに立つ。


「如月行くよ~~」


 こんっ。


「はぁあぁあぁああ!!!!」


 思いっきりラケットを振った。


 スカッ。こんこんこん……。


 後ろを振り向き、ピンポン玉を確認し、睦月に真顔で報告する。


「外しましたぁ!!!!!」
「……そうだね(見れば分かる)」
「もう1回やりましょう!!」
「……うん」


 睦月さんがサーブを打っている!!! 次こそは!!! 当てる!!!!


 こんっ


「はぁああぁあぁあぁあ!!!!」


 思いっきりラケットを振った。


 スカッ。こんこんこん……。


 後ろを振り向き、ピンポン玉を確認し、くるっと、睦月の方をみる。


「玉が私を避けました!!!」
「……如月からサーブしていいよ(キリがない)」
「分かりました!!!」


 ピンポン玉を手に取り、軽く宙に上げ、ラケットを振った。


「っぁあぁああ!!!!」


 スカッ。こんこんこん……。


 床に落ちたピンポン玉を拾い、目を瞑り、ピンポン玉を握りつぶした。


「ふむ。このピンポン玉は壊れている……!!」
「……もぉやめよっか」


 フロントにラケットとピンポン玉を返し、館内を睦月さんと散歩する。


「足湯行きますか?」
「俺……足湯じゃなくてお風呂が良いんだけど……」


 頬をほんのり染め、恥ずかしそうに、目線を下げて私のシャツの裾を引っ張る睦月に、鼓動が早くなる。


「それはそういう意味?」
「他にどういう意味があるの?」


 私の問いかけに、睦月の頬が先ほどよりも赤く染まっていく。可愛い。シャツを引っ張る睦月の手を掴み、握る。


「早く部屋戻ろっか」
「う、うん……」


 なんとなく恥ずかしくて、こちらまで頬が熱くなる。思うように言葉も出ず、お互い黙ったまま、部屋へと向かった。


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