如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

文字の大きさ
上 下
165 / 306

35話(4)寝てるからって何をしても良いわけじゃない?!友達は全てをお見通し?!

しおりを挟む

「如月大丈夫?」
「あーー……うん……」


 涙で濡れた頬を睦月さんが指の背で拭う。んー、なんだろう。気まずい。恥ずかしい。照れる。目が合わせられない。背中に回していた腕をそっと緩めると、睦月が私から離れた。


 繋がっていた身体が離れるのは少しさびしい。


「なんか……この感覚久しぶり」
「…………(私なんて久しぶりどころか初めて!!!)」


 はぁあぁあぁあ!!! 恥ずかしい!!! 横向きに寝転がり、枕を掴む。ごろん。枕に顔を埋め、小さく丸まる。なんか後ろがむずむずする!!!


「なんで顔隠してるの?」
「べつに」
「如月めっちゃえっちだった」
「え?!?!」


 何言って!!! 顔が真っ赤に染まる。無理やり枕を奪おうとしてくるので、力一杯、枕を抱く。こんな顔見せたくない!!! 絶対、この枕は渡さん!!!


「顔見せて、見せて~~」
「ダメ!! 絶対やだ!!! 見せない!!」
「いいじゃん~~ほらぁ」
「あっ!! ちょっあっ!!!」


 枕がぁ~~。


「顔真っ赤。如月、可愛い」
「枕返して!!! もう寝ますから!!!」
「そんな怒んなくたっていいんじゃん~~」


 ごろん。


 私の胸元に睦月が来る。またその目。上目遣い。甘えた顔で私を見る。ぎゅ。そっと両腕で、枕ではなく睦月を抱きしめる。


「時々入れ替わるのはどう?」
「……やだ」
「なんで~~?!」


(睦月さんはやっぱり下手!!!)


「なんか今失礼なこと思わなかった?」
「えっ?! 思ってないですけど?!」
「ふーん」


 疑いの目を向けられ、焦りながらタオルケットを睦月と自分にかける。布団は2枚敷いてあるけど、今日は同じ布団で一緒に寝たい。


 うとうと。


 ふふ。疲れたの? 大きな瞳がほとんど開いていない。腕の中で今にも眠りに落ちそうな睦月の頬に口付けする。


 ちゅ。


 おやすみ、睦月さん。
 また明日。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


 ーー次の日 朝



 ぐ~~~~。


 腕の中で睦月さんが爆睡している。意外とお行儀良く寝る人だな。タオルケットを蹴っ飛ばすこともなく、ふにゃけた顔で寝ている。涎を垂らしているのがまた可愛い。


「可愛いなぁ、もう」


 じぃーーっと寝顔を見つめ続ける。無限に見ていられそう。人差し指で頬をつんつんと触ってみる。


 ぐ~~~~。


 頬を触られても顔色ひとつ変えず、寝ている。この程度じゃ起きないのか。何をどこまでしたら起きるのかな。


 ①鼻をつまむ


「ん……ん~~……ぐーーーー」
「起きない……!」


 ②足の裏をくすぐる。


「ぐ~~~~」
「この程度では何も感じないのか!!!」


 ③睦月さんが感じるところを触る。


「ん……ぐ~~~~」
「少し反応した」


 ハーフパンツの中に手を入れ、下着の上から幹を撫でる。


「……ん……ぐ~~ん…ぐ~~……」
「身体も少し反応する!」


 下着の中に手を入れ、幹を包み擦る。


「……ん…って起きるわ!!!」
「え? 起きたの~~」
「人が寝てるのを良いことに好き勝手!!!」


 頬を膨らませ私に背を向ける。怒っちゃった。肩を掴み、こちらへ向かせる。じとり。嫌な目~~。ひぃっ。


「ご、ごめんね?」
「…………」


 何も言わない!!! こうなったら絶対落とせる必殺技を!!!


「今日デートしませんか?」
「今日は無理」


 がぁあぁあぁあぁあん!!!! 振られた!!!! 無理って!!! ぇえ!!! 一体、何用ですか?!?! 


「……友達と遊ぶから」
「友達ですか」


 今度は私がじとりと嫌な目で睦月を見る。友達? だって友達と言ったら、神谷さんか旭さんのどっちかだ。その2人以外、見たことがない。


「誰とどこで遊ぶんですか?」


 束縛するつもりはないが、気になる。把握したい。


「そ、それはその……旭と……カラオケ……」
「ほう……?」


 わざわざ密室で会う? イラ。自分がどこで何されたか忘れてるんじゃないの? はぁ。思わず、ため息が出る。とはいえ、友達に会うなとは言えない。


「分かりました」
「如月が心配するようなことはないって」
「そうかな……」


 貴方のセクシュアリティが変わってから余計に心配なんだけど。


「じゃあ明日は?」


 なんかまるで私がデートしたいみたいで嫌だな。いや、したいけど。


「明日もダメ!!!」
「なんで?」
「明日はおこたを出します」


 明日はこたつデートということですね、分かります。まぁ、でも2人でこたつに入るのも悪くないのかもしれない。


 今日の睦月のお出かけの件については不服だが、明日の衣替えは少し楽しみだ。



 *



 嘘をついてしまった。旭とカラオケに行く約束なんてしていない。気持ちよく寝ているのに起こされた、という少しの苛立ちで言ってしまった。


 あ~~どうしよう。


 とりあえず嘘が本当になるように、旭へ連絡入れてみる? まぁ、入れるしかないよね。今更嘘でした、なんて言えない。明日こたつを出す予定なのは本当だけど。


 せっかくの三連休なのに。旭じゃなくて、如月とデートしたいのに。なんで嘘ついちゃったんだろう。バカだな。


 とりあえず、出掛ける準備をして、一旦外に出よう。


 身体を起こし、洗面所へ向かった。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


 外に出てきたは良いが、まだ旭に連絡を入れていない。自分がどういう目で旭を見てしまうのか、と考えると、会うのが怖くて、連絡を入れられずにいる。


 嘘を嘘のままにするわけにもいかないしな。


 スマホをポケットから取り出し、旭へ電話をかけた。


「あーーもしもし?」
『むっちゃん? どうしたのー?』
「会える? 今から」
『今から? うち来る?』


 家……。危険な香りがする。


「え~~……」
『昼から雨降るよ? どこにいるの? 迎えに行くよー』
「えっと……いつもの待ち合わせの公園……」
『おっけー』


 つーつー。


 切れた。どうしよ。これは家に行かないといけないパターンのやつ。つまらない嘘が面倒ごとを招いている。さっさと訂正して、如月とデートしとけば良かったのかも。


「むっちゃ~~ん」


 旭が手を振りながら近づいてきた。意外と早い。近くに住んでいるのかな。


「早いね」
「すぐそばに住んでるからー。むっちゃんが遊びに誘ってくれるなんて嬉しいよー」
「はは……」
「あ、今ね貰い物で、家に面白いものがあってさ~~」


 貰い物とは。如月も貰い物とか言って変な雑誌とかDVD持ってたよね。なんか貰い物ってこわいなー。


 新そうな外観のアパートの前までやってくると、旭がドアに鍵を差し込んだ。良いところ住んでるな、家賃高そう。


 部屋の中に入ると、新築の良い匂いが鼻を通った。中も新しい。うちとは全然違うな。男の一人暮らしのせいか、リビングは脱いだ服がそのまま放置されていたり、食べたものがそのまま机の上に置いてあったり、あまり綺麗なものではなかった。


 気になる~~。


「お茶入れるねー」
「ありがとう」


 無意識に服を手に取っている自分がいる。もういいや、畳もう。綺麗に越したことはないんだ!!! 放置された洋服を全て畳む。これいつの洗濯物? 着たやつ? 洗ったやつ?


 くんくん。


「くさ!!!!」


 着たやつは洗濯しろよ!!! とりあえず畳んで積み上げる。


 食べたものがそのまま放置された机の上に、お茶の入ったコップが2つ置かれる。ここに置くの?!?! マジか!!!


 サッと机からコップを救出し、一瞬で飲み干す。おかわりは要らない。


「面白いものっていうのがこれ~~」
「うわぁ……」


 旭の手にはセーラー服。じゃーんと、嬉しそうに見せつけ、俺の膝の上に置いた。もう学生服はいいって!!! しかも女物って!!! そういうのはお腹いっぱい!!!


「あげるよ、これ」
「要らんし……」
「これ着て弥生さんに『えっちしよ』って言えば仲直り出来んだろ」
「え?」


 渡されたセーラー服をぎゅっと抱きしめる。旭には全てお見通しのようで、恥ずかしくなる。後ろから肩に腕が回された。すごい筋肉質……。ドキ。


「俺に電話かけてくるなんて変なんだよー。しかも顔暗いしバレバレ!」
「はは……」

「俺はね! 睦月ことは好きだけど、お前が俺のことを友達として大切に想ってるなら、俺も友達として、大切にしたい」
「旭……」


 睦月って呼んだ。それだけ真面目に言ってるってことだ。その気持ちが嬉しい。有り難く、このセーラー服はもらって帰ろう。


「俺、これ着て帰る!!!!」
「え? 良いけど……大丈夫?(色々)」
「問題ない!!! これぐらい大したことなし!!!」
「……(なにが?)」


 何も解決してないけど、なんかスッキリした!! 家に帰ったら、断ったことを謝って、デートに誘おう!!! そうしよう!!!


「顔スッキリしてる」
「ありがとう旭!」
「むっちゃんは笑顔じゃなくちゃー。俺はむっちゃんさえ良ければ今からえっちしてもいいよー」


 抱き寄せようとする旭の手を叩く。前髪を払い、格好付け、口を開いた。


「俺もう、ねこ卒業したんで」
「どういうこと?!?! ちょっと!!! 挿れさせてもらえてなかったよね?!?! 抜け駆け?! 詳しく!!!」
「えっとね~~」


 俺と旭はしょうもないことを笑い合いながら、日が暮れるまで話し続けた。
 




 ーーその頃の卯月



 広い和室に如月の家族が集合。畳の上に置かれたローテーブルを囲い、正座でお勉強。正座以外は許されない雰囲気。


 如月は高校卒業して、すぐ家出たって言ってたし、如月家が頭良い系の大卒ばっかりの優秀な家系だったなんて!!! 聞いてない!!!


「小春さんの鬼!!! もぉやだぁーーーー!!! 休憩!!!」
「何言ってんの、さっき休んだでしょうが。ここ間違ってる。基本が大事。数をこなせ。このままだと希望校受からないよ?」

「うわぁあぁあん!!!!」


 みっちりしごかれていた。


 いつも優しく教えてくれる兄と如月が恋しくなった卯月であった。


(早く帰りたい……!!!)



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...