如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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38話 兄妹で秘密の尾行?!恋人の密会相手は俺の友達?!

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 寝れるかぁああぁあぁあぁあ!!!!!


 おやすみした瞬間、あっあっ!!! 部屋が分かれていれば、あっあっしてもオーケーだと思ってんのか!!! 声がこっちまで聴こえないとでも思ってんのかぁあぁあぁあ!!!!


 そんなわけないだろぉおぉおぉおぉお!!!!


 隣から聞こえる兄たちの声。色々な想像が掻き立てられ、アドレナリンが放出し、目が冴える。


『ぁあっきっきさらぎぃ~~っもぉむりぃっお、おれイッちゃう~~っああっ』


 早く逝け。


 どうしたもんか……。こんなことなら、家に残ってた方がマシだった!!!! お兄ちゃん、情事の時は声可愛いな。


 布団を深く被り、包まる。これで、耐え凌ぐしかない。いつまでえっちするつもりなんだろう。スマホを見る。深夜2時。長っっ。早く終わらないかな~~。


 うとうと。


 瞼が何度も落ちてくる。気づけば兄たちの声は聴こえなくなっていた。



 ーー翌朝 朝食


「私、ちょっと用事があるので、出掛けて来ますね」
「用事って?」
「私用です」
「私用って?」
「用事です」


 兄がバナナとヨーグルトが挟まったサンドイッチを食べながら、しつこく如月に出かける内容を聞いている。でも如月が全く言おうとしない。大丈夫か。


「俺に言えないことなの?」
「そういうわけじゃないですけど、言わないとダメなんですか?」
「……べつにいいけど」


 雰囲気わるっ!!! 夜あれだけ、あっあっしてたくせに、朝ケンカ(?)するなよ!!!
 

「私は睦月さんだけが好きですよ。ごちそうさま」


 如月はティーカップに入った珈琲を飲み干すと、仕事部屋へ行ってしまった。兄の顔を見る。不服そうな表情だ。実際、何かを隠されたようなもの。無理もない。


「んーー……」


 兄が頭を掻きながら片手でサンドイッチを口に運んだ。2人がギクシャクすると、こちらまで気まずい。兄の様子を見兼ねて、声を掛けた。


「まぁ、あれなら尾行してみる?」
「え?」
「その方がスッキリすると思うし。付き合うよ」
「う~~ん」


 色々思うところはあるのだろう。お兄ちゃんが望むなら私は付き合うまでだ。コップに入ったオレンジジュースを飲んでいると、着替えた如月が部屋から出てきた。


「もう行くの?」
「あともう少ししたら行きます」


 心配そうに見つめる兄の頭を、如月が優しく撫でた。それでも兄の表情は曇っている。お兄ちゃんは束縛強いなぁ。


 如月がキッチンで何かを飲み、ふらふらしながら寝室へ行ってしまった。兄が如月の後ろ姿を見つめながらボソッと呟いた。


「……如月おしゃれしてた」
「はぁ? いつもと同じスタイルじゃなかった?」


 襟付きのカジュアル長袖シャツにテーパードパンツだったような。いつもと同じじゃね? むしろいつもおしゃれだと思うけど。私はそれより、ふらふら加減の方が気になる。


「尾行する。ついてきて」
「了解であります!!!」


 笑顔を作り、右手で敬礼のポーズを取る。人の不幸(?)とはいえ、なんだか楽しくなってきた!!! 探偵ごっこ再び!!! 何着ていこうかなぁ!!!


 私はウキウキしながら、出掛ける準備を始めた。


 *


 如月が家を出るのを確認し、卯月と一緒にこっそり後をついていく。別に疑っているわけじゃないけど、予定ぐらい教えてくれたっていいじゃん。何か不都合なの?


 隠されると、気になる。


「駅方面に向かってるね」
「だね。あ、公園入った」


 待ち合わせによく使う、駅最寄りの公園だ。誰かを待っているのか、噴水に腰掛け、ぼーっと空を見上げている。


「待ち合わせかな?」
「多分……」


 公園の植え込みに身を隠し、如月の様子を卯月と一緒に見つめる。よく見覚えのある人物が、如月の元へ手を振りながら駆け寄った。


 マジか……。


 旭と如月が話す姿に思わず、植え込みの草をむしる。イライラ。


『弥生さん、待ったー?』
『今さっききたところ』
『よくむっちゃん許してくれたね。俺初めてだからさぁ。手取り足取り教えてねー』
『……早く行きましょう』


 え……。初めて? 手取り足取り?? 用事=俺に言えない=旭とえっち?!?! 昨日俺とあんなにシたくせに? 俺だけが好きとか朝言ったくせに?? なんなの!!!


「お兄ちゃん、早とちりダメだよ」
「えっ?!?!」


 卯月に肩を叩かれ、ハッとする。いやでも、限りなく黒に近いグレーじゃないの!!! これ!!!


 旭と如月が歩き始めたので、俺と卯月も音を立てないように、後ろをついていく。方面的に、旭の家だ。家に入られたら、何も分からない。


『ちゃんと教えてよー? 弥生さん。頼めるの弥生さんしかいないんだから』
『はいはい』


 ナニを教えるんだぁあああぁあぁあ!!!! 今すぐに飛び出したい!!! 横並びで歩く2人の間を引き裂きたい!!! 旭をぶっ飛ばしたい!!! く~~っっ!!! つら!!!


「卯月ぃ~~もぉこれ黒でしょ~~」
「なんのこと言ってるのか分からんし」
「分かるでしょ~~もぉ」


 あぁ、旭のアパートの中へ入って行ってしまった。もう、様子わからないし。でも気になる!!!!


「どうしよう……」
「旭さん何階に住んでるの?」
「一階だけど……」
「じゃあ、まだ続行可能だね!!!」


 不法侵入コース決定。明らかに不審者だが、もうここまで来たらどうでもいい!!! 旭の部屋のベランダ前まで移動する。カーテンは閉まっているが、掃き出し窓は開いている。


「窓開いてるけど」
「ベランダの内側入っちゃうか」


 妹の提案には少し引く。まぁ、でも今はやるしかねぇ!!! 妹がベランダの低い柵を乗り越え、内側へ入った。俺も同じように内側へ入る。


 もう完全に不法侵入だ。泥棒と同じである。いつ通報されてもおかしくない。ひらひらと動くカーテン。窓が開いているおかげで会話がよく聞こえる。


 ここまで来たらヤケクソ!!! 納得がいくまでやってやる!!! 卯月と一緒に耳を澄ませた。


 *


「むっちゃんに許可もらわずに来てるの~~? それ大丈夫?!」
「うぅん……」


 大丈夫と言えば大丈夫。大丈夫じゃないと言えば、大丈夫ではない。正直、よくわからない。でもやましいことなんてないし。


 旭の部屋は、自分の家を思わせるほど、散らかっており、なんだか気持ちを落ち着かせた。はぁ。この散らかり具合、和む。


「良いかな? 弥生さん……」
「ん……」


 ドサッ。


 机の上にパソコンが置かれる。『初心者向け! 1週間筋トレメニュー』と書かれた画面を見せられた。そう、私は旭が仕事で提出するコラムの添削をしに来たのだ。必要ならリライトもする。


 これをやり切ると旭さんから1ヶ月ジム使い放題フリーパスが2枚もらえる!!!(※旭はジムトレーナー)このフリーパスで睦月さんとジムデートする!!!


 私も鍛えられて、デートも出来て一石二鳥!!! 絶対にフリーパス欲しい!!!


 旭と一緒にパソコンの画面を見ながら、修正するところは修正し、作り直していく。


 かたかたかたかた。


「旭さん、(画像)入れていい?」
「うん……」


 ガタッ。つるっ。ばしゃー。(※旭がコップ落とした)


「んぁあっっ!!!」
「旭さん……すごく濡れてます」


 *


「いやぁあんん゛~~!!!」
「お兄ちゃん、落ち着け」


 叫びだしそうな兄の口を両手で塞ぐ。こんなところで叫ばれるのはまじ勘弁。兄は今にも死にそうな顔をしている。


「んはぁっ……ドサッって音したし!! 挿れていい? って!! そんなのひとつしかない!!! ガタッてもぉ、押し倒したでしょ!! 濡れてるって!!! ぁあぁあぁあぁあ!!!!」


 妄想力豊かな兄を憐れみの目で見つめる。兄が考えているようなことは絶対起こっていない気がするんだけど。


 もう、頭抱えて叫ぶくらいならもういっそ、凸ってしまえ!!!!


『弥生さん脱がさないで!!! やめてぇ~~っ恥ずかしい~~』
『こんなにも濡れてる』


「いやぁあぁあぁああぁあああ!!!! 無理ぃいいいぃいいぃ!!!!」


 バン!!!!


 兄がベランダの掃き出し窓を思いっきり開け、靴を脱ぎ捨てた。どたどたどた。兄が部屋に上がっていく。あーあ、やっちまったなぁ!!! だけど、うじうじしてるよりこの方がお兄ちゃんらしくて良い!!!


「え?」
「え?」


 旭の服を脱がせる如月と真っ赤な顔で服を脱がされている旭。


「あ……あぁあぁあぁあ!!!! 今からえっちしようとしてる!!!!」
「そんなわけ。睦月さんはなんでここにいるのかなぁ?」


 お兄ちゃん、後で如月にシバかれそう。


「俺がお茶こぼしたのー。えっちなんかしませんー」
「挿れていい? って……」
「……画像です」


 如月が呆れている。無理もないな。私も兄の想像力には呆れてるもん。兄と如月の様子をじーっと見つめる。


「こんなところまで追いかけてきて。悪い子ですね」
「だって~~」


 如月に後ろから抱きしめられ、頬を赤く染めて大人しく床に座る兄は、本当に如月が好きなのだと思う。


「旭さん、続きやりましょう」
「お兄ちゃん、私帰るからねー」
「むっちゃんも帰ればー?」
「やだ」


 本当は連れて帰った方が良いのだろうけど。こんな状況でも、口付けを交わす2人を見て、安堵する。


 バカバカしい。仲良しかよ。


 見つめ合って幸せそうに笑う2人を見て、私も笑みが溢れる。2人に背を向け、ベランダを後にした。

 



 
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