如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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32話 妹は最近いちゃいちゃに手厳しい! 沢山刈っても米はもらえない?!

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 ーー稲刈り当日


「ついに来てしまった!!! この日がぁあぁ!!! 天気予報晴天!!! 気温30度超え!!! 暑い、絶対に暑い!!! こんな中、稲刈りとか!!! 本当にいやだあぁあぁぁあ!!!!」睦月は頭を抱えて叫んだ。


 ふふふ。この日のためにあらゆる検索に検索を重ね、厳選し、選び抜いた睦月さんの為の服と長靴!!! 今日はこれを渡す!!! そして着てもらう!!!


「睦月さぁん、服と長靴です」準備してあった服と長靴を睦月へ手渡す。
「如月の長靴は……?」


 きょとんとしながら見つめてくるが私の長靴はない。だって、稲刈りするつもりないし。


「ないですけど。田んぼに入る予定ないので」
「何それ!!! 自分だけ!!! ってなにこれ!!! オーバーオール?!?! なんでオーバーオール?!?!」オーバーオールを広げ驚いている。

「これに白の長袖着て、長靴履いて、稲刈りとか絶対可愛い!!!」白の長袖Tシャツを睦月の頭の上へ被せた。

「はぁ?!?! 何それ!!! 癖?! なんで俺がこんなの着なきゃいけないの!!!」


 睦月は履いていたハーフパンツを脱いだ。


「…………(着るんだ)」文句言いながら着替え始める睦月さんが好きすぎる。可愛い。しぬ。

「ほら着たよ!!! どう?! 似合う?!」


 かわっ……。はぁはぁ…かわい…かわいい!!! オーバーオール最高!!! 顔が甘いから余計可愛い!!! 肩紐片方外したい!!! むしろ抱きたい!!! ぁあぁあぁあぁあ!!! すきぃいぃい!!!(悶)


 ぎゅ


「え? な、なに?」可愛さのあまり抱きしめ。
「よく似合ってます」帰ってきたら抱こう。ここに誓う。
「そ、そう?」睦月を洋室にある全身鏡へ誘導する。


 鏡越しに映る私たちの姿。何か思い出したのか、睦月さんの顔が赤く染まり、目線が横に逸れた。可愛い。少しいじめちゃお。


「なんで赤くなってるんですか?」睦月の耳元で吐息が当たるように囁く。

「ぁっ……べつに……ゃっひやぁっ」唾液の音を立てながら舌先で耳の外側を舐めると、睦月の肩がビクッと上がった。

「睦月さんは可愛いなぁ、もう。ふふ」


 密着し合う身体。睦月の背中から伝わってくる体温が熱い。これは夏なのに長袖長ズボンのせいなのか。感情が昂っているせいなのか。


「私に何かを期待しているの? これから稲刈りなのに? 睦月さんはえっちですね」オーバーオールの横の隙間から手を入れ、服越しに胸元の上へ手を置く。

「あっ…だめだってば……今から行くの!!! 卯月は?! 準備出来たの?!」


 振り向き見つめてくる睦月の瞳は嫌がってるようには思えないのだけど。


「お兄ちゃん準備出来た!!! って何?! またそんなところでいちゃいちゃ?! 早くいこーー!!」


 最近、いちゃいちゃに対して手厳しいなぁと思いつつ、卯月さんに手を引っ張られるまま、玄関を出る。前回同様、予め手配しておいたレンタカーに乗り込み、睦月さんの運転で農場へ向かった。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー
 *


 ーー農場



 隅に小さな緑の苗が列になった田んぼの景色から一転、照りつける陽射しの元に輝く、黄金色の稲穂。まだ若干の青さはあるが、秋らしい、黄金色の水田を見るのは気持ちが良かった。


 台風や大雨などがあったのに、こんなに真っ直ぐ元気に育つとは。実りの秋を感じる。稲穂の近くに3人並び、しゃがみ込み、そよそよと揺れる稲穂を眺めた。


「あんな結構、雑に植えてたのにこんなしっかり稲になるもんなんだな」感心しかない。
「えぇ、まぁ、確かに」
「雑って言うなし!! 真剣に植えてたわ!!!」


 しかしだ。暑い!!! 長袖長ズボン暑い!!! 日差しが強すぎて今にも溶けそう!!! 頭が焼ける!!! 汗が止まらない!!!


「みなさん、稲刈りを行います~~保護者の方と田んぼの中へ入ってください。鎌はこちらです」鎌!!!
「卯月、鎌持ってきて……」卯月の背中を押す。
「だらしないなぁ~~」


 仕方なさそうに取りに行く卯月を見送り、立ち上がって背伸びをする。やるからにはちゃんと刈る!!!


