如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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36話 悪魔の兵器を導入です?!こたつの魔力に打ち勝つことは出来るのか?!

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 ーーこたつ。



 それはどんなに強靭な人間でも、魂を抜いてダメにしてしまう魔の道具。このぬくぬくとしたお布団は、卯月の受験勉強を妨害し、そして如月の執筆活動をも泥々に甘やかす、悪魔の兵器であるーー。





 今日は兄がおこたを出すらしい。こたつといえば、もうあったかくて、とても出がたい素敵おふとぅん!!! そんなものを出すというのかぁあぁあぁあぁあ!!!


 兄のやっていることは悪の所業!!! でも私はおこたが大好き!!!!


「はぁあぁあぁあぁあぁ!!! おこたぁぁあぁあぁあ!!!」


 布団ケースから出されたこたつ布団を抱きしめる。柔らかい。昨年兄が新調したばっかりだから、まだふわふわ。早くこれをリビングのローテーブルにセットしてぬくぬくしたい!!!!


「まだちょっと電源入れるには早いと思うんだけど」
「私、こたつって使ったことないんですよね」
「えっ!! 如月おこた使ったことないの?! あったかいのに!!」


 兄が私からこたつ布団を取り上げ、ローテーブルにこたつ布団をセットしていく。こたつらしくなって来た。あ、カーペットも要るな!!!


 洋室へ向かい、押し入れから肌触りの良い、暖かいカーペットを引きずりだす。床がフローリングじゃ、寒々しいもんね。これを敷かないと。脇腹に抱え、リビングへ戻る。


「お兄ちゃん!!! これ敷いて!!!」
「まだ早くない?」
「ここまで来たらやりましょう」


 如月と兄が向かい合い、こたつを浮かせて横に運ぶ。こたつを置く位置に、カーペットを敷いた。いやぁ、楽しみ。これはもう、まったり出来る。ぬくぬくして、ぐーぐー出来る。


「如月、こたつ戻すよ」
「はいはい」


 こたつが所定の位置に戻ると、部屋の雰囲気はがらりとレトロに変わった。これから季節は本格的に秋冬へと変わっていく。もう既に、朝夜は日中に比べると肌寒く感じる。秋は始まっているのだ。


 如月がうちに来てから、また季節が変わる。


「如月~~っ秋もよろしく!!!」
「ちょっと!!! 危ない!!! も~~」


 後ろから思いっきり抱きつく。如月の居ない佐野家は考えられない。秋も如月と一緒に楽しみたい。紅葉とか3人で見に行きたいなぁ。ぎゅうぎゅう。


「もう~~どうしたんですか?」
「べつに~~」


 口元に笑みを浮かべながら如月から離れる。こたつのそばに腰を下ろし、布団の中へ脚を入れる。電源入ってないけど、あったかぁ。


「みかん!!! みかん置く?!?!」


 兄がキッチンからカゴに入ったみかんを持ってきた。早い早いと言いながら、ちゃっかりみかんを用意している兄も気が早い気がする。


「置こう!!!!」
「みかん美味しそう~~」
「ちょっ!!! 如月みかん取らないで!!!」


 如月ってば、もうみかん剥いて食べてるし。


「睦月さん、あ~~ん」
「えっ?!」


 兄が恥ずかしそうに頬を赤らめ、口の中へみかんを入れられている。はぁ、バカバカしい。季節が変わっても、こりゃ、いちゃいちゃは変わらないな。


 こたつの上にみかんが置かれると、いかにも『こたつ』らしくなった。電源を入れるのが楽しみ!!!


「私、コンビニでおやつ買って来ます」
「ぇえ!!! 私も行く!!!」
「俺はいいや……疲労感が……(※全員分の衣替えもやった人)」


 お菓子とジュース買って、こたつの電源入れて、ぬくぬくしながら、お菓子パしよ~~!!!


 如月と手を繋ぎ、玄関を出る。2人でコンビニへと向かった。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー
 *



 夜になり、気温も少し下がり、こたつに電源を入れることになった。初こたつ体験。どきどきどきどき。


 布団の中に脚を入れると、じんわり広がる暖かさ。柔らかいお布団。これ、1回入ったら出られないやつ!!! そんなこともあろうかと、私は執筆用ノートパソコンをリビングへ持って来た!!!!


 ふふ。これで万事解決!!!


「今日はここで執筆します」
「私もここで勉強するー」


 ノートパソコンを開き、書きかけのページから執筆を始める。


 かたかたかたかた……。



 ーー1時間後



 眠っ……。夕食でお腹が膨れているせい? めちゃくちゃ眠い。1時間前から全く進んでいない。でもみかんとお菓子は進む。なんなら、お酒も飲んだ。(※コンビニで買った)


「何故私はチューハイを買ったんだ?」
「知らないよ~~ふわぁ……」


 卯月さんも1時間前と同じページを開いている気がする。というか、スマホばかりやって、勉強していないのでは?


