167 / 306
36話 悪魔の兵器を導入です?!こたつの魔力に打ち勝つことは出来るのか?!
しおりを挟むーーこたつ。
それはどんなに強靭な人間でも、魂を抜いてダメにしてしまう魔の道具。このぬくぬくとしたお布団は、卯月の受験勉強を妨害し、そして如月の執筆活動をも泥々に甘やかす、悪魔の兵器であるーー。
今日は兄がおこたを出すらしい。こたつといえば、もうあったかくて、とても出がたい素敵おふとぅん!!! そんなものを出すというのかぁあぁあぁあぁあ!!!
兄のやっていることは悪の所業!!! でも私はおこたが大好き!!!!
「はぁあぁあぁあぁあぁ!!! おこたぁぁあぁあぁあ!!!」
布団ケースから出されたこたつ布団を抱きしめる。柔らかい。昨年兄が新調したばっかりだから、まだふわふわ。早くこれをリビングのローテーブルにセットしてぬくぬくしたい!!!!
「まだちょっと電源入れるには早いと思うんだけど」
「私、こたつって使ったことないんですよね」
「えっ!! 如月おこた使ったことないの?! あったかいのに!!」
兄が私からこたつ布団を取り上げ、ローテーブルにこたつ布団をセットしていく。こたつらしくなって来た。あ、カーペットも要るな!!!
洋室へ向かい、押し入れから肌触りの良い、暖かいカーペットを引きずりだす。床がフローリングじゃ、寒々しいもんね。これを敷かないと。脇腹に抱え、リビングへ戻る。
「お兄ちゃん!!! これ敷いて!!!」
「まだ早くない?」
「ここまで来たらやりましょう」
如月と兄が向かい合い、こたつを浮かせて横に運ぶ。こたつを置く位置に、カーペットを敷いた。いやぁ、楽しみ。これはもう、まったり出来る。ぬくぬくして、ぐーぐー出来る。
「如月、こたつ戻すよ」
「はいはい」
こたつが所定の位置に戻ると、部屋の雰囲気はがらりとレトロに変わった。これから季節は本格的に秋冬へと変わっていく。もう既に、朝夜は日中に比べると肌寒く感じる。秋は始まっているのだ。
如月がうちに来てから、また季節が変わる。
「如月~~っ秋もよろしく!!!」
「ちょっと!!! 危ない!!! も~~」
後ろから思いっきり抱きつく。如月の居ない佐野家は考えられない。秋も如月と一緒に楽しみたい。紅葉とか3人で見に行きたいなぁ。ぎゅうぎゅう。
「もう~~どうしたんですか?」
「べつに~~」
口元に笑みを浮かべながら如月から離れる。こたつのそばに腰を下ろし、布団の中へ脚を入れる。電源入ってないけど、あったかぁ。
「みかん!!! みかん置く?!?!」
兄がキッチンからカゴに入ったみかんを持ってきた。早い早いと言いながら、ちゃっかりみかんを用意している兄も気が早い気がする。
「置こう!!!!」
「みかん美味しそう~~」
「ちょっ!!! 如月みかん取らないで!!!」
如月ってば、もうみかん剥いて食べてるし。
「睦月さん、あ~~ん」
「えっ?!」
兄が恥ずかしそうに頬を赤らめ、口の中へみかんを入れられている。はぁ、バカバカしい。季節が変わっても、こりゃ、いちゃいちゃは変わらないな。
こたつの上にみかんが置かれると、いかにも『こたつ』らしくなった。電源を入れるのが楽しみ!!!
「私、コンビニでおやつ買って来ます」
「ぇえ!!! 私も行く!!!」
「俺はいいや……疲労感が……(※全員分の衣替えもやった人)」
お菓子とジュース買って、こたつの電源入れて、ぬくぬくしながら、お菓子パしよ~~!!!
如月と手を繋ぎ、玄関を出る。2人でコンビニへと向かった。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
夜になり、気温も少し下がり、こたつに電源を入れることになった。初こたつ体験。どきどきどきどき。
布団の中に脚を入れると、じんわり広がる暖かさ。柔らかいお布団。これ、1回入ったら出られないやつ!!! そんなこともあろうかと、私は執筆用ノートパソコンをリビングへ持って来た!!!!
ふふ。これで万事解決!!!
「今日はここで執筆します」
「私もここで勉強するー」
ノートパソコンを開き、書きかけのページから執筆を始める。
かたかたかたかた……。
ーー1時間後
眠っ……。夕食でお腹が膨れているせい? めちゃくちゃ眠い。1時間前から全く進んでいない。でもみかんとお菓子は進む。なんなら、お酒も飲んだ。(※コンビニで買った)
「何故私はチューハイを買ったんだ?」
「知らないよ~~ふわぁ……」
卯月さんも1時間前と同じページを開いている気がする。というか、スマホばかりやって、勉強していないのでは?
