如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

文字の大きさ
上 下
161 / 306

34話(2)付き合いという名の免罪符?!恋人であり1番の理解者へのカミングアウトーー。

しおりを挟む

「ただいまぁ!!!」


 勢いよく、玄関扉を開け、家の中へ入る。アレ? 返事がない。なんでだろう? でも靴はある。家にはいるはず。


「ただいまぁ!!!」


 リビングに向かい言ってみる。返事なし。まず、2人の姿がない。んと、和室? もう寝ちゃった? 22時だもんね。襖に手をかけ、思いっきり開ける。


 スパン!!!


「ただいまぁ!!!」


 居ない。ぇええぇえぇえ!!! どういうこと?!?! えっ、もしかして……俺が居ないから2人でお風呂に?!?! 


 脱衣所の扉を開ける。浴室からは2人の話し声。なんてこと!!! してやられた!!! こんなことなら早く帰るべきだった!!! てかこれ、俺も一緒に入っていい?!?!


 俺のことに気づいていないようなので、耳を澄ませる。


『ん~~っ大きい』なにが?!
『早くくわえて』なにを?!
『んっ…………』なにその間!!!
『出来てますよ~~』出来てるって?!
『ぁあっっ』?!?!


 卯月ぃいいぃい!!!!


 浴室のドアを勢いよく開けた。


 バン!!!!


「そんなもの咥えちゃだめ!!!」
「え、何? お兄ちゃん? こっちみんなキモ」
「……睦月さんおかえりなさい」


 なんか2人に違う意味で、じとりと見られてる気がする。


「何を咥えるんですか……スマホゲームですって……」
「みるな!!! きもい!!! 早くしめろ!!!」
「ごっ、ごめ……っ」


 あまりにも綺麗になっている卯月に驚きながら、浴室の扉を閉める。卯月……全然子どもじゃなかった……。


 そうだ、今のうちにこんな汚い服、早く着替えてしまおう。着ているワイシャツを脱ぎ、洗濯機へ突っこむ。風呂に入るまで、肌着とハーフパンツでいっか。


「全然クリアできなかったぁ~~」
「暑くなってきたので出ましょう」


 上がってくる!!! 急いで脱衣所からリビングへ向かう。パニックになって色々流しちゃったけど、一緒に風呂入ってたし。でも口出ししない約束だからな。


 リビングの床に座り、如月が上がってくるのを待つ。


「睦月さん」


 後ろから声をかけられ、振り向く。


「如月……?」


 如月の目が笑っていないのは気のせいだろうか。なんかしたっけ? 浴室開けたから?


「睦月さん、和室いこっか」
「え? う、うん」


 如月に背中を押されるまま、和室へ行く。如月の髪先からぽたぽた垂れる雫が、嫌な予感をますます高める。


 やましいことは……。


 してないと言い切れない!!!
 睦月は泣いた。


 変な店入ってるわ……。


 和室へ入ると正座をさせられ、襖が閉まった。如月の手には丸められた原稿。お説教モード? 怒られるのイヤだよぉ。これは仕方なかったんだよ? 付き合いだもの。


「何かやましいことは?」
「……女の子のいるお店に入りました」


 ぽこ。


 原稿で頭が叩かれる。むー。


「……飲みも仕事です。付き合い上、仕方なかった!!!」
「分かってますけど、イヤだったぁ」


 ぽこぽこ。


 原稿で頭が叩かれる。もぉ。


「何したんですか」
「へ? ちょっとまぁ……おさわり……(※仕事だと割り切って真面目にさわった)」


 ぽこぽこぽこ!!!