 ぬくぬくぬく。


「あったかい……あ、睦月さんは?」
「なんか疲れたって言ってご飯食べたらすぐ和室で昼寝してたよ」
「へー」


 睦月さんも寝てるし、まぁいっかぁ。お酒、もう一本飲んじゃお。梅酒買ったんだよねー。梅酒にしよ。コップに注いで~~。ふふ。今日は飲む!!! あ、みかん食べよ。


 美味しいあったかい幸せ~~。


「如月飲み過ぎじゃない?」
「ぇえ~~? 私は元々、酒も煙草もセックスも大好きですよぉ~~? 三大嗜好趣味ですぅ~~」
「なんて欲にまみれた趣味!!!!」


 とても気分良い。なんか、執筆とか今日はどうでもいいな。パソコン閉じよう。ぱたん。ん~~むらむらするなぁ。卯月を見つめる。


 じぃーー。


「えっ何?!?!」
「卯月さん、可愛いぃ~~」

「何言って!!! お兄ちゃん!!! お兄ちゃん!!! 起きて!!! 如月なんとかして!!! 得意でしょ?!?! 色々!!!(※でも起こしには行かない)」


 こたつを移動して、卯月を後ろから抱きしめる。ぎゅ。良い匂い。落ち着く。眠気が更に増す。うとうと。執筆進んでいなくて、皐に怒られそう。


 まぁいいや、眠いから寝よー。


 すこーー。


 *


「っておい!!!! 背中で寝るなよ!!!」


 どさっ。


 振り返ると如月の重心がずれ、背中から如月がずり落ちた。まぁこたつに入ってるし? このまま寝かせておこう。


「なんか全然集中出来ないな」


 ばりっ。


 新しい菓子の袋を開ける。もぐもぐもぐ。


 こつん。ガタッ。ばしゃーー。


 肘がコップに当たり、ジュースが溢れた。やば!!! こたつの上に置いてあったティッシュ箱から、何枚もティッシュを抜き取り、急いで拭く。セーフセーフ。布団は濡れなかった。


「ティッシュどうしよう」


 少し離れたところにあるゴミ箱を見つめる。ここから出て捨てに行くのが面倒くさい。かと言って、このまま机の上に濡れたティッシュを置いておくわけには……。


「投げるか」


 私の運動神経なら入るだろ。濡れたティッシュをひとつにまとめ、ゴミ箱に向かって勢いよく投げた。


 ぼと。


 入らなかった。


「ふふ、入ってなぁい」
「如月起きたの?!」
「私も投げるぅ~~」


 え、みかんの皮投げるの? 少し寝てたけど、まだ大分酔ってるなぁ~~。あ、投げた。


 ぼと。


 入らなかった。


「意外と距離ありますねぇ」
「乾いたティッシュなら入ったのかな?」


 ティッシュを何枚も引き抜き、丸めてもう一度、ゴミ箱に向かって投げる。


 ぽと。


 入らなかった。


「悔しいーーーー!!!!」
「ゴミ箱まで飛行することが大切ということですねぇ」
「紙飛行機でやればいいんじゃね?」
「なるほどぉ~~」


 ノートの後ろからページを2枚破る。びりり。1枚は如月へ渡し、紙飛行機を作った。


「一緒に投げよ!!!」
「はぁい」
「せーの!!!!」


 すい~~~~。


 ぽと。


 入らなかった。


「私の方が遠くに飛びましたねぇ」
「そっちの紙飛行機私のだし!!!」
「違いますよぉ~~」
「審議!!! これは審議!!! もう1回やろ!!」


 ノートの後ろから複数枚ページを破り、こたつの上に置く。如月と一緒にまた紙飛行機を作る。さっき紙飛行機絶対私のだし!!!! 絶対負けない!!!


「如月作れた?!」
「うん」
「せーの!!!!」


 すい~~~~。


「さっきより遠くに飛びましたぁ」
「だからそっち私の紙飛行機だってば!!!」


 何回も繰り返すうちに、ノートのページがなくなった。もう作れないな。床には紙飛行機が沢山落ちている。こたつから出て回収するのは面倒くさいなぁ。まぁ、お兄ちゃんが片付けるでしょ。


 床に落ちている紙飛行機に背を向け、如月の方を見る。


「如月なんか恋バナして」
「こいばなぁ?」


 みかんの皮を剥きながら、如月に訊く。お兄ちゃんが居ると聞けないし、たまにはこういう話もしてみたい。


「初めて付き合った人とか~~」
「それは千早ですけどぉ……」
「あっ、そっか。なんで別れたの?」
「ふつー別れた理由聞きますかぁ?」


 困ったように眉を八の字に下げて笑い、ほんのり染まった頬を机に付け、とろんとした瞳で見つめてくる。


 なんだか兄より年上に思えない。可愛いなー。お兄ちゃんもこういう気持ちで如月を愛でてるのかな。


「なんで好きになったかでもいいけどー」
「ふふ。千早はすごく絵が上手なんですよー」
「えっ、そうなの?! 知らなかった!!!」


 剥いたみかんを口に入れ、如月の話に耳を傾ける。


「漫画家を目指す千早と小説家を目指す私が、惹かれ合うのは自然の流れでしたよ。ふふ」
「なんか青春……」


 懐かしむような微笑みを浮かべる如月をみて、過去を偲んでいるように思えた。


「卒業しても2年くらい付き合ってましたけどぉ……私の方が早く売れて、千早は中々芽が出なくて……」
「あ~~……」

「千早にも売れて欲しいから、こうしたらぁって口出ししたりしてるうちに、ケンカが絶えなくなって~~別れたぁ」
「そっか~~ふぁあ……」


 お互い嫌いになって別れたわけじゃないんだなぁ。知らなかった如月のことを知れて、少し嬉しい。


 話を聞いているうちにまた眠くなり、欠伸が出てしまう。


「ふわぁ……私も眠くなってきましたぁ。もう少し寝ようかなぁ?」
「良いんじゃない?」


 今日はあと4ページはやる予定だったのに、スケジュールはめちゃくちゃ。如月も全然執筆してないのに、酔っ払っちゃってるけど、いいのかな?


 ぬくぬくぬく。


 ……まぁいっかぁ~~っ。



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