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35話(4)寝てるからって何をしても良いわけじゃない?!友達は全てをお見通し?!
しおりを挟む「如月大丈夫?」
「あーー……うん……」
涙で濡れた頬を睦月さんが指の背で拭う。んー、なんだろう。気まずい。恥ずかしい。照れる。目が合わせられない。背中に回していた腕をそっと緩めると、睦月が私から離れた。
繋がっていた身体が離れるのは少しさびしい。
「なんか……この感覚久しぶり」
「…………(私なんて久しぶりどころか初めて!!!)」
はぁあぁあぁあ!!! 恥ずかしい!!! 横向きに寝転がり、枕を掴む。ごろん。枕に顔を埋め、小さく丸まる。なんか後ろがむずむずする!!!
「なんで顔隠してるの?」
「べつに」
「如月めっちゃえっちだった」
「え?!?!」
何言って!!! 顔が真っ赤に染まる。無理やり枕を奪おうとしてくるので、力一杯、枕を抱く。こんな顔見せたくない!!! 絶対、この枕は渡さん!!!
「顔見せて、見せて~~」
「ダメ!! 絶対やだ!!! 見せない!!」
「いいじゃん~~ほらぁ」
「あっ!! ちょっあっ!!!」
枕がぁ~~。
「顔真っ赤。如月、可愛い」
「枕返して!!! もう寝ますから!!!」
「そんな怒んなくたっていいんじゃん~~」
ごろん。
私の胸元に睦月が来る。またその目。上目遣い。甘えた顔で私を見る。ぎゅ。そっと両腕で、枕ではなく睦月を抱きしめる。
「時々入れ替わるのはどう?」
「……やだ」
「なんで~~?!」
(睦月さんはやっぱり下手!!!)
「なんか今失礼なこと思わなかった?」
「えっ?! 思ってないですけど?!」
「ふーん」
疑いの目を向けられ、焦りながらタオルケットを睦月と自分にかける。布団は2枚敷いてあるけど、今日は同じ布団で一緒に寝たい。
うとうと。
ふふ。疲れたの? 大きな瞳がほとんど開いていない。腕の中で今にも眠りに落ちそうな睦月の頬に口付けする。
ちゅ。
おやすみ、睦月さん。
また明日。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
ーー次の日 朝
ぐ~~~~。
腕の中で睦月さんが爆睡している。意外とお行儀良く寝る人だな。タオルケットを蹴っ飛ばすこともなく、ふにゃけた顔で寝ている。涎を垂らしているのがまた可愛い。
「可愛いなぁ、もう」
じぃーーっと寝顔を見つめ続ける。無限に見ていられそう。人差し指で頬をつんつんと触ってみる。
ぐ~~~~。
頬を触られても顔色ひとつ変えず、寝ている。この程度じゃ起きないのか。何をどこまでしたら起きるのかな。
①鼻をつまむ
「ん……ん~~……ぐーーーー」
「起きない……!」
②足の裏をくすぐる。
「ぐ~~~~」
「この程度では何も感じないのか!!!」
③睦月さんが感じるところを触る。
「ん……ぐ~~~~」
「少し反応した」
ハーフパンツの中に手を入れ、下着の上から幹を撫でる。
「……ん……ぐ~~ん…ぐ~~……」
「身体も少し反応する!」
下着の中に手を入れ、幹を包み擦る。
「……ん…って起きるわ!!!」
「え? 起きたの~~」
「人が寝てるのを良いことに好き勝手!!!」
頬を膨らませ私に背を向ける。怒っちゃった。肩を掴み、こちらへ向かせる。じとり。嫌な目~~。ひぃっ。
「ご、ごめんね?」
「…………」
何も言わない!!! こうなったら絶対落とせる必殺技を!!!
「今日デートしませんか?」
「今日は無理」
がぁあぁあぁあぁあん!!!! 振られた!!!! 無理って!!! ぇえ!!! 一体、何用ですか?!?!
