如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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34話 疑うより信じたい!貴方の居ない夕食はさびしい?!二次会は未知の世界?!

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 ーー飲み会当日 金曜日 朝


「じゃあ、俺、今日飲み会で帰り遅いから、卯月と2人で適当に食べてね」
「分かりました」


 いつも和室に引きこもってるか、リビングから手を振って見送るしかしない如月が、玄関まで見送りに来てくれるのは、ちょっと嬉しい。


「仕事行ってくる」


 如月をじっと見つめる。いってらっしゃいのちゅーして。ちゅーしてくれたら1日頑張れる。じぃぃい。


「……?」きょとん。


 なんでこういうのは鈍感なの!!! 分かるだろ!!! むしろ分かれよ!!! イラ。


「弥生さん」
「ふぇえっ?! なっなななんですか?!」


 急に下の名前で呼んだせいか、頬が赤く染まっている。なんかパニックになってるし。可愛い。


「いってらっしゃいのちゅーして」
「は…はははい……」


 顔を少し上げ、目を閉じる。


 ちゅ。


 優しく唇が重なった。


「ありがと。今日も1日頑張れる!!!」
「いってらっしゃい、睦月さん。お仕事頑張っ……あっ、待って」
「え?」


 シャツの襟がずらされ、首筋に如月の唇が触れ、吸い上げられた。俺今から仕事!! 痕付けたの?!?! 飲み会だから?!?! もぉ!! 心配性!!!


「もぉ~~っっ」
「誰かに取られたくないからね。いってらっしゃい」


 仕事なんて行きたくないぃ~~っ!! 穏やかに笑う如月に手を振り、玄関を出る。はぁ、しあわせ~~。愛が……愛が俺を包む!!!! はぁ~~毎日キスしてもらおう。そうしよう。


 軽い足取りで職場へと向かった。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー

 *


 ーー夜 佐野家



「如月、お腹空いた」


 そういえば、ご飯になるようなものは何も用意していない。こんな時間になるまで、ずっと執筆をして過ごしてしまった。卯月さんがお腹を空かせている。どうしようか。


「えっと……食べに行きます?」
「え!!! いいの? 行く!!!」


 卯月さんが目を輝かせている。佐野家は基本的に外食はしない。出前をとることもほぼない。どちらもお金がかかるからだ。


 普段、睦月さんの身体に優しい手料理しか食べていないから、刺激的なものでも食べたいのだろう。卯月さんの行きたいところへ連れて行ってあげよう。


「何か行きたい場所や食べたいものはありますか?」
「居酒屋行ってみたい」
「居酒屋?」


 中学生が居酒屋とは。まぁ、別に飲むわけじゃないし。普通の飲食店として、ご飯を食べる分には、いつもと違う料理が楽しめる、良い店なのかもしれない。


「居酒屋料理って美味しいんでしょ?」
「え? う~~ん、多分? 居酒屋行きますか?」
「やったぁ~~!!」


 もっと健全なファミレスとかの方がいい気がするが、卯月さんが喜んでるからまぁいっか。


 お互い出かける準備をして、玄関を出た。日は完全に落ち、外は真っ暗だ。蒸し暑かった日中とは違い、心地の良い秋の風が漂う。駅方面に向かい、歩き始めた。


 ぎゅ。


 睦月さんがいなくて寂しいのか手が握られた。何も言わずに握り返し、そのまま歩く。睦月さんも居酒屋とかで飲んでるのかな。飲みすぎてないかなぁ。心配。


「何系が食べたいとかあるんですか?」
「肉」
「あぁね……(※魚派)」


 がっつり食べれるところへ行こう。焼肉屋とか。


「卯月さん、ここどうですか?」
「私、こっちがいい」


(そこ肉食べれないと思うけど)


 のれんをくぐり、中へ入ると、ガヤガヤと人の声が騒がしく、落ち着けそうな雰囲気はなかった。本当に中学生と来て良かったのかな。


「なんか大人!!! すごい!!! 天ぷらとか食べたい!!!」
「個室ありますか?」


 テンション高。それにしても、喜び方が睦月さんにそっくり。面影のある2人を重ね、思わず、笑みが溢れる。あぁ、少ししか離れていないのに、私も貴方がいなくて寂しいのかもしれない。
 

 嬉しそうにしている卯月の頭を優しく撫で、店の奥へと進んだ。



 *



「あれ? 佐野、全く飲んでないじゃん」
「今日は飲まない!!!」


 頬が赤く染まった神谷が隣に座る。少し酔ってるのか? 珍しいな。それともよっぽど飲まないとやっていられない状況なのか。


「飲めよ、佐野~~」
「こっ、恋人に心配かけるから……」
「なんだお前~~飲めよ、くそがぁ~~っ!!」


 後ろからずしっと同僚に肩を組まれ、隣では神谷が酒を注いでくる。もぉ~~!!! 飲み会ってやだ!!! 早く帰りたい!!!


「飲まないってば!!! 俺がどうなるか分かってるの?」
「介抱してやるから、早く泣け」
「泣くか!!!」


 注がれたビールではなく、オレンジジュースを身体の中へ流し込む。今日は絶対に飲まない!!! 如月に誓う!!!


「そろそろお開きにします。そして、愉快な独身の仲間たちで二次会へいきまーす!!!」
「二次会とは……(帰りたい……)」
「女の子がいっぱい居るところです」


 お、女の子がいっぱいいるところ?! どこそこ!!! なにそれ!!!