ぬくぬくぬく。
「あったかい……あ、睦月さんは?」
「なんか疲れたって言ってご飯食べたらすぐ和室で昼寝してたよ」
「へー」
睦月さんも寝てるし、まぁいっかぁ。お酒、もう一本飲んじゃお。梅酒買ったんだよねー。梅酒にしよ。コップに注いで~~。ふふ。今日は飲む!!! あ、みかん食べよ。
美味しいあったかい幸せ~~。
「如月飲み過ぎじゃない?」
「ぇえ~~? 私は元々、酒も煙草もセックスも大好きですよぉ~~? 三大嗜好趣味ですぅ~~」
「なんて欲にまみれた趣味!!!!」
とても気分良い。なんか、執筆とか今日はどうでもいいな。パソコン閉じよう。ぱたん。ん~~むらむらするなぁ。卯月を見つめる。
じぃーー。
「えっ何?!?!」
「卯月さん、可愛いぃ~~」
「何言って!!! お兄ちゃん!!! お兄ちゃん!!! 起きて!!! 如月なんとかして!!! 得意でしょ?!?! 色々!!!(※でも起こしには行かない)」
こたつを移動して、卯月を後ろから抱きしめる。ぎゅ。良い匂い。落ち着く。眠気が更に増す。うとうと。執筆進んでいなくて、皐に怒られそう。
まぁいいや、眠いから寝よー。
すこーー。
*
「っておい!!!! 背中で寝るなよ!!!」
どさっ。
振り返ると如月の重心がずれ、背中から如月がずり落ちた。まぁこたつに入ってるし? このまま寝かせておこう。
「なんか全然集中出来ないな」
ばりっ。
新しい菓子の袋を開ける。もぐもぐもぐ。
こつん。ガタッ。ばしゃーー。
肘がコップに当たり、ジュースが溢れた。やば!!! こたつの上に置いてあったティッシュ箱から、何枚もティッシュを抜き取り、急いで拭く。セーフセーフ。布団は濡れなかった。
「ティッシュどうしよう」
少し離れたところにあるゴミ箱を見つめる。ここから出て捨てに行くのが面倒くさい。かと言って、このまま机の上に濡れたティッシュを置いておくわけには……。
「投げるか」
私の運動神経なら入るだろ。濡れたティッシュをひとつにまとめ、ゴミ箱に向かって勢いよく投げた。
ぼと。
入らなかった。
「ふふ、入ってなぁい」
「如月起きたの?!」
「私も投げるぅ~~」
え、みかんの皮投げるの? 少し寝てたけど、まだ大分酔ってるなぁ~~。あ、投げた。
ぼと。
入らなかった。
「意外と距離ありますねぇ」
「乾いたティッシュなら入ったのかな?」
ティッシュを何枚も引き抜き、丸めてもう一度、ゴミ箱に向かって投げる。
ぽと。
入らなかった。
「悔しいーーーー!!!!」
「ゴミ箱まで飛行することが大切ということですねぇ」
「紙飛行機でやればいいんじゃね?」
「なるほどぉ~~」
ノートの後ろからページを2枚破る。びりり。1枚は如月へ渡し、紙飛行機を作った。
「一緒に投げよ!!!」
「はぁい」
「せーの!!!!」
すい~~~~。
ぽと。
入らなかった。
「私の方が遠くに飛びましたねぇ」
「そっちの紙飛行機私のだし!!!」
「違いますよぉ~~」
「審議!!! これは審議!!! もう1回やろ!!」
ノートの後ろから複数枚ページを破り、こたつの上に置く。如月と一緒にまた紙飛行機を作る。さっき紙飛行機絶対私のだし!!!! 絶対負けない!!!
「如月作れた?!」
「うん」
「せーの!!!!」
すい~~~~。
「さっきより遠くに飛びましたぁ」
「だからそっち私の紙飛行機だってば!!!」
何回も繰り返すうちに、ノートのページがなくなった。もう作れないな。床には紙飛行機が沢山落ちている。こたつから出て回収するのは面倒くさいなぁ。まぁ、お兄ちゃんが片付けるでしょ。
床に落ちている紙飛行機に背を向け、如月の方を見る。
「如月なんか恋バナして」
「こいばなぁ?」
みかんの皮を剥きながら、如月に訊く。お兄ちゃんが居ると聞けないし、たまにはこういう話もしてみたい。
「初めて付き合った人とか~~」
「それは千早ですけどぉ……」
「あっ、そっか。なんで別れたの?」
「ふつー別れた理由聞きますかぁ?」
困ったように眉を八の字に下げて笑い、ほんのり染まった頬を机に付け、とろんとした瞳で見つめてくる。
なんだか兄より年上に思えない。可愛いなー。お兄ちゃんもこういう気持ちで如月を愛でてるのかな。
「なんで好きになったかでもいいけどー」
「ふふ。千早はすごく絵が上手なんですよー」
「えっ、そうなの?! 知らなかった!!!」
剥いたみかんを口に入れ、如月の話に耳を傾ける。
「漫画家を目指す千早と小説家を目指す私が、惹かれ合うのは自然の流れでしたよ。ふふ」
「なんか青春……」
懐かしむような微笑みを浮かべる如月をみて、過去を偲んでいるように思えた。
「卒業しても2年くらい付き合ってましたけどぉ……私の方が早く売れて、千早は中々芽が出なくて……」
「あ~~……」
「千早にも売れて欲しいから、こうしたらぁって口出ししたりしてるうちに、ケンカが絶えなくなって~~別れたぁ」
「そっか~~ふぁあ……」
お互い嫌いになって別れたわけじゃないんだなぁ。知らなかった如月のことを知れて、少し嬉しい。
話を聞いているうちにまた眠くなり、欠伸が出てしまう。
「ふわぁ……私も眠くなってきましたぁ。もう少し寝ようかなぁ?」
「良いんじゃない?」
今日はあと4ページはやる予定だったのに、スケジュールはめちゃくちゃ。如月も全然執筆してないのに、酔っ払っちゃってるけど、いいのかな?
ぬくぬくぬく。
……まぁいっかぁ~~っ。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる