如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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36話(2)こたつのせいで佐野家が崩壊?!でもくさいので一緒にお風呂入ります?!

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 ごくごくごく。


 またお酒飲んでるし。てっきり数日分を買ったのかと思ったけど、1日分だったのか。


 それにしても、口は動くが頭が働かない。全くもって勉強が捗らない。昨日小春さんといっぱい勉強したし、今日ぐらいは勉強しなくたって別にいいか。うんうん。そうだそうだ。


「それにしても眠いなぁ……ふあぁ……あれ如月寝てるし」


 すこーー。


 こたつに入ったまま寝転がり、気持ち良さそうに隣で寝ている。あったかいし、眠くなるよね。私も眠いもん。如月の髪に優しく触れる。


「髪さらさら……」


 指先で顔にかかった髪を退ける。髪の間から出てきた顔は鼻筋が通り、目鼻がはっきりしている。肌も綺麗。思わず、見惚れてしまう。お兄ちゃんはいつも如月とキスしているけど、どんな感じなんだろう?


 兄と如月が寝ている静かな部屋は、好奇心を煽る。ぬくぬくとしたあたたかいこたつが、私の思考回路を鈍らせた。


 閉じられた瞼は口付けを待っているように思える。淡く色付いた唇に誘われるまま、そっと顔を近づける。サイドの後れ毛がはらはらと落ち、如月の顔をくすぐった。


 如月の顔が近い。こんなに顔を近づけたことは今までない。近づけていくうちに鼻筋が触れ合い、ハッと我に返り顔を離した。


「お兄ちゃんの恋人に一体何を!!!」


 頭を横に振り、邪念を払う。みかんの皮とお菓子の袋で散乱した机の上に、頬を付ける。SNSや友達の入れ知恵で知識だけが増えていき、性的なことに興味は増すばかり。


 実際にキスしたら何を感じるのかな? 唇は柔らかいのかな? どんな味がするのかな?


 お兄ちゃんはいつもほっぺを真っ赤に染めて、愛おしそうに如月を見つめながらキスしてるけど、そんなに良いものなのかな……?


 ぬくぬくぬく。


 暖かいこたつに包まれながら、ぼんやりと未遂に終わったキスのことを考える。考えているうちに、何度も何度も落ちてくる瞼に抗えなくなり、そのまま瞳を閉じた。


 ぐぅ。


 卯月と如月はこたつの魔力に勝つことができず、勉強も執筆も捗らないまま、眠りへ落ちた。



 *



 ちょっと仮眠するつもりが1時間以上寝てしまった。なんだかやけにリビングが静かに感じる。寝てるのかな?


 布団から起き上がり、和室を出て、リビングへ向かう。目の前に広がった光景に、自分の目を疑った。


 俺が仮眠を取る前はゴミひとつ落ちていない、綺麗な部屋だったはず……。


「きったなぁあぁあぁあぁあ!!!!」


 辺りに飛ばされた紙飛行機。なぜ、こんなに紙飛行機が床に落ちているのか理解不能。飛ばしたなら回収してくれ。何個も作る必要はあったのか!!!! 


「しかもこれ、ノートじゃん」


 紙飛行機をひとつずつ拾い、ゴミ箱へ捨てていく。ぽいぽいぽいぽい。なんなんだよ。こんなに飛ばして。もぉ。誰が掃除すると思ってるの!


 ぐちゃ。


 何か不快なものを踏んだ。足の裏はじんわりと濡れ、冷たさが広がる。濡れた足の裏をティッシュで拭く。何を踏んだの? 俺。落ちているものをしゃがんで見つめる。


「なっ!!!! ジュース拭いたティッシュ!!! 床に置くなよ!!! 床がベトベトになる!!!!」


 ふきふきふきふき。何? みかんの皮も床に落ちてるし。なんで床に捨てるの? ゴミ箱に捨てろよ。もぉ。誰が掃除すると思ってるの!!


 カラン。


 足に缶が当たり倒れた。危な!!! 中身が入ってなくて良かった。惨事になるところだった。缶を拾い、こたつの上へ置く。飲み物を床に置くな!!!! もぉ。誰が片付けると思ってるの!!!


 こたつの上はダメ人間製造機を思わせる、破壊力を放っていた。


 食べたら食べっぱなし。シェアしやすいように皿の如く広げれた菓子の袋。個包装の菓子は、食べもしないのに中身が包みから全て出され、まとめて置かれている。


 いつでも食べれる状態だ。


 みかんの皮。チューハイの缶。手を拭いたようなティッシュ。それらと一緒に置かれたノートパソコンと積み上げられた勉強用具。


 こんな悪魔が誘っているような机の上で、こたつに打ち勝ち、まともに勉強や執筆が出来たとは思えない!!!! むしろ負け試合!!!!


 そしてこの机の上。もぉ!!!! 誰が片付けと思ってるの!!!!!! いい加減にしろぉおおぉおおお!!!!


 すこーーーー。


 イライラする気持ちを逆撫でするように、気持ち良さそうな寝息が聞こえ、床を見る。頬を赤く染めた如月が、涎を垂らして寝ていた。


 もぉ!!! 起こしてやる!!! 片付けろばか!!! 頬を軽く叩く。ぺしぺし。


「如月起きて~~~~」
「ん~~……むつきさぁん……おはよぉ……」


 直感的に思う。あ、こいつ、酔ってる。


「如月、部屋汚いから一緒に片付けよ」
「ぇえ? ちゅーしてくれるの?」
「もぉ! 寝るなら和室に行って」
「えっちしたいの?」


 話が噛み合わない!!!! しかもなんか全部性的に捉えられる!!! なんで!!!!