 幹事によって会計が済まされ、ぞろぞろと店の外へ出る。もう帰った方がいいのでは?! 女の子のいるところなんて行ったら、それは浮気!!! 昨日変な釘刺されてるし!!!


「神谷ぁ~~帰っていい?」
「ダメに決まってるでしょ~~。これも付き合い」がーん。
「やだぁ~~」
「それにイケメンが居なくなったら誰が女の子を盛り上げるのさ~~」


 顔面要員?!?! 尚更帰っていいですか?


「神谷!!! 女の子いっぱいいるところって?!」
「キャバとかかなぁ。まぁ多分、ちょっと気持ちいい思いはするかもねー」


 気持ちいい思いとは?!?!


「きゃ、きゃば?! 気持ちよくなるところ?!?! どこそこ!!!」
「……見た目派手なくせに行ったことないのな」
「俺帰る~~やだぁ~~行きたくないぃ~~」


 二次会ってカラオケとかじゃないの?! これも仕事の付き合いなの?! どこまで付き合えばいいの?! もうやだ!!!


 早く如月に会いたい。


 俺の意見など取り入れてもらえず、肩を組まれ、煌びやかな歓楽街の方へ強制連行された。



 *



「お腹いっぱぁい!!」
「ご馳走様でした」


 膨れたお腹をさすりながら、のれんをくぐり、外へ出る。すっかり夜遅くなってしまった。シャツの裾が引っ張られ、卯月を見る。


「どうしたのですか?」
「あれ、お兄ちゃんじゃね?」
「え?」


 卯月が指差す方に視線を送ると、同僚なのか後輩なのか分からないが、男性たちに肩を組まれながら歩いている。


 元々女性よりは男性に好かれやすいタイプだとは思っているし、その行為に何か意味があるわけではなく、ただ、職場の人に可愛がられているのは分かるが、少し妬ける。


「相変わらずな絡まれ具合ですね」
「ちょっとついて行ってみようよ~~」
「ぇえ~~……」


 もう既に後つけてるし。これ見つかったらなんか言われるんじゃない? 時間も遅いし大人しくおうちで帰りを待っていた方が……。


 とは思いつつ、家以外にいる睦月さんの様子は気になる。卯月と一緒に、絡まれながらどこかへ向かう睦月の後を追う。


「なんか歓楽街方面向かってますけど……」
「怪しい店に入るってこと?」
「まぁ、付き合いとかあるかもしれませんね」


 できるなら入ってほしくないけれど。


「お兄ちゃん『癒しの花夢』に入って行ったけど、なんの店?」
「え~~っと……フーゾク店ですかね」


 付き合いでも入ります? 結構イヤなんですけど。


「如月は入ったことあるの?」
「ないですよ。相手に困ったことないので」
「うわぁ……」


 ダメだ、想像しただけで無理。見なかったことにして帰ろう。これは仕事の付き合い上、断れなくて、致し方なかっただけ。睦月さんにも咎めない。たぶん。


 卯月の手を引き、帰路に着いた。



 *



 可愛い可愛いと女の子に揉まれ続け、1時間。睦月は精神的ダメージを受けていた。


 そ、想像以上に無理。何故触りたくもないのに、胸を触らせてくるのか!!! なんでみんな進んで触っているのか!!! なんなのこの店は!!!


「緊張しちゃって、うぶで可愛いねぇ~~」
「いや……違……って無理! 無理だから!! ノーたっち!! どんとたっち!! やめて!!! ぁあぁんぐ……」


 ぎゅむ。


 胸に顔が沈む。柔らか。でも如月の胸の方がいい。ワイシャツは口紅や化粧品で汚れまくっている。こんな状態で家に帰るのはイヤだ。はぁ。


「そんなため息つかないでよぅ~~」
「え? あぁうん。帰りたいなーって」


 ワイシャツのボタンを外し、首元を緩める。そろそろクールビズもおしまいにしなければ。


「お兄さん、首筋にキスマークついてる」
「へ? あ……あ~~」


 そういえば朝、如月付けてたなぁ。はぁ、如月に会いたい。いつもならもう家へ帰っていて、スキンシップでも取ってる時間帯。


「すっごく独占欲の強い彼女さんなんですね」
「あ~~うん、そうだね」


 訂正するのも面倒だな。恋人が女性だと決めつけてくる隣に座る、派手な女性に少しうんざりしながら、腕時計を見る。


 お揃いの腕時計、階段から落ちた衝撃で割れちゃったんだよなぁ。俺の腕時計ってどこいったのかな? 退院してから一度も見てないや。


「彼女さんの写真見せてよ~~」
「はい」


 冷めた目で隣の女性にスマホの待ち受け画面を見せる。意外だったのか、目を見開いて、こちらを見ている。


「男じゃん!! お兄さんそっち系?!」
「もういいでしょ。神谷、俺、やっぱり帰るわ。みなさぁん、お疲れっしたぁ~~!! 恋人が待ってるんで、お先に失礼しまぁす!!」
「はぁ?!」


 ブーイングを受けながらビジネスバッグを片手に、店を出る。最初からこうすれば良かった。


 早く如月に会いたい。この疲れた心と身体を癒してほしい。なでなでされたい。ぎゅーってされたい。あっあっしたい!!!!


 如月に会いたい一心で、家まで、無我夢中で走り続けた。




 
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