「……友達と遊ぶから」
「友達ですか」
今度は私がじとりと嫌な目で睦月を見る。友達? だって友達と言ったら、神谷さんか旭さんのどっちかだ。その2人以外、見たことがない。
「誰とどこで遊ぶんですか?」
束縛するつもりはないが、気になる。把握したい。
「そ、それはその……旭と……カラオケ……」
「ほう……?」
わざわざ密室で会う? イラ。自分がどこで何されたか忘れてるんじゃないの? はぁ。思わず、ため息が出る。とはいえ、友達に会うなとは言えない。
「分かりました」
「如月が心配するようなことはないって」
「そうかな……」
貴方のセクシュアリティが変わってから余計に心配なんだけど。
「じゃあ明日は?」
なんかまるで私がデートしたいみたいで嫌だな。いや、したいけど。
「明日もダメ!!!」
「なんで?」
「明日はおこたを出します」
明日はこたつデートということですね、分かります。まぁ、でも2人でこたつに入るのも悪くないのかもしれない。
今日の睦月のお出かけの件については不服だが、明日の衣替えは少し楽しみだ。
*
嘘をついてしまった。旭とカラオケに行く約束なんてしていない。気持ちよく寝ているのに起こされた、という少しの苛立ちで言ってしまった。
あ~~どうしよう。
とりあえず嘘が本当になるように、旭へ連絡入れてみる? まぁ、入れるしかないよね。今更嘘でした、なんて言えない。明日こたつを出す予定なのは本当だけど。
せっかくの三連休なのに。旭じゃなくて、如月とデートしたいのに。なんで嘘ついちゃったんだろう。バカだな。
とりあえず、出掛ける準備をして、一旦外に出よう。
身体を起こし、洗面所へ向かった。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
外に出てきたは良いが、まだ旭に連絡を入れていない。自分がどういう目で旭を見てしまうのか、と考えると、会うのが怖くて、連絡を入れられずにいる。
嘘を嘘のままにするわけにもいかないしな。
スマホをポケットから取り出し、旭へ電話をかけた。
「あーーもしもし?」
『むっちゃん? どうしたのー?』
「会える? 今から」
『今から? うち来る?』
家……。危険な香りがする。
「え~~……」
『昼から雨降るよ? どこにいるの? 迎えに行くよー』
「えっと……いつもの待ち合わせの公園……」
『おっけー』
つーつー。
切れた。どうしよ。これは家に行かないといけないパターンのやつ。つまらない嘘が面倒ごとを招いている。さっさと訂正して、如月とデートしとけば良かったのかも。
「むっちゃ~~ん」
旭が手を振りながら近づいてきた。意外と早い。近くに住んでいるのかな。
「早いね」
「すぐそばに住んでるからー。むっちゃんが遊びに誘ってくれるなんて嬉しいよー」
「はは……」
「あ、今ね貰い物で、家に面白いものがあってさ~~」
貰い物とは。如月も貰い物とか言って変な雑誌とかDVD持ってたよね。なんか貰い物ってこわいなー。
新そうな外観のアパートの前までやってくると、旭がドアに鍵を差し込んだ。良いところ住んでるな、家賃高そう。
部屋の中に入ると、新築の良い匂いが鼻を通った。中も新しい。うちとは全然違うな。男の一人暮らしのせいか、リビングは脱いだ服がそのまま放置されていたり、食べたものがそのまま机の上に置いてあったり、あまり綺麗なものではなかった。
気になる~~。
「お茶入れるねー」
「ありがとう」
無意識に服を手に取っている自分がいる。もういいや、畳もう。綺麗に越したことはないんだ!!! 放置された洋服を全て畳む。これいつの洗濯物? 着たやつ? 洗ったやつ?
くんくん。
「くさ!!!!」
着たやつは洗濯しろよ!!! とりあえず畳んで積み上げる。
食べたものがそのまま放置された机の上に、お茶の入ったコップが2つ置かれる。ここに置くの?!?! マジか!!!
サッと机からコップを救出し、一瞬で飲み干す。おかわりは要らない。
「面白いものっていうのがこれ~~」
「うわぁ……」
旭の手にはセーラー服。じゃーんと、嬉しそうに見せつけ、俺の膝の上に置いた。もう学生服はいいって!!! しかも女物って!!! そういうのはお腹いっぱい!!!
「あげるよ、これ」
「要らんし……」
「これ着て弥生さんに『えっちしよ』って言えば仲直り出来んだろ」
「え?」
渡されたセーラー服をぎゅっと抱きしめる。旭には全てお見通しのようで、恥ずかしくなる。後ろから肩に腕が回された。すごい筋肉質……。ドキ。
「俺に電話かけてくるなんて変なんだよー。しかも顔暗いしバレバレ!」
「はは……」
「俺はね! 睦月ことは好きだけど、お前が俺のことを友達として大切に想ってるなら、俺も友達として、大切にしたい」
「旭……」
睦月って呼んだ。それだけ真面目に言ってるってことだ。その気持ちが嬉しい。有り難く、このセーラー服はもらって帰ろう。
「俺、これ着て帰る!!!!」
「え? 良いけど……大丈夫?(色々)」
「問題ない!!! これぐらい大したことなし!!!」
「……(なにが?)」
何も解決してないけど、なんかスッキリした!! 家に帰ったら、断ったことを謝って、デートに誘おう!!! そうしよう!!!
「顔スッキリしてる」
「ありがとう旭!」
「むっちゃんは笑顔じゃなくちゃー。俺はむっちゃんさえ良ければ今からえっちしてもいいよー」
抱き寄せようとする旭の手を叩く。前髪を払い、格好付け、口を開いた。
「俺もう、ねこ卒業したんで」
「どういうこと?!?! ちょっと!!! 挿れさせてもらえてなかったよね?!?! 抜け駆け?! 詳しく!!!」
「えっとね~~」
俺と旭はしょうもないことを笑い合いながら、日が暮れるまで話し続けた。
ーーその頃の卯月
広い和室に如月の家族が集合。畳の上に置かれたローテーブルを囲い、正座でお勉強。正座以外は許されない雰囲気。
如月は高校卒業して、すぐ家出たって言ってたし、如月家が頭良い系の大卒ばっかりの優秀な家系だったなんて!!! 聞いてない!!!
「小春さんの鬼!!! もぉやだぁーーーー!!! 休憩!!!」
「何言ってんの、さっき休んだでしょうが。ここ間違ってる。基本が大事。数をこなせ。このままだと希望校受からないよ?」
「うわぁあぁあん!!!!」
みっちりしごかれていた。
いつも優しく教えてくれる兄と如月が恋しくなった卯月であった。
(早く帰りたい……!!!)
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