 背中に手を回し、如月の上半身を起こす。めっちゃ酒くさい。匂いでこっちまで酔いそう。でも目がとろとろしていて可愛い。


 ちょっと酒くさいけど、キスぐらいならしてもいっか。顔を傾けて、如月に近づける。湿った唇が触れ合った。


「うぷ」
「え?」


 げろげろげろげろ~~~~。


「ぎぁあぁあぁあぁあぁああ!!!!!!!(※げろまみれ)」
「あ~~~~(※吐いたら酔いが覚めた)」


 何清々しい顔で前髪掻き上げてるんだよ!!! こっちはTシャツ全部如月のげろで汚れたのに!!!!


「睦月さん、げろくさ」
「誰のせいでくさなってると!!!!!」


 泥々に汚れたTシャツを脱ぐ。くさいくさいくさい!!!! 人のTシャツに吐くとかなんなの!!!! もぉ。誰が洗濯すると思ってるの!!!! こんの!!!!


「やってられっかぁあぁあぁあぁあ!!!!!」
「待って!!! 睦月さんそれ飲んじゃだめ!!! それ梅酒!!!」


 こたつの上に置かれた飲みかけの梅酒を一気に飲み干す。イライラ。もぉもぉもぉ!!! 2人して俺が片付けるから汚してもいいと思ってるんでしょ!!!!


「むーかーつーくーー!!!!!」


 ぷしゅ。


 まだ空いてない缶チューハイを開け、更に飲む。ごくごくごく。


「っはぁ~~!!!!」


 ふわぁ。なんかアルコールつよ。でもなんか酸味が美味しかったぁ。2人ともひどい。俺にばっかり全部押し付けて。やりたい放題。うっ。うっ。ぐす。


「うっうっ……2人してひどいっ…ぐす…俺が片付けるからって…うっ…なんでも…うっうっ……ふぇぇ~~ん……ぐす…」
「酔うの早っ!!!! 安定の泣き上戸!!! 卯月さんちょっと起きて!!! 睦月さんが大変です!!!」


 ひどいひどいひどいっ!! うわぁあぁあん!!!! 如月のばかぁ!!!!


 *


「卯月さん起きないし!!!」


 背中を叩いても卯月さんが起きてくれない。辺りを見回す。紙飛行機と濡れティッシュは無くなっているが、散らかり放題の床と机。そして、げろまみれの脱ぎ捨てられたTシャツ。酔っ払った睦月さん。


 地獄絵図!!!!!!


 なにこれ!!! 今まで佐野家で生活してきて、こんなこと一度もなかったけど!!! これはこたつのせい?!?!


 こたつが閉ざされた漆黒の扉(布団)を解放し、私たちを熱き地獄の世界へといざない、引き摺り込んでいるというのかぁああぁあぁあ!!!


 なんて恐るべき、悪魔の兵器!!!


「とりあえず、睦月さんどうにかしなきゃ」


 いつの間にかこたつに入ってる!!! 何故?!?! 地獄へ吸い込まれたか!!! こたつへ入り、机の上に頭を乗せ、ぐすぐす泣いている睦月へ近づく。


「睦月さぁん、こたつから出てください。くさいです」
「やだぁ~~こたつが俺を離さない」
「こたつを離してないのは貴方ですよ」


 脇の下に手を入れ、睦月をこたつから引っ張る。ずりずり。


「やだぁやだぁ~~俺が出したこたつなの~~」
「げろくさいのでお風呂入りますよー(泣いてなくても酔うと面倒くさいタイプだな)」


 やっとこたつから出た。はぁ。睦月を抱き上げ、肩に乗せる。もうこのまま運んじゃお。


「わぁあぁあっ! 歩ける~~っ」
「はいはい、歩けませんって」


 睦月を抱えて脱衣所へ向かって歩く。脚をバタバタさせ、暴れる睦月をしっかり両手で押さえる。この脚のバタバタに少しきゅんと来る。はぁ可愛い。


「よいしょっと……」


 脱衣所で睦月を下ろし、扉を閉める。睦月さんが酔っ払った私を可愛いとか言っていたが、今なら分かる気がする。真っ赤な頬と涙で潤んだ瞳がすごく可愛い。襲ってしまいそう!!!!


「げろで滲んだ肌着も脱ぎますよ」
「うっ…うっ…どうせ俺にえっちなことするんでしょ……ぐすっ」
「し、しないですって……(多分)」


 また泣き始めた!!! 泣き顔が可愛いよ!!! どうしよう!!! どきどきしながら、肌着を脱がせる。桃色の胸の突起に、程よくついた筋肉。はぁ、えっち。抑えられるかな。


「下も脱ぐよ」
「ぐすっ…早く脱がせてっ……うっうっ…」


 脱がせてって……誘ってるの?!?! ズボンのボタンを外し、ゆっくり下げる。下着のゴムに指先を引っ掛け、下ろしていく。流石に立ってないか。むしろ私の方が立ちそう。


「うっうっ…ぐすっ…如月も脱いで一緒に入って~~」
「う、う~~ん」


 言われた通り、着ている服を脱ぐ。睦月が酔いが覚めた時、怒らないように、脱がせた服も脱いだ服も、洗濯機の中へ全て突っ込む。


「如月早く入ろう~~」


 涙を溢しながら笑う睦月に、身体の中が少しずつ熱を持ち始めた。



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