如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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39話(2)普段、料理をしなければレシピに書いてあること全てが未知の世界?!

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 げほっ。


 朝、目が覚め、身体を起こすと全身に怠さが広がった。頭がぼーっとするし、重い。そして、身体が熱い。


 ふらふらしながら、リビングへ向かい、引き出しから体温計を取り出す。ぴっ。脇に挟む。


 ぴぴぴぴぴぴ~~っ。


 38度。マジか。


 見事に如月の風邪が移った。風邪は引かない派の俺でも、菌を持っている人と全身で密接すれば、流石に風邪を引くらしい。


「だっる~~今日仕事休もうかなぁ」


 まぁ、如月が治らなかったら元々、休む予定だったし? 休もう!!! こんな状態で行っても迷惑なだけだ!!! 連絡入れとこ。


 とりあえず横になろう……。


 和室へ戻り、布団に寝転がる。最近、朝晩はよく冷える。昼間との寒暖差で風邪を引いたのかもしれない。一概に如月からもらったとは言えないかも。


 のそのそとほふく全身し、如月の隣へいく。ぎゅ。如月に抱きつく。弱ってる時こそ、甘えたい。


 甘えんぼ、上等。


「ん~~睦月さん?」


 目を擦りながら如月が俺を見る。熱で目がとろんとしてくる。瞼が重い。寝ちゃいそう。


「なんか睦月さん熱いんだけど」
「う~~風邪引いた」
「え゛」


 落ちそうな瞼を必死に開けながら、如月を見る。俺に風邪を移したせいか、つやつやしている。如月が治ったのなら、良かった。


「ちょっと、大丈夫ですか?」
「熱ある~~38度」
「ぇえ!!!」


 如月が身体を起こし、どこかへ行こうとするので、手を掴む。どこにも行かないで。あ。そういえば、如月も同じことしてたなぁ。同じ気持ちだった?


「行かないでぇ~~そばに居て……」
「おでこに貼るやつ取りに行くだけだから。少しだけ待ってて?」
「うん……」


 掴んだ手を離す。弱ってる時はそばに居てほしい。和室から出ていく如月の背中を見つめる。早く戻ってこい。


 うとうと。


「………げほっ」


 はっ。寝てた!!! 如月、全然戻ってこないんだけど!!! 卯月、卯月は?! ガバッと身体を起こし、隣の布団を見る。ちゃっかり、起きて、学校へ行ったようだ。なんだ、俺が起こさなくても、起きれるじゃん。


 額に触れると、冷たいシートが貼られていた。俺が寝たから、どっか行ったのか。


「如月~~っ」
「はぁい」


 和室へ如月が来た。丸メガネをかけている。執筆してたのかな。そばに居てほしいって言ったら、邪魔しちゃう?


 ぎゅるるるる~~。


「……如月お腹空いた」
「え……」
「何か作って」
「ぇえ……」


 如月が丸メガネを外しながらキッチンへ向かった。如月の背中を見つめ、再び横になる。大人だもん、ちゃんと1人で、ご飯作れるよね? 如月が料理を作ることに、少しだけ不安が胸を過ぎった。


 *


 時間的にお昼ご飯。睦月さんは朝から何も食べていない。お腹が空いたと言われたけど、何を作ったらいいんだ? 冷蔵庫を開ける。


 じーーーー。


「……全ッ然分からん!!!!」


 食材を見ても何も思いつかない!!! 使い慣れないスマートフォンをポケットから取り出し、検索エンジンを開く。


「風邪の時食べるやつ……雑炊かな?!?!」


 雑炊、レシピ、検索!!! 大量に出てくる雑炊レシピ。どれを作ったら良いんだ? 卵的な?!


「簡単たまご雑炊……」


 これなら私にも作れるかなぁ? レシピを見ながら、材料を用意していく。【鍋に水を入れ沸騰させ、ご飯と鶏ガラスープの素を入れ、煮込む】なるほど!!!!


「何故、水の量を300~400mlと曖昧に書く!!! ハッキリしろ!!!」


 まぁ、アレだな。間を取ろう。350mlでいこう!!! コンロに鍋を置き、火をつける。


 ぐつぐつ。


 沸騰とはどこまで激しくぶくぶくしたら沸騰になるんだ? 調理実習とか、まるで思い出せない!!! 水面が揺れてる時点で沸騰? なら、もう小さな泡がぶくぶくしてるのだから沸騰なのでは?!


 入れてしまえ!!!!


 鶏ガラスープ小さじ1を鍋に入れる。あとご飯をお茶碗一杯入れ……足りるの? お茶碗一杯で。後から足りないとか言われても困るし、ちょっと多めに入れておこう。


 じゃぼん。


 お茶碗2杯分を鍋に入れ、蓋をした。


 ぐつぐつ。


 蓋の下で肥大化する米。茶碗2杯の米は水分を吸い、3倍もの量に膨れ上がった。その量、おおよそ、6人前。


 そろそろできたかな? 蓋を開けてみる。


「な、なんだこれはぁあぁあぁあぁあ!!!!」


 こ、こんなに米入れたっけ? いや、入れてないし。なんで増えてるの? わかめの仲間?!?!(※違います)どどどどどうしよう?!?! 私も食べれば万事解決?!?!


 とりあえず卵を……!!!!


 こんこん、ぽちゃん。


「溶き卵を回し入れ……ってもう鍋に卵入れちゃいましたけど!!!!」


 卵が固まる前に鍋の中で混ぜるしかない!!! な、なんて混ざりにくい!!! 米の量が多すぎる!!! なんか粘るし!!! 水足しちゃお!!!


 計量カップに水を入れ、鍋へ水を入れた。


 じゃー。


「混ぜやすい!!!(?)」


 一応、卵もほぐれ、良い感じに固まってきた!!! なんか卵、粉々(?)だけど!!! まぁいっか!!! 味見しなきゃ!!! スプーンを食器棚から取り出し、雑炊を掬う。


「あつそー……」ふーふー。


 ぱく。


「うっす!!!! 味うっす!!!」


 鶏ガラスープしか入れてないんだから、鶏ガラスープ入れておけば良いはず!!! 味を見ながら少しずつ入れよう!!!(※学習)


「うん。食べれる(?)」


 醤油を垂らして、出来上がり!!! しかし鍋にはこんもりとご飯が溢れている。まぁ、でもこれで出すしかない。私も食べるし、睦月さんも3人前くらい食べるかもしれない……。


 鍋にスプーンを2つ差す。鍋の取手を持ち、和室へと向かった。


「睦月さぁん、お待たせしました~~」
「ありが……と……(なんだあの米の量……)」


 折りたたみ式ローテーブルを広げ、睦月の前へ置く。ローテーブルの上に鍋を乗せた。睦月が無表情で鍋を見てくる。


「食べ物ですよ」にこ。
「こんなに食べれないよ」にこ。
「私も食べますよ」にこ。
「…………(それでも多いでしょ)」


 睦月の後ろに座り、雑炊をスプーンで掬う。ふーふー。


「ほらほら、あーーん」
「えっあっ…う……あーー」


 頬を赤く染めて、照れながら口を開ける睦月さんが可愛い。スプーンをそっと睦月の口の中に入れる。


 ぱく。もぐもぐ。


 食べたぁ~~。可愛い~~。至極癒し!!!!


「……まぁ美味しいよ」
「まぁってなんですか、まぁって~~」


 食べても食べても減らない米。睦月さんは少しだけ食べて、スプーンを持つ手が止まった。


「すみません、美味しくないですよね……」


 美味しい!!! と言えるほど、美味しくはない。申し訳ない。『まぁ、美味しい』なんて、感想は、作った私への配慮だ。


「いや……えっとぉ……思ったより食欲なかった……」
「そうですか……」


 なんだか本当に具合が悪いようで、心配になる。ご飯を食べるとすぐに睦月は横になってしまった。う~~ん。ちょっと買い物でも行こうかな?


 このままにはしておけない。


 睦月の顔を覗き込むと、頬を染め、荒い呼吸で、眠っていた。私が風邪を移したばっかりに!!! これではジムデートどころではない!!!


「ごめんね。ちょっと買い物行ってきます」


 ぎゅ。


 服が掴まれた。


「行かないでぇ~~……」


 うっ。真っ赤な顔。熱で瞳はトロンとしている。可愛い……。掴まれた手の上からそっと手を重ねる。


「プリンとか…ゼリーとか食べたくない?」
「今はそれよりもそばに居てほしい~~」


 私も睦月さんぐらい素直に甘えられたらいいのに。潤んだ瞳に吸い寄せられるように、睦月の隣へ寝転がる。背中を優しくぽんぽん、と叩いた。


「えっちなことしないで」
「しないですよ~~」
「……(信用出来ない)」
「何その疑いの目~~」


 子供をあやすように背中を叩き続けると、睦月の瞼が開いたり、閉じたり、うつらうつらし始めた。


 こんな状況でも、睦月さんの手は私の服を離さない。


「どこにも行かないから寝てもいいよ」
「……絶対だよぉ……」


 背中を叩く手を止め、そのまま自分の胸元へ睦月を抱き寄せる。小さな寝息が腕の中から聞こえた。睦月の頭の上に顎を乗せ、枕元に置いてある本へ手を伸ばす。



「ん……んん……」
「……む…睦月さん?」



 もぞ……。



 私へ擦り寄り、背中に睦月の腕が回った。ぎゅう。



 ぐぅ。



「………………」



 かわい!!!! もう何!!! こんなの離れられないでしょうがぁあぁあぁ!!! 起きるまでずっとそばにいる!!!!



「可愛いなぁ、もう……」



 そっと睦月の前髪を手で分け、額に口付けする。



 ちゅ。



 心なしか睦月の口元が緩んだ気がした。


 






 


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