 原稿で何度も頭が叩かれる。ぷ。なんかちょっとかわいい。


「ばか!!! 真面目!!! 変なところ真っ直ぐ!!!」
「ちょっ! やめて叩かないで! 円滑な人間関係を築く上で仕方なかったの!! ごめん! ごめんね?」


 原稿を持つ如月の手首を掴み、引き寄せる。たまには後ろから抱きしめさせて。


 ぎゅう。


「ばかー睦月さんのばかー。で、どうだったのですか?」
「へ? どうだったって?」
「蒼さん以来でしょ。あの時と今じゃ感じることも違ったのでは」


 如月の言葉に抱きしめている腕に力が入る。あの時とは感じることは違った。


 変わっていく心と身体の変化。


 今まで女性も恋愛対象に入っていたからこそ、全ての人間関係が成り立っていたような気がする。だからこそ、如月に言って良いのか、迷う。


 自分の中でセクシュアリティが変わったのは間違いない。


 見てきたものや感じていたものがリセットされ、同じようにみることはできないのに、人間関係はそのままだ。


 環境をリセットすることは出来ない。この生活さえも。


 自分のセクシュアルマイノリティと向き合いながら、今の環境でやっていかなければならないのだ。


 それが分かった途端、今まで誰にでも比較的にカミングアウト出来ていた自分だったが、今後は全てをカミングアウトすることは出来ないと思えた。


 自分の恋人であり、セクシュアルマイノリティに関しては1番の理解者だ。言えば良いのに、言えない。


「言って」
「俺が何を言っても怒らない?」
「怒らないし、全て受け止める」


 本当に? 不安から少し疑ってしまう。多分、これを言ってしまうと、俺のセクシュアルマイノリティはほぼ決まり。新しい生活が始まることになる。


 これが如月にとって、そして俺にとっても、良いことなのか、分からない。


 如月の背中に頬をくっつけ、口を開いた。


「女性に触れても何も感じない。如月や旭に触られた時の方がドキドキする……女性には多分、興味がない」
「そっか」


 これ以上何を言っていいのか分からない。どうしよう。後ろからでは如月の表情も見えない。不安で胸が押しつぶされそうになる。


 手の甲の上に、如月の手が重なり、優しく俺の手を撫でた。


「まぁ、自分のセクシュアリティは自分自身が決めるものなので、それに関して、私は何も言いませんよ。貴方がたとえ、ゲイだとしても、それが不幸なことではないと思います」

「人それぞれの生き方があると思いますよ? それに自分のことを全てを理解してもらう必要もないし、私のことだって、全てを理解する必要だってないのですから。そこに無理はしなくていいかと」


 振り返り、俺の方をみて微笑む如月に、不安で、張り詰めた気持ちが解れる。


「無理に全てを理解してもらう必要はない……か」
「カミングアウトすることが必ずしも正しいとは限らないですし、それよりは自分自身を認めることの方が大切だと思いますからねー」


 ぎゅ。


 腕に更に力が入る。愛しくて、横から顔を覗き込む。お風呂上がりのいい匂いが首筋から香り、ドキッとする。


「生きづらく思うことはあるでしょうけど、それでも、ありのままに生きればいい」
「如月……」


 手でそっと髪の毛を退け、頬にキスする。如月の頬が薄く染まるのを見て、性的な欲求が湧く。


「……でも睦月さんをこんな風にしたのは私のせいですよね……ごめんなさい」
「じゃあ責任とって」
「ぇえ~~っあ……わっ…ちょっと~~」


 ごろん。


 如月を抱きしめたまま横に寝転がる。如月の脚の上から脚を絡め、どこにもいかないように引き止める。触れ合う脚に下腹が少し熱くなった。


「如月、好き。大好き」
「なんですか、急に」
「ありがとう」
「愛してるくらい言ったらどうです?」


 あっ、あいしてる?! 言ってるよね? 普段?! 言ってないっけ?! 言ってるでしょ?! 改めて求められると照れる!!!


「あっ……あいし……あいしてる」
「顔みたい~~睦月さんの顔みたい~~」
「ばっ!!! こっち向くな!!!」


 寝返りを打ち、こちらを見る如月に、手の甲で咄嗟に顔を隠す。こんな赤い顔、見られたくない!!!


「ちょっと~~隠さないで~~」
「やだ!!! やだぁ!!! 見ないで!!!」
「いちゃいちゃしてるし。お兄ちゃん風呂~~」


 襖から卯月が顔を覗かせる。そういえば、まだお風呂入ってないや。もう少しいちゃいちゃしたかったな。


「物足りなさそうな顔してる」
「へ?!」
「こういうのが欲しかったの~~?」
「あっちょっだめだめっあっっ今からお風呂入るの!!!」


 下着の上からゆっくり幹が撫でられる。もぉ!! きもちいーー!!! 如月のばか!!!


「もぉ!!! お風呂入るから!!!」
「はいはい、いってらっしゃい~~」


 身体を起こし、如月の額に口付けする。


 ちゅ。


 そこで一生照れてろ!!!!


 赤く染まった如月の頬を見て、ほくそ笑みながら、浴室へと向かった。






 おまけ


 ーーある朝の出勤前 クリーニング店



「すみません、これクリーニングお願いします」


 スーツとワイシャツ、ネクタイをカウンターの上へ置く。我ながら全てクリーニングに出してあげるとか、お人好し!!!


「なんか大分汚れてますね」
「え゛」


 汚れ、落ちなかったらどうしよう!!! でも落ちるよね? 別にインクとかじゃないし!!! 自然由来(?)のものだもん落ちる!!!


「そんなに汚れてるんですね。へ、へぇ~~俺のスーツじゃないけど」
「かなり白っぽくなってますよ」


 なんとなく、白い目で見られている気がする。


「なんかやっちゃったんでしょうね~~全く~~俺のスーツじゃないけど」
「偉いね、代わりに出すなんて(お父さんの? 若いな)」


 渡された伝票に必要事項を記入しながら、会計を済ませる。如月のスーツなのにクリーニング代、俺持ち!!! もぉ!!!


「あはは。ま、俺のスーツじゃないけど」


 ーー全てを如月になすりつけ、その場を乗り切った睦月であった。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...