「睦月さん頑張って」サンダル履いてきた人間に言われても。
「そう思うなら俺に何かすれば?」如月の前にしゃがみ込み、見つめる。

「……ちゅーしたら卯月さんに怒られるもん」俯いて話す如月の頬を手の甲で撫でた。拗ねてて可愛い。

「大丈夫だって……ね?」顔を上げた如月と目が合い、キスに踏み切ろうと顔を近づける。


 ザク。


 足元に鎌が刺さった。こわ。


「こんのリア充がぁあぁあぁああ!!! いまちゅーしようとした!!! みんないる!!! 学校関連の時は自粛しろ!!!! ちょっとは周りみろ!!! 次は頭に鎌刺す!!!」

「怖……」如月はサッと睦月から離れた。
「あっ……俺のこと避けないでよぉ……」如月のシャツを掴んで引き留める。
「お兄ちゃん!! 田んぼ入るって!!」


 卯月に連れられ、稲穂を囲うように並んでいく。隣に星奈が来た。なんだかお久しぶりな気がする。後ろを振り向くと、すぐそばに如月がしゃがんでおり、俺と目が合うと軽く手を振ってくれた。嬉しい。


「卯月ちゃん、稲刈りはお兄様とするのね!!」
「致し方なく」そんな言い方しなくても。

「では皆さ~~ん!! 今から10分間好きなだけ刈ってください!! ではスタートです!!!」


 足元はぬかるんでる感じはそこまでしない。これって刈った分だけ米が貰えたりするのだろうか? 好きなだけ刈っていいってことは、その分米が貰えるってこと?!?! 米が貰えるならめっちゃ刈るんだけど!!!!(※もらえません)


「っしゃぁあぁああ!!!! 燃えてきたぁあぁぁああ!!!!」


 鎌を手に取り、しゃがみ込み、稲の株を握って、刈っていく。最初は手元がおぼつかず、上手く出来なかったが、すぐに慣れてきた。隣を見ると卯月も慣れたのかリズム感良く刈っている。


 おけ!!! 刈って刈って刈って刈りまくる!!!! そうしたらいっぱい米もらえる!!!(※もらえません)頑張る!!!


 刈った稲が多くなってきたので、後ろを振り向き、如月へ渡した。


「はい!!! 如月!!!」どさ。
「多い!!! どんだけ刈るの!!!」


 両手いっぱいに稲を抱える如月を見ると、その似合わなさが、なんだか少し微笑ましい。


「じゃあ、俺刈ってくる」首にかけたタオルで汗を拭い、持ち場へ戻ると眉を顰めた卯月に声をかけられた。

「お兄ちゃん刈りすぎじゃね?」
「米がかかっている!!! 俺は米を手に入れる!!! 食料大切!!!」がっがっがっ。口を動かしても手は休めない!!!

「如月!!! はい!!! 稲!!!」どさ。
「睦月さんのとこだけ稲めっちゃなくなってます」如月は遠い目で稲を眺めた。

「だって刈った分だけ米もらえるんでしょ?(※もらえません)」楽しみで目が輝いてしまう。
「そんなキラキラした瞳で言われても知らないですよ」

「終わりでーーす!!! みなさん鎌を返してください!!!」竹内先生の声が聞こえて、田んぼから上がった。

「俺、鎌返してくるね!!!」如月に笑顔で手を振り、鎌を返しに先生の元へ卯月と向かう。

「…………わんこ(受け取った稲、一箇所に集めた気がするんだけど、刈った分だけもらえるとかあるのかな)」


 鎌をカゴの中へ戻し、辺りを見回す。あれ? 刈った稲は? ない!!! 稲がない!!! 消えた!!! あんなに刈ったのに!!! まさか!!! 刈った分だけもらえないの?!?! そんな!!!!(※もらえません)


「騙されたぁああぁあぁあ!!!! 俺の米ぇええぇえぇ!!!」
「3合はもらえるって紙に書いてあったよ」卯月にぽんっと背中を押された。


 3合って……。1回炊いたらもう終わりなんだけど。(※佐野家は毎回3合)


「皆さ~~ん、新米おにぎりと、お米を配ります。こちらに並んでください」慌ただしいなぁ。

「私、もらってくるね!! あんまいちゃいちゃすんなよ」


 少しならいちゃいちゃしていいよ、という意味で合っているのだろうか。隣に立っている如月を見つめる。俺をみて、クスッと笑い、首を傾けた。何もぉ。


「一生懸命、稲刈ってる睦月さんは素敵でした」ニコッと笑い、顔が近づく。


 ちゅ。


 頬に如月の唇が触れた。むー。口じゃない。場をわきまえるべき……。おうちまで我慢我慢。


「如月も稲運ぶの頑張ったでしょ? 俺にもさせて?」


 俺よりも少しだけ背の高い如月。背伸びをして、頬に顔を近づける。ちゅ。なんだか急に恥ずかしくなり、顔が熱くなる。


「なに自分でキスしといて、恥ずかしがってるんですか」如月の手が俺の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「なんとなく……早くおうち帰りたい……」

「おうち帰って、私とナニするつもりですか?」耳元で訊くな!!!

「お兄ちゃぁ~~ん!! もらってきたよ!! 顔赤!!! 耳まで赤いし!! やば!!!」

「うるさ!!! なんでもないわ!!!」卯月が持ってきた、おにぎりを奪う。ちょうどお腹も減ってきた。


 田んぼに煌めく、黄金色の稲を前に、座り込み、ラップに包まれたおにぎりを広げる。炊き立てで、あたたかい。ひとくち、真っ白なおにぎりを口の中へ入れると、塩だけのシンプルな味付けは米の甘味を引き立てた。


「おいし~~!!」


 全身、汗だくになったし、思ったほど米がもらえた訳ではなかったが、体を動かした後の、3人で食べるおにぎりはすごく美味しくて。幸福感に満たされた。